電気自動車(EV)への乗り換えを検討した方にまず浮かぶのは、「EVの充電はどのようにするものなのだろう?」という疑問でしょう。そこで、EV充電の仕組みや、充電を行う場所、料金、そして充電スポットの使い方まで、EV充電の基礎知識を網羅的にご紹介します。
- EV充電の仕組み
- 電気自動車(EV)はどこで充電する?
- 電気自動車(EV)の充電スポットはどこにある?
- 電気自動車(EV)の充電は2種類
- 充電スポットの基本の使い方
- 自宅での充電設備の設置方法・費用の目安
- 電気自動車(EV)の充電料金の目安
- 充電スポットの3つのトレンド
- 電気自動車(EV)の充電を理解して、快適なEVライフを!
EV充電の仕組み
EVの充電自体はとても簡単です。EVの充電口に充電器を差し込めば、すぐに充電することができます。
ただし、多くのEVには充電口が2つあり、使い分けることが必要です。「普通充電用」と「急速充電用」の充電口に分かれていて、普通充電は交流(AC)電源で、急速充電は直流(DC)電源を用いて充電します。普通充電に比べて、急速充電は大きな出力の電力を用いて、速いスピードで充電することができます。
〈図〉EV充電の仕組み
なお、EVを充電するには大きな電力を必要とするため、普通充電・急速充電のどちらでも専用の充電設備が必要です。
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電気自動車(EV)はどこで充電する?
EV充電はおもに3つの場所で行います。
①自宅(基礎充電)
基本は、拠点となる「自宅」での充電です。ガソリン車と異なり、充電設備があれば、外出しなくても充電できるのが、EVのメリットのひとつです。自宅充電のことを“EV運用の基礎となる充電”という意味で「基礎充電」とも表現します。
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②外出先の充電スポット(経路充電)
2つめの充電場所は、自宅以外の充電スポットです。普通車EVの航続距離(1回の満充電で走行できる距離)は300〜700kmほどです。満充電にしておけば、ほとんどの場合、充電せずに自宅に戻ってこれるでしょう。しかし、ロングドライブになれば、当然バッテリーを使い切ってしまうこともあります。
その場合は、高速道路のSA・PAやコンビニなどにある充電スポットを利用しましょう。具体的にどのような場所にあるのかは後述します。外出先の充電スポットは、目的地に到着するまでの“経路”で行うため、「経路充電」と表現します。
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③旅行先の宿泊施設など(目的地充電)
3つめの充電場所は、旅行先の宿泊施設などです。“目的地”で行う充電のため、ここでの充電は「目的地充電」と表現されることがあります。
電気自動車(EV)の充電スポットはどこにある?
前述のとおり、EVは拠点となる自宅を中心とする充電が基本です。しかし、外出先や目的地で充電スポットはどのような場所にあるのでしょうか? また、どのように探せばいいのでしょうか? この項目では、充電スポットの具体的な場所と探し方をご紹介します。
充電スポットの目印は「CHARGING POINT」マーク
外出先で充電スポットに寄りたいと思ったら、以下の「CHARGING POINT」と記された看板を探しましょう。
〈図〉急速充電器用案内サイン
普段は目にしないと思っても、探してみると多くの充電スポットがあることがわかります。
代表例1:高速道路のSA・PA
ロングドライブをするとき、最も利用頻度が高いのは、高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)の充電スポットでしょう。高出力の急速充電器が設置されているケースが多く、短時間で多く充電できるのが魅力です。一方で、大型連休などではEVが充電スポットに集中し、充電待ちになってしまう“充電渋滞”と呼ばれる現象が発生することがあります。
代表例2:自動車販売店
自動車販売店、いわゆるディーラーも代表的な充電スポットがある場所です。EV販売を行っているメーカーの販売店では、EV充電器が設置されているケースが多くあります。
自分の車と異なるメーカーの販売店だと寄りにくいかもしれませんが、「CHARGING POINT」マークがあれば、公共に開放している充電スポットなので、気にせずに利用して大丈夫です。
代表例3:コンビニや商業施設
コンビニやショッピングセンターなどにも数多くの充電スポットがあります。買い物のついでなどに充電することができるので便利です。
代表例4:ホテル、旅館
近年、EV利用者が増えるに従って、充電器を設置するホテルや旅館が増えてきました。
ただし、充電器が設置されていても1〜2口というケースが多いため、宿泊先で利用したい場合には「充電器があるかどうか」「充電器の予約ができるかどうか」を事前に確認することをおすすめします。
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充電スポットはアプリで探すのが便利
代表的な充電スポットがある場所をご紹介しましたが、車を走らせながら目視で探すのは骨が折れますし、その充電スポットが望むような充電方式であるかどうかは運次第になってしまいます(普通充電と急速充電の違いは、後述します)。
そんなときに役立つのが、充電スポットアプリです。東京電力グループの充電サービス事業者「e-Mobility Power」もスマホアプリ(iOS/Android)を提供しており、充電スポットの場所や充電方式、充電出力、そして現在利用されているかどうかを知ることができます。
EV自体にも車載ナビに充電スポットを探す機能がついている場合が多いですが、利便性の高いアプリが多いため、EVで遠出するときはアプリも併せて活用するといいでしょう。
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電気自動車(EV)の充電は2種類
ここまでEVを充電できる場所についてご紹介してきましたが、本項目ではEV充電の種類についてご紹介します。
普通充電と急速充電の違い
EV充電には、普通充電と急速充電という2つの種類があります。その名のとおり、「普通充電」よりも「急速充電」のほうが充電できるスピードが速いです。
そのため、長時間を確保できる自宅や宿泊先などでの充電では「普通充電」を、目的地に到着するまでの充電スポットでの充電では「急速充電」を用いるのが基本です。
普通充電とは
おもに単相交流200Vの電源で行う充電のことで、出力は3kWや6kWが一般的です。EVバッテリーへの負荷が少なく、また充電コストも安価です。
急速充電とは
交流電源を使う普通充電と異なり、直流の電源を使用します。普通充電に比べて高出力かつ短時間で行う充電方式です。普通充電に比べるとEVバッテリーへの負荷が大きく、充電コストも高めです。
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充電スポットの基本の使い方
目的地までの経路充電や、目的地充電においては、充電スポットを利用することになります。専用の充電器を用いるため、その基本の操作手順を覚えておくといいでしょう。充電スポットで充電を開始・終了するには、以下の手順で行います。
〈図〉充電を開始するときの手順
〈図〉充電を終了するときの手順
なお、普通充電器の場合は利用時間の制限がありませんが、急速充電器の場合は、1回30分の利用が原則となっています。
【注】充電スポットを利用するときのマナー・注意点はコチラの記事をご参照ください。
充電スポットの利用には充電カードが必要
前述のように、多くの場合、充電スポットで充電器を利用する際には、「充電カード」が必要です。充電カードには、「e-Mobility Powerカード」のような充電インフラ事業者が発行するカードのほか、自動車メーカーが発行しているカードなどが存在します。
充電カードが不要な充電スポットもある
ただし、近年はEV充電サービスの多様化が進んでいて、充電カードを必要としない充電器も増えています。スマホアプリで認証〜決済までを完結できるものもありますので、気になる方は調べてみることをおすすめします。
自宅での充電設備の設置方法・費用の目安
多くのEV所有者の利用頻度がもっと高くなるのが、自宅での充電でしょう。ただし、戸建住宅と集合住宅で状況が異なるため、それぞれの状況に合わせて、必要な情報を把握しましょう。
自宅に充電設備をつけるメリット
そもそも、自宅に充電設備をつけるメリットは、金銭面と手間の2つが挙げられます。
自宅に充電設備をつけた場合、とくに戸建住宅では、充電コストは非常に安く抑えられます。設定条件にもよりますが、ガソリン車と比較すると2分の1程度の試算結果になります。また、充電するために外出する必要がなくなるため、EVのメリットを最大限享受することができるようになることもポイントです。
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戸建住宅での充電設備工事・費用感
戸建住宅の場合、充電設備の導入は比較的安価に行えますし、そこまで難しくありません。
①コンセントタイプ
最も安価に設置できるのはコンセントタイプです。単なるコンセントなので、EVの車載充電ケーブルを都度取り付けて充電する必要がありますが、本体が5000円程度、工事費を含めて10万円程度を目安に設置することができます。
なお、EV DAYSでは、コンセントタイプの施工の様子をコチラの記事で紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。
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②V2H機器
充電設備の選択肢として、V2H(Vehicle to Home)という機器もあります。V2Hを導入すると、家と車で電気の行き来ができ、EVを蓄電池代わりとして利用できるようになります。
また、通常の普通充電と比較して、充電速度が2倍(出力6kW)になるため、大容量バッテリーを搭載したEVを購入した方にとっては大きなメリットになるでしょう。
V2Hの機器と設置工事の合計費用は85万〜180万円程度かかるため、安価とは言えませんが、補助金などを利用して賢く導入する方法はあります。
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集合住宅での充電設備工事・費用感
集合住宅で充電設備を新たに導入する場合は、一定のハードルがあります。なぜなら個人の判断で設置することはできず、管理組合などで住民全体の合意を得る必要があるからです。
なお、導入費用の目安は充電器1基あたり50万~150万円程度がかかるとされています。今後、EVの充電設備が標準で備えられたマンションが増えていくと思われますが、現状では、既設の集合住宅へ充電設備を導入する場合にはかなりの労力がかかることが少なくないので、理解しておきましょう。
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電気自動車(EV)の充電料金の目安
一般的に、EVの充電料金はどれだけかかるのでしょうか? 充電にかかる時間の目安とともに、確認していきましょう。
自宅充電の場合
自宅充電の場合、充電時間は数時間〜十数時間かかるのが一般的です。その代わり、安価に充電できます。バッテリー容量の大きさによりますが、1回あたり数百円〜2000円程度の電気代で満充電にすることができます。
充電スポットの場合
充電スポットを利用する場合、基本的に数千円程度の月会費を支払って自動車メーカーなどが発行する「充電カード」を所有する必要があり、普通充電は数円/分、急速充電は数十円/分程度の料金をその都度支払うことになります。
普通充電を利用する場合は、自宅充電と同じで充電時間は数時間〜十数時間かかりますが、急速充電の場合は原則として1回30分となります。
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充電スポットの3つのトレンド
EV購入に踏み切れない理由のひとつとして、「充電スポットが少なく、使い勝手がよくない」といわれることがあります。しかし、充電スポットは年々増加するだけでなく、その内容も充実してきています。ここでは3つのトレンドをピックアップして紹介しましょう。
年々、充電スポットは増加
ゼンリンによれば、公共用充電設備は全国で約3万2000口が設置されており、2024年3月時点で急速充電器が約1万口、普通充電器(目的地)が約2万2000口の内訳となっています1)。さらに、国は2030年の設置目標を現在の10倍にあたる30万口と発表しています。今後も充電スポットの数は増えていくことでしょう2)。
高速充電可能な充電スポットが増加
ここ数年の充電スポットのトレンドは高速充電化です。急速充電器が高出力化することで、同じ30分間でも多くの充電ができるようになり、利便性を高めています。
多台数対応の充電スポットも増加
前述のとおり、高速道路のSA・PAでは、大型連休などを中心に「充電渋滞」という呼ばれる現象が発生していました。そこで、今後のEV普及も見越して多台数対応の充電スポットが増えています。
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電気自動車(EV)の充電を理解して、快適なEVライフを!
これまでガソリン車に乗ってきた方は、EV充電に慣れるのに少し時間がかかるかもしれません。ガソリン補給なら数分で終わっていたものが、普通充電では数時間〜十数時間かかりますし、そもそも自宅を拠点とした考え方に変わるからです。
しかし、EV充電をよく理解し、その方法に慣れてくれば、自宅で充電できることの快適さやコストメリットを十分に享受できるようになるでしょう。EV購入を検討されている方は、充電のことをよく理解して、快適なEVライフを実現してみてください。
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