スバル・トレイルシーカー 走りも荷室も冒険仕様の“CUV”

トレイルシーカーは、トヨタとの共同開発の中で生まれたBEVであるソルテラのステーションワゴン版となるニューモデルです。ただし、すでに販売中のソルテラがトヨタの元町工場(愛知県豊田市)で生産されるのに対し、トレイルシーカーはスバルの矢島工場(群馬県太田市)で生産されています。はたしてどんなクルマなのか? ソルテラとの違いは? モータージャーナリストの岡本幸一郎さんがレポートします。

 

トレイルシーカーは、スバル初の量販BEVであるソルテラのステーションワゴン版であり、日常でも非日常でも使いやすい、スバルらしい実用CUV(クロスユーティリティビークル)を商品コンセプトに掲げている。

トレイルシーカー

 

ソルテラを上回る荷室の広さと使い勝手

ソルテラに対してどこがどう違うかというと、機構面での共通性が高いのはご存じのことだろうが、大きく異なるのは、見てのとおり荷室の広さだ。633Lという荷室容量は、それなりに広いソルテラと比べても181Lも広くなっている。

ソルテラを上回る荷室の広さと使い勝手

 

ご参考まで、この数字はBEVではないが国内スバルのフラッグシップSUVだったアウトバックと比べても72Lも大きい。アウトバックに対しては、ボディサイズは小さいながらも、室内と荷室は広くなっているわけだ。写真からもその広さをうかがい知ることができるだろう。この広い荷室によるユーティリティの拡大はかなり大きいことが期待できそうだ。

リアシート

 

ちなみにインテリアについて、リアシートまではパッケージングとしては共通となっているが、シートの色が差別化されている。

コックピット

 

コックピットは先進的で使いやすい機能と、質感の高いシンプルな造形を両立。インパネには好みの色を選択できるアンビエント照明が備わり、上質で開放的な空間が構築されている。

センター

 

センターにはさまざまな機能を操作できるディスプレイが配されており、その下には左右2台分のスマホのワイヤレスチャージャーが備わっている。

 

デザインの差別化と力強い走りの進化

エクステリアにおけるソルテラとの相違点は、フロントバンパーまわり、Aピラーからルーフエンドにかけてとリアドアよりも後方が異なるほか、ラギッドなデザインのルーフレールや、アルミホイールなどが挙げられる。

ラギッドなデザインのルーフレールや、アルミホイール

 

位置づけとしては、ソルテラと比べると、ジャーニー(=ロングドライブ)寄りのキャラクターが与えられており、スバルの「アドベンチャー」をBEVで体現したモデルとなる。

スバルの「アドベンチャー」をBEVで体現したモデル

 

開発において力を注いだ点としては、雪国に対応したユーティリティと、リアモーターの出力を上げたゆとりあるパワー、駆動力の緻密な制御によるAWDの進化が挙げられる。

AWDの進化

 

トレイルシーカーにもソルテラにもAWD車とFWD車があるが、両者のフロントモーター出力は167kWと共通で、AWD車のリアモーター出力がソルテラは88kWのところ、トレイルシーカーはフロントと同じ167kWとされ、システム最高出力が252kW(342ps)から280kW(380ps)へと大幅に向上しているのがポイントだ。

走行

 

これにより0-100km/h加速もAWD車ではソルテラの4.9秒から4.5秒に短縮している。ただでさえ5秒を切ると速いほうに属するところ、4.5秒というのはかなりのもので、実際にも踏み込むと相当に速い。普通に乗るととても扱いやすいのに、いざとなればすごく速いのだ。性能だけ見ても、この価格帯でこれほどの性能のクルマが買えるというのはなかなか驚きだ。また、回生ブレーキの強さをパドルシフトで5段階に調整できるのも重宝する。

 

ロングドライブを支える航続距離と充電性能

もうひとつ、トレイルシーカーがすごいのは、足の長さだ。高効率パワーユニットと74.7kWhの大容量バッテリーにより、ゆとりのある航続距離を実現していて、一度の満充電で遠くまで出かけられる。

大容量バッテリー

 

具体的には、今回試乗したET-SSグレードのAWD車は690km、FWD車ならさらにぐんと伸びて734km、上級のET-HSグレード(AWDのみ)は同じく690km、オプションの20インチタイヤ装着車なら627kmとなる。

走行

 

これだけ走れれば、普段の運転はもちろん、ちょっとした旅行などにも気軽に出かけられるというものだ。しかも短時間で一気に充電できるところもたいしたもので、バッテリーの温度管理もきめこまかく行き届いているため、急速充電についても、バッテリー温度が約25度で150kW出力の急速充電器を使えば約28分で満充電量の10%から80%まで素早くチャージできる。もう少し低く見積もっても、これなら買い物や休憩の間に十分な電力を確保できると思っていいだろう。

充電

 

6kW出力の普通充電の場合は、約13時間で満充電になる。クルマを使わない夜間に充電しておけば、翌朝までに十分な電力がチャージされる。充電の開始・終了時刻を設定することもできる。もちろんV2HV2Lなどの外部給電にも対応している。

 

悪路も長距離も快適にこなす高い総合性能

操縦安定性においても、ソルテラの最新版からさらに進化しており、走行軌跡予測制御の熟成による新AWD制御を採用している。これは左右回転差フィードバックにより、回生力可変配分制御を行うというもので、旋回半径が従来よりも小さくなっている。

新AWD制御

 

最低地上高が210㎜も確保されている上に、悪路や急な坂道での走破性を高めるX-MODEも搭載されており、天候や路面状況を選ばず、いつでも不安に感じることなく運転することができる。

乗り心地が快適

 

さらに感心したのは乗り心地が快適なことだ。凸凹のある路面でも衝撃が伝わりにくい。サスペンションの動き出しから不快な振動を遮断するようダンパーをセッティングし、長距離でも疲れないようにしたという成果の表れといえそうだ。

日常でも非日常でも使いやすいクルマ

 

よく走り、たくさん積めて、ロングドライブでも快適そのもの。まさしく商品コンセプトどおり、日常でも非日常でも使いやすいクルマに仕上がっているし、SUVのBEVは数あれど、こういうキャラクターのクルマというのはあまり心当たりがない。いかにもスバルらしい実用CUVのニューモデルに違いない。

 

撮影:宮越 孝政

 

トレイルシーカー ET-SS(AWD)

全長×全幅×全高 4845mm×1860mm×1675mm
ホイールベース 2850mm
車両重量 2010kg
最小回転半径 5.6m
モーター種類 交流同期電動機
最高出力 前167kW 後167kW 合計280kW(380ps)
最大トルク 前268Nm 後268Nm
バッテリー種類 リチウムイオン
バッテリー総電力量 74.7kWh
バッテリー総電圧 391V
一充電走行距離 690km
電費(交流電力量消費率) 121Wh/km
駆動方式 4WD
サスペンション 前:ストラット 後:ダブルウィッシュボーン
タイヤサイズ 前後235/60R18
税込車両価格 594万円

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

 

この記事の著者
岡本幸一郎
岡本 幸一郎

1968年富山県生まれ。父の仕事の関係で幼少期の70年代前半を過ごした横浜で早くもクルマに目覚める。学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作や自動車専門誌の編集に携わったのちフリーランスへ。これまで乗り継いだ愛車は25台。幼い二児の父。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。