
SUVのラインアップも充実しているアウディに新たに加わったプレミアムミッドサイズSUVのQ6 e-tronシリーズは、新開発のBEVプラットフォームを用いた初の市販モデルでもあります。これによりアウディの次世代電動SUVとして注目すべき諸性能とともに、洗練されたスタイリングやアウディならではのライティングテクノロジーを身につけています。モータージャーナリストの岡本幸一郎さんがレポートします。
先進的でオシャレなイメージのあるアウディは、電動化にも積極的に取り組んできた。思い起こせば2020年、ライバルに先駆けて送り出された純BEVのe-tronでは、その完成度の高さに感心したものだ。
続くe-tron GTではズバ抜けた性能とスタイリングに衝撃を受け、Q4 e-tronでは固定観念を打破する後輪駆動の採用に驚かされ、SQ8 e-tronではリア2モーターが生み出す走りに感銘を受けた。今回のQ6 e-tronではどんな驚きが待っているのか、楽しみだった。

ところで、「Q6」という車名のモデルは初めてのお目見えとなるわけだが、このところアウディのネーミングの規則について少しばかり一転二転あったのを、ご存じの方もいることだろう。ざっとお伝えすると、2023年夏には、BEVを偶数にしてエンジン車を奇数にするという方針が打ち出された。ところが諸事情により早々に見直すことになり、概ね当初のルール(数字が大きいほどボディサイズと車格があがる)に戻す旨が2025年2月に伝えられた。
ポルシェと共通のプラットフォームを採用し、美しいプロポーションを実現
Q6 e-tronの場合は本国での登場のタイミングからすると、BEVなので偶数というルールに則して名付けられたが、内燃エンジン版のQ5も本国ではすでにモデルチェンジしていて、まもなく日本に上陸する予定で、実は微妙にQ6のほうがボディサイズは大きく、数字との整合性がとれている。

アウディがポルシェと共同開発したスポーティでハイパフォーマンスなBEV専用のプラットフォーム「PPE(=プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」をベースとする初の市販車となる。本国の開発関係者によると、デザインはそれぞれとして、走りについては7割方は共通だが、残りの3割をポルシェの場合は911に寄せていくのに対し、アウディはラグジュアリー方向に調律するという違いがあるそうだ。

ボディサイズは全長4770mm、全幅1940mm、全高1695mm、ホイールベース2895mmと、全幅は1.9mを超えるが、全長は4.8mを下回っている。PPEの採用による長いホイールベースと短いオーバーハングを活かした力強くダイナミックなシルエットは、なかなか他にはないもので、絶妙なバランスを呈している。「パーフェクトなプロポーションを実現した」と自負しているというのもうなずける。印象的なフロントフェイスや随所に巧みに配されたアクセントのラインも効いて、見た目にも華がある。
エクステリア・インテリアともに先進機能が満載

アウディといえば、いちはやく取り入れた革新的なデジタルライティングテクノロジーを抜きには語れない。Q6 e-tronには、世界初のアクティブデジタルライトシグネチャーが与えられている。従来よりも前後ともライトのセグメントが細分化されていて、それを活かした切り替え可能なライトデザインを実現した点も新しい。デジタルOLEDリアライトのコミュニケーションライト機能では周囲に状況を伝えることまでできるのも、また一歩、未来のクルマに近づいたようで興味深い。

立体的でハイコントラストな3Dデザインを採用したというインテリアも、なかなか印象的だ。乗員を囲むかのように大きなディスプレイが配されていて、こちらもオシャレな上に先進的な機能が満載されている。

PPEの採用により車内のスペースは広々としていて、居住性と実用性にも優れる。ホイールベースが長くセンタートンネルがないおかげで後席の乗員もより快適に乗れる。トランクは526Lから最大で1529Lまで拡大できて、ボンネット下にも64Lのフランクがある。

日本導入時点で3タイプが発売された中で、試乗したのは売れ筋となるであろう、クワトロ アドバンストという車両価格998万円のモデルに、オプションでバング&オルフセン等を含む「MMIエクスペリエンスプロ」(59万円)、「S Lineパッケージ」(56万円)、エアサスをはじめ魅力的な装備を組み合わせた「ラグジュアリーパッケージ」(64万円)などが装着された仕様で、S Line仕様の外観にアスカリブルー メタリックがよく似合っている。
バッテリー効率の最適化を図り、一充電走行距離は644kmを達成
クワトロモデルはリアにヘアピンコイルを採用する最大トルクが580Nmの同期モーター、フロントには同275Nmの非同期モーターを搭載し、総容量100kWhの新開発のリチウムイオンバッテリーを組み合わせる。システム最高出力は285kW、0-100km/h加速はわずか5.9秒、一充電走行距離 は644kmというなかなかの実力の持ち主だ。

フロントとリアでモーターの性能が差別化されており、全負荷時でもリア重視にパワーを配分する。クワトロながらリアタイヤはフロントタイヤよりも幅広くされているあたりも、ドライビングダイナミクスの追求によるもので、緻密な制御がハンドリングにも寄与する。
さらに、ドライサンプ方式のオイルクーリング機能で熱損失を低減した新冷却システムを採用することで、パワートレインのコンパクト化と軽量化を図り、効率性とパフォーマンスの両立を図っている。

ご参考まで、高性能版のSQ6 e-tronは、同じく100kWhのバッテリーを搭載して最大360kW、ローンチコントロール使用時は380kWになり、わずか4.3秒という0-100km/h加速と、672kmという長い一充電走行距離を実現している。
後輪駆動モデルは、MAXで185kWと450Nmを発揮する同期モーターを搭載し、83kWhのバッテリーと0-100km/h加速は7.0秒、一充電走行距離は569kmとなる。
エアサスならではの乗り心地。静かで力強い走りを実現
走りのほうもさすがのものがあった。「S」が付かない通常のモデルとはいえ、性能的には十分すぎるほどで、まったくストレスを感じることはない。静かでなめらかで力強い走りは、これ以上を望むべくもない。

車両重量が2.4t超あることを感じさせないほどスイスイと走れながらも、乗り心地はしごく快適で挙動も安定している。これほどしなやかでありながら相反するロールが小さいことも印象的だったが、まさしくより反応が早く緻密な制御ができるように進化したというエアサスの完成度がまたすばらしく、上級車種のQ8にも通じるしっとりとした上質な乗り味を実現している。また、かつてエアサスというとトラブルが少なからずあったのは否めないが、最新版は構造の改良によりその心配もほぼ解消したという。

ちょっと難しい話だが、これまでアウディ車は、フロントのコントロールアームがサスペンションアームの後方にあったが、それが前方に配置されたのも特徴のひとつだ。「プログレッシブステアリング」のラックはサブフレームに固定されていて、操舵に対する応答性にもより磨きがかかり、極めて俊敏でありながら安定している。
さらに、SUV向けにロールとピッチを減らすためのサブバルブを配したFSD(=フリークエンシーセレクティブダンパーシステム)を備えたサスペンションが、快適性と路面追従性を高めている。

ドライブモードの選択により走り味も変わって、ダイナミックを選択するとよりスポーティな走りになり、控えめながらサウンドによる演出も加わる。

Q6 e-tronは、最先端の充電技術を搭載した電動SUVでもある。先進的な回生システムにより、日常の制動の約95%は回生ブレーキによって行なわれ、最大220kWのエネルギーを回生可能で、任意でコースティングや前走車との適切な車間距離を自動的に維持するモードも選べる。
パフォーマンスのわりに値頃感がある、価格設定も魅力
サーマルマネージメントについて、e-tron GTでも用いた800Vのシステムを採用しているが、同じではなく左右400Vずつに分けた新しいシステムとなる。急速充電は日本のチャデモ規格では135kWまで許容し、SoC(充電率)10%から80%まで約35分で充電できるという。

そんな充電性能の高さを体験すべく、新東名高速道路の厚木南インターチェンジ近くにあるアウディの新しい充電施設の第一弾「アウディチャージングステーション厚木」へ。

こちらはアウディも加盟する急速充電器ネットワーク「PCA(=プレミアム チャージング アライアンス)」や「アウディチャージングハブ」に次いで、長距離移動するユーザーにとって利便性を高めるもので、チャデモ対応のEVなら、どのメーカーの車両でも利用可能で、充電器の最大出力は150kWを誇る。到着時にSoCは50%を超えていたが、最大受入は110kWにもおよび充電性能の高さを証明した。

アウディの次世代電動SUVの中核をなすニューモデルは、使いやすくて洗練されたQモデルのよさと、最新のe-tronらしい性能と先進性を併せ持っていることがよくわかった。

充実した内容と高い完成度からすると、今回のクワトロの中心グレードで車両価格が3ケタ万円にとどまっているというのが意外とお買い得に思えてきた。
<クレジット>
撮影:小林岳夫
<スペック表>
Audi Q6 e-tron クワトロ アドバンスト
(S Lineパッケージ・エアサス・パノラマサンルーフ・MMI experience pro装着車)
| 全長×全幅×全高 | 4770mm×1965mm×1670mm |
| ホイールベース | 2895mm |
| 車両重量 | 2450kg |
| 最小回転半径 | 5.7m |
| モーター種類 | 前 非同期モーター(ASM) 後 永久磁石同期モーター(PSM) |
| システム最高出力 | 285kW |
| 最大トルク | 前275Nm 後580Nm |
| バッテリー種類 | リチウムイオン電池 |
| バッテリー総電圧 | 662V |
| バッテリー総電力量 | 100kWh |
| 一充電走行距離 | 644km(WLTCモード) |
| 電費(交流電力量消費率) | 167Wh/km(WLTCモード) |
| 駆動方式 | 4WD |
| サスペンション | 前後5リンク式マルチリンク |
| タイヤサイズ | 前255/50R20 後285/45R20 |
| 税込車両価格 | 998万円~ |
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