ボルボ・EX30。環境性能と美しさを両立した最先端コンパクトEV

ボルボ・EX30

EVならかくあるべしとでもいうように、一目見てわかる未来的なデザイン。サステナブルで居心地がいいインテリアに、高い安全性。北欧プレミアムに求める要素をしっかりと押さえ、さらに楽しい一台に仕上げたのが、ボルボのコンパクトEV「EX30」です。その出来のほどを、モータージャーナリストのまるも亜希子さんがレポートします。

ボルボ史上最小サイズの電気自動車でありながら、最大のチャレンジによって完成したといえるのが、EX30です。設計、素材、製造過程にいたるまで革新的な環境負荷軽減効果を追求しており、それでいてボルボらしいデザインや心地よい室内空間、ハイパフォーマンスな走りを手にしているという、時代の最先端をいく一台。知れば知るほど惹かれていく、EX30の魅力をひもといていきたいと思います。

 

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小さなサイズを感じさせない、人も地球も喜ぶデザイン

ボルボは2040年までに完全な循環型ビジネスを実現するという、大きな目標を掲げています。その取り組みの一環としてまずは2025年までに、リサイクル素材およびバイオ素材のプラスチック使用率を25%に、リサイクルアルミニウム使用率を40%に、リサイクルスチール使用率を25%にすることを宣言。今回のEX30では、それぞれ17%、25%、17%まで達成し、ボルボ史上最もカーボンフットプリントの少ないクルマとなっています。

ボルボ・EX30

 

これを踏まえてデザインを見ていくと、なるべく製造時の環境負荷をなくし、リサイクル性をよくして廃棄物を最小限にするための工夫と、小さなサイズでもしっかりとした存在感、ボルボらしさを感じさせるための工夫が、さまざまなアイディアによって完成されていることに感心します。

ボルボ・EX30

 

たとえばエンジンを冷やす必要のない電気自動車らしくグリルレスのシールドデザインを採用したフロントマスクには、ボルボ伝統のT字型の「トールハンマーライト」が印象的な表情を作りつつ、ライトから下へと続く黒いグラフィックは空力性能に貢献するエアカーテンとなっており、ホイールアーチまで効率よく空気を流します。

ボルボ・EX30

 

航空機のようにボディの上下に空気を流すことも考慮したルーフラインは、オニキスブラックを採用してSUVとしての存在感も表現。リサイクル性をよくするため、あえて塗装をしない樹脂パーツや、製造過程の負荷を減らすフレームレスのサイドミラーといった細部にまでこだわりが込められています。

ボルボ・EX30

 

ボディサイズで注目したいのは、全高が1550mmに抑えられているところ。機械式立体駐車場に多い高さ制限をクリアでき、全幅も1835mmなので都心部でも駐車しやすいはずです。市街地を走っていても、試乗で出かけた箱根の芦ノ湖という自然の中でも、どちらでもスッと溶け込みつつ目を惹く、新鮮なたたずまいが印象的でした。

 

心地よい室内空間のために、いきついたのは集中化というテーマ

限られたスペースの中で、乗る人にどのようにして開放感と使いやすさを感じてもらうか。いきついたテーマは集中化だったといいます。EX30の室内空間は、まるでその答えを見つけていくような楽しさがあちこちにちりばめられたインテリアなのです。

ボルボ・EX30 車内

 

たとえばダッシュボードのボリュームを抑えながら、フロントガラスのすぐ下にスピーカーを集約したサウンドバーを配置しています。これによってドアへの配線をなくし、大きなドアポケットを設置することができました。運転席と助手席の間には、前にスライドするセンターコンソールを設置。使わない時は空間を広くでき、使う時にはカップホルダーや小物入れなどフレキシブルに活用できるようになっています。そしてパワーウインドウは4つあるのに、なぜかスイッチは2つ。後ろの窓を操作する際には、「REAR」ボタンで切り替えて開閉します。これらは配線や部品点数を少なくしながら、美しさと使いやすさを両立するという循環型デザインの1つ。シート調整のボタンも、1つで何通りもの操作が可能となっています。

ボルボ・EX30 車内

 

そして、タッチ操作か声での呼びかけによって多くの情報を得ることができる、縦型の大きなディスプレイのGoogleインフォテインメントにも、ボルボらしい工夫が。トップ画面に配置されるアイコンは、走行中や停車中など、状況に合わせて必要とされるアイコンが自動で入れ替わるようになっています。ヘッドライトの切り替えや安全装備の設定などもディスプレイで操作しますが、必ずステアリングのスイッチを押して変更を確認するという2段階。安全性が最優先という意識が伝わります。

ボルボ・EX30とまるもさん

 

また、従来は白い光だけだったアンビエントライトに、初めてカラーが加わりました。森の清々しさを感じる「FOREST BATH」や北欧らしいオーロラの「NORTHERN LIGHTS」など5つのテーマが設定され、イルミネーションの光と音、さらにディスプレイの映像で室内空間を演出。ほのかな光の揺らぎが目にもやさしく、とても癒される時間になりました。

ボルボ・EX30 ラゲッジルーム

 

ラゲッジルームは318Lの容量があり、その下にあるアンダーフロアストレージも61Lと大きめ。ボンネット下にも「フランク」と呼ばれる小さな収納スペースが用意されています。また、後席を6:4分割で倒すことができ、すっきりとフラットになります。

 

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穏やかにもパワフルにも自在のパフォーマンス

ボルボ・EX30 充電口

 

現在日本で購入できるEX30は、シングルモーターで69kWhの大容量バッテリーを搭載し、航続距離560km(WLTCモード)のロングレンジを実現している「Ultra Single Motor EXtended Range」です。AC200Vの普通充電器とCHAdeMO規格の急速充電器に対応しており、ディスプレイで最大充電量(%)を任意に設定したり、充電中の状況確認や充電予約をしたりもできます。

ボルボ・EX30とまるもさん

 

EX30にはスタートスイッチはなく、キーを携帯して乗り込めばシステムがオン。ブレーキを踏んでステアリングコラムにあるギアセレクターを押し下げてDに入れれば、いつでも発進可能となります。その走りは出足からしっかりとした接地感がありながら、とても軽やか。他社のコンパクトEVと比較すると圧倒的に速い、0-100km/hが5.3秒という俊足の持ち主で、市街地や郊外路での加速フィールにも余裕があります。ステアリングフィールには適度な手応えがあり、カーブが続くようなシーンでも一体感があって爽快。ディスプレイでワンペダルの操作をオンにすることもでき、山道などで頻繁なペダルの踏み替えが不要になり、停止まで対応します。

ボルボ・EX30

 

そして高速道路に入ると、合流や追い越し加速の鋭さを体感。でもその後は静かで穏やかなクルージングを続けることもできて、安心感に包まれたドライブとなりました。時にはEVならではの俊敏さを堪能しつつ、ガソリン車から乗り換えても自然に感じる穏やかさも持ち合わせているEX30。もちろん、最小回転半径が5.4mという取り回しのよさも魅力です。

 

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数々のチャレンジがつくる新しい豊かさに包まれて

運転中に身体を支えてくれるシートや、手が触れるドアインナーパネル、頻繁に目に映るダッシュボードのパネルなど、それらすべてにペットボトルのリサイクル素材や自然由来の素材、製造過程で発生する端材や廃棄物から作られた素材を使うという、とても難しいチャレンジによって仕上げられている、EX30のインテリア。日本仕様では3タイプがあり、「Mist.」はウールやコルクなどの自然由来の素材やリサイクル素材が調和する、エクスクルーシブな印象です。通気性に優れ、夏はさらっとして冬は暖かく、汚れも目立ちにくいのが特徴。

ボルボ・EX30 シート

 

「Breeze.」は織る段階からシートに合わせて作られるため、端材が出ないピクセルニットという3Dニットを使用しています。インパネには、破砕したブラインドなど従来は廃棄されていた素材を混ぜたリサイクル素材からできており、掃除がしやすいメリットがあります。

ボルボ・EX30とまるもさん

 

そして、遅れて導入される「Indigo.」には、リサイクルポリエステルや廃棄されたデニムの繊維を使用した素材が使われ、カジュアルな中にも落ち着いた雰囲気のある空間となっています。今回の試乗車は「Mist.」でしたが、ボルボのチャレンジによって生まれ変わった素材たちに触れていると、心地よさとともに前向きな気持ちが湧き出してくるかのよう。これまでに感じたことのない、新しい豊かさで包んでくれるSUVです。

 

撮影:宮門秀行

 

<スペック>

全長×全幅×全高 4235mm×1835mm×1550mm
車両重量 1790kg
バッテリー総電力量 69kWh
一充電走行距離 560km(WLTCモード)
電費 143Wh/km
モーター最高出力 200kW(272ps)/6500-8000rpm
モーター最大トルク 343Nm/5345rpm
駆動方式 RWD
最小回転半径 5.4m
税込車両価格 559万円

 

ボルボ・EX30の車種詳細はこちら

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

〈ギャラリー〉

ボルボ・EX30

 

ボルボ・EX30

 

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この記事の監修者
まるも 亜希子
まるも 亜希子

カーライフ・ジャーナリスト。映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツに参戦するほか、安全運転インストラクターなども務める。06年より日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。女性パワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト」代表として、経済産業省との共同プロジェクトや東京モーターショーでのシンポジウム開催経験もある。