電気自動車(EV)を所有する際にかかる維持費のなかでも、特に気になるのが税金です。ガソリン車と比べた場合、EVのほうが税制優遇を受けていることは知っていても、具体的にどれくらい税金が安くなるのかは、わからない人も多いのではないでしょうか。EVを所有するにあたり、知っておきたい税金に関する基礎知識を紹介します。
※この記事は2021年5月12日に公開した内容をアップデートしています。
- 車の税金には何がある? EVにかかる税金は実質2種類
- EVの税金は具体的にいくらかかる?
- EVで受けられる税制優遇制度
- EVにかかる税金 その1「自動車税」
- EVにかかる税金 その2「自動車重量税」
- EVにはかからない税金「環境性能割」
- EVには補助金制度もある
- EVの税制優遇は今だけ? 購入の検討はお早めに
注:
・本記事で「電気自動車(EV)」と表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しています。PHV・PHEVやFCVとは区別しています。
・各税金については、普通車(自家用乗用車)の情報を掲載しております。軽自動車や事業用車両については金額が異なる場合があります。
車の税金には何がある? EVにかかる税金は実質2種類
まずは、一般的に車を所有する際にかかる税金について整理しておきましょう。EV、ガソリン車といった種類を問わず、車にかかる税金は3種類あります(消費税は除きます)。
〈表〉車にかかる税金の種類
種類 | 納めるタイミング | 納付先 |
環境性能割 (旧・自動車取得税) |
車の購入時に納める | 自治体 |
自動車重量税 | 新車登録時と車検(継続検査)時に納める | 国 |
自動車税 (自動車税種別割) |
毎年1回納める | 自治体 |
このうち、EVは購入時に納める環境性能割が2025年度まで非課税となっています。また、自動車重量税や自動車税についても、EVは免税または減税措置がとられています。これらの減税措置である「エコカー減税」「グリーン化特例」の適用期間が3年延長され、適用条件を厳しくしながらも2025年度までは継続されることになりました。つまり、EVにかかる税金は実質、自動車重量税と自動車税の2種類であり、さらにこれらの税金も軽減されるのです。
〈図〉EVにかかる税金
EVの税金は具体的にいくらかかる?
では実際に、EVにかかる税金を確認してみましょう。
現行の多くの国産EVの車両重量は1.5t超〜2t以下です。この条件にあてはまる主なEVはこちらです。
〈表〉車両重量1.5t超〜2t以下のEV例
メーカー・ブランド | 車種 |
日産 | リーフe+ |
レクサス | UX 300e |
マツダ | MX-30 EV MODEL |
ホンダ | Honda e |
トヨタ | bZ4X ※ |
スバル | ソルテラ ※ |
※ 一部グレードのみ
自動車重量税は車両重量によって税額が変動するため、2年ごとに車検を受ける普通車(自家用乗用車)で上記重量区分と仮定して算出してみることにします。なお、以下は、2023年4月に購入した場合の計算例です。
〈表〉EVにかかる税金
税の種類 | 軽減前の税額 | 軽減後の税額 |
環境性能割 | ー | 0円(非課税) |
自動車重量税 | 3万2800円 | 0円(免税)※1 (2回目車検時以降2万円) |
自動車税 | 2万5000円 | 新車登録翌年度分のみ6500円※2 |
購入年度月割分自動車税 | 購入月および都道府県で異なる | 購入月および都道府県で異なる |
※1:新車登録時および初回車検時が免税。2回目車検時以降は2万円
※2:新車登録年度の翌年度分のみ。東京都の場合は新車登録年度および翌年度から5年度分が免税
購入年度月割分自動車税は、購入した月と都道府県により金額が異なります。
さらに、EVを購入した年度を0年度とし、そこから5年度目までにかかる税金の合計額は、12万6500円+購入年度月割分自動車税です。内訳は以下です。
〈表〉EVを購入してから5年度目までにかかる税金
購入してからの年数 | 発生する税金 | 支払う金額 |
購入した年度(0年度目) | 環境性能割 | 0円(非課税) |
自動車重量税 | 0円(エコカー減税で免税) | |
購入年度月割分自動車税 | 購入月および都道府県による | |
1年度目 | 自動車税 | 6500円(グリーン化特例で減税) |
2年度目 | 自動車税 | 2万5000円 |
3年度目(初回車検含む) | 自動車税 | 2万5000円 |
自動車重量税 | 0円(エコカー減税で免税) | |
4年度目 | 自動車税 | 2万5000円 |
5年度目(2回目車検含む) | 自動車税 | 2万5000円 |
自動車重量税 | 2万円(エコカー減税で減税) |
※ 2年車検の自家用乗用車、車両重量1.5t超~2t以下の場合
東京都の場合には、自動車税も新車登録年度および翌年度から5年度分が免税されるため、毎年かかる自動車税さえも払う必要がありません。このように、自治体によってはさらにおトクな場合があるため、EVの購入の際には、必ず確認してみましょう。
EVで受けられる税制優遇制度
EVの税金が軽減されるのは、環境性能が高い車を対象とする2つの税制優遇制度があるからです。それぞれについて、簡単に説明します。
(1)グリーン化特例
「グリーン化特例」とは、購入する車の燃費性能や環境性能に応じ新車登録年度の翌年度分の自動車税が軽減される制度です。軽減率は、購入する車の区分と購入時期によって変わります。もともと2023年3月31日までの新車登録等が期限でしたが、3年間の延長が決まりました。次に示すのは、自動車税の軽減割合を示す表1)です。
〈表〉グリーン化特例による普通車(自家用乗用車)にかかる自動車税の軽減割合
自動車の区分 | 軽減率 |
電気自動車等 | 概ね75% |
ハイブリッド車を含むガソリン車 | 軽減なし |
※ 電気自動車等とは、EV、PHV・PHEV、FCV、天然ガス自動車を指します
EVは、表中の「電気自動車等」の区分に入るので、自動車税の軽減率は「概ね75%」となります。一方、ハイブリッド車を含むガソリン車は2021年4月以降、それまで行われていた自動車税の軽減がなくなりました。そのため、自動車税についてはEVのほうがおトクということになります。
(2)エコカー減税
「エコカー減税」とは、購入する車の排出ガス性能及び燃費性能に優れた自動車に対して、それらの性能に応じて自動車重量税が軽減される制度です。2021年5月より税制が改正され、特例措置が適用されています。
もともと2023年4月30日までの新車登録等が期限でしたが、22年12月に3年間の延長が決まりました。24年からは軽減率の適用基準が段階的に引き上げられる予定です。
軽減率は自動車燃費基準の達成割合に応じて25%から100%までの間で変化します。次に示すのは、自動車重量税の軽減割合を示す表2)です。
〈表〉エコカー減税による普通車(自家用乗用車)にかかる自動車重量税(新規登録、継続検査)の軽減割合
EVは、表中の「電気自動車等」の区分に入るので、新車登録時と初回車検時(継続検査)の自動車重量税が免税(100%軽減)されます。
EVにかかる税金 その1「自動車税」
ここからは、EVにかかる税金について、詳しく紹介します。まずは、自動車税からです。
自動車税は、地方税(都道府県税)の一種で、地方自治体の税収となります。現在は、使用用途が定められていない一般財源となっており、税収は地域の教育や医療、警察や消防などの公共サービスや福祉などのために使われます。
支払うタイミングは?
自動車税は、4月1日時点で所有している車に対してかかる税金で、基本的には4月から翌3月までの12ヵ月分を、5月にまとめて支払うことになります(車を購入した初年度は、購入月の翌月から翌3月までの期間分を購入時に支払うことになります)。
支払う金額は何で決まる?
自動車税の税額は、所有する車の排気量によって決まります。
〈表〉普通車(自家用乗用車)にかかる自動車税の税額一覧(2019年10月1日以降に新規初回登録を受けたもの)3)
総排気量 | 税額 |
1000cc以下 | 2万5000円 |
1000cc超1500cc以下 | 3万500円 |
1500cc超2000cc以下 | 3万6000円 |
2000cc超2500cc以下 | 4万3500円 |
2500cc超3000cc以下 | 5万円 |
3000cc超3500cc以下 | 5万7000円 |
3500cc超4000cc以下 | 6万5500円 |
4000cc超4500cc以下 | 7万5500円 |
4500cc超6000cc以下 | 8万7000円 |
6000cc超 | 11万円 |
EVは排気量がゼロのため、区分は「1000cc以下」となり、基準の税額は2万5000円となります。
しかしEVの場合、「グリーン化特例」が適用されるため、この金額から「概ね75%」の軽減措置がとられます。そのため、新車登録年度の翌年度分のみ実質の自動車税は6500円となります。
〈図〉EVの自動車税の金額
納付先となる自治体によっては、さらに優遇措置を設けている場合もあります。たとえば、東京都の場合、EVは初回新規登録時及び翌年度から5年度分は自動車税が全額免税されます。
EVにかかる税金 その2「自動車重量税」
自動車重量税は、国税の一種で、国の税収となります。税収の使途は、かつては道路の建設や維持に使うことを目的とした道路特定財源となっていましたが、道路特定財源制度の廃止にともない、現在は一般財源化されており、道路以外の用途にも使われています。
支払うタイミングは?
自動車重量税は、新車登録時と車検(継続検査)時に納める税金です。
支払う金額は何で決まる?
納める税額は、車体の重量(車両重量)によって変わります。基準となる金額は、以下のとおりです。
〈表〉エコカー減税が適用されない普通車(自家用乗用車)の2年車検(継続検査)時にかかる自動車重量税(新車登録から12年以内まで)4)
重量 | 税額 |
0.5t以下 | 8200円 |
1t以下 | 1万6400円 |
1.5t以下 | 2万4600円 |
2t以下 | 3万2800円 |
2.5t以下 | 4万1000円 |
3t以下 | 4万9200円 |
この表に単純にあてはめると、たとえば日産「リーフe+」の車両重量は約1.7tなので「2t以下」の区分になり、税額は3万2800円になります。
しかしEVは、「エコカー減税」が適用されるため、新車登録時の自動車重量税が免税されるほか、初回車検(継続検査)時の自動車重量税も免税されます。
また2回目以降の車検についても、エコカー減税が適用されていたEVをはじめとする車両については、上記の自動車重量税よりも税額が安くなります。
〈表〉エコカー減税が適用されていた普通車(自家用乗用車)の2回目以降の車検(継続検査)時にかかる自動車重量税4)
重量 | 税額 |
0.5t以下 | 5000円 |
1t以下 | 1万円 |
1.5t以下 | 1万5000円 |
2t以下 | 2万円 |
2.5t以下 | 2万5000円 |
3t以下 | 3万円 |
※ 2年車検の自家用乗用車の場合
例にあげた車体重量約1.7tの日産「リーフe+」の場合には、2回目の車検時以降の自動車重量税は2万円になり、同じ重量のエコカー減税が適用されない車と比べた場合、1万2800円おトクということになります。
〈図〉EVの自動車重量税の金額例
EVにはかからない税金「環境性能割」
環境性能割は、「割」という言葉が使われていますが、税金のひとつです。2019年10月に自動車取得税が廃止され、代わりに環境性能割が新設されました。
これは地方税(都道府県税)の一種で、地方自治体の税収となります。自動車税と同様に現在は、使用用途が定められていない一般財源となっており、税収は地域の教育や医療、警察や消防などの公共サービスや福祉などのために使われます。
支払うタイミングは?
環境性能割は、車の購入時に納める税金です。
支払う金額は何で決まる?
普通車(自家用乗用車)の場合、納める税額は取得価額※の3%が基本となりますが、環境性能によって税率が軽減されます。次に示すのは、環境性能割の税率を示す表5)です。
〈表〉普通車(自家用乗用車)にかかる自動車税環境性能割の税率
EVは表中の「電気自動車等」に入り、環境性能が高いと評価されているため非課税となります。つまり、環境性能割を納める必要はありません。
※取得価額とは
「課税標準基準額」とオプション代の合計金額(1,000円未満切り捨て)です。 「課税標準基準額」は、車種やグレードをもとに算出され、おおよその目安として新車価格の90%程度とされています。
EVには補助金制度もある
環境性能や燃費性能が低いガソリン車と比較した場合、税金が軽減されるEVですが、さらに購入費の一部を国や自治体が補助してくれる制度も用意されています。
たとえば、国が交付する補助金では「CEV補助金」があります。ガソリン車に比べてまだ価格の高いEVやPHEVなどのCEV(クリーンエネルギー自動車)の購入を補助する制度で、2023年度には購入したときに最大85万円が国から交付されます。
このほか、自治体もEV購入の補助金を用意している場合があります。国の補助金と自治体の補助金は併用可能な場合が多いので、お住まいの自治体によっては購入費用が大幅に軽減されます。
なお、補助金の交付を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要がありますので、チェックしてください。
また、基本的に各種の補助金は予算上限に達すると受付終了となります。現在、申請を受け付けているのかどうかなど、詳細情報については以下の記事をご覧ください。
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EVの税制優遇は今だけ? 購入の検討はお早めに
現状では、さまざまな税制優遇を受けているEVですが、優遇措置の大半は期間を区切った時限的措置となっています。つまり、その期限以降も同様の優遇が受けられるという保証はありません。EVを所有するうえで税金の節約をしたいなら、今のうちに購入の検討をしてみてはいかがでしょうか。