【図解】5分でわかる!電気自動車(EV)の仕組み│どうやって動く?エンジン車との違いは?

EVの仕組み

電気自動車(EV)はどのような仕組みで走るのでしょうか。EVへの注目度が高まっている中、その仕組みを知っておきたいと思っている方も多いでしょう。この記事では、EVの仕組みについて、図を用いて解説していきます。

 

この記事の監修者

森本 雅之

森本 雅之

元東海大学教授。工学博士。電気学会フェロー。モーターやパワエレが専門。現在は、社会人教育を中心にコンサルタントとして活動している。 著書に『電気自動車 電気とモーターで動く「クルマ」のしくみ』(森北出版),『パワエレ図鑑』(オーム社)など。

 

注:本記事で「EV」と表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しています。ハイブリット車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)や燃料電池自動車(FCV)とは区別しています。

 

 

EV充電設備

 

EVが動く仕組みとは? エンジン車との違い

EVはバッテリーに貯めた電気だけを使って走る車

EVの充電口

画像:iStock.com/stellalevi

この記事では、EVと純粋にエンジンだけで動くエンジン車のみに絞ってその違いを見ていきましょう。

EVはバッテリーに貯めた電気だけを使って走る車であるのに対して、エンジン車は燃料(ガソリンや軽油)を使って走る車です。

電気を使うか、燃料(ガソリンや軽油)を使うか、というシンプルな違いですが、これによって駆動力を生み出す装置(モーター、エンジン)が全く異なります。したがって、それらの装置を補助する部品走行時の排出物も異なります。

以下にEVとエンジン車が動く仕組みを簡略化しました。まずはその違いを確認してみましょう。

〈図〉EV・エンジン車が動くまで

EV・エンジン車が動くまで

エンジン車でも補助的に電気は使われている

よく「バッテリーがあがった」と言うように、エンジン車でも電気は使います。ただ、エンジン車のバッテリーはヘッドライトやワイパーなどのためのもので、車を走らせるためのものではありません。このバッテリーを、EVを走らせるバッテリーと区別するため、補機バッテリーと呼びます。通常は12Vの電圧のものが使われます。

一方、車を走らせるために使われるモーターに電気を供給するバッテリーは、補機バッテリーと区別して駆動用(高電圧)バッテリーと呼ばれます。

ちなみに、EVも駆動用バッテリーとは別に、補機バッテリーを搭載しています。モーターを回す電圧と、ヘッドライトやワイパーなどを動かす電圧が大きく異なるため、別々で備えていたほうが効率がよいからです。

 

 

EVならではの3大部品の役割を解説

それでは、EVの仕組みのうち重要な3つの部品を紹介します。それぞれの部品の役割をみていきましょう。なお、基本的にEVの内部構造はエンジン車に比べてとてもシンプルです。

(1)モーター

モーター

EVの部品の中で、エンジン車のエンジンに当たるのは、モーターです。役割はもちろん、「電気を駆動力に変換すること」です。

モーターには直流モーターと交流モーターの2種類があり、EVには交流モーターが使われることが多いです。

交流モーターの原理を簡単に説明します。モーターに交流の電流を流すと、モーター内部のコイルがN極とS極に次々に変化します。これを利用して磁石やコイルを回転させ、駆動力を生み出します。

 

 

(2)バッテリー

バッテリー

モーターに電気を供給するのが駆動用バッテリーです。エンジン車のガソリンタンクに当たります。役割は「電気を蓄えておくこと」です。

現在よく使われているのは、スマートフォンやパソコンでも使われているリチウムイオン電池です。小型で軽くできるのが特徴です。

小型化といっても、車を動かすための電力はスマートフォンとは比べものにならないほど大きいので、バッテリー自体も大きくなります。多くの場合、エンジン車の燃料タンク以上の大きさになります。

 

〈コラム〉EVの走行距離はバッテリーの大きさで変わる

EVの走行距離は、基本的に駆動用バッテリーの容量(kWh)に左右されます。容量が大きいほど走行距離は長くなります。一方で、容量が大きいほど充電に時間がかかり、さらに重量が増えるため、エンジン車でいうところの“燃費"にあたる”電費“が悪くなります。

満充電にしてから走れる距離(航続距離)は、車種によって異なります。たとえば日産リーフの場合、容量40kWhのバッテリー搭載車なら322km、62kWhのバッテリー搭載車なら458km。ホンダHonda e(ノーマルグレード)は283kmとなります(いずれもWLTCモード※による測定値)。 身

※WLTCとは、「世界統一試験サイクル」といわれる国際的な試験方法に基づいて測定されたデータのこと

 

 

(3)コントローラー

コントローラー

コントローラーは、バッテリーからモーターへ送られる「電気の形を調節」します。

駆動用バッテリーに貯めてある直流の電気を、交流モーターを回すために交流の電気に変換する「インバータ」や、電圧をコントロールする「コンバータ」などを組み合わせた部品のことを指します。

エンジン車の場合、主に燃料の供給量を制御して駆動力を制御しますが、EVの場合はモーターに流す電流を制御することで駆動力を制御します。

例えばろうそくに火を灯すと、ろうは液体になり、さらに気体になり、燃焼します。燃えるまでにそれらの過程を経るため、炎が大きくなって明るくなるまでにある程度時間がかかります。ところが、電気を使って光る照明はスイッチひとつで電流が流れるため、すぐに明るくなります。これと同じように、電気で動くEVは駆動力を制御しやすく、加速が非常にスムーズに行えるのです。

 

〈コラム〉エンジン車に必要で、EVには不要なパーツとは?

EVには使われないエンジン車のパーツにはどのようなものがあるのでしょうか。

エンジンに係るすべての部品が不要になります。エンジンにガソリンを送り込む燃料ポンプ、ガソリンや軽油を燃焼するために使う吸気管や、燃焼で出たガスを排気する排気管などは、EVでは一切不要になります。さらに、エンジン車では当たり前にあるトランスミッション(変速機)も、EVでは一般的に不要です。ただしレース用の車など、速く走るためにトランスミッションを用いているEVもあります。

このように、EVはエンジン車よりも部品点数が少なくて済むというメリットもあります。エンジンなど大きな部品がなくなるので車のデザインの自由度も高くなります。

 

 

EV充電設備

 

EVはどうやって充電される? 仕組みと種類を解説

駆動用バッテリーへの充電方法は主にふたつあります。ひとつは外部から充電する方法、もうひとつは「回生」という内部で発電し充電する方法です。

外部からの充電と回生による充電

(1)外部からの充電

EVは、あらかじめバッテリーに充電する必要があります。外部からの充電は大きく分けて、普通充電急速充電のふたつがあります。

①普通充電

家で電気自動車と充電する女性

画像:iStock.com/ Nicholas77

普通充電とは、自宅などにあるコンセントを使用する充電方法です。充電用には200Vコンセントが使われることが多いようです。充電時間は車種により異なります。例えば日産リーフの容量40kWhのバッテリー搭載車なら3kW普通充電器で約16時間、6kW普通充電器の場合約8時間です(※公式HP1)より)。

 

 

 

②急速充電

急速充電

画像:iStock.com/Gumpanat

急速充電とはその名のとおり、短時間で充電する方法です。普通充電と比べて高出力の充電器を使って充電します。急速充電器は、高速道路のSAや自動車ディーラー、公共施設などに設置されています。 充電時間の目安は、例えば日産リーフの場合、容量40kWhのバッテリー搭載車で空の状態から約80%まで充電するまでにかかる時間は約40分(※公式HP2)より)とされています。(※)

※あくまでも理論上の数値です。急速充電器は通常1回の充電がたいてい30分までと定められています。実際に使用する場合は、たとえ80%まで充電できなかったとしても、30分経ったら一度充電をやめなければなりません。

 

 

 

(2)回生による充電

「回生」とは、減速するときに走っているときの運動エネルギーを電気エネルギーに変換して利用することを指します。

ドライバーがアクセルから足を離すと、新たに生み出す駆動力はなくなりますが、完全に停止するまでタイヤとモーターは回り続けます。このときの勢いで「回る力」を使ってモーターで発電するというのが「回生」です。このとき、モーターがブレーキの働きをします。

回生で発電した電気は、駆動用バッテリーに充電されます。「回生」は、EVだけではなくHVやPHVなど電気で動く車すべてに共通する大きな特徴です。

〈図〉回生の仕組み

〈図〉回生の仕組み

 

EV充電設備

 

「仕組み」から見える、EVのメリットとは?

このように、仕組みを理解することで下記のようなEVのメリットが見えてきます。

・走行時に排気ガスが出ない
・パーツが少なく、デザインを自由にしやすい
・駆動力が制御しやすく、加速しやすい
・電気で車の走行をコントロールするので、自動運転に向いている

エンジン車でも、ステアリングやブレーキ操作に電気を使って制御することが増えてきましたが、EVは動力源であるモーターも含めてまとめて電気で制御することができます。このことは、EVが自動運転に向いているということでもあり、大きなメリットと言えるでしょう。

その他のメリットについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

 

 

EVの仕組みのシンプルさは、世界の産業構造を変える

ガソリン車と電気自動車

画像:iStock.com/ Tomwang112

エンジン車とEVの違いは、例えば蒸気機関車と電車の違いのようなものです。蒸気機関車にはたくさんの部品がついていますが、電気で走る電車はモーターなどが床下にコンパクトに収まっています。

EVの仕組みはとてもシンプルです。モーターとバッテリーとコントローラーがあれば、それまで自動車を作ってこなかった会社でも自動車を作ることができるようになるのです。EVの発展は、乗る人に変化を与えるだけでなく、世界の産業構造を変えるものかもしれません。

 

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
EV DAYS編集部