【2024年4月25日更新】電気自動車(EV)を所有する際にかかる維持費のなかでも、多くの人が特に気になるのが税金でしょう。ガソリン車に比べて税制優遇を受けられることは知っていても、具体的にEVがどれくらい税金が安くなるのか、わからない人も多いはず。EVを所有するなら知っておきたい税金の基礎知識を紹介します。
※この記事は2023年4月7日に公開した内容をアップデートしています。
- 「EVは税金がかからない」は本当なの?
- EVを所有すると税金は具体的にいくらかかる?
- EVに適用される2つの税制優遇制度
- EVにかかる税金①「自動車税」
- EVにかかる税金②「自動車重量税」
- EVは購入時に納める「環境性能割」が非課税
- EVには税制優遇だけでなく補助金制度もある
- EVの税制優遇は今だけ? 購入の検討はお早めに
注:
・本記事で「電気自動車(EV)」と表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しています。PHEVやFCEVとは区別しています。
・各税金については、普通車(自家用乗用車)の情報を掲載しています。軽自動車や事業用車両については金額が異なる場合があります。
「EVは税金がかからない」は本当なの?
エンジンを搭載しないEVは、車の総排気量や車両重量に応じてかかる税金が免税または減税となっています。こうしたことから「EV=税金がかからない」と誤解している人もいるようです。そこで、まずEVを所有する際にかかる税金について整理しておきましょう。
EVにも「自動車重量税」と「自動車税」はかかる
そもそも、EVやガソリン車といった車の種類を問わず、車にかかる税金には以下の3種類があります(消費税は除きます)。
〈表〉車にかかる税金の種類
種類 | 納めるタイミング | 納付先 |
自動車重量税 | 新車登録時と車検(継続検査)時に納める | 国 |
自動車税(自動車税種別割) | 毎年1回納める | 自治体 |
環境性能割(旧・自動車取得税) | 車の購入時に納める | 自治体 |
EVの場合、上記のうち購入時に納める環境性能割が2025年度末まで非課税となっています。また、EVは車両重量に応じて課税される自動車重量税、総排気量に応じて課税される自動車税についても免税または減税措置がとられています。
これらの減免措置はそれぞれ「エコカー減税」と「グリーン化特例」といい、2025年度までは継続されます。つまり、EVにかかる税金は自動車重量税と自動車税の実質2種類となり、さらにこれらの税金も減免されます。
〈図〉EVにかかる税金
【あわせて読みたい記事】
▶電気自動車(EV)に車検不要は本当?費用・エンジン車との違いを解説
EVを所有すると税金は具体的にいくらかかる?
実際にEVを所有するとどれくらいの税金がかかるのでしょうか。詳しい内容は後述しますが、EVにかかる自動車重量税と自動車税という2種類の税金について、それぞれ簡単に解説します。
EV購入から5年度目までにかかる税金の内訳を紹介
まず自動車重量税から見ていきましょう。現行の多くの国産EVの車両重量は1.5t超〜2t以下となっており、この条件に当てはまるおもなEVの車種は以下のとおりです。
〈表〉車両重量1.5t超〜2t以下の国産EV例
メーカー・ブランド | 車種 |
スバル | ソルテラ※ |
トヨタ | bZ4X※ |
日産 | リーフe+ |
日産 | アリア※ |
マツダ | MX-30 EV MODEL |
レクサス | RZ※ |
レクサス | UX 300e |
※ 一部グレードのみ
自動車重量税は車両重量によって税額が変動するため、2年ごとに車検を受ける普通車(自家用乗用車)で上記重量区分を仮定して算出してみましょう。なお、以下は、2024年4月に購入した普通車(自家用乗用車)の場合の計算例です。
〈表〉EVにかかる税金
税の種類 | 軽減前の税額 | 軽減後の税額 |
環境性能割 | 取得価額の1~3%(購入時) | 0円(非課税) |
自動車重量税 | 購入時:4万9200円(3年分) 車検毎:3万2800円(2年分) |
0円(免税)※1 (2回目車検時以降2万円) |
自動車税 | 2万5000円(毎年) | 新車登録翌年度分のみ6500円※2 |
購入年度月割分自動車税 | 購入月および都道府県で異なる | 購入月および都道府県で異なる |
※1:新車登録時および初回車検時の2回計5年分が免税。2回目車検時以降は2万円
※2:新車登録年度の翌年度分のみ。東京都の場合は新車登録年度および翌年度から5年度分が免税
購入年度月割分自動車税は、購入した月と都道府県により金額が異なります。さらに、EVを購入した年度を0年度とし、そこから5年度目までにかかる税金を計算すると、その合計額は12万6500円+購入年度月割分自動車税となります。内訳は以下のとおりです。
〈表〉EVを購入してから5年度目までにかかる税金
購入してからの年数 | 発生する税金 | 支払う金額 |
購入した年度(0年度目) | 環境性能割 | 0円(非課税) |
自動車重量税 | 0円(エコカー減税で免税) | |
購入年度月割分自動車税 | 購入月および都道府県による | |
1年度目 | 自動車税 | 6500円(グリーン化特例で減税) |
2年度目 | 自動車税 | 2万5000円 |
3年度目(初回車検含む) | 自動車税 | 2万5000円 |
自動車重量税 | 0円(エコカー減税で免税) | |
4年度目 | 自動車税 | 2万5000円 |
5年度目(2回目車検含む) | 自動車税 | 2万5000円 |
自動車重量税 | 2万円(エコカー減税で減税) |
※ 2年車検の自家用乗用車、車両重量1.5t超~2t以下の場合
東京都の場合には、自動車税も新車登録年度および翌年度から5年度分が免税されるため、毎年かかる自動車税さえも払う必要がありません。このように、自治体によってはさらにおトクな場合があるため、EVの購入の際には、必ず確認してみましょう。
【あわせて読みたい記事】
▶おすすめの電気自動車(EV)を紹介! 「価格・航続距離」を徹底チェック
EVに適用される2つの税制優遇制度
EVの税金が軽減されるのは、環境性能が高い車を対象とする「グリーン化特例」「エコカー減税」という2つの税制優遇制度があるからです。それぞれの内容について、簡単に説明します。
(1)グリーン化特例とは?
「グリーン化特例」とは、購入する車の燃費性能や環境性能に応じて新車登録年度の翌年度分の自動車税が軽減される制度です。軽減率は、購入する車の区分と購入時期によって変わります。もともと2023年3月31日までの新車登録等が期限でしたが、2026年3月31日まで3年間の延長が決まりました。
以下は自動車税の軽減割合を示す表1)です。
〈表〉グリーン化特例による普通車(自家用乗用車)にかかる自動車税の軽減割合
自動車の区分 | 軽減率 |
電気自動車等 | 概ね75% |
ハイブリッド車を含むガソリン車 | 軽減なし |
※ 電気自動車等とは、EV、PHEV、FCEV、天然ガス自動車を指します
EVは、表中の「電気自動車等」の区分に入りますので、自動車税の軽減率は「概ね75%」となります。これは軽自動車のEVであっても同様です。一方、HEV(ハイブリッド車)を含むガソリン車は2021年4月以降、それまで行われていた自動車税の軽減がなくなりました。そのため、自動車税についてはEVのほうがおトクということになります。
(2)エコカー減税とは?
「エコカー減税」とは、購入する車の排出ガス性能及び燃費性能に優れた自動車に対して、それらの性能に応じて自動車重量税が軽減される制度です。2021年5月より税制が改正され、特例措置が適用されています。
もともと2023年4月30日までの新車登録等が期限でしたが、2026年4月30日まで3年間の延長が決まりました。2024年からは軽減率の適用基準が段階的に引き上げられます。たとえば、ガソリン車の場合、2023年12月までは達成度60%でもエコカー減税の対象となっていましたが、2024年1月からは70%以上でなければ対象となりません。
軽減率は自動車燃費基準の達成割合に応じて25%から100%までの間で変化します。
以下は自動車重量税の軽減割合を示す表2)です。
〈表〉エコカー減税による普通車(自家用乗用車)にかかる自動車重量税(新規登録、継続検査)の軽減割合
ご覧のように、EVは表中の「電気自動車等」の区分に入りますから、新車登録時と初回車検時(継続検査)の自動車重量税が免税(100%軽減)されます。なお、これは軽自動車のEVであっても同様です。
【あわせて読みたい記事】
▶【2024年度】PHEVの補助金は上限いくら?国や自治体の制度、注意点を解説
EVにかかる税金①「自動車税」
ここからは、EVにかかる「自動車税」「自動車重量税」という2つの税金について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
まずは、自動車税からです。自動車税は、地方税(都道府県税)の一種で、地方自治体の税収となります。現在は、使用用途が定められていない一般財源となっており、税収は地域の教育や医療、警察や消防などの公共サービスや福祉などのために使われます。
自動車税を支払うタイミングは?
自動車税は、毎年4月1日時点で所有している車に対してかかる税金で、基本的には4月から翌3月までの12ヵ月分を、5月にまとめて支払うことになります(車を購入した初年度は、購入月の翌月から翌3月までの期間分を購入時に支払います)。
自動車税の税額は何によって決まる?
自動車税の税額は所有する車の排気量によって決まります。
〈表〉普通車(自家用乗用車)にかかる自動車税の税額一覧(2019年10月1日以降に新規初回登録を受けたもの)3)
総排気量 | 税額 |
1000cc以下 | 2万5000円 |
1000cc超1500cc以下 | 3万500円 |
1500cc超2000cc以下 | 3万6000円 |
2000cc超2500cc以下 | 4万3500円 |
2500cc超3000cc以下 | 5万円 |
3000cc超3500cc以下 | 5万7000円 |
3500cc超4000cc以下 | 6万5500円 |
4000cc超4500cc以下 | 7万5500円 |
4500cc超6000cc以下 | 8万7000円 |
6000cc超 | 11万円 |
EVは排気量がゼロのため、区分は「1000cc以下」となり、基準の税額は2万5000円となります。
ただし、EVの場合、「グリーン化特例」が適用されますから、この金額から「概ね75%」の軽減措置がとられます。そのため、新車登録年度の翌年度分のみ実質の自動車税は6500円となります。
〈図〉EVの自動車税の金額
ちなみに、軽自動車のEVの場合は、基準の税額1万800円から「概ね75%」軽減されて2700円になります。
納付先となる自治体によっては、さらに優遇措置を設けている場合もあります。たとえば、東京都の場合、EVは初回新規登録時及び翌年度から5年度分は自動車税が全額免税されます。
【あわせて読みたい記事】
▶電気自動車(EV)の価格相場はいくら?車種別価格の一覧も紹介
EVにかかる税金②「自動車重量税」
自動車重量税は、国税の一種で、国の税収となります。税収の使途は、かつては道路の建設や維持に使うことを目的とした道路特定財源となっていましたが、道路特定財源制度の廃止にともない、現在は一般財源化されており、道路以外の用途にも使われています。
自動車重量税を支払うタイミングは?
普通車(自家用乗用車)の自動車重量税は、新車登録時(3年分)と車検(継続検査)時(2年分)に納める税金です。
自動車重量税の税額は何によって決まる?
自動車重量税の税額は、車体の重量(車両重量)によって変わります。基準となる金額は、以下のとおりです。
〈表〉エコカー減税が適用されない普通車(自家用乗用車)の2年車検(継続検査)時にかかる自動車重量税(新車登録から12年以内まで)4)
重量 | 税額 |
0.5t以下 | 8200円 |
1t以下 | 1万6400円 |
1.5t以下 | 2万4600円 |
2t以下 | 3万2800円 |
2.5t以下 | 4万1000円 |
3t以下 | 4万9200円 |
この表に単純にあてはめると、たとえば日産「リーフe+」の車両重量は約1.7tなので「2t以下」の区分になり、税額は3万2800円になります。
ただし、EVは「エコカー減税」が適用されるため、新車登録時の自動車重量税が免税されるほか、初回車検(継続検査)時の自動車重量税も免税されます。なお、これは軽自動車のEVであっても同様です。
また2回目以降の車検についても、エコカー減税が適用されていたEVをはじめとする車両については、上記の自動車重量税よりも税額が安くなります。
〈表〉エコカー減税が適用されていた普通車(自家用乗用車)の2回目以降の車検(継続検査)時にかかる自動車重量税4)
重量 | 税額 |
0.5t以下 | 5000円 |
1t以下 | 1万円 |
1.5t以下 | 1万5000円 |
2t以下 | 2万円 |
2.5t以下 | 2万5000円 |
3t以下 | 3万円 |
※ 2年車検の自家用乗用車の場合
先ほど例にあげた車体重量約1.7tの日産「リーフe+」の場合、2回目の車検時以降の自動車重量税は2万円になり、同じ重量のエコカー減税が適用されない車と比べた場合、1万2800円おトクということになります。
ちなみに、軽自動車のEVの場合、2回目の車検時以降の自動車重量税は5000円になり、エコカー減税が適用されない車と比較すると、1600円おトクということになります
〈図〉EVの自動車重量税の金額例
【あわせて読みたい記事】
▶【EVオーナー調査】「ガソリン車に戻りたい」は2%以下! EVのリアルな満足度は?
EVは購入時に納める「環境性能割」が非課税
「割」という言葉が使われていますが、環境性能割も車の税金のひとつです。購入時の取得価額※に対して課税される自動車取得税が2019年10月廃止され、その代わりに新設されました。
環境性能割は地方税(都道府県税)の一種で、地方自治体の税収となります。自動車税と同様に、現在は使用用途が定められていない一般財源となっており、税収は地域の教育や医療、警察や消防などの公共サービスや福祉などのために使われます。
環境性能割を支払うタイミングは?
環境性能割は車の購入時に納める税金です。
環境性能割の税額は何によって決まる?
普通車(自家用乗用車)の場合、納める税額は取得価額※の3%が基本となりますが、車の環境性能等に応じて税率が軽減されます。
以下は、環境性能割の税率を示す表5)です。
〈表〉普通車(自家用乗用車)にかかる自動車税環境性能割の税率
EVは表中の「電気自動車等」に入り、環境性能が高いと評価されているため非課税です。環境性能割を納める必要はありません。
※取得価額とは
「課税標準基準額」とオプション代の合計金額(1,000円未満切り捨て)です。 「課税標準基準額」は、車種やグレードをもとに算出され、おおよその目安として新車価格の90%程度とされています。
EVには税制優遇だけでなく補助金制度もある
環境性能や燃費性能が低いガソリン車と比べると税金が軽減されるEVですが、さらに購入費の一部を国や自治体が補助してくれる補助金制度も用意されています。
たとえば、国が交付する補助金では「CEV補助金」があります。ガソリン車に比べてまだ価格の高いEVやPHEVなどのCEV(クリーンエネルギー自動車)の購入を補助する制度で、2024年度のEVの補助金上限額は85万円となっています。
このほか、自治体の補助金もあります。EV購入の補助金は国と自治体の両方から受給できる場合が多いので、お住まいの自治体によっては購入費用が大幅に軽減されます。
なお、補助金の交付を受けるためには「一定期間内に購入した新車であること」「購入したEV等を一定期間手放さないこと」など、いくつかの条件をクリアする必要があります。
また、基本的に各種の補助金は予算上限に達すると受付終了となります。現在、申請を受け付けているのかどうかなど、詳細情報については以下の記事をご覧ください。
EVの税制優遇は今だけ? 購入の検討はお早めに
現状では、さまざまな税制優遇を受けているEVですが、そうした優遇措置の大半は期間を区切った時限的措置となっています。つまり、その期限が終われば以降も同様の優遇が受けられるという保証はありません。EVを所有するためのコストをなるべく抑えたいのなら、今のうちに購入の検討をしてみてはいかがでしょうか。
※本記事の内容は公開日時点での情報となります