PHEVの燃費はどれくらい?燃費の見方や主要車種の燃費性能をチェック

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世界的にPHEV(プラグインハイブリッド車)が人気を集め、国内にもさまざまなタイプのPHEVが増えてきました。将来的にPHEVを購入したいと考えている方にとって、気になるのはやはり燃費(電費)でしょう。自動車ジャーナリストの鈴木ケンイチさん監修のもと、PHEVの燃費表示の見方やおもな車種の燃費性能、PHEVの燃費を向上させる乗り方について解説します。

 

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PHEVにおける燃費(電費)の考え方

自動車ユーザーにとって燃費はもっとも重視する性能のひとつです。PHEVに乗る場合にも、当然燃費(電費)はどれくらいなのか、気になることでしょう。

ただ、PHEVはガソリンと電気の両方を燃料(エネルギー)として走行する仕組みとなっていますから、燃費表示を理解するためには、その走行の特徴を理解する必要があります。

 

PHEVは2つのモードで走行する


PHEVは自宅で充電した電気を使ってEV走行(バッテリーの電気を消費して走行)するのが基本の乗り方ですが、ロングドライブに出かけてバッテリー充電量が足りなくなった場合はハイブリッド走行(エンジンを稼働し、ガソリンを消費しながら走行)することができます。

基本的には、長距離を走行していて駆動用バッテリーのSOC(充電率)があらかじめ車両に設定されたレベルまで低下すると、EV走行からハイブリッド走行に“切り換わる”仕組みです。また、満充電の状態でEV走行が可能な距離も車種によって異なりますので、その点も重要なポイントです。

〈図〉PHEVの走行の特徴

 

そのため、EV走行時とハイブリッド走行時の2つにあたる燃費表示が必要になります。

 

PHEVの燃費表示は合計3種類ある

 

電気の消費(EV走行するとき)に関する「電費」は、まずカタログなどで交流電力量消費率(Wh/km)」という表示で確認できます。これにより1km走行するためにどのくらいの電力を消費するかがわかります。

また、「電力消費率(km/kWh)」という表示が併せて記載される場合もあり、これは1kWhあたり何km走れるかを示したもので、交流電力量消費率(Wh/km)を単に逆算した数字になります。

さらに、ガソリンの消費(HEVモードで走行するとき)に関する燃費については、カタログなどで「(ハイブリッド)燃料消費率(km/L)」という表示で確認できます。これでガソリン1Lあたり何km走れるかがわかるわけです。HEVと同じと考えてよいでしょう。

〈図〉PHEVの燃費表示

 

一般的に燃料消費率(km/L)と電力消費率(km/kWh)は、値が大きいほど燃費(電費)がよいと表現されます。一方で、交流電力量消費率(Wh/km)は値が小さいほど電費がよいと表現されます。PHEVの燃費(電費)を評価する際は、これを踏まえて燃費の良し悪しを判断するといいでしょう。

 

 

【コラム】電費表示が2種類あるのはなぜ?


PHEVの電費表示に「交流電力量消費率(Wh/km)」と「電力消費率(km/kWh)」の2つがあることには、それほど大きな意味があるわけではありません。

交流電力量消費率(Wh/km)は1km走行するために必要な電力量を表しますが、ガソリン車の燃料消費率は1Lあたりの走行距離のことですから、この燃費表示に慣れているガソリン車ユーザーは交流電力量消費率(Wh/km)をわかりづらいと感じます。

そこでメーカーによっては、PHEVの電費表示に1kWhの電力量で走行できる距離を表す「電力消費率(km/kWh)」を参考として記載するようになったわけです。EVの場合も、メーカーによってはメーターパネルに「km/kWh」が表示される車種があります。

 

PHEVの燃費って実際どれくらいなの?

PHEVの燃費表示のキホンの次は、PHEVの燃費が実際どれくらいなのか見てみましょう。PHEVとHEVの両方をラインナップするトヨタ「プリウス」1)を例に両者の燃費性能を比較してみます。

 

ハイブリッド走行の燃費はPHEVよりHEVのほうが優秀

トヨタ「プリウス Z(HEV・2WD)」(画像:トヨタ)

 

PHEVとHEVの燃費を比較した結果は以下のとおりです。

〈表〉トヨタ「プリウス」の燃費の比較

 

ご覧のように、すべての走行モードにおいて、PHEVよりもHEVの燃費性能のほうが優れた数字となっています。

これはPHEVが重量のかさむ大容量バッテリーをフロア下に搭載している影響が考えられます。「プリウス」のHEVモデルとPHEVモデルには、それぞれ「Z」「G」の2グレードがありますが、車両重量はHEVが1400〜1420kgなのに対し、PHEVは1560〜1570kgと、PHEVのほうが150kg程度重くなっています。

なお、PHEVは自宅で充電し、通勤や買い物などの日常生活はEVとして使って走行コストを抑えるのが賢い乗り方です。ハイブリッド走行は年に数回程度のロングドライブだけという場合、HEVとの燃費性能の違いはそれほど大きな差にならないでしょう。

 

参考資料
1)トヨタ「プリウス」

 

 

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【国産車】PHEV主要車種の燃費・電費をチェック

ハイブリッド走行時の燃費性能よりも、EV走行時の電費性能のほうが気になるという人もいるかもしれません。そこで国産車メーカーがラインナップするおもなPHEVの車種をピックアップし、燃費と電費、EV走行換算距離(外部から満充電したバッテリーの電気だけでEV走行が可能な距離)などをそれぞれ紹介します。

なお、前述のように、一般的に燃費(電費)は車両重量が重ければ重いほど悪くなる傾向にありますので、公平を期すため、ボディタイプ別に主要車種の燃費性能などを紹介しています。

 

【セダン】トヨタ「プリウス G」 1)

写真は「Z」グレードのPHEVモデル

 

車両重量 1560kg
燃費(WLTCモード) 26.0km/L
電費(WLTCモード) 134Wh/km(7.46km/kWh)
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 87km
車両価格 390万円〜

 

 

【ミドルサイズSUV】トヨタ「RAV4 Z」 2)

画像:トヨタ

 

車両重量 1920kg
燃費(WLTCモード) 22.2km/L
電費(WLTCモード) 155Wh/km(6.45km/kWh)
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 95km
車両価格 566万1700円〜

 

 

【ミドルサイズSUV】トヨタ「ハリアー Z」 3)



車両重量 1950kg
燃費(WLTCモード) 20.5km/L
電費(WLTCモード) 160Wh/km(6.25km/kWh)
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 93km
車両価格 620万円〜

 

 

【ミドルサイズSUV】マツダ「CX-60 PHEV L Package」 4)

 

車両重量 2080kg
燃費(WLTCモード) 14.3km/L
電費(WLTCモード) 253Wh/km
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 71km
車両価格 570万200円〜

 

 

【ミドルサイズSUV】三菱「エクリプス クロス M」PHEVモデル 5)

画像:三菱自動車

 

車両重量 1900kg
燃費(WLTCモード) 16.4km/L
電費(WLTCモード) 213Wh/km
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 57km
車両価格 409万4200円〜

 

 

【ミドルサイズSUV】レクサス「NX450h+ version L」 6)

画像:トヨタ

 

車両重量 2030kg
燃費(WLTCモード) 19.6km/L
電費(WLTCモード) 172Wh/km(5.81km/kWh)
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 87km
車両価格 749万5000円〜

 

 

【ラージサイズSUV】三菱「アウトランダーPHEV M」 7)

 

車両重量 2070kg
燃費(WLTCモード) 17.6km/L
電費(WLTCモード) 218Wh/km
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 106km
車両価格 526万3500円〜

 

 

【ミニバン】トヨタ「アルファード Executive Lounge(PHEV)」 8)

画像:トヨタ

 

車両重量 2470kg
燃費(WLTCモード) 16.7km/L
電費(WLTCモード) 209Wh/km(4.78km/kWh)
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 73km
車両価格 1065万円〜

 

 

 

PHEVの燃費を向上させる賢い乗り方を解説

画像:iStock.com/ taka4332

 

PHEVをおトクに運用するには、燃費以前に自宅で充電した電気を使ってEV走行するのがおすすめです。なるべくPHEVをEVとして使えば、走行コストを安く抑えられる可能性があります。

そのうえで、PHEVでハイブリッド走行するときに燃費をよくしたいというのであれば、燃費性能のよいPHEVを選択する以外に、「車間距離をとること」を心がけるのがポイントです。加減速の差分が大きいとエネルギーを消費して燃費が悪化しがちです。車間距離をとると速度調整をあまりせずに一定速度で走行できるため、燃費向上が期待できるわけです。

また、高速道路でもあまりスピードを出さず、なるべくゆっくりと走行しましょう。スピードを出すとその分空気抵抗が増え、燃費が悪化してしまう可能性があります。車間距離をとり、ゆっくりと一定の速度で走行するのが燃費向上のコツです。

 

 

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PHEVはおトクで豊かなカーライフを彩ってくれる

EV・PHEV合計の販売台数で世界一のBYDは、2025年にPHEVを日本市場に導入することを宣言しています。EV販売が踊り場に差し掛かっていることもあり、今後はPHEVの人気がますます高まって、「次はPHEVに乗ろう」と考える人も増えていくでしょう。

PHEVの燃費は少しわかりづらいですが、関係するスペック項目の見方を覚え、「SOCが一定まで減少するとエンジンが作動する」ということを押さえておけば、EVやHEVと同じように乗れるはずです。EV以外の選択肢として、PHEVはおトクで豊かなカーライフを彩ってくれることでしょう。

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の監修者
鈴木 ケンイチ
鈴木 ケンイチ

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。