ZEH(ゼッチ)は意味ないって本当?その理由や後悔しないための知識・対策を解説

2030年までにZEH(ゼッチ)水準の省エネ住宅が新築の標準になるなど、「ZEH」が注目を集めています。その一方で「ZEHは意味ない」といったネガティブな声もあり、ZEHを建てるべきかどうか、家選びに迷っている人もいるかもしれません。住宅ジャーナリストの山本久美子さんの監修により、ZEHが意味ないとされる理由、後悔しないための知識や対策などについて解説します。

 

 

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【図解】そもそもZEHってどんな住宅?

画像:iStock.com/ imaginima

 

家選びの基準が変わるなか、高性能な家を建てたい・買いたいと考えている人にとって「ZEHは意味ない」という指摘はとても気になるに違いありません。ZEHに関する情報を正しく理解するために、まずZEHの定義について図を交えて解説します。

 

ZEHと認定されるための「3つの構成要素」

ZEHは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、簡単にいえば、高効率設備による「省エネ」と太陽光発電などの「創エネ」によって年間の一次エネルギー消費量の収支を正味ゼロ以下にする住宅のことです。

〈図〉ZEHとは

 

ひと口に「省エネ」といっても、省エネ住宅の性能には2つの基準があります。ひとつは、外壁・窓・屋根・天井といった「住宅の外皮の断熱性能」、もうひとつは、冷暖房・給湯・照明・換気といった「住宅設備のエネルギー消費性能」です。

これらの性能基準が2030年までに従来の省エネ基準から引き上げらます。この新しい家選びの基準が「ZEH水準」です。

〈図〉ZEH水準と省エネ基準の違い 1)

※BEIは「Building Energy Index」の略称で、建築物のエネルギー効率を示す指標。国が定める省エネ基準からどの程度一次エネルギー消費量を削減できているかを示している。

 

ただし、ややこしいのですが、「ZEH水準=ZEHというわけではありません。いくら家を高断熱化し、冷暖房や給湯などの住宅設備を高効率化しても、「省エネ」だけでは年間の一次エネルギー消費量の収支が正味ゼロ以下にはならないからです。

そのためZEHには「創エネ」が不可欠です。太陽光発電などの再生可能エネルギー発電によってエネルギーをつくり、そのエネルギーを家庭で使用(自家消費)するのです。

〈図〉ZEHを構成する3つの要素

 

これらの3つにより、暑さや寒さをガマンして電気代を節約するのではなく、快適に暮らしながら家庭の消費エネルギーを削減して脱炭素社会に貢献することができるとされています。

つまり、「高断熱化」「設備の高効率化」「創エネ」という3つの要素が揃うことで、初めてZEHと認定されるのです。

 

 

 

ZEHと「Nearly ZEH」「ZEH Oriented」の違い

しかし、そうはいっても、住んでいる地域によっては太陽光発電などによる「創エネ」が十分に行えないケースもあります。

たとえば、北海道や東北、日本海側などの雪が多かったり年間の日射量が少なかったりする地域がそれに該当します。また、東京23区などの都市部の狭小地に建築された住宅も、屋根に設置できるソーラーパネルの枚数が必然的に少なくなるため、やはり「創エネ」を十分に行えない地域に当てはまります。

そこで、そうした地域に住むユーザーのためにZEHの定義要件を緩和したのが、「Nearly ZEH(ニアリー ゼッチ)」や「ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド)」と呼ばれるものです。

〈図〉ZEHシリーズの省エネ要件の違い 2)

 

このうち「Nearly ZEH」は、おもに寒冷地や低日射地域、多雪地域に向けた目指すべき水準で、年間の一次エネルギー消費量を75%以上100%未満削減できる住宅です。

「ZEH Oriented」は多雪地域(※1)または都市部狭小地等(※2)に建築される住宅が対象で、ZEHシリーズのなかで唯一、太陽光発電などの「創エネ」が免除されています2)

 

※1:建築基準法で規定する垂直積雪量が100㎝以上に該当する地域。
※2:北側斜線制限の対象となる用途地域等(第一種及び第二種低層住居専用地域、第一種及び第二種中高層住居専用地域ならびに地方自治体の条例において北側斜線規制が定められている地域)であって、敷地面積が85㎡未満である土地。ただし、住居が平屋建ての場合は除く。

 

このほかにも、マンションなどの集合住宅を対象にした「ZEH-M(ゼッチ マンション)」、ZEHをより高性能化した「ZEH+ゼッチ プラス)」など、ZEHといわれる基準にはさまざまなものがあります。

 

 

 

ZEHが「意味ない」といわれる理由

このようにZEHは優れた省エネ性能を備えているのに、なぜ「意味ない」といったネガティブな見方が出てくるのでしょうか。ZEHのデメリットを指摘する声はひとつではなく、いろいろなものがありますが、ここでは5つの理由に絞って紹介します。

 

理由① 光熱費が「ゼロ」にならない

画像:iStock.com/ Yusuke Ide

 

ZEHは意味ないとするネガティブな声のなかでも、もっともよく聞くのが「光熱費がゼロにならない」というものです。

ZEHは年間の一次エネルギー消費量の収支を正味ゼロ以下にする住宅のことです。この「収支が正味ゼロ」という言葉の響きから「光熱費がほぼゼロ」とイメージし、実際にはゼロにならなかったことで「ZEHは意味ない」と結論づけてしまうのでしょう。

また、太陽光発電のFIT制度による売電価格が下がり、太陽光発電でつくった電気は自家消費するのが主流になったことも、「意味ない」とする見方に影響している可能性があるかもしれません。

 

 

理由② 従来の住宅に比べて建築コストが高い

画像:iStock.com/ takasuu

 

「光熱費がゼロにならない」と同じくらい耳にする機会が多いのが、ZEHの「建築コストが高かった」という声です。

ZEHを満たす住宅では、高性能な断熱材や断熱ガラス・サッシなどを使用し、住宅の内外の熱の移動を少なくすることで室内の温度を一定に保ちます。また、エコキュートなどの高効率給湯機をはじめ、空調や換気、照明にも高効率な設備を使用し、太陽光発電などの「創エネ」の設備も必要になります。

高性能な断熱材や高効率な住宅設備は、当然ながら一般的な素材や設備よりコストがかかります。そのため、建築コストが高くなったことに不満をもつユーザーが一定数存在するようです。

 

 

理由③ メンテナンス・交換コストがかかる

画像:iStock.com/ baona

 

さまざまな住宅設備を導入するというのは、定期点検などのメンテナンスコストがかかることを意味します。さらに、それらの設備には耐用年数があり、高性能な設備のなかには10〜20年程度で新しい設備に交換しなければならないものもあるでしょう。

こうしたメンテナンスや交換時の費用負担に不満をもち、「ZEHは意味ない」とするユーザーもなかにはいるようです。

 

理由④ 耐震性に不安な部分がある

画像:iStock.com/ ArtistGNDphotography

 

ZEHの「創エネ」に用いられる設備のほとんどは太陽光発電です。住宅の屋根に取り付ける一般的なソーラーパネルは畳一畳分ほどのサイズで、パネル1枚あたりの重量は20kg程度あります。

必要となる枚数はソーラーパネルの搭載容量によって異なりますが、仮に必要とされるパネルの枚数を15枚とした場合、架台などのパーツを除いても重量300kgです。これだけの負荷が屋根にかかるわけですから、耐震性能を心配する人もいるようです。

 

 

理由⑤ (番外編)設置したエアコンが無駄になった

画像:iStock.com/Sayuri Inoue

 

これは直接的なZEHのデメリットというわけではないのですが、なかには従来の住宅と同じ感覚で各部屋にエアコンを取り付けてしまい、「必要なかった」「無駄だった」と後悔する人もいるようです。

ZEHは断熱性や気密性が格段に高まるため、必要となるエアコンの台数は従来の住宅よりも少なく済みます。そうしたことから、多めに取り付けたエアコンが「無駄になった」というケースもあったようです。

 

 

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本当に意味ない?後悔しないための知識・対策

上記で紹介したZEHに対する否定的な見方には、的を射ているものもあれば、まったくの的外れなものもあります。ZEHを建てて後悔したり、逆に建てなくて後悔したりしないための知識や対策を紹介します。

 

「光熱費がゼロにならない」は誤解

画像:iStock.com/AndreyPopov

 

まず「光熱費がゼロにならない」という指摘ですが、これは誤解にもとづくもので、それをもって「意味ない」というのは言い過ぎといえるでしょう。

前述のとおり、ZEHで正味ゼロ以下になるのは一次エネルギー消費量であり、そもそも光熱費ではありません。また、「一次エネルギー消費量等級」の算定対象も、おもな住宅設備(冷暖房、給湯、照明、換気など)だけであり、いわゆる家電製品は含まれていません。

ただし、たとえ光熱費はゼロにならないとしても、2025年度より義務化された省エネ基準をギリギリでクリアする省エネ住宅よりZEHのほうが光熱費削減が期待できます。たとえば、国土交通省の試算3)では、太陽光発電付きのZEHは省エネ住宅より年間の光熱費が8万6000円削減できるとしています(※3)

 

※3:WEBプログラムにより算定した二次エネルギー削減量に、小売事業者表示制度(2021年3月とりまとめ)の電気料金単価(27円/kWh)、都市ガス単価(156円/㎥)・換算係数(46.05MJ/㎥)、灯油単価88円/Lを乗じて算定。太陽光発電設備による発電量は自家消費を優先して対象住宅で消費される電力量から控除し、売電量については考慮しない。太陽光パネル付の省エネ住宅の仕様は、「ZEHのつくり方」(発行:(一社)日本建材・住宅設備産業協会)を参考に設定。東京等(6地域)。令和4年11月時点の情報。

 

 

建築コストは高くても「国の補助金」がある

画像:iStock.com/years

 

一方で、先ほど紹介した「ZEHが意味ないといわれる理由」のうち、明らかにZEHのデメリットといえるのが従来の住宅より割高傾向にある建築コストです。前述のとおり、ZEHは高性能な素材や設備を使用するため、当然コストが高くなります。

建築コストが割高なのは事実ですので、コストが高くなったことを不満に感じるユーザーもいることでしょう。

しかし、ZEHを建てたり購入したりする際には国のZEH支援事業による補助金を利用できますし、太陽光発電や家庭用蓄電池などを導入するときも自治体の補助金を併用できる場合があります。

ZEHは環境にやさしく脱炭素社会の実現に貢献する一方、従来の住宅に比べて建築コストが高いからこそ、国などが手厚い補助金によってユーザーや事業者を支援しているのです。ZEH補助金については後述しますので参考にしてみてください。

 

 

ソーラーパネルの屋根への影響は大きくない

画像:iStock.com/Halfpoint

 

ソーラーパネルによる耐震性への影響については心配する気持ちも理解できますが、それは旧耐震基準で建てられた古い既設住宅に設置される場合などに限られます。当然ですが、新築の場合はソーラーパネルの重さも考慮したうえで設計されていますので過度な心配は不要です。

また、住宅の屋根に与える荷重は分散されるため、屋根自体への負担はそれほど大きくありません。一般的に屋根置き型のソーラーパネルの施工では、屋根材の上にソーラーパネルを支える架台を複数箇所に配置します。それによりパネルの重さによる負荷が分散され、屋根本体に大きな負担をかけることはほとんどないといいます。

それでも耐震性が心配という場合は、ソーラーパネルが屋根に与える影響を含めて、ハウスメーカーや太陽光発電の施工業者などに相談するとよいでしょう。

 

 

 

じつはZEHには多くのメリットがある…!

「意味ない」「後悔した」との声がある一方で、ZEHには多くのメリットがあります。もっとも、経済性については前述のように光熱費の削減が見込めますが、そもそも建築コストが高いためにその効果を過度に期待することはできないでしょう。そこで、経済性を除いたZEHのメリットを3つに絞って紹介します。

 

メリット① 夏は涼しく冬は暖かい快適な暮らし

画像:iStock.com/ maruco

 

高い断熱性能をもつZEHには「夏は涼しく、冬は暖かいので快適に過ごせる」というとても大きなメリットがあります。

ZEHは高断熱化と高効率の設備で家のなかが常に快適な温度に保たれているため、ぐっすりと寝られて睡眠の質がよくなる、ということもあるでしょう。また、高い断熱性能に加え気密性能にも優れていますので、カビやダニの増殖の原因となる冬の結露に悩まされる恐れも減ります。

小さなことですが、このように「起床したらまず窓の結露を取り除く」という冬の朝の煩わしい習慣から解放される点ひとつをみても、ZEHにおける「快適な暮らし」といえるでしょう。

 

メリット② 健康リスクの低減効果が期待できる

画像:iStock.com/:Yau Ming Low

 

高断熱の家は室温を一定に保ってくれますから、高齢者や小さな子どもの健康リスクを低減する効果が期待できます。

たとえば、室内における代表的な健康被害に「熱中症」と「ヒートショック」があります。とくに高齢者は温度への感覚が弱くなるため、室内でも熱中症にかかりやすいとされます4)。また、急激な温度変化で血圧が大きく変動し脳卒中や心筋梗塞を引き起こすヒートショックも、65歳以上で生じるケースが大半です5)

しかし、家全体が夏は涼しく冬は暖かい快適なZEHには、こうした健康被害を予防する効果もあると考えられます。このように健康リスクを低減できる家という点も、ZEHの大きなメリットです。

 

メリット③ 非常時にも電気を使えるので安心

画像:iStock.com/ Tetiana Kitura

 

ZEHには「創エネ」が不可欠ですので、電気をつくる太陽光発電などの導入は必須となりますが、それとあわせて電気を貯める家庭用蓄電池も導入する人が多くなっています。たとえば、2024年度の国のZEH支援事業における家庭用蓄電池の導入率は約55%に達し、増加傾向にあります6)

この2つの設備を一緒に導入していれば、災害時に停電が起きても、安心して家族が生活することが可能となるでしょう。なぜかというと、太陽光発電のみだと昼間しか発電することができませんが、蓄電池があれば昼間に太陽光発電でつくった電気などを貯めておき、夜間も電気を使うことができるからです。

ZEHにおける「創エネ」は、あくまでも一次エネルギー消費量の収支を正味ゼロ以下にすることを目的としていますが、災害時にも役立つことは知っておいたほうがよいでしょう。

 

 

 

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ZEHの補助金の上限額はいくらぐらい?

前述のように、ZEHを建築・購入する場合、経済産業省・環境省の補助事業「ZEH補助金」を利用できます。

戸建住宅が対象の2025年度のZEH補助金は「ZEH」シリーズと「ZEH+」シリーズの2つの区分があります。それぞれの補助額は、「ZEH」「Nearly ZEH」「ZEH Orientedが一戸あたり定額55万円、「ZEH+」「Nearly ZEH+が一戸あたり定額90万円です7、8)

これに加え、要件を満たしたZEHに家庭用蓄電池や直交集成板(CLT)、地中熱ヒートポンプ・システムなどを導入する場合、さらに補助額が加算されます7、8)

なお、ZEH補助金は、ZEHを新築・購入する個人と新築住宅を販売する法人が申請対象者となりますが、いずれの場合も「ZEHビルダー/プランナー」(※4)が建築、設計または販売する住宅であることが条件とされています。

ZEHの新築・購入を検討する際には、必ずそのハウスメーカーや工務店が「ZEHビルダー/プランナー」として登録しているかどうかを事前に確認するようにしましょう。

 

※4:2030年ZEH普及目標の実現に向けて、2025年度の自社ZEH受注目標50%以上(または75%以上)を掲げるハウスメーカー、工務店、建築設計事務所、建売住宅販売事業者などのこと。

 

 

 

環境にやさしく快適なZEHの暮らしを楽しもう

ZEHの建築を考えているなら、ハウスメーカー選びがとても重要です。ポイントは、ZEHのメリットは当然ですが、デメリットについてもきちんと説明してくれるかどうかです。

「ZEHはここが高性能なのでコストが高くなります」「メンテナンスや交換費用もかかります」など、顧客のデメリットになるようなこともちゃんと説明してくれるメーカーは比較的安心です。

また、補助金に対する理解度も大切です。ZEHで実績のある工務店は除きますが、小さな工務店には自分が知っている範囲でしか補助金の対応をしてくれないところもあります。補助金にはユーザー側が申請するもの、登録事業者が申請するものなど、さまざまな種類がありますから、工務店側がちゃんと理解していなければ、補助金を受け取れない可能性もあるのです。

「光熱費がゼロにならなかった」と後悔しないようZEHについてよく理解し、環境にやさしく快適なZEHでの暮らしを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

初期費用0円で太陽光発電や蓄電池を導入する方法

ZEHには太陽光発電が欠かせませんが、それなりに価格が高くなるものです。東京電力グループが提供している「エネカリエネカリプラス」は、太陽光発電や蓄電池などを初期費用0円で導入することができるサービスです。しかもメンテナンスや保証もついているので維持コストを含めて将来の家計を計画的に設計することができます。

エネカリエネカリプラス」について詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。

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※「エネカリプラス」は別途足場代等の費用がかかる場合があります。

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の監修者
山本 久美子
山本 久美子

住宅ジャーナリスト。早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「東洋経済オンライン」「Yahoo!ニュース」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナー等の資格を持つ。江戸文化(歌舞伎・落語・浮世絵)をこよなく愛す。