“電気で走る車”を選ぶ際、「電気自動車(EV)」以外の選択肢として挙がるのが「プラグインハイブリッド車(PHEV)」です。とはいえ、その特徴やEVとの違いがはっきりわからないという人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、PHEVのメリット・デメリットから、充電について解説。2023年9月時点で、国内で購入できる人気車種についてもご紹介します。
※この記事は2021年12月7日に公開した内容をアップデートしています。
- PHEVとは「外部から充電できるハイブリッド車」のこと
- PHEVのメリットとは?
- PHEVのデメリットとは?
- PHEVの充電はどうする? どのように乗るのが効率的なの?
- 2023年国内で買える人気のPHEV車種一覧
- 2023年度、PHEVに使える補助金は?
- PHEVのメリットを知って自分に最適な車を選ぼう
PHEVとは「外部から充電できるハイブリッド車」のこと
まずはPHEVとHEV(ハイブリッド車)、PHEVとEVの違いを説明します。
PHEVとHEVの仕組みの違い
そもそもHEVとは、エンジンとモーターという2つの動力を利用して走行する車を指します。一方、PHEVはその名のとおり「プラグイン=プラグを挿す」ができる、つまり、外部から充電できるHEVのことを言います。というわけで、PHEVはHEVの一種なのです。
〈図〉PHEVとHEVの違い
しかし、PHEVとHEⅤは明確に区別されています。それは、外部から充電できるかどうかが使い勝手や走行コストなどに大きく影響するためです。
なお、PHEVがモーターをメインの動力として考えているのに対し、HEVは方式にもよりますがあくまでエンジンをメインの動力として考え、モーターを補助的な役割としていることが多いのも違いのひとつです。
PHEVとEVの仕組みの違い
PHEVとEVの違いは動力にありますが、厳密な定義としては、EVは“電気を動力にして動く車両=電動車両”全般を指すためPHEVもEVに含まれます。ただ、日本ではバッテリーの電気だけを使ってモーターで走る車「BEV(Battery Electric Vehicle」)」をEVと呼んでおり、本稿でもBEVをEVとして扱っています。
一方PHEVは、エンジンによる動力も持ち合わせているのが特徴です。また、エンジンで発電してバッテリーを充電しながら“電気自動車”としてモーター走行を続けることもできます。
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PHEVのメリットとは?
HEVやEVとの仕組みの違いを理解したところで、具体的にPHEVのメリットについて見ていきましょう。PHEVのメリットは主に以下の4つが挙げられます。どれも車を選ぶ上で重要なポイントとなるので、確認してみてください。
①走行コストが低い
前述のようにエンジンによる動力も持ち合わせているPHEVですが、充電した電気がバッテリーに蓄えられている間はEVとして利用できます。そのため、走行コストが低いEV走行を多くすればするほどガソリン代を抑えられるため、ガソリン車と比較して走行コストがかからなくなるというメリットがあります。
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②ロングドライブに適している
PHEVはガソリンでも走ることができるため、外出先で充電スポットを気にすることなく、安心して長距離運転を楽しめます。もしバッテリー残量がゼロになってもガソリンが残っていれば問題ありません。
また、多くのPHEVの車種で、スイッチ操作によって発電した電気を優先的にEV走行に使ったり、逆に充電に回すなどのモード切り替え機能を備えていたりすることが、大きな特徴のひとつと言えます。
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③普通充電に必要な時間が短い
同じクラスのEVに比べると搭載しているバッテリー容量が少ないため、同じ出力の普通充電器を利用した場合、EVと比べて充電時間が短いのも、PHEVの特徴のひとつです。PHEVよりも大容量のバッテリーを搭載しているEVの場合、バッテリーの充電に時間がかかるため、自動車の運用にある程度の計画性が求められます。
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④災害時に蓄電池として使用できる
PHEVの中には、V2Hに対応している車種やACコンセントが装備されている車種があり、充電した電気を災害時やアウトドアの電源として活用できます。大容量バッテリーを搭載しているのはEVですが、状況によってはエンジンで自ら発電できるPHEVの方が、災害時のリスクヘッジとして向いている場合もあります。ただし、エンジンをかけ発電する時は、騒音や排気ガスが出ますので周囲への配慮が必要です。
PHEVのデメリットとは?
続いて、PHEVのデメリットについてご紹介します。主に以下の2点が挙げられます。
①車両価格が高い
PHEVの代表的なデメリットと言えるのが、高額な車体価格です。PHEVはHEVと同様、エンジンと燃料タンクに加え、バッテリーとモーター、制御装置を組み込んでいます。エンジンのみで動く従来のガソリン車と比べ、価格が高額になるのは致し方ないところです。
また、高価なバッテリーについてみると、バッテリー容量が1kWh程度のHEVと比べて、PHEVは年々バッテリー容量が大きくなり現在は10~20kWh程度になっているというのも値段が上がる理由のひとつです。長期で見ると燃料コストは大幅にカットできますが、購入費用は高額となります。少しでもおトクに購入するためには、後述する補助金を利用するのがおすすめです。
②ガソリンが劣化する可能性がある
燃料タンクのガソリンは半年程度で劣化すると言われています。PHEVは電気で車を動かすことができ、航続距離もそれなりに長いため、街乗り程度であれば電気だけで十分走行することが可能です。そのためガソリンを入れておいても、長期間使わずガソリンが劣化してしまう可能性があります。長期間給油していないと注意表示がディスプレイに出たり、自動的にエンジンが始動してガソリンを消費したりする機能が付いているPHEVが多いため、過剰に心配する必要はありませんが、ガソリンの劣化に配慮して上手に運用しましょう。
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PHEVの充電はどうする? どのように乗るのが効率的なの?
ガソリン車とEV両方の魅力を兼ね備えたのがPHEVであり、ガソリンだけでも電気だけでも走ることができます。
ただし、充電せずにガソリンだけで走らせるということは、大容量バッテリーのメリットを活かさず、EVの魅力である走行コストの低さを享受できないことになります。また、エンジンとバッテリーの両方を搭載していて車重が重くなっているため、燃費もあまりよくない傾向があります。
一方で充電をしてEVとして乗りこなすなら、片道10〜20km程度(車種ごとのバッテリー容量によります)の通勤や買い物などの近場の移動に向いています。もちろん、バッテリーの電気を使い果たしたらエンジンに切り替えて走り続けることができるので、長距離ドライブでも不安はありません。
つまり、PHEVのメリットを最大限享受するには、いかに電気だけで走るEV走行距離を長くするかということになります。そのためには、自宅などでこまめに充電することが重要です。
2023年国内で買える人気のPHEV車種一覧
日本で購入できる代表的な車種について、「国産車」「輸入車」に分けてそれぞれご紹介します。燃費やEV走行換算距離(等価EVレンジ)なども参考にしてください。
以下、メーカーを50音順で表示しています。
l.国産車編
HEVは日本で発展した車ですが、PHEVとなるとまだまだ車種が少なく、特に国産車は限られます。その代表的なモデルを4つご紹介します。
i.トヨタ「RAV4 Z」
トヨタ「RAV4」のZグレード1)は、1994年に初代モデルを発売して以来、クロスオーバーSUVのパイオニアとして支持を得てきた「RAV4」の最新PHEVモデル。4WDによる優れた走行性能とSUVらしい力強さと洗練さを融合したデザインが特徴です。また、バッテリー容量が18.1kWhあり、モーターのみで走れるEV走行距離が95km(WLTCモード)を記録するという長い航続距離も魅力でしょう。ただし、急速充電やV2Hには対応していません。
参考資料
1)トヨタ「RAV4 Z」
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ii.トヨタ「プリウス Z」
トヨタ「プリウス」のZグレード2)は、1997年に世界初の量産ハイブリッド車として誕生したプリウスの最新PHEVモデルです。バッテリー容量は13.6kWhで、プラグインハイブリッドシステムの効率化によりEV走行距離は87km(WLTCモード)と十分。ガソリンで走っても燃費は26km/L(WLTCモード)と低燃費が特徴です。
ルーフにソーラーパネルが付き、太陽光で発電した電気を充電することができる「ソーラー充電システム」がオプション設定されています。なお新型になり、急速充電やV2Hには対応しなくなりました。
参考資料
2)トヨタ「プリウス Z」
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iii.三菱「アウトランダーPHEV」
「アウトランダーPHEV」3)は、世界約60カ国で販売している三菱の主力モデル。2021年12月に販売をスタートした新型は、モーター出力の向上とバッテリー容量の増大により、いっそうの力強い走りとEV走行距離の伸長が実現しました。具体的にはバッテリー容量が13.8kWhから20kWhへ増え、EV走行距離も87km(WLTCモード)と大幅に延びました。
また、プラットフォームの一新とコンポーネントの一体化、そして一部のグレードではレイアウトの最適化によって3列7人乗りを実現しており、利便性も向上しました。2021-2022年日本カー・オブ・ザ・イヤーで「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。急速充電の最大受入能力が向上するとともに、急速充電時間が短縮されたのもうれしいところです。もちろんV2Hにも対応しています。
参考資料
3)三菱「アウトランダーPHEV」
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iv.三菱「エクリプス クロスPHEV」
三菱「エクリプス クロスPHEV」4)は、前述のアウトランダーPHEVと同様に、ツインモーター4WD方式のPHEVシステムを採用。スタイリッシュなクーペフォルムとSUVの機動力を融合させた一台で、新型は伸びやかで流麗なフォルムながら、SUVとしてのダイナミズムを高めたデザインとなっています。
バッテリー容量は13.8kWhでEV走行距離は57km(WLTCモード)です。急速充電やV2Hにも対応しています。
参考資料
4)三菱「エクリプス クロス」PHEVモデル
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ll.輸入車編
2023年9月現在、輸入車メーカーが日本で販売するPHEVは国産車よりも車種が豊富です。その中からここでは4車種をご紹介します。
以下、メーカーを50音順で表示しています。
i.BMW「330e」
BMW「330e」5)は、スポーツセダンの金字塔「BMW 3シリーズ」に、同社の革新的な電動化技術「eDrive」を導入したモデル。BMWならではの卓越した運動性能と高い環境性能を両立し、走り出しから快適な加速感を楽しむことができます。バッテリー容量は12kWhでEV走行距離は56.4km(WLTCモード)となっています。
参考資料
5)BMW「330e」
ii.BMW「X5 xDrive50e」
電気モーターだけのゼロ・エミッションで走るEV走行距離で110.3km(WLTCモード)を達成したBMW「X5 xDrive50e」6)。この航続距離に大きく貢献したのが、すべてのテクノロジーを巧みに連携させる「インテリジェント・エネルギー・マネジメント・システム」です。電気モーターと内燃エンジンを相互に制御し、パフォーマンス向上と最大限の効率化を果たしました。バッテリー容量は29.5kWhと大容量です。
参考資料
6)BMW「X5 xDrive50e」
iii.ポルシェ「カイエン S E-ハイブリッド」
ポルシェのSUV「カイエン」において、サステナビリティとドライビングダイナミクスを融合させたPHEVが「カイエン S E-ハイブリッド」7)です。燃料消費量とエミッションの排出量を大幅に低減させる一方で、スポーツカーの雄・ポルシェならではの、シートに体が押し付けられるような強烈な加速を味わえます。バッテリー容量は25.9kWhとなっています。
参考資料
7)ポルシェ「カイエン S E-ハイブリッド」
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iv.MINI「MINI COOPER S E CROSSOVER ALL4」
「MINI COOPER S E CROSSOVER ALL4」8)は、MINIの国内ラインナップで唯一のPHEV。4輪駆動システムが、あらゆる路面で優れたグリップ力を発揮し、都市の街路と郊外の道、どちらも難なく走りこなすオールラウンダーモデルとなっています。考え抜かれたデザインと精密なエンジニアリングで、パワーと効率を両立しています。バッテリー容量は10kWhでEV走行距離は53km(WLTCモード)となっています。
2023年度、PHEVに使える補助金は?
環境対応車(※)に給付されるCEV補助金の対象車には、EVだけでなくPHEVも含まれています。2023年度は、国によるPHEV補助金の上限額は55万円です。自治体との補助金の併用もできますので上手に使いましょう。
※:「低公害車」や「エコカー」とも呼ばれ、環境への負荷が小さい車の総称のこと。
なお、2023年度のPHEVの補助金や助成金について以下の記事で詳しく解説しています。あわせて確認してみてください。
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PHEVのメリットを知って自分に最適な車を選ぼう
エンジンとモーターを併用するPHEVとモーターだけで動くEVは、動力やバッテリー容量の大きさの違いによって、充電やランニングコストにおけるメリットが異なります。両者のパフォーマンスを最大限に活かすためにも、それぞれの特性をしっかり理解して自分のライフスタイルに合った車を選びましょう。