【図解】いまさら聞けないIHの仕組みとは?使える調理器具やメリットも解説

IH仕組み

近年、オール電化住宅の普及が進み、IHクッキングヒーター(以下、IH)を導入する家庭も増えてきました。今までガスコンロを使っていた方からすると、「IHはどんな仕組みで加熱されるの?」「ガスコンロよりも省エネになるって本当?」と疑問に感じることでしょう。実は、IHの仕組みを理解できると、IHのメリットや使用する調理器具の選び方について理解を深めることができます。この記事を通して、IHの仕組みや使える・使えない調理器具、メリットなどを知っていきましょう。

 

この記事の監修者

藤山 哲人

藤山 哲人

あらゆる家電を使い込んで比較して、性能を数値やグラフにする技術系家電ライター。『マツコの知らない世界』では番組史上最多の6回(TBS系)の出演を果たしたほか、出演番組100本以上。「家電Watch」「文春オンライン」「現代デジタル」などのWeb媒体やラジオのレギュラーを持つ。

 

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【図解】IHクッキングヒーターの仕組み

まずは、IHはどのような仕組みによって調理するのか、基本を解説します。

そもそも、IHってどういう意味?

IH 意味

 

IHとは「インダクションヒーティング(Induction Heating)」の略称で、日本語では「電磁誘導加熱」と訳されます。これは、電気によって磁力線(磁場)を発生させ、IHのガラス製トッププレート上に置かれた鍋やフライパンなどの調理器具を発熱させる、というIHの仕組みを意味する名称です。

このIHの仕組みについて、より詳しく見ていきましょう。

なぜIHで加熱できる? 電気を使って加熱する仕組み

なぜIHは、ガスコンロのような炎がなくても加熱できるのでしょうか? IHの構造を見てみると、非常にシンプルであることがわかります。

〈図〉IHを横から見た模式図

IHを横から見た模式図

 

トッププレートと呼ばれるツルツルとした結晶化ガラスの下に、コイルが仕込まれているだけです。このコイルに電気を流すことで、調理器具が発熱する仕組みとなっています。ちなみに、以下はIHのコイルを抜き出した写真の一例になります。コイルの形や設置位置をメーカー各社工夫しています。

IH コイル

 

ただ、なぜ電気を流せば調理器具が発熱するのか、不思議ですよね。電気を使ってどのように発熱させているのか、その仕組みについて順を追って見ていきましょう。

①コイルに電気を流すと磁力が発生し、その結果電磁誘導(フレミング左手の法則)により渦電流が発生する

IH 仕組み

 

IHのガラス製トッププレートの下のコイルに電気を流すと、コイルから磁力線(磁場)が発生します。

この磁力線はトッププレートを介して、上に置かれた鍋やフライパンなどの調理器具の底面に当たります。このときに調理器具の底面で生まれるのが「渦電流」と呼ばれるものです。

②渦電流が発生して鍋の底に電気が流れ、鍋の素材「鉄」の抵抗(電気の流れを阻害しようとする力)で発熱する

IH 仕組み

 

生まれた渦電流が鍋の材料となっている鉄などに流れます。一方、鉄には電気ストーブなどで使われるニクロム(線)という金属と同じように、流れようとする電気を阻害する抵抗があります。

人が“おしくらまんじゅう”すると熱くて汗が出るのと同様、流れようとする「電気」とそれを阻害しようとする「鉄の抵抗」が押し合いをするので、鍋の各所にできる渦電流がそれぞれ発熱。その結果、鍋やフライパンの底面に熱が発生し、その熱で調理ができる、というわけです。

なお、渦電流はIHに仕込まれたコイルの形に発生し、その部分が発熱します。上から見ると、以下のようなイメージになります。

 

IHによる鍋の加熱をサーモグラフィーカメラで映したときのイメージ

IHによる鍋の加熱をサーモグラフィーカメラで映したときのイメージ

 

このように、IH自体は発熱しておらず、トッププレートに置かれた鍋やフライパンの底面部を中心に発熱していることがわかります。調理器具の底面の電気抵抗によって発熱するため、IHの電源が入っていても、トッププレートに鍋やフライパンなどが置かれていなければ発熱しないのです。

また、調理器具の底面部が発熱するため、鍋やフライパンの取手や持ち手も熱くなりにくいという特徴も、IHの仕組みならではと言えるでしょう。

IHとガスコンロの仕組みの違い

IHとガスコンロの仕組みの違い

 

ガスコンロは、メタンガスまたはプロパンガスを燃やして炎を発生させることで、コンロの上に置かれた鍋やフライパン、さらにその中の食材を加熱します。

IHが磁力と電気抵抗で調理器具自体が発熱するのに対して、ガスコンロは炎で調理器具を加熱するという点が異なります。

また、IHは調理器具の底面を通じて食材に熱が伝わりますが、ガスコンロは炎によって熱された空気も鍋やフライパンの全体を加熱します。そのため、ガスコンロを使用すると、調理器具の取手や持ち手部分も熱くなりやすいのです。

 

【ミニコラム】IHから発生する電磁波って、体に悪いの?

IHは電気を流すという仕組み上、磁気が働く空間である「磁界」が発生します。これは一般的に「電磁波」と呼ばれるもので、「何となく体に悪そう」とイメージする方もいるかと思います。

しかし、一般財団法人 電気安全環境研究所(JET)のデータ1)によると、IH使用時に発生する電磁波の周波数は20~90キロヘルツ(kHz)で、ラジオや携帯電話、テレビなどの一般的な生活環境で使用する電気機器と同等レベルにあるため、健康に影響を及ぼすことはないと考えられています。

 

 

IHで使える調理器具・使えない調理器具

ここからは、IHで使える調理器具と使えない調理器具について、それぞれ詳しく見ていきましょう。調理器具の材質や形状、大きさから、IHで使えるものとそうでないものの見分け方を解説します。

Ⅰ.IHで使える調理器具の特徴

まずは、IHで使える調理器具の特徴を紹介します。ここでは、調理器具の「材質」「底面の形」「大きさ」の3点に着目して、どのような調理器具ならIHで使えるのかをまとめました。

〈図〉IHで使える調理器具の特徴

IHで使える調理器具の特徴

 

ⅰ.【材質】鉄・ホーロー

鉄やホーローなど、磁石がくっつく材質でできた鍋やフライパン、やかんなどの調理器具は、基本的にどのIHでも使うことができます。一方で、ステンレス(磁石がくっつかないもの)や銅・アルミの調理器具は一般的なIHでは使用できませんが、オールメタル対応のIHでは使用可能です。オールメタル対応のIHについては、後述します。

ⅱ.【底の形】平らでトッププレートに密着するもの

IHは、トッププレートを通して鍋やフライパンの底面自体が発熱します。そのため、底面が平らで、トッププレートに密着する調理器具である必要があります。

ⅲ.【大きさ】左右IHは底径12~26cm、後ろIHは底径12~18cm(目安)

調理器具の大きさは、トッププレートに密着する底面の直径から判断しましょう。それぞれのIHの規格にもよりますが、加熱スペースが3つあるIHの場合、左右のIHは底径12~26cm、後ろのIHは底径12~18cmがひとつの目安となります。

ただし、メーカーは、一般的な大きさの鍋やフライパンを調べてIHを作っているので、そこまで気にしすぎる必要はないかもしれません。

例外として、調理器具の大きさを気にしたほうがいいのは、自動調理機能を使うときです。最近のIHでは、揚げ物を作るときに「180℃に設定する」など、火加減を自動でコントロールしてくれる便利な機能が搭載されています。このような機能を使用する際には、調理器具の温度を調べるセンサーも併用しているため、調理器具が大きすぎたり小さすぎたりすると、正しく温度を感知できない可能性があります。自動調理機能を使う場合には、説明書に明記されている大きさの調理器具を使いましょう。

Ⅱ.IHで使えない調理器具の特徴

続いて、IHで使えない可能性の高い調理器具について確認しておきましょう。使える調理器具と同様に、「材質」「底面の形」「大きさ」それぞれの特徴をご紹介します。

〈図〉IHで使えない調理器具の特徴

IHで使えない調理器具の特徴

 

ⅰ.【材質】土鍋・耐熱ガラス・陶磁器(セラミックス)

土鍋や耐熱ガラス、陶磁器(セラミックス)は、磁力と金属による電気抵抗が起こらない材質のため、IHで使用することはできません(ただし、後述するIHに対応した土鍋などは除きます)。

なお、詳しくは後述しますが、アルミ製の調理器具を使えるかどうかは、IHの種類によって変わってきます。

ⅱ.【底の形】底面がトッププレートに密着しないもの

底面に反りがある鍋や脚が付いているタイプ、底が丸いものなど、底面がトッププレートに密着しないものや、トッププレートと接触する面積が小さいものは、IHの仕組み上、うまく発熱できないため、使用することができません。

また、もし発熱できても、トッププレートと調理器具の底面が密着しない場合、温度を検知するセンサーが正常に働かず、自動調理機能が使えなかったり、安全機能が正常に作動しなかったりする場合があるため、使用は避けましょう。

なお、底面部の表面が剥がれかけた鍋やフライパンも使用しないようにしましょう。鍋底が剥がれかけた状態で加熱した場合、剥がれた部分が異常に発熱してしまい、トッププレートのひび割れや変色の原因となる可能性があります。

ⅲ.【大きさ】左右IH・後ろIHともに底径11cm以下(熱効率が下がる可能性あり)

左右IH、後ろIHいずれも、底径11cm以下の小さい鍋やフライパンは、底面から上手く熱が伝わりにくく、熱効率が下がる可能性があります。

「使える・使えない」の判断ポイントは、IH本体の種類と調理器具の性能

IHで使えるまたは使えない調理器具は、基本的にはここまで紹介した考え方で選んで問題ありません。しかし、最近はIH本体の進化や調理器具の性能向上という背景もあり、IHで使える調理器具の種類は増えてきています。

一般的に販売されている調理器具の場合、「IH対応」か「オールメタル対応」かが、表記されていることがほとんどです。そのため、調理器具選びで悩んだときは、お使いのIHの種類や調理器具の性能を確認し、どのような調理器具が使えるのか、あるいはIHに対応しているかを確認することをおすすめします。

IHの種類によってはアルミ製調理器具も使用可能

従来のIHでは、アルミ製の調理器具は電気抵抗が小さいため使用できませんでした。しかし、「オールメタル対応」という、アルミにも対応できるIHも登場しています。

IH対応の土鍋も登場している

調理器具も、IH対応のものが増えています。たとえば、通常の土鍋はIHで使用できませんが、底面に鉄製プレートが付いていたり、鉄をはめ込んであったりするIH対応の土鍋は使用できます。

ガスコンロより何がいい? IHの7つのメリット

最後に、IHを導入するメリットについてご紹介します。ガスコンロとの違いも比較しながら、IHならではの魅力を見ていきましょう。

メリット①正確に火力調整できる

IH 調理の様子

画像:iStock.com/nerudol

 

IHの火力や温度は、コイルに流す電力量によって調整できます。電子制御となるため、IHの操作パネル上では「1~10(1はとろ火、2~3は弱火、4~6は中火、7~10は強火)」など、数字を目安にきめ細やかに火力調整できるようになっているのが一般的です。ボタンで簡単かつ正確に火力をコントロールすることができます。

また、温度センサーを内蔵しているので、一定以上の温度にならないような調整なども可能です。さらに自動調理機能で、はじめは強火、10分したら中火で30分、1時間とろ火にするなど、火力と加熱時間を自動でコントロールできる場合もあり、とても便利です。

一方、ガスコンロは、ガスの量や火加減を目で確認しながら、手動で調整するタイプが多いです。揚げ物などを作るとき、ガスコンロはこまめな火力の調整が必要ですが、IHなら正確かつ手軽にコントロールできるでしょう。

メリット②効率よく加熱調理できる

周辺の空気を熱して加熱するガスコンロと比べて、熱効率に優れているのもIHのメリットと言えるでしょう。

IHは鍋底自体が発熱する仕組みのため、無駄なエネルギー消費をすることなく食材に熱が伝わります。IHの熱効率は約90%2)と非常に高く、電気エネルギーのほとんどを熱エネルギーにして調理に生かすことができるのです。

 

 

メリット③便利な自動調理機能・アシスト機能が付いている

IH 機能

画像:iStock.com/ baloon111

 

機種にもよりますが、IHには多彩な自動調理機能や火加減のアシスト機能が備わっていることが多いです。

たとえば、揚げ物のときに揚げ油の温度を自動で一定に保ってくれるように火加減を自動でコントロールしてくれたり、ホットケーキを何枚焼いても同じ焦げ色に仕上げてくれたり、ハンバーグや餃子などに最適な火加減に調整してくれたりします。

また、グリルも進化してIHタイプも登場しています。従来のグリルは電熱線ですが、最新型ではより細かな火力の調整が可能です。冷凍肉から調理しても、自動で解凍して調理してくれるなど、とても便利になっています。

メリット④火災などのリスクが低い

ガスコンロと異なり、火やガスを使わないIHは、衣服への着火や周辺への火の燃え移りなどの火災リスクが低く、一酸化炭素中毒の心配もないなど、比較的安全性が高いと言えます。小さな子どもや高齢の方でも安心してキッチンに立てるでしょう。

メリット⑤光熱費を抑えられる

IHメリット

画像:iStock.com/ fizkes

 

先ほども触れたようにIHは熱効率に優れるため、ランニングコストも抑えられます。効率よく調理することで省エネにつながり、光熱費の節約が期待できます。

メリット⑥夏場の調理も快適

火を使うガスコンロの場合、夏場は熱気で調理に苦労するということも珍しくありません。

その点、IHは火を使わないため発生する熱も少なく、夏場も快適にキッチンに立つことができます。冷房の設定温度も下げずに済めば、省エネ効果も期待できるでしょう。また、火を使わないため扇風機を使用しても安心です。

メリット⑦お手入れがしやすい

IHメリット

画像:iStock.com/simpson33

 

IHは、凹凸が多いガスコンロとは異なり、天板もグリルもフラットな構造です。お手入れは布巾などでさっと拭くだけのため、毎日の掃除も非常に簡単です。

また、火を使わないIHは燃焼に伴う水蒸気が発生しないという特徴もあります。ガスコンロを使用するキッチンよりも結露やカビが生じにくく、衛生的に使用できます。

さらに、燃焼ガスによる上昇気流がなく、油も飛び散りにくいため、換気扇や壁も汚れにくくなります。IH周りが汚れにくいため、スペースを有効活用することもできるでしょう。

IH導入時に気をつけたい! 3つの注意点

とても便利なIHですが、導入する場合の注意点について3点ほど紹介します。

注意点①電気工事が基本必要

ひとつめの注意点は、IHを導入する場合、IHのあるキッチンに200Vの電源を増設する工事が必要なことです。工事内容はIH専用のブレーカーや配線、コンセントの設置です。

注意点②グリルの位置が左右どちらかに寄ることが多い

IHの多くは、グリルが右左どちらかに寄っていて、ガスコンロのような中央配置は少ない傾向にあります。あまり意識しないかもしれませんが、キッチンの間取りに影響するので注意しましょう。これはIHの構造特性上、左右どちらかに電気回路をまとめて格納することが多いのが理由です。なお、中央配置のIHもありますが、メーカーが限られてしまいます。

注意点③調理方法が制約される場合がある

多くのIHの場合、チャーハンなどを作ろうと鍋を煽る動作をすると、IHが「鍋が外れた」と認識して、安全のためしばらくすると通電を止めてしまいます。また、鍋を頻繁に振ると、鍋を持ち上げている間は加熱されないので温度が低くなってしまう、という難点があり、調理方法が制約を受ける場合があります。

ただし、サーモカメラのような赤外線式の温度センサーを搭載しているIHでは、鍋底から出る赤外線をより素早く高い精度で検知できるため、鍋振りや材料投入等での温度低下をいち早く感知し、すぐに火力を調整することができます。中華好きな方は、そういった機能を搭載したメーカーのIHを選んでもよいでしょう。

IHの仕組みを理解して調理の効率化と省エネにつなげよう

IHは快適かつ安全な調理環境を実現するだけでなく、仕組みを把握して上手に使用することで、省エネや光熱費の節約にもつながります。

IHに限らず空調や給湯なども含めてオール電化にすれば、自宅で使うエネルギーを電気に一本化でき、ガス料金がなくなるので、光熱費のランニングコストを抑えられます。電気の使い方を見直して、エコでおトクな暮らしを始めてはいかがでしょうか?

 

 

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※1 IHは「エネカリ」のみの取り扱いとなります。
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この記事の著者
EV DAYS編集部
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