テスラ・モデルY 5年越しの刷新で、飛躍的な進化を遂げたSUV

躍進ぶりからゴシップ的なことまで何かと話題になるのは、それだけテスラが意欲的で存在感があるからにほかなりません。2022年に上陸した日本でも人気のモデルYは、価格もそれほど高くなく、優れた性能と利便性と扱いやすいサイズが魅力です。このほど大がかりなアップデートを実施し、見た目も走りも大きく変わったばかり。そんなモデルYの最新モデルを、モータージャーナリストの岡本幸一郎さんがレポートします。

 

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2019年に計画が発表、2020年に本国で発売され、日本には2022年の秋にやってきた「モデルY」は、共通性の高いセダン版の「モデル3」ともども世界的に人気を博している。2023年にはBEVとして初めて世界の車種別販売台数のトップになるほど売れたというからハンパじゃない。

 

誕生から5年。世界的なヒット作がアップデート

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そんなモデルYが2025年1月に大がかりなアップデートを実施した。全幅にわたるLEDライトバーを備えたフロントフェイスは、ぶっ飛んだデザインで世界を驚かせた「サイバートラック」等との共通性を感じさせるもので、業界初の拡散反射技術を採用したクロスカーランプが「TESLA」のロゴを美しく映し出すリアともども大きなインパクトがある。このデザインが空力にも効いて航続距離を伸ばすこともできたそうだ。

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運転席に座ったときのインテリアの景色も、あまりにシンプルで驚く。こんなに革新的なクルマなど他に心当たりがない。目の前にメーターはなく、ステアリングホイールに少々のスイッチとウインカーのレバーがあるのみで、インパネ中央に配された15.4インチという大画面のディスプレイで走りや車内の快適性に関する機能の大半を調節できる。シフトレバーすらなく、前進や後退のギアシフトもディスプレイ右上の表示で操作するようになっている。

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事前にスマホを登録しておけばキーを使わずに開錠でき、乗り込んでブレーキペダルを踏めばシステムが起動して、アクセルを踏めば走り出せる。

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改良版のインテリアにはアンビエントライトが配されたほか、フロントシートにベンチレーションが付き、リアシートの背もたれが電動調整式になった。また、後席の空調やエンターテインメントを操作する8インチリアディスプレイが新たに設けられた。

 

加速性能もハンドリングも、申し分のない出来映え

テスラはかねてから走りには定評があるが、モデルYもその期待にしっかりと応えている。試乗した「ロングレンジAWD」の航続距離は635kmと長く、0-100km/h加速は4.8秒と俊足で、最高速度は201km/hに達している。これ以外に同547kmで5.9秒という、これまた十分に高性能な「RWD」がある。

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ドライブフィールはすべてがダイレクトで、瞬発力は抜群だ。アクセル操作に対する応答遅れがなく、AWDも効いて発進時から即座に加速し、刺激的な速さを味わえながらも乗りやすい絶妙な特性とされていて、力強くてなめらかだ。いざとなれば停止状態から100km/hまで4秒あまりで加速できる実力の持ち主なのだから、どれくらい速いかは想像いただけよう。

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リニアな加速特性と呼応するかのような一体感のあるハンドリングがまた気持ちいい。ハンドリングも俊敏そのものでどこにもスキがない。小さな舵角から操作したとおりに応答遅れなくクルマの動きを伝えてくる。コーナーでもほとんどロールしない。

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その走りを実現するために、ある程度は足まわりもひきしまっているが、その中にもしなやかさがある。改良版は乗り心地もハンドリングも当初に比べてカドがなくなってやさしくなった印象だ。加減速もスムーズで静かになった。

 

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より静かになった車内には、数多くの先進装備が

二重ガラスの多用により静粛性はもともと悪くなかったが、改良版はシーリング材や遮音材の追加やサイドミラーの形状変更などにより、従来から風切り音が20%、ロードノイズが22%も低減したというから、どうりで静かなわけだ。

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ルーフのほぼ全面を仕切りのない1枚のガラスで覆った、乗用車で最大級という広大な面積のパノラマルーフもモデルYの特徴のひとつだ。改良版ではガラスにシルバーメッキコーティングが施され、遮熱効率が26%も向上したというのもたいしたものだ。

テスラといえば、オートパイロットについても興味津々の人は大勢いることだろう。モデルYでは超音波センサーを用いずカメラのみとされたことには驚いたが、機能的には非常に充実していて、改良版はハードウェアが新しくなり演算能力等が上がっていて、今後OTAでどんどんいろいろな機能が使えるようになっていくわけだ。

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ディスプレイには車両周辺にいるクルマや人がわかりやすく表示されるのもテスラならでは。カメラ解像度や通信性能も向上している。

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また、そのときの状況から駐車中とクルマが判断すると、前進~後退を自動的に切り替えてくれるという「オートシフト」という機能を試してみたところ、まだベータ版で万全ではないものの、いずれ完成すると非常に重宝することうけあいだ。

 

エンターテインメントと利便性も向上

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駐車中には動画や音楽ストリーミングサービスを楽しめて、オーディオのサウンドも素晴らしい。広々とした開放的な空間で、さまざまなコンテンツを優れた画質と音質で楽しむことができるので、自宅に着いてもなかなか家に入りたがらないオーナーが続出しているというのも納得できる(笑)。

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利便性もかなりのものだ。テールゲートがガバッと開いて、中はビックリするほど広い。

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通常でも822Lで、リアシートを倒すとなんと2022Lと、実に2000L超え。

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さらにボンネットを開けると、116Lのフランクまである。

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トランク側面のスイッチやセンターディスプレイを操作してワンタッチでフルフラットにすることもできるようになったのも重宝する。日本向けは5人乗りのみだが、海外では7人乗りも選べるらしく、この車体形状でどうやって7人乗りを実現したのかと思っていたのだが、実車を見て納得した。

 

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使ってみるとわかる、便利な充電網。価格訴求力も大きな魅力

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充電については、テスラ独自の充電網「スーパーチャージャー」が画期的だ。ケーブルが細くて軽く、認証に手間取ることもなく、充電のための操作がぜんぜん苦にならず、すでに最大出力250kWの急速充電器の配置も進められていて、サッとプラグを差し込むだけで、モデルYなら15分で最大267km分も充電できるのだからありがたい。

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一般的なチャデモ規格の急速充電器でも充電できるよう変換アダプターもオプションとして選べるので、テスラ専用と公共充電設備どちらも使用できる。

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さすがはEV界をリードするテスラの売れ筋モデル。人気の理由がよくわかった。それがさらにグレードアップして、スタイリッシュかつ高性能で利便性にも優れている。こうした充実した内容のわりに価格がそれほど高くなく、しかも87万円(2025年度)という国の補助金まであり、自治体によってはさらに増える。これは大きな魅力だ。

 

〈クレジット〉

 

撮影:宮越孝政

 

〈スペック表〉
テスラ モデルY ロングレンジAWD

全長×全幅×全高 4800mm×1920mm×1625mm
ホイールベース 2890mm
車両重量 1990kg
モーター種類 前インダクションモーター、後 永久磁石同期モーター
モーター最高出力 前158kW(215ps)、後220kW(299ps)
モーター最大トルク 前240Nm、後350Nm
0-100km/h加速 4.8秒
最高速度 201km/h
バッテリー種類 リチウムイオン
バッテリー公称電圧 345V
一充電走行距離 635km(WLTCモード)
電費 139Wh/km(WLTCモード)
サスペンション 前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
タイヤサイズ 前後255/40R19
税込車両価格 647万6000円

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

〈ギャラリー〉

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この記事の著者
岡本幸一郎
岡本 幸一郎

1968年富山県生まれ。父の仕事の関係で幼少期の70年代前半を過ごした横浜で早くもクルマに目覚める。学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作や自動車専門誌の編集に携わったのちフリーランスへ。これまで乗り継いだ愛車は25台。幼い二児の父。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。