手ぶら&EVでも、ここまでアウトドア。ソルテラと冬のグランピング旅

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EVでアウトドアの旅はいかがでしょうか? といっても、カジュアルな服装やラギッドなキャンプギアはもちろん、悪路走破性の高いSUVすら不要です。ほぼ手ぶらでも楽しめてしまうキャンプスタイルがあります。それがグランピング。デイユースとアウトドア風情のバランスの取れたスバル・ソルテラで、日本初のグランピングリゾート「星のや富士」へ出発です。

 

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EV旅のしおり

1日目:

・往路/bZ4Xとは味付けの異なる、スバルらしいハンドリングの一台

・到着/アウトドアの風情がそこかしこに。気分が高まるおもてなし

・夕食/旬のジビエをセンス溢れる工夫とペアリングで

2日目:

・アクティビティ/朝食すら非日常。星のや流の山遊びで自然に興じる

・帰路/ワインディングロードのような起伏に満ちた旅の終わりに

旅の日程:2025年2月(1泊2日)

往復走行距離:285km

旅の相棒:スバル ソルテラ ET-HS

ソルテラ

スバルとトヨタが共同開発したEV専用プラットフォーム「e-スバルグローバルプラットフォーム」を初採用した、トヨタbZ4Xの兄弟車。従来のガソリン車に近いドライブフィーリングで、EVビギナーでもすんなり運転できる。広いキャビンと必要十分な荷室を誇り、スバル自慢のAWDで高い走破性も魅力。

 

往路/bZ4Xとは味付けの異なる、スバルらしいハンドリングの一台

凍結した冬の路面を想定して、メーカーからお借りしたソルテラにはYOKOHAMAのiceGUARD 7を履かせてもらったが、昨今のスタッドレスタイヤはドライな路面でも走行性能にほとんど不満はなく、道中で柔らかさを感じることはない。EVの静かな車内にあっても、多少ロードノイズの大きさを感じるくらいで、ストレスは皆無といっていいだろう。

走行中のソルテラ

 

兄弟車であるbZ4Xに比べて、ソルテラは硬めの乗り心地だが、高速走行ではピシッと姿勢を保ち、頼もしさを感じる。FWDとAWDが用意され、この車両はスバル主導で開発されたという後者だ。加速はいいが、いかにもEVという獰猛さは適度に抑えられている。さらにAWDのハンドリングの追従性には感心する。狙ったところに素直に鼻を向ける挙動は、長年四駆にこだわり続けてきたスバルの技術力の片鱗を感じさせる。

ドライブモードはNORMAL、ECO、POWERの3つのほか、悪路走行に特化したXモードも選べる。bZ4Xにはないパドルシフトが備わり、手元の操作でブレーキの回生レベルが選べる点は素直に感心した。

車内フロントシート

 

インテリアは上質でモダン。大人4人がストレスなく着座できる空間が広がり、全員2泊分程度の荷物もお手のもの。EVらしくラゲッジルームには100V/1500Wのコンセントが備わり、全席にUSB-Cが完備されている。

車内後部座席

 

珍しいのが、オプション装備のソーラールーフだ。駐車中にはバッテリーに給電され、走行中はランプなどに給電する。わずかだが航続距離に貢献し、電力消費を抑えてくれるのだ。同じくオプションのサンルーフとトレードオフで55万円と高額だが、意欲的なオプションを選択肢に加えたことを素直に評価したい。

充電器

 

東京方面から中央道で向かう場合、途中充電が必要なら談合坂SAがおすすめだ。2025年1月から充電設備が一新。上下線の施設ともに最大150kWが4口、90kWが2口、計6口の急速充電器が備わっている。

 

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到着/アウトドアの風情がそこかしこに。気分が高まるおもてなし

ホテルスタッフが車体に向かってお辞儀する様子

 

星のや富士は、車寄せを兼ねるレセプションと宿泊エリアが分かれている。ガラス張りのレセプションにクルマを駐め、荷を下ろしたらEV充電エリアへ。

ホテル前に置かれたソルテラ

 

3kWコンセント×2口、6kW充電器×2口の計4口の普通充電設備が設置されている。充電設備は一泊1000円とリーズナブルに利用でき、事前予約が可能なのはEVユーザーの気持ちに寄り添っていてありがたい。レセプションではグランピングを楽しむためのツールが入ったバッグを貸し出しており、好みのデザインと色を選ぶことができる。

送迎車

 

送迎車で勾配のある山道を進んでいく。フロントデスクを中心に、山の斜面に施設が独立して点在しているのが特徴だ。

上から見たテラス

 

全景を見下ろすクラウドテラスでは、チェックインの時間帯を中心に「森のひととき」というプログラムを提供する。

座布団の横に置かれた飲み物や軽食など

 

フリーフローのドリンクや、季節のジャムをトッピングできるスコーン、焚き火で焼くマシュマロを楽しめるのだが、山梨県産の甲州ぶどうを使ったスパークリング、ペティアン・ド・マルスがふくよかでよかった。焚き火にあたりながらシャンパングラスの泡をくゆらせるひとときは、非日常的なステイの始まりにピッタリだ。星のやでの滞在は、楽しい体験が豊富に用意されている。寄り道せずに向かうという選択は、間違いではなかった。

机に並ぶドリンクやフード

 

キャンプの風情をところどころに感じることができるのは、星のや富士ならではのおもてなしの妙といえる。フロントデスク、クラウドテラス、各部屋を、なだらかな山道を歩いて行き来することになる。

ホテルの部屋の中にベッドが並ぶ様子

 

コンクリート打ち放しのコテージスタイルのキャビンに入ると、借景よろしくくり抜かれた窓から、河口湖の雄大な景色が目に飛び込んでくる。なんとテラスにはこたつがあり、暖を取りながら自然の風を感じられる趣向は、普通のキャンプではまず不可能な贅沢さだ。

 

夕食/旬のジビエをセンス溢れる工夫とペアリングで

そんな演出は、食事にも表れている。山らしくジビエを中心に添えたディナーのメニュー構成。訪れたのは冬だが、近々切り替わる春のメニューをご提供いただいた。自然のなかで食材そのものの味わいを楽しんでもらうコンセプトということで、屋外のフォレストキッチンでも楽しむことができる。

色とりどりの野菜が並ぶバーニャカウダ

 

ひと皿目は猪ベーコンと春野菜のバーニャカウダ。クセがなく濃厚なベーコンはほどよい脂身で、うまみがしっかりと行き渡っている。こごみ、タラの芽、アスパラガスと姫ニンジンといった春の味わいが揃う。ペアリングはスパークリングで、濃密なソースでいただく旬のおいしさを爽やかに演出する。

鹿肉のフキ味噌ボロネーゼ

 

パスタは、鹿肉のフキ味噌ボロネーゼ。郷土料理の“みみ”と呼ばれる小麦粉を練った麺料理を使っている。ショートパスタのような形状で、コシが強くうどんにも近い印象だ。フキの鼻腔を抜ける清々しい風味が、鹿肉の強さをよく抑えてくれている。味噌の力強さもあり、郷土料理とイタリアンとのマッチングの妙味を感じられる。ペアリングは赤で、ライトボディが繊細な香りを邪魔しない。

鹿のグリル

 

メインは鹿のグリル。ソースは鹿のジュで、野趣溢れる絶妙な焼き加減。付け合わせはカリッと火を通したインカの目覚め。小さなジャガイモを煮っ転がしにする“せいだのたまじ”という郷土料理からインスピレーションを得たという。フォアグラの木の芽味噌の風味がすばらしい。芳純で塩気もあり、口に入れるや目を見張るうまみが押し寄せる。

焚き火

 

満腹になったら部屋に移動してもいいが、キャンプファイアも星のや富士流。クラウドテラスでは「焚き火BAR」が楽しめ、21時からはギターの生演奏などを楽しめる「森の演奏会」も始まる。部屋に用意された防寒着を着込んで、冬山の温かさに興じるひとときが優雅そのものである。

 

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アクティビティ/朝食すら非日常。星のや流の山遊びで自然に興じる

テーブルに朝食が並ぶ様子

 

翌朝。朝食は部屋食だが、背負子(しょいこ)に積んでスタッフが運んできてくれるのが面白い。テラスを手際よくセッティングし、アウトドアなモーニングスタイルを。河口湖のバスフィッシングをイメージした木製のタックルボックスに入っているのは、ヨーグルトやチキンとフルーツのサラダ。ダッチオーブンで焼いたサクサクでふわふわのパン。スモークミートはジューシーで、スパニッシュオムレツも火入れが絶妙だ。

薪を割る男性

 

食後はキャンプらしいアクティビティに興じてみよう。グランピングマスターの手ほどきで楽しむ薪割りは、人気の無料プログラム。勢いよくアックスを振り下ろし、カーンという心地よい音が森に響く。

薫る森の蒸留の様子

 

「薫る森の蒸留」と題されたアクティビティは、杉とヒノキとラベンダーから蒸留した香り高い水を好みで持ち帰れる。ルームフレグランスやファブリックミストとして使える。お土産にもちょうどいい。

ケトルに砕いたコーヒー豆を入れる様子

 

「森の珈琲店」という朝限定の無料アクティビティもある。焚き火で沸騰したケトルに直接砕いた深煎りのコーヒー豆を入れ、1分煮出す。漉していただく古来の狩猟スタイルの飲み方だ。粉っぽいようなことはなく、ビターで深みのある濃密な一杯が、胃の腑に染み渡る。

テーブルに並べられたピザの具材

 

ランチは、中腹の木漏れ日デッキで森の石窯ピザ作り。こたつに入って楽しめるアクティビティだ。生地をのばし、春菊やニンニク、クルミをすり鉢ですりつぶし、ジェノベーゼソースを作る。地元野菜や猪肉のパンチェッタなど、好きな具材を載せたらクラウドキッチンの石窯に移動。

焼き窯にピザを入れる様子

 

富士の溶岩石で作られた窯にピザ生地を入れ、2~3分回しながら焼き目を付けていく。焼き上がったらテラスでいただきます。パリパリモチモチの生地に、フレッシュで瑞々しい具材が主張する。家族で楽しむのもおすすめだ。

 

帰路/ワインディングロードのような起伏に満ちた旅の終わりに

100%満充電での出発はいつものように安心感と心のゆとりをもたらしてくれる。宿泊先での目的地充電の普及拡大を切に願う瞬間だ。チェックアウト後に時間があれば、少しドライブを楽しんでみよう。快晴のなか、路面の凍結はまったくない。当初ウィンタードライブを旅のテーマに掲げていたが、一般的な余暇の過ごし方で考えればむしろ好都合というものだ。

ソルテラと背後に広がる山

 

河口湖と西湖の北側を貫く湖北ビューラインは、ウィンタードライブを楽しむ格好のルートだ。交通量の多い河口湖、西湖の南側を走る国道139号線に対して、湖の北側を湖畔に沿って走る湖北ビューラインはクルマも少なくて富士山の景観もすこぶるいい。湖畔のワインディングロードはほどよい起伏もあり、AWDの回頭性を十分に堪能でき、率直に気持ちがいい。

氷像

 

途中で立ち寄るのは、冬季限定(例年2月上旬~中旬)に西湖野鳥の森公園で行われる「西湖こおりまつり」。大小の氷像がそびえる冬の芸術祭で、毎年5000人ほどの来場者がある人気のイベントです。土日には飲食の出店など、見どころも豊富だ。

 

施設名 西湖野鳥の森公園
住所 山梨県南都留郡富士河口湖町西湖2068
営業時間 9:00~17:00(12~2月は16時まで)
定休日 木曜日・年末年始
Webサイト https://fujisan.ne.jp/pages/345/

 

そういえば、グランピングとは、「グラマラス」と「キャンピング」を組み合わせた造語らしい。優雅さを兼ね備えた旅のカタチといえるのだろう。星のや富士での滞在は、自然に囲まれた風情のなか、施設を自由に往来するアクティブさが印象に残った。ラグジュアリーとは安楽な空間であるという固定概念をいい意味で打ち破ってくれたように思う。

後方から撮影したソルテラとその背景に望む富士山

 

思えばEVも然り。いいクルマはエンジンの排気量が大きく、贅を極めたインテリア……という考え方は過去のもので、環境負荷が少なく、過不足のないスペックがちょうどいい心地よさをもたらしてくれるのだ。雄大な富士山を背に、ソルテラの奇をてらわないアクセルフィーリングで帰路に就くなか、そんな確信が脳裏をよぎった。

 

施設名 星のや富士
住所 山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
電話番号 050-3134-8091(星のや総合予約)
Webサイト https://fujisan.ne.jp/pages/345/

 

撮影:平安名 栄一

 

〈スペック〉
スバル ソルテラ ET-HS

全長×全幅×全高 4690mm×1860mm×1650mm
車両重量 2050kg
バッテリー容量 71.4kWh
一充電走行距離 487km(WLTCモード
電費 148Wh/km
システム最高出力 160kW
システム最大トルク 338Nm
駆動方式 4WD
税込車両価格 715万円

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の著者
吉々是良
吉々是良

(株)reQue代表取締役。寺院住職との兼業編集ライター。自動車メーカーのタイアップ広告やオウンドメディアで執筆するほか、紀行文やテクノロジー関連、相続分野を得意とする元情報誌編集部員。欧州車を中心に、愛車遍歴約20年で10台を乗り継ぐ。