EVのサブスクって何がいいの?KINTOに素朴なギモンを聞いてみました

KINTO

電気自動車(EV)の車種もずいぶん増え、購入を検討している人も多いはず。しかし、EVは車体価格が高く、購入に踏み切れない人もいるでしょう。そんなときに検討したいのが、最近話題の「車のサブスク」です。月額料金で車が借りられるのですが、EVを借りる場合、どのようなメリットがあるのでしょうか? 「車のサブスク」をいち早くはじめた株式会社KINTOにEV DAYS編集部が聞いてみました。

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まずは「車のサブスク」自体のメリットを深掘り。どんな人が利用してる?

お話をうかがったのは、トヨタグループで「車のサブスク」サービスを手がける株式会社KINTOの縄田敏行さん。縄田さんが統括する部署は、普段からオンライン相談を行うなど、「お客さまに近い部門」とのこと。もちろん、「車のサブスク」を知り尽くした人物です。そんな縄田さんにいろいろ質問してみましょう。

 

縄田敏行さん/株式会社KINTO CX推進部 部長

縄田敏行さん/株式会社KINTO CX推進部 部長。情報通信系企業に勤務した後、2019年10月に株式会社KINTOへ。カスタマーセンターやオンライン相談の運営、ガイドブックの制作などを監修。個人的にも大の車好き。

 

「車のサブスク」、その仕組みと利用者層は?

縄田敏行さん/株式会社KINTO CX推進部 部長

 

まず聞きたいのは、そもそも「車のサブスク」ってどんなサービスなの? ということ。世の中いろいろなサブスクサービスがありますが、車の場合はどうなのでしょう?

縄田さん「『車のサブスク』の大きな特徴は、車の維持に必要な費用を含めて、月々定額で車を利用できることです。これまでは車を購入しても、その後、さまざまな費用が発生しました。車検代や税金、保険代、消耗品の交換代、修理費など。これらはそれなりにかかるものです。サービスによってどこまで含まれるかは異なりますが、『車のサブスク』では、そういった“追加費用”を気にせず車を利用できるのです」

車は、持つ人や車種により維持費に大きな差が出やすいもの。その分、買った後の費用をイメージしにくかったといえます。こういった費用の“可変要素”がなくなる安心感、明朗会計であることは大きなメリットだと縄田さんは解説します。

 

〈図〉車にかかる費用に関する「購入」「サブスク」の違い

〈図〉車にかかる費用に関する「購入」「サブスク」の違い

 

また、似たようなサービスとしてよく比較されるのが「車のリース」です。定額料金で車を利用できるという点では「車のサブスク」とは大きく変わりません。

縄田さん「ただし、『車のサブスク』は月額料金に含まれるサービス(保険料、車検費用など)やメンテナンスが充実していることが多いですね。フルサービスのリースというイメージが近いのではないでしょうか」

では、どんな人が「車のサブスク」を利用しているのでしょうか。

縄田さん一番多いのは20〜30代の若年層で、まだ車を購入したことがない方ですね。KINTO契約者の約4割を占めています。若い方にとって車は高い買い物ですし、維持費にも不安を抱きやすい。そこでサブスクを選択される方が多いですね」

縄田さんは「一例ですが、400万円の車を一括で購入するより、同じ車を月額5万円で乗れるようになる、と考えたほうが一歩を踏み出しやすいという方は多いようです」と話します。

 

購入とサブスク、どっちがおトクなの?


この話の流れで気になったのですが、購入とサブスクでは、正直どちらが“おトク”なのでしょうか。たとえば一定期間、車に乗ったときの総額で見たら、どちらのほうが安くなるんですか?

縄田さん「お客さまの年齢や利用期間によってケースバイケースです。たとえば10年乗ったとき、トータルで購入のほうが安くなる可能性はもちろんあります。決して“購入より安くなる”ことを保証するサービスではありません

なお、若い方のほか、シニアの方の利用も多いのだとか。なぜでしょうか?

縄田さん「シニアの方は『自分がいつまで車に乗るかわからない』と考えることが多く、購入よりも、途中で解約できるサブスクを選ばれるケースがありますね」

「車のサブスク」は、最初から契約期間を決めるものと契約期間を決めないものがあります。KINTOでも「解約金フリープラン」という、解約金0円で利用期間を定めないプランがありますが、シニアの方の契約は多いようです。

 

〈表〉KINTOの料金プラン

  初期費用
フリープラン
解約金
フリープラン
契約 初期費用0円 初回契約時・再契約時に
「所定の申込金」が必要
中途解約時 「所定の中途解約金」が必要 中途解約金0円


▶︎KINTOの料金プランの詳細はこちら

 

縄田さん「そのほか、いままでトヨタ以外の車に乗っていた方が契約することも多いですね。じつはKINTOの全体の6割が『トヨタ車は初めて、もしくはトヨタ車以外からの乗り換え』というお客さまです。お試し気分で利用するという動機も多いようです」

「車のサブスク」の利用者は増えているようで、KINTOを例にすると、累計申込件数は5万件を突破(2022年11月時点)。2023年1月には月間の申込件数も過去最高となったといいます。

 

反対に「車のサブスク」が向いていない人は?


サブスクのメリットや利用者の実態はわかったものの、購入とは違い、あくまで自分の車ではないという面があります。その点でのデメリットはないのでしょうか?

縄田さん「そうですね。車に乗る方の中には、この車を『自分のものにしたい』という所有欲もあると思います。最近は、車を気に入ったら買取できる他社サービスもありますが、そういった方は、やはり購入したほうがいいでしょう。また、10年、20年と同じ車を乗り続けたいという方も購入が向いていると思います」

そしてもうひとつ、多くの「車のサブスク」ではいくつかの禁止事項が設けられています。これらも「購入のほうがいいか」を考える要素になるとか。

縄田さん「サブスクに限らず、車の所有権が事業者側にあるリースも同様ですが、車内禁煙などのルールがある場合が多いです。これは原則として返却時に最初と同じ状態であることが必要だからで、車を自分で改造するのも基本はNG。サービスによりますが、ペットの乗車も制限されることもあります。自分好みの車に変えたり、ペットと一緒にドライブしたりというのも、カーライフの大きな楽しみですから、そのようなことができないサービスもある、と認識するのは大切ですね」

 

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サブスクでのEV利用はどんなメリットがある?

資料

 

「車のサブスク」の全体像がわかったところで、次に知りたいのは、EVをサブスクで利用するときにどんなメリットがあるのか、ということ。縄田さんはメリットとして「EVに対する2つの大きな不安を解消できる」といいます。

縄田さん「2つの不安とは『リセール価格の不透明さ』と『バッテリー劣化の問題』です。これらはEVを検討する方の多くが悩まれるポイントですが、サブスクならリセールすることはありませんし、バッテリー劣化の不安もカバーしてくれる場合がほとんどです。KINTOでは最長10年を保証しており、バッテリー性能が当初の70%を下回ったら無料で交換します」

ちなみに、KINTOの場合、利用者は契約期間を満了すると、車を返却する仕組みなので、メーカーはバッテリーを100%回収できるそう。

縄田さん「メーカーにとって、バッテリーという“限りある資源”を有効利用するのは責務だと考えています。その意味で100%回収できる意味は大きい。“売って終わりではない”サブスクという形態だからこそできることだと思います」

縄田さん

 

ほかにも、EVのサブスクにはメリットがある様子。たとえば「補助金」です。EVを購入すると、国だけでなく自治体からも補助金を受け取れるケースがありますが、サブスクでもこの補助金の恩恵を受けることができるそう。

縄田さん「KINTOの場合、新車のEVをご利用いただく際、国や自治体への補助金申請を我々が行い、国や自治体から受け取った補助金は月額利用料に還元します。具体的には、補助金を48分割して、4年分(48カ月)の月額利用料に充当しています」

 

〈図〉bZ4Xを利用した場合、補助金の利用料への充当イメージ

〈図〉bZ4Xを利用した場合、補助金の利用料への充当イメージ

 

ちなみに、2023年2月現在、KINTOで借りられるEVはbZ4Xのみですが、こちらの車種を利用する場合、5年目以降、基本料金が下がっていく仕組みを採用。4年間の補助金期間が終わっても金銭的なメリットがあるので「長期で契約する人にも合うと思います」とのこと。

また、EVのサブスクのメリットはこれで終わりません。

縄田さん「EVはどんどん進化しています。数年後には、大きな技術革新が起きるかもしれません。もしその技術革新の手前でEVを購入していた場合、すぐに最新のEVに買い替えるのは難しいですよね。KINTOの場合、契約5年目以降は中途解約金もないため、ほかのEVに乗り換えたくなった場合はそのタイミングでご負担なく乗り換えていただくことも可能です」

 

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いざ検討を始めたとき、サービスを比較する際の注意点は?

「車のサブスク」サービスを展開する事業者は数多くあります。もしも本格的に契約しようと考えたとき、各社のサービス内容を比較する上で注意点はあるのでしょうか。

縄田さん「まずは月額利用料にどの費用が含まれるかチェックすることですね。保険料は別だったり、含まれていても対象となる保障が限定的だったりということも。サービスごとに差があるので、注意して見てください」

たとえばKINTOの料金プランでは、燃料費(電気代やガソリン代)と駐車場代以外は「ほぼ月額利用料に含まれています」と縄田さん。こういった中身をチェックすることが重要になりそうです。

縄田さん解約条件も注意深く見ておきましょう。一定年数は解約不可という“縛り”を設けているケースは多く、解約時に清算金が発生することもあります」

こういった契約内容をチェックするほか、「車のサブスク」でEVの利用を検討する際は、充電環境も調べるのが大切とのこと。

縄田さん「サブスクだったとしてもEVを手元に置いて、日々運転することは購入する場合と変わりません。“手軽に利用できる”と思って抜け落ちてしまうのが、充電環境の下調べです。自宅で充電できるのか、通勤ルートなどのよく通る道に充電可能なスポットがあるのか。日々の使い方における充電マネジメントを考えておくことは大切だと思います」

 

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契約形態や専用アプリも進化。サブスクによってEVの裾野が広がる

資料とミニカー

 

こういった内容をチェックした上でサブスクを利用すれば、快適なカーライフに近づくはず。なお、「車のサブスク」は年々進化しており、利用者の好みやシーンに合わせた新しいサービスが生まれています。それらの情報をこまめにチェックするのも大事でしょう。

新しいサービスの例として、これまで「車のサブスク」は契約後に自分で装備を後付けするのは難しいのが一般的でした。しかしKINTOの場合、契約した後にハードウェアの後付けをしたり、車の性能に関わるソフトウェアをアップグレードしたりできるサービスが出ています。「KINTO Unlimited」というものです。

そのほか、車のサブスクの利便性を上げるアプリも登場。その一例が「わりかんKINTO」。車を家族とシェアする際のスケジュール管理を行えたり、友人と車をシェアする場合に、1ヵ月の月額料金を割り勘で支払う機能がついていたり。サブスク中の車をみんなでシェアしやすくするサービスです。

こういった進化版サービスやアプリは今後も増えるでしょう。縄田さんもそんな気持ちを口にします。

縄田さん「お客さまの困りごとやニーズにもとづいて、日々いろいろなサービスを考えてきました。これからも皆さんが感じることを聞きながら、よりよいサービスを作り上げていきたいですね」

サブスクは、新しい車利用の仕組みのひとつ。KINTOをはじめとしたサブスクサービスは、多くのユーザーのEVデビューを後押しするきっかけになりそうです。

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
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