【集合住宅×太陽光】初期費用ゼロ円で実現する、新世代アパートのつくり方

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2025年4月から東京都や神奈川県川崎市において新築住宅への設置義務化が開始されるなど、建物への太陽光発電設置の流れが加速しています。しかし、小規模集合住宅(アパート)では物件オーナーさんの費用負担や管理に課題があり、導入が進まないケースも少なくありません。そんななかスターツグループと東京電力エナジーパートナーによる「新しい取り組み」がスタートしています。

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アパートの太陽光発電設置推進プロジェクト

「新しい取り組み」とは、建築・土地活用事業を行うスターツグループと、東京電力エナジーパートナー(以下、東電EP)が共同プロジェクトとして実施する「初期費用ゼロ円で、アパート(木造賃貸集合住宅)に太陽光発電を設置する」というもの

東電EPが提供するPPAサービス「エネカリプラス」をベースとしたプロジェクトで、東電EP、スターツCAM、スターツアメニティーの3社がかかわっています。

このプロジェクトは、どのような課題を解決するものなのか、そしてその有効性はどの程度あるのか。

賃貸集合住宅のオーナーさんに提案を行う、スターツCAMの担当者赤木さんと、実際に太陽光発電を導入した賃貸物件オーナーS様にインタビューを実施し、その魅力に迫りました。

 

集合住宅における太陽光発電導入の課題

スターツCAM株式会社の担当者赤木さん

スターツCAM株式会社の担当者赤木さん。本プロジェクトで初導入の物件を担当

 

日々、現場で土地活用や賃貸物件の提案を行う赤木さん。お話を聞くと、今回の取り組みが始まる前は、太陽光発電の導入に関して大きな課題があったと言います。個人オーナーが太陽光発電を導入することは難しく、設置に対して壁を感じることが少なくなかったそうです。

赤木さん「最大の課題は、設置の初期費用でした。太陽光発電は高額な投資が必要で、オーナーさんご自身が負担することは現実的ではない場合が多いのです。加えて、設置後の維持管理やメンテナンスのコストや手間もオーナーさんにとって大きな負担でした。

太陽光発電の設置義務化の話が広まっていく未来が予想されている中で、私たちとしてもオーナーさんに導入提案を進めるのは難易度が高かったというのが実状です」

こうした課題を解決するために生まれたのが、今回のプロジェクトでした。

東電EPが提供するエネカリプラスは、太陽光発電のPPA(Power Purchase Agreement)サービスです。PPAサービスとは、PPA事業者と契約することで太陽光発電を初期費用ゼロ円で導入、維持管理やメンテナンスもしてもらえるサービスのこと。月々定額の利用料を支払う必要はありますが、契約期間が終わった後、設備は無償で譲り受けることができます。

赤木さん「弊社では、エネカリプラスを新築物件に標準装備することにより、オーナーさんにコストや手間をかけてもらうことなく、入居者の方にもメリットのある形で環境にやさしい賃貸物件を提供できるようになりました。年間1000戸程度の導入を目標値として掲げておりますが、2024年12月時点ですでに500戸で導入いただく予定です」

 

 

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「エネカリプラス」導入のオーナーメリット

エネカリプラスは、太陽光発電の定額機器利用サービスです。このサービスを利用して集合住宅で太陽光発電を導入することには、3つのメリットがあると赤木さんは言います。

 

話をする赤木さん

「『東京電力』というブランド力もオーナーさんに安心感を得ていただいているポイントだと思います」と赤木さん

 

【メリット1】初期費用無料 (※1)


エネカリプラスの最大の特徴は、太陽光発電の導入にかかる初期費用が一切かからないことです。従来、太陽光発電を設置するには大きな初期投資が必要でしたが、オーナーはその費用を負担せず、設備を導入することができます(※2)

※1: 物件によっては別途の費用がかかる場合がございます
※2:エネカリプラスサービスの契約期間中、発電設備の所有権はオーナーには帰属しません


赤木さん
「小規模なアパートだったとしても、オーナーさんが独自に太陽光発電を導入しようとした場合、1〜2千万円程度のコストが掛かります。初期費用ゼロで15年間の管理保証がついているというのはかなり大きなメリットです。また、災害時の電源確保もできるので、ある種の保険としても、おすすめさせていただいています」

 

【メリット2】管理・メンテナンスのサポート


太陽光発電は設置後の管理やメンテナンスも必要ですが、これをオーナーが個別に行うことは非常に手間がかかります。エネカリプラスでは、設置後の管理・メンテナンスもサービス内容に含まれており、設備の運用に必要な作業を全て任せることができます。これにより、オーナーの負担が大きく軽減されます。

赤木さん「太陽光発電の管理・メンテナンスに関しては、東電EPがすべておこなってくれます。これはオーナーさんにとっても大きなメリットになるのですが、実は建物管理会社(スターツグループ)にとっても大きなメリットがあるのです。何か問題が発生した場合、住民の方から管理会社に連絡していただき、その後、管理会社から東電EPへと情報を連携する流れになります。エネカリプラスの魅力はオーナーさんや入居者の方だけでなく、私たち含む関係者全員に発生し得るタスクやリスクを東電EPが受け持ってくれるという点も挙げられますね」

 

【メリット3】ZEH(ゼッチ)認定物件となる可能性も


ZEH(Net Zero Energy House)とは、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味で、環境省等が基準を策定しています。この基準は住宅や建築物のエネルギー消費を削減し、再生可能エネルギーの利用を促進するための政策の一環として設けられました。アパートやマンションの場合、ZEH-M(“M”はマンションの意)が該当するわけですが、エネカリプラスで太陽光発電を導入した場合、ランクに応じた補助金を得られたり、物件自体のイメージアップにつながったりする可能性が高まります。

赤木さん「スターツCAMが供給する賃貸住宅はすべてZEH Orientedを満たした住まいです。太陽光発電を採用した場合、発電容量や間取り・立地によりますが、ひとつ上のZEH Readyも視野に入れた『省エネ性能に特化した集合住宅』の対象になり得ると思います。近い未来、入居募集時にこれを打ち出すことで、集客効果も見込めると考えています」

 

「エネカリプラス」導入の入居者メリット

書類を指差す様子

「関係者全員にメリットがある、それがエネカリプラスの最大の魅力です」と赤木さん

 

エネカリプラスは、入居者にとっても多くのメリットがあります。まず、太陽光発電で生み出された電気を自室で使えるため、電気代の削減効果が期待できます。自室で使用する電力の一部を太陽光発電で賄うことで、エネルギーコストを抑えつつ、再生可能エネルギーの利用を通じて環境負荷の軽減にも貢献できます(※3)

※3:自室で使い切れなかった余剰電力は東電EPに帰属します


さらに、停電時には非常用電源として太陽光発電が活躍するため、災害時にも安心です。今後もさらに高まる自然災害のリスクを考えると、エネルギーの安定供給は入居者にとって重要なポイントです。

赤木さん「私たちが新築アパートに標準装備している太陽光発電の場合、1戸あたり約2kWの太陽光パネルを設置します。日中の発電量が、どの程度のインパクトなのかは世帯によって違いますが、試算では入居者の方の電気料金の負担が月5000円程度削減される見込みです。また、各戸に発電量を簡単に確認できるモニターも用意されているので、入居者の方にとっても一見してそのバリューが伝わると思います」

 

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「エネカリプラス」導入を決めた賃貸物件オーナーの声

続いて、「エネカリプラス」を導入している「カーメスト日吉」のオーナーS様のコメントを紹介します。

 

チラシ越しに話をするS様

取材時は満室となっていたS様がオーナーの「カーメスト日吉」

 

「エネカリプラス」を導入した経緯は?


もともと、物件自体の差別化をはかるために太陽光発電の導入を検討しはじめたというS様。

S様「電気代が高くなってきている昨今ですので、入居者の方の電気代が少しでも節約できればと思い、太陽光発電のことを調べはじめたのがきっかけでした。検討当初は初期費用が大きなネックとなり導入を躊躇していたのですが、タイミングよく今回の取り組みがスタートしたとスターツCAMの担当者の方から伺いました。その後、説明を受けたあとすぐに導入を決定した次第です」

 

「エネカリプラス」導入の決め手とは?


S様「最大の決め手は初期費用がゼロという点でしたね。また、オーナー目線ですとメンテナンスフリーという点も魅力的でした。中庭を設けたり窓からの風通しをよくしたりと『エコ』をコンセプトに設計をしていこうと相談していたので、入居者の方のメリットを生み出せるならと導入することにいたしました」

 

入居者からの反応は?


S様「入居者の方と直接会話する機会はないのですが、たまたま親族が入居しておりまして。夏場のエアコンの使用頻度が高い中、電気代が大幅に抑えられたことに彼らは驚いていました。電気代の削減が実現できる点は、特に昼間の在宅が多い子育て世代やリモートワークをおこなう家庭にとって効果が大きいとも言っていました。エネカリプラスを導入して本当に良かったと思います」

 

話をするS様の手元

「次に新築集合住宅を建てる際も必ずエネカリプラスを導入します」とS様

 

「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」。三方よしとはまさにこのこと

スターツグループと東電EPのプロジェクトは、オーナーと入居者双方にとってメリットがある取り組みです。オーナーにとっては、初期費用ゼロ円で太陽光発電を導入でき、物件価値を高めることができます。一方、入居者にとっては、環境に配慮した生活を送りながら電気代の節約も可能となります。また、太陽光発電の普及・促進という社会にとっても有意義なものになります。

今後カーボンニュートラルの実現に向けて、さらに多くの集合住宅に太陽光発電が導入されることが予想される中、いまエネカリプラスを利用することは将来的にオーナー、入居者にとって大きな価値をもたらしてくれることでしょう。

 

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
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