電気自動車は充電時間が長いってホント? 充電代や走行距離も徹底解説

電気自動車の充電中にスマホを見る女性

電気自動車(EV)初心者がガソリンエンジン車との大きな違いで戸惑うのが「充電」です。ガソリンの給油に比べて「EVの充電時間は長い」と考えている人、また「電気代が高いのでは?」と不安な人も多いのでは。エンジン車からEVに乗り換えるなら「充電」について理解しておくことが大切です。EVの充電について、さまざまな視点で解説します。

注:本記事で「EV」と表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しています。ハイブリット車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)や燃料電池自動車(FCV)とは区別しています。

 

V2H導入システムの相談窓口

 

EVの充電は時間がかかる、はホント?

ポイント① EVはエンジン車とは違う

ガソリン給油ホース

画像:iStock.com/Tomwang112

電気自動車(EV)に詳しくない人から「ガソリンの給油に比べて、EVは充電に時間がかかるでしょ?」と質問されることがあります。答えは「YES!」。エンジン車がガソリンスタンドで燃料を満タンにするための所要時間が3~5分として、EVの電池が減っている状態から「ある程度」まで充電するには、急速充電器を使ってもおおむね30分程度、普通充電の場合は数時間以上かかります。

でも、それが「EVの欠点」とは言い切れません。EVの場合、自宅のガレージなど拠点となる場所で「家充電(拠点充電)」できるので、エンジン車のようにガソリンスタンドへわざわざ行かなくても走行するためのエネルギーが補給できるからです。

また、「外充電(経路充電)」(主に急速充電)も、慣れてしまえばそんなに面倒なことではなく、休憩と上手に組み合わせるなど、時間を無駄にすることなくロングドライブを楽しめるようになるコツがあります。

つまり、必ずガソリンスタンドへ出かけて給油することが必要なエンジン車と比べて、「自宅で充電できる」のがEVのメリットであり「エンジン車の使い勝手と単純に比較してEVの充電時間を考えるのは少し違う」といえるのです。エンジン車からEVに乗り換える際には、この「EVはエンジン車とは違う」ことを理解して、EVのメリットを活かして使いこなすことを考える必要があります。

ただし、都市部に多い集合住宅や賃貸の駐車場にはまだEV用充電設備の普及が進んでいないため、「自宅で充電できる」メリットを享受できないユーザーが多いのも現実です。

 

 

ポイント② いつも満充電にしなきゃいけないわけじゃない

バッテリー残量マーク

画像:iStock.com/ Ashish kamble

エンジン車で給油の際には「満タン」にすることが多いでしょう。でも、EVでは必ずしも「満充電」にすることが正解ではありません

むしろ、リチウムイオン電池の種類によっては満充電のまま長時間放置することが電池劣化の原因になるので、日常的には80~90%くらいの充電量で使いこなすのがクレバーであるとされています。

もちろん、一充電航続距離(1回の充電で走行できる距離)を明らかに超えるようなロングドライブに出かける日には、家充電で満充電にしておくのが便利です。「毎日数百kmは走行する」という人であれば、いつも満充電でスタートしたいと思うでしょうが、そのような方は多くないはず。一般的な日本のユーザーの場合、電池残量が30%を切ったら80%を超える程度まで充電しておく方法が、電池にもやさしい使い方です。

車種によっては、充電量の上限を設定できるようになっています。通勤などで毎日車を使うので、ガレージに入れたら充電ケーブルを繋いでおくという方の場合、そうした機能を活用して充電量の上限を設定したり、タイマー機能などを活用して80~90%で充電が停止するようにしておくのが賢明です。

EVの充電時間を知るための基礎知識

EVが使う電気の量の計算方法

EVが搭載するバッテリーの容量(電力量)は、一般的に「kWh」という単位で示されます。中学校の理科で習うことですが、「電力(W)」=「電圧(V)×電流(A)」であり、その電力を「1時間(h)」使用したときの「電力量」が「kWh」ということですね。つまり、200Vで15A流れるコンセントであれば、充電する際の電力(出力)は「3kW」、1時間で充電できる電力量が「3kWh」ということになります。

充電量の計算

現在、日本で市販されているEVのバッテリー容量(電力量)は10~100kWh程度です。容量が大きいEVは一回の満充電で長距離を走ることができます。でも、充電設備(コンセントや充電器)の出力は一定で、EVの性能によって基本的に変化することはないため、バッテリー容量が大きいEVほど、満充電にするためには、より長い時間が必要です。

EVの充電方法の種類

EV車充電の様子

画像:iStock.com/ deepblue4you

すでに「普通充電」と「急速充電」という用語を使って説明してしまいましたが、EVの充電時間などを理解するためには「EVの充電方法にはいくつかの種類がある」ことを理解しておく必要があります

「家充電」と「外充電」の違い

『EV DAYS』では、EV初心者の方にもわかりやすいよう、まず「家充電」と「外充電」に大別しています。

「家充電」は、そのEVの拠点となる場所での充電という意味で「拠点充電」または「基礎充電」とも呼ばれます。

「外充電」は拠点以外の充電設備を利用して行う充電のこと。高速道路のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)、一般道の自動車ディーラー、コンビニ、道の駅など、ドライブ途中で電気を補給する「経路充電」と、宿泊施設や商業施設など長時間滞在する場所で行う「目的地充電」に分類することができます。

〈図〉「家充電」と「外充電」

「家充電」と「外充電」についての図

 

「普通充電」と「急速充電」の違い

「家充電」と「外充電」はいわば「充電器の設置場所を基準とした分類」ですが、EVが搭載(対応)する「充電システム」による分類が「普通充電」と「急速充電」ということになります。

「普通充電」とは、一般家庭などにも引かれている交流電源を用いた充電です。EVの大容量バッテリーへの充電は200Vで行うことが多く、安価に設置できるコンセントタイプのほか、6kW以上の出力を発揮できる「普通充電器」やV2H機器も市販されています。

「急速充電」には、直流電源が使われます。現在、日本国内に設置されている急速充電器の出力は20~50kWが中心で、今後は50kW以上の高出力の急速充電器の設置を東京電力グループの株式会社e-Mobility Powerが進めていく計画です。

〈表〉「普通充電」と「急速充電」

種類 電源の種類 一般的な出力
普通充電 交流電源 3〜6kW
急速充電 直流電源 20〜50kW

普通充電と急速充電はそもそもの「仕組み」が異なるので、日本で市販されているEVのほとんどには、普通充電用と急速充電用、2種類の充電口が装備されています。

普通充電でも「100V」と「200V」、また急速充電には日本発の規格である『チャデモ(CHAdeMO)』のほか、欧米の『コンボ(Combo)』などの規格があります。充電口の形状などが異なるので、ヨーロッパで市販されているコンボ対応のEVを日本に運んでも、チャデモ規格の急速充電器を使うことはできません。

また、EV専門メーカーであるテスラでは『スーパーチャージャー』という独自規格の高出力急速充電器を日本を含む世界各国で増やしています。と、さらに細かく説明していくと話がややこしくなるのでこのくらいにしておきますが、EVの充電にはさまざまな種類があることを理解しておきましょう。

 

【あわせてチェックしたい】 「チャデモ」についてもっと知りたい方へ
▶︎「CHAdeMO協議会公式ホームページ」

充電方法別の充電時間

では、実際のところEVの充電にはどのくらいの時間が必要なのか、充電方法別に考えていきましょう。ポイントとなるのは「普通充電」と「急速充電」という、出力が異なる充電方法による違いです。

ただし、家充電は「普通充電」、外充電でも経路充電は「急速充電」、目的地充電には「普通充電」が適しているということはポイントとなります。つまり「普通充電」と「急速充電」による所要時間の違いや、充電する際の留意点を知っておくべき、ということですね。

Ⅰ.普通充電に必要な時間は?

EV車充電の様子

画像:iStock.com/ SimonSkafar

EVに充電できる電力量は、先に解説したとおり「電力(電圧×電流)×時間」で決まります。たとえば、200Vの電圧で15Aの電流を流せる充電設備の場合、充電の電力は「3kW」、1時間で「3kWh」を充電することができます。

充電量解説図

たとえば、バッテリー容量が40kWhのEVで、電池残量10%から100%まで満充電とするためには「40kWh × 90% = 36kWh」の電力量が必要なので「36kWh ÷ 3kW =12時間」が必要ということです。

したがって、仮に200Vで30Aの電流を流せる出力6kWの設備であれば、「36kWh ÷ 6kW =6時間」で満充電にできる計算となります。ただし、車種によって普通充電で受入可能な最大出力が異なっていますので注意が必要です。また、一般家庭で200V/30Aの電力を流すには電力会社との契約容量を見直す必要があります。ここで説明するとまた話がややこしくなるので、詳細は後述します。

〈表〉40kWhのEVを90%充電するまでに必要な時間

出力 計算式 必要な充電時間
3kW 36kWh ÷ 3kW 12時間
6kW 36kWh ÷ 6kW 6時間

 

Ⅱ.急速充電に必要な時間は?

最初に結論を示しておくと、急速充電の所要時間は「1回最大30分」が目安となります。その理由を、順を追って解説しておきましょう。

原則、急速充電器の利用は30分まで

駐車場に停まるEV

画像:iStock.com/ anouchka

急速充電の出力(充電できる電力)は、設置されている急速充電器によって異なります。2021年6月現在、日本国内に設置されているチャデモ規格の急速充電器の出力は、おおむね20~50kW程度です。単純に計算すれば、出力が20kWの急速充電器であれば、1時間で「20kWh」、出力50kWであれば1時間で「50kWh」の電力量を充電できることになります。

ただし、高出力での充電は発熱などによるバッテリーへの負担が大きいこともあり、実際には急速充電器がEVと通信で情報をやりとりして、適切に制御されるので、常に最大出力で充電が行われるわけではありません

また、国内の急速充電のほとんどの運営は「急速充電は1回30分」と決められており1)、満充電になっていなくても、急速充電器が30分で停止するように設定されています。つまり、出力20kWの急速充電器では最大で10kWh、出力50kWの急速充電器で最大25kWhが充電可能な最大電力量の目安となります。

車種・バッテリーの状況で充電時間は変化する

車の列

画像:iStock.com/ Tramino

EVの車種によって急速充電で受入可能な最大電力に制限があります。たとえば、同じ時間、同じ出力50kWの急速充電器を使っても、受入最大電力が50kWの車と25kWの車を比べると充電量は変わります。また、多くのEVが搭載しているリチウムイオンバッテリーには、満充電に近づいていくと急速充電の受入電力を抑える特性があります。

現在の日本における公共のEV用急速充電器を使った充電時間は、原則として1回最大30分です1)。充電される量に対して、充電時間が長くなっているな、と思ったら、マナーとして、みんなのインフラである公共のEV用急速充電器を占拠しすぎないようにしましょう。

ただし、テスラ『スーパーチャージャー』の場合、とくに30分の制限はありません。また、多くの『スーパーチャージャー ステーション』には複数台の充電器が設置されているので「食事をしながら1時間ほどでほぼ満充電」といった使い方をしているユーザーも多いようです。念のために補足しておくと、テスラ車以外の、チャデモ規格の急速充電に対応したEVでは、テスラ スーパーチャージャーを使うことはできません。

 

充電方法別の料金は?

EV車充電の料金について

画像:iStock.com/ deepblue4you

走行中にCO2を排出しない、いわゆる「ゼロ・エミッション」であることはEVの大きなメリットです。さらに、同じ距離を走行するために必要なガソリン代と電気代を比較すると、EVにかかる電気代のほうがエンジン車のガソリン代よりも安い、つまりコストパフォーマンスに優れているのも、EVの特長であるといえます。

Ⅰ.家充電の「電気代」

電卓と家

画像:iStock.com/ taa22

たとえば、すべて家充電で月間800km走行する場合、燃費が15km/L のエンジン車でガソリン代が130円/L であればガソリン代は6929円となります。対して、電費が6.5km/kWh のEVで家充電の電気代が25円/kWh とすると、月間の電気代は3077円。ガソリン代の半分以下で済む計算になります。

〈図〉EVとガソリン車のコスト比較(例)

EVとガソリン車のコスト比較の図

 

 

また、充電にかかる料金は契約している電気料金プランによる「電気代」ということになります。言うまでもなく、この料金は契約する料金プランや使い方によって変動します。先ほどの試算では平均的な「25円/kWh」という単価を使いましたが、工夫次第でさらにコストを安く抑えることができます。

たとえば、オール電化住宅向けの東京電力エナジーパートナーの料金プランである「スマートライフS」に加入されている方の場合、午前1時~午前6時までの時間帯の単価は17.78円/kWhと安く、月間800km走行するためにかかる電気代は2188円となります。

〈表〉スマートライフS

スマートライフS 表

※最低月額料金(1契約)。アンペアブレーカまたは電流を制限する計量器による契約(10A〜60A)

 

【あわせてチェックしたい】「スマートライフS」についてもっと知りたい方へ
▶︎「スマートライフ 電気料金のご案内」

 

また、日照時間などの条件がよければ、自宅に太陽光発電システムを導入するのもいいですね。さまざまな要素が関係するので一概には言えませんが、日常的に「太陽光発電の電気で走る」生活を実現することも可能です。ガソリンより安上がりであることがEVの魅力ではありますが、それだけではなく、電気の使い方(料金プラン)を見直し、自らのライフスタイルを進化させるきっかけになってくれるのも、EVのメリットのひとつです。

 

 

Ⅱ.外充電の「利用料金」

EV車充電の様子

画像:iStock.com/ supergenijalac

「外充電」の場合、施設ごとに定められた「利用料金」を支払って充電します。前述のように外充電には「普通充電」と「急速充電」がありますが、日本国内の多くの充電施設は『e-Mobility Power(eMP)』の充電インフラネットワークに属しており、そのシステムによって認証や課金が行われます。

全国に設置されている充電器の数は、急速充電器が約7000口、普通充電が約1万8000口(2019年時点)で、そのうちeMPネットワークで利用できる充電器は急速充電器が約6900基、普通充電器が約1万4900基(2020年12月末時点)にものぼり、充電器本体に目印となるロゴステッカーが貼付されています。

※e-Mobility Powerは2021年4月に合同会社日本充電サービス(NCS)が構築してきた充電インフラネットワークを承継したので、2021年6月現在では、以前のロゴと新しいロゴが混在しています。

 

〈図〉ロゴステッカー

ロゴステッカー

充電カードによって料金は異なる

eMPネットワークの充電器を利用するには、事前に会員登録して発行される「充電カード」が必要です。EVを市販する車メーカー各社などがeMPネットワークと連携した「充電カード」を発行しています。それぞれのカードによって月額の会費や充電器の利用料金は違います。つまり、外充電の「利用料金」は、自分が利用する充電カードの設定によって異なるということになります。

一例として、日産の充電カードサービス「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム3(ZESP3)」2)の場合、以下のような料金体系となっています。

〈表〉ZESP3の基本の料金体系

プラン名 プレミアム10 プレミアム20 プレミアム30 シンプル
プランに含まれる
充電回数※1
急速充電10回
(普通充電無制限)
急速充電20回
(普通充電無制限)
急速充電40回
(普通充電無制限)
設定なし
月額基本料金
(3年定期契約料金)
4400円
(2750円)
6600円
(4950円)
1万1000円
(9350円)
550円
充電料金※2
(急速充電器)
385円/10分 330円/10分 275円/10分 550円/10分
充電料金
(普通充電器)
どれだけ使っても0円 1.65円/分※3

※1 充電時間は10分/回。使わなかった回数は翌月に繰り越し
※2 プラン以上に使用する場合
※3 小数点以下の取り扱いによって実際の請求金額とは異なる場合があります

 

充電カードがない場合、利用料金はやや割高に

事前に会員登録した充電カードがなくてもeMPネットワークの充電器をビジターとして利用することは可能です。 その場合、各充電器にはビジター利用の方法が掲示されているので、その内容に沿って手続きをしてください。

なお、ビジターの充電器利用は緊急措置として考えられているため、料金は普通充電、急速充電ともに、充電カードによる会員料金よりも割高となっています。

eMPネットワーク以外に、大規模商業施設や自治体などが独自の設定で設置している充電スポットがあり、なかには無料で利用できる充電器もあります。

さらに、テスラでは独自に『スーパーチャージャー』と呼ぶ急速充電、『デスティネーションチャージャー』と呼ぶ普通充電のインフラ整備を進めており、独自の料金体系を定めています。また、ポルシェでもEV『タイカン』の日本導入に合わせて高出力の独自の急速充電網と料金体系を構築しています。

〈コラム〉充電スポットを探せるサービス

充電スポットの場所などについては、e-Mobility Powerが公式ウェブサイトで「充電スポット一覧」や「充電スポットMAP」を公開しているほか、eMPネットワーク以外のスポットも含めて検索できるアプリがリリースされています。また、多くの市販EVのナビゲーションシステムに各社独自の充電スポット検索機能が搭載されています。

〈表〉充電スポット検索サービス

運営元 名称 形式
e-Mobility Power 充電スポット一覧 ウェブサイト
e-Mobility Power 充電スポットMAP ウェブサイト
アユダンテ EVsmart ウェブサイト/アプリ(iOS/Android
ゴーゴーラボ GoGoEV ウェブサイト/アプリ(iOS/Android

 

1回の充電で走れる距離は?

車走行の様子

画像:iStock.com/ YuriyVlasenko

料金とともに気になるのが「EVは1回の充電でどのくらいの距離を走れるのか」ということです。その目安となる性能が、エンジン車の「燃料消費率(燃費)」にあたる「電力量消費率(電費)」です。

エンジン車の燃費は「km/L」、つまり1Lの燃料で何km走ることができるかという単位で示されます。EVの場合、カタログなどの諸元表には「Wh/km」=「1km走るためにどのくらいの電力を消費するか」という数値と、「一充電走行距離(航続距離)」が表記されています。

〈図〉電費とはなにか?

EVの電費

たとえば、日産リーフ X(40kWh)の場合、ともにWLTCモード(国土交通省審査値)として、電力量消費率が「155Wh/km」、一充電走行距離が「322km」となっています3)

エンジン車の燃費と同様に「一定のエネルギーでどのくらい走れるか」を示す電費としては、「1000 ÷ 155=6.45km/kWh」となります。

ただし、エンジン車の燃費と同様に、EVの場合もカタログ値どおりの距離を走るのは困難です。例に挙げた日産リーフXであれば、普通の人が普通に運転した際の電費は「5~7km/kWh」程度と考えておくのがいいでしょう。

おおむね電費が「6km/kWh」として、出力3kWの普通充電を行った場合、1時間で充電できる電力量は「3kWh」ですから「6km × 3kWh=18km」、1時間の充電で18km走行できるエネルギーを充電できることになります。

出力50kWの急速充電器で30分、仮に20kWhを充電できたとすると、「6km × 20kWh=120km」、30分で120km分を充電できる計算となります。

 

充電時間を気にせずEVを快適に使うコツ

さて、ここまで説明してきたように、EVの「充電」はエンジン車の「給油」とは違う意識をもつことが大切です。エンジン車の給油は必ずガソリンスタンドへ行かなければできないですが、EVの家充電は自宅のガレージで行えます。たしかに、充電には給油よりも時間がかかります。給油と同じような意識のまま充電しつつEVを活用しようとすると「時間がかかる」というストレスを感じてしまうでしょう。

充電時間を気にせずに、EVを快適に活用するためには「~しながら」とか「~のついで」に充電する工夫をすることがポイントです。「ながら&ついで」が、快適なEV充電法のキーワードです。

Ⅰ.賢明な「家充電」のポイント

EV車充電の様子

画像:iStock.com/ SolStock
ⅰ.満充電じゃなくてもいい

充電設備さえあれば、EVは自宅ガレージで充電することができます。エンジン車の場合、わざわざガソリンスタンドまで給油しに行く必要があるので、できるだけ満タンにしておきたいのが当然です。でも、家充電できるEVは、再びガレージに戻るまでの電力があればいいのです。

前述したように、常に満充電にしておくのはバッテリーにとってもあまりいいことではありません。必ずしも「満充電じゃなくてもいい」という意識への変革が、エンジン車から乗り換えた方が最初に会得すべきポイントといえます。

ⅱ.タイマー機能などを活用する

エンジン車の給油中は車の中で待ちますが、家充電は自宅で寝ている間に行うことができます。「寝ながら充電」ということですね。電気料金プランによっては、深夜の電気代がよりおトクである点もポイントです。ほとんどの市販EVは普通充電を制御するタイマー機能などを備えていますから、そうした機能を活用して賢明な家充電を実践するのがオススメです。

Ⅱ.上手な「外充電」のポイント

ⅰ.休憩のついでに充電する

EV車充電の様子

画像:iStock.com/ Volodymyr Kalyniuk

外充電には「普通充電」と「急速充電」があります。「急速充電は原則として1回30分」であることは先に説明しました。

日産リーフの例で解説したように、1回30分の急速充電で走れる距離は100~120km程度。つまり、その日計画しているドライブの距離や、次に充電するスポットまでの距離を考慮して、休憩する「ついで」に充電するようにするのが賢明です。

30分というのは、給油に比べると長く思うでしょうが、高速道路のSAでトイレに行ってコーヒーを買うとか、普通に休憩しているとすぐに経ってしまう時間です。むしろ、レストランで食事をするような際には30分では足りなくなるので、食事の途中で充電が終了するEVを移動しに行かなければいけないくらいです(充電終了後はすぐに移動するよう注意しましょう)。

ⅱ.滞在しながら充電する

EV車充電の様子

画像:iStock.com/ stellalevi

普通充電の場合も「ついで&ながら」を意識して充電するのがポイントです。たとえば、普通充電器がある宿泊施設であれば、家充電と同様に「寝ながら充電」することができます。翌日はまた長距離を走るのですから、心置きなく満充電を目指して充電できます。

レジャーや食事、ショッピングなどで出かけた場所に普通充電器があれば、そこに滞在している時間を利用して充電することができます。食事や映画で3時間を過ごせば、出力3kWの普通充電器で9kWhも充電できます。ほぼ半日を過ごすゴルフ場であれば、帰りはまた満充電で出発! というケースも多いでしょう。

日本全国にはeMPネットワークの普通充電設備が約1万4900基も整備されています。今後、EVがさらに普及するのに合わせて、さまざまな施設に「EV用の普通充電設備があるのは当たり前」になっていくことが期待されます。

ⅲ.余裕をもって充電する計画を

充電計画

画像:iStock.com/ alxpin

EVのバッテリー容量にもよりますが、大容量バッテリーを搭載したEVの場合、30分の急速充電では「20%しか回復しない」というケースもあります。ガソリンのように「空になるから給油する」という意識ではなく「目的地に到達するために必要な電力」を、余裕をもって「注ぎ足していく」のが、外充電を快適に使いこなすポイントです。

たとえば「残量が40%を切ったら最寄りのSAで休憩しながら充電する」といった考え方で、余裕をもって充電するようにしておけば、万が一立ち寄った充電スポットの充電器が故障していたり、先客がいて充電待ちになるといった場合でも、次の充電スポットへ向かうことができます。

所有するEVの一充電航続距離以上を1日で走るようなロングドライブをする際には、事前にルート上の充電スポットの場所を確認して、おおまかな充電計画を立てておくとスムーズです。あらかじめルート上の充電スポットをおおまかにでも把握しておけば、万が一の「使えない!」というトラブルにも対処しやすくなるでしょう。

車種による充電時間の違い

EVの充電時間の計算式

一定の時間で充電できる電力量(充電量)は、充電器(コンセントタイプなどの電源も含めて)の出力と、充電時間を掛け合わせる簡単な算数で求めることができます。

EVに詳しくない方が「大容量バッテリーを搭載している=高性能=充電時間も速い」といった誤解をしていることがありますが、先に説明したように、充電の速度は充電器の出力次第であって、大容量バッテリー搭載車であることは、充電性能に直接関係しているわけではありません。とはいえ、EV(車両側)の性能によって充電時間が変わることも事実です。はたして、EVの充電時間はどんな条件で左右されるのかを確認しておきましょう。

Ⅰ.充電時間を左右する2つの要素

要素①充電器の出力

充電の様子

画像:iStock.com/ joel-t

EVの充電時間を決めるのは、まず充電器やコンセントから供給できる電力=出力です。説明してきたように、EVの充電には交流電源による「普通充電」と、直流による「急速充電」がありますから、それぞれの出力について理解しておきましょう。

●普通充電の出力

普通充電の出力

まず、普通充電用の充電器や車載の充電ケーブルは、200Vに対応しているのが一般的です。100Vで充電できる車種やケーブルもありますが、「電力(W)=電圧(V)×電流(A)」で決まるので、100V電源の場合200Vに比べて同じ電流であっても出力は半分となり、EVの大容量バッテリーを充電するには倍の時間がかかることになります。

市販されているEV充電用の200Vコンセントは、15A、つまり「200V×15A=3kW」に対応しているものが主流です。

専用の充電器でも最大出力3kWの製品がベースとなっていますが、EVのバッテリーが大容量化するのとともに、6kW以上の出力をもつ製品が増えてきています。テスラが自社のEV用に用意している『ウォールコネクター』は、最大出力9.6kWの性能をもっています。

●急速充電の出力

急速充電の出力

急速充電器も機種によって最大出力が異なります

日本国内に設置されている急速充電器は日本が提唱している急速充電規格である『チャデモ(CHAdeMO)』に対応しているものがほとんどです。そのチャデモ規格にも段階があり、当初から導入された「チャデモ 1.0」という規格では最大出力が50kWでした。EVの進化に合わせて策定された「チャデモ 1.2」では200kW、「チャデモ2.0」では400kWまでの最大出力に対応しており、2020年には最大出力900kWに対応する「チャデモ 3.0」という規格を中国と共同開発することが発表されました4)

〈表〉チャデモ規格と対応する最大出力

バージョン 最大出力
チャデモ1.0 50kW
チャデモ1.2 200kW
チャデモ2.0 400kW
チャデモ3.0 900kW

現在日本に設置されている急速充電器は、当初の「チャデモ 1.0」規格に準じた最大出力50kWの機種が多いのが実状です。とはいえ、大容量バッテリーを搭載したEVの車種が増えていることから、より高出力の急速充電器へのニーズが高まっており、日産ディーラーや主要な高速道路SA・PAなどに、90kWの最大出力をもつ機種を設置するケースが多くなってきています。

また、日本の急速充電インフラ整備を進めてきた合同会社日本充電サービス(NCS)の事業を継承した『e-Mobility Power』が、今後、最大出力90kWの高出力器設置を進めていくことを発表しています。

現状の日本における急速充電インフラの状況としては、道の駅やコンビニなどには20~30kWの比較的出力の小さな急速充電器が設置されているケースが多く、高速道路のSA・PAや自動車ディーラーなどには40~50kW器が多く設置されています。そして、ことにロングドライブ途中の経路充電のために主要な高速道路のSA・PAには、より高出力の急速充電器が増えていくことが重要であり、今後増やすことが見込まれています。

〈表〉急速充電の設置場所と充電器の出力例

設置場所 充電器の最大出力(傾向)
道の駅、コンビニなど 20~30kW
高速道路のSA・PA、自動車ディーラー 40~50kW

また、テスラでは独自の高出力急速充電システムである『スーパーチャージャー』(独自規格)を全国に設置しています。スーパーチャージャーの出力は多くが120kW(一部は72kW)、最大で250kWとなっています。ただし、テスラ車しか使用することはできません。完全なEVである『タイカン』を発売したポルシェでも、最大出力150kWの急速充電器である『ポルシェ ターボチャージャー』(チャデモ規格)を開発し、全国各地の正規販売店や『ターボチャージング ステーション』への導入を進めています。

 

要素②EVの充電性能

並んだ車

画像:iStock.com/ shaunl

では、どんなEVでも普通充電であれば3kWよりも6kW、急速充電なら20kWより120kWで充電すれば充電時間が短縮できるかというと、実は、単純にそうではありません

EVを充電するとき、普通充電の場合は車載の充電システムを通じて電源(充電器)からの電力を受け入れ、急速充電の場合はEVと急速充電器が通信によって情報をやりとりしながら電力を受け入れています。

普通充電の場合、たとえば日産リーフなら、電池容量が40kWhのベースモデルは最大3kWまで。容量62kWhの「e+」なら、最大6kWに対応することができます。急速充電の場合も、40kWhモデルは最大50kWまでであるのに対して、「e+」は最大70kW程度までの高出力で充電することが可能です5)

〈図〉対応可能な充電出力例

充電出力例

現在、大容量バッテリーを搭載した海外メーカー製のEVも、日本では最大出力50kWのチャデモ規格に対応している車種が多く、90kWや120kWといった高出力の急速充電器を使っても、最大50kWでしか充電することはできません。さらに説明しておくと、独自のスーパーチャージャーでは高出力で急速充電できるテスラ車も、チャデモ規格の公共急速充電器を使用する際には専用のアダプターを接続する必要があり、このアダプターが最大50kW対応となっているため、チャデモ規格の急速充電器での性能は最大50kWとなります。

この章の冒頭で「充電器(電源)の出力(W) × 充電時間(h) = 充電量(kWh)」という計算式を示しましたが、正確には「充電器(電源)の出力」の部分に「EVの充電性能」という条件が付くということです。

充電量の正しい計算式

 

 

Ⅱ.車種別充電時間の目安

EV車充電の様子

画像:iStock.com/ tupungato

車メーカーが新型EVを発表する際、満充電までに要する時間が示されることがあります。とはいえ、充電に使う電源や充電器の出力が変われば充電時間は変わるので、あくまでも目安に過ぎないということがわかります。加えて、EVの性能として普通充電、急速充電ともにどのくらいの最大出力を受け入れられるかという充電性能も関わります。

いくつか、おもな車種を例に公表情報6-9)を確認してみましょう。

ⅰ.日産 リーフ(40kWhモデル)(バッテリー容量/40kWh)

▼普通充電による満充電までの時間

出力6kWの場合 約8時間
出力3kWの場合 約16時間

▼急速充電の目安

バッテリー残量警告灯点灯から充電量80%まで、約40分

 

ⅱ.日産 リーフ e+(バッテリー容量/62kWh)

▼普通充電による満充電までの時間

出力6kWの場合 約12.5時間
出力3kWの場合 約24.5時間

▼急速充電の目安

バッテリー残量警告灯点灯から充電量80%まで、約60分

 

ⅲ.ホンダ Honda e(バッテリー容量/35.5kWh)

▼普通充電による満充電までの時間

出力3kWの場合 約12時間

▼急速充電の目安

バッテリー残量警告灯点灯から充電量80%まで、約30分

 

ⅳ.三菱 アウトランダーPHEV(バッテリー容量/13.8kWh)

▼普通充電による満充電までの時間

AC200V/15Aの場合 約4.5時間

▼急速充電の目安

バッテリー残量警告灯点灯から充電量80%まで、約25分

 

ⅴ.トヨタ プリウスPHV(バッテリー容量/8.8kWh)

▼普通充電による満充電までの時間

AC200V/16Aの場合 約2時間20分
AC100V/6Aの場合 約14時間

▼急速充電(30分)の目安

満充電量の約80%まで、約20分

 

充電時間を短縮する方法は?

腕時計

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エンジン車の常識に照らしてEVを考えると「充電時間が長い」とか「もっと充電時間を短くできないの?」といった思いを抱く方がいるであろうことは理解できます。

ただ、ガソリンとは違い、EVのエネルギーである「電気」はさまざまな方法で生み出すことができます。再生可能エネルギーで作られた電気であれば、よりゼロ・エミッション(CO2を排出しない)な移動手段となるのがEVの最大のメリットであることを理解して、エンジン車の常識から抜け出してみるのもおすすめです。

方法①充電設備の出力を上げる

とはいえ、自宅ガレージなどに充電設備を設置できる場合、そして所有するEVが対応しているのであれば、使用する普通充電器を一般的な3kW出力から6kW以上のものに変更すれば、充電時間を短縮することが可能です。

その場合、高出力の普通充電器を設置する場所の電気の契約に注意する必要があります。たとえば、200Vで6kW出力の充電器であれば、充電中は常時60Aの電流が流れます。電気の契約には最大使える契約容量(アンペア・キロボルトアンペア)が定められていて、一般家庭の場合は40Aや50Aといったケースが多いと思われます。日常的に使用する最大容量も家庭によって異なります。使い過ぎでブレーカーが落ちて停電になることがないよう、電力会社や充電器の設置を依頼する業者などにきちんと相談して、適切な容量の電気契約を選択する必要があります。

方法②V2H機器を設置する

もうひとつ、自宅ガレージなどでの家充電時間を短縮する方法が、EVと家庭の電気系統を繋ぐ『V2H(Vehicle to Home)』機器を設置することです。

V2H機器とEVは、急速充電用のチャデモ規格の充電口を通じて接続されます。EVに蓄えた電気を家庭に供給することができるV2H機器には、逆に家庭の電気でEVに充電する機能を備えています。普通充電は3kWまでしか対応していないEVでも、急速充電の仕組みを使ったV2Hの充電では6kWで充電することが可能(ニチコン『EVパワー・ステーション®』の場合)になります。

また、V2H機器には家庭の最大電力を常時モニタリングし、それに合わせて充電可能な容量を調整する機能が備わっており、ブレーカーが落ちる心配もありません。

ただし、日本国内で発売されているすべてのEVがV2Hに対応しているわけではありません。海外メーカー製のEVはチャデモ急速充電には対応していても、V2Hにはほとんどが非対応です。また、海外メーカー製のPHEVはチャデモ規格の急速充電にも対応していません。

 

 

EVの充電時間はこの先短縮されるのか?

EV車充電の様子

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EVの普及はまだ始まったばかりです。この先、世界中のメーカーがEVの開発を進める中で、今はまだ想像もできないような進化を遂げていくことでしょう。充電時間が劇的に短縮されることも十分に想定できます。

EVの充電時間は『充電器の出力』と『EVの充電性能』によって左右されることを説明しました。まず『充電器の出力』について考察すると、自宅ガレージに停めている時間を活用する家充電では、それほど高出力の普通充電は実用的にもさほど必要ないでしょう。外充電のうち、ロングドライブの注ぎ足し充電である急速充電については、現在よりも高出力の急速充電器が増えていくことが想定できます。

『EVの充電性能』を決める大きな要因となるのが、駆動用の大容量バッテリー(現在はリチウムイオンバッテリーが主流)の性能です。あまりにも大きな出力で充電すると、バッテリーの劣化や発熱といったトラブルの原因にもなりかねません。

電解液を使わない「全固体電池」が注目されているのも、こうした電池の基本性能を向上させる可能性があるからです。

電気で走ることで、電気というエネルギーについて考えるきっかけとなってくれるのも、EVの魅力のひとつです。EV普及はまだ始まったばかり。日本でもできるだけ多くの人が、できるだけ早くEVを体感して、電気について想像を広げてみてくれるといいですね。

この記事の監修者
寄本 好則
寄本 好則

コンテンツ制作プロダクション三軒茶屋ファクトリー代表。一般社団法人日本EVクラブのメンバー。2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成。ウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開。電気自動車情報メディアや雑誌特集などに多く寄稿している。著書に『電気自動車で幸せになる』(Kindle)など。