電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のユーザーなら「V2H」に注目している人も多いはず。V2Hを導入すれば、災害時にEV・PHEVが搭載する大容量バッテリーを自宅の非常用電源として活用でき、EV・PHEVの充電時間を大幅に短縮することも可能です。そこでEV DAYS編集部はV2Hの設置サービスを提供している東京電力グループのTEPCOホームテックに取材を行い、設置現場に密着! V2H設置の流れと施工ポイント、注意点について解説します。
- 依頼から工事まで。V2H設置の手順を解説!
- 設置工事ドキュメント! 自宅にV2Hを設置する現場を密着レポート
- 今回、V2H機器を設置する場所はこちらの駐車場
- [9:30]家主さんと相談して設置場所を最終決定する
- [10:00]V2H機器と接続する分電盤の状況を確認
- [10:30]分電盤とV2H機器間の配線ルートをチェック
- [11:00]駐車場に基礎を設置し、V2H機器を搬入
- [11:30]ブレーカーと切替スイッチのボックスを仮設置
- [12:00]ボックスの裏側から天井裏へケーブルを通す
- [13:30]駐車場でケーブルの配管工事を行う
- [14:00]ブレーカーと切替スイッチの配線工事
- [14:30]V2H機器にケーブルを接続する
- [15:40]システムが正常に動作するかを確認
- [16:00]コントローラーアプリの初期設定をする
- [16:10]家の電源を落として自立運転テストを実施
- [16:20]家主さんに切替スイッチの使い方をご説明
- V2H設置工事で注意したいポイントは?
- V2H導入を検討中なら気軽にお問い合わせを!
【今回の取材協力企業】
TEPCOホームテック株式会社
太陽光発電やエコキュート、蓄電池といった電化設備を中心に設計・施工からアフターメンテナンスまでを担う企業。EV関連の施工も請け負っており、一般住宅に対してはEV用充電器(200Vの充電用コンセント)のほか、V2Hの施工も行っている。東京電力グループならではの電気全般に対する深いノウハウを持っているのが特徴。
▶︎Web
依頼から工事まで。V2H設置の手順を解説!
施工現場のレポートを見ても、V2H導入がどのような手順で進んでいくのか、大まかな流れを把握しておかないとピンとこないかもしれません。まずは設置までの手順について簡単に紹介しましょう。
設置工事の申し込みから設置工事までは最短1カ月
TEPCOホームテックにV2H導入を依頼した場合、以下のような流れで設置まで進みます(備考欄の期間や時間は目安)。
手順 | 備考 |
①施工業者へ問い合わせ | 電話及びWebサイトから |
②施工業者から折り返し連絡 | ─ |
③現地調査の申込み | ─ |
④現地調査の訪問日の調整 | 希望日に合わせて設定 |
⑤現地調査 | 1時間程度 |
⑥お見積り | 現地調査から1週間程度 |
⑦(補助金の申請) | (お見積りから1カ月程度) |
⑧契約締結 | ─ |
⑨工事日の調整 | 希望日に合わせて設定 |
⑩工事 | 1日程度 |
V2H機器の設置にあたっては必ず現地調査を行います。現地調査では「V2H機器を設置予定の場所」「分電盤の設置場所」「メインブレーカーの容量や種類、変更の有無」「分電盤からV2H機器を設置する駐車場までの配線ルート」などを確認し、これらの状況によりどのようにV2H機器を設置するかを決めていきます。
それぞれの家の状況によって設置工事の内容が変わってくるため、工事費用の見積りは現地調査が終わった後に行われます。
なお、申し込みから設置までは1カ月程度ですが、補助金の申請から交付決定までは国や自治体によって1カ月〜数カ月程度の時間がかかります。また、2023年3月現在、V2H機器の納期が遅くなっています。
V2Hを今後導入しようと考えている人は、ある程度の時間がかかるということを頭に入れておいたほうがいいでしょう。
設置工事ドキュメント! 自宅にV2Hを設置する現場を密着レポート
ここからは実際の設置工事の様子をレポートしていきます。現場は関東近郊のとあるお住い。工事を行ったのはアシスタントを含めた3名の職人さんです。なお、今回設置するのはV2H機器の代表的な機種のひとつであるニチコンの「EVパワーステーション プレミアムモデル」、V2H機器と接続する車両は三菱「ekクロス EV」でした。
今回、V2H機器を設置する場所はこちらの駐車場
こちらがV2H機器を設置する駐車場です。今回設置する「EVパワーステーション プレミアムモデル」は幅809mm×高さ855mm×奥行き337mmで、エアコンの室外機より若干大きいサイズ感です。そのため、設置する場所はどこでもいいというわけにはいきません。V2Hから伸びるケーブルの長さ、駐車スペースとの兼ね合いを考慮しながら、もっとも適切な場所を探っていきます。
[9:30]家主さんと相談して設置場所を最終決定する
9:30に作業がスタート。まずはV2H機器を設置する場所を家主さんの希望を聞きながら決めていきます。
ポイントのひとつはV2H機器から伸びるケーブルの長さです。「EVパワーステーション プレミアムモデル」の充放電に使われるケーブルは約7.5m。駐車場においては十分な長さがあるように思えますが、「ekクロスEV」の充電口は車両右側後部にあるので、車と離れすぎた場所にV2H機器を設置すると日々の充電に苦労します。かといって、車の側面に設置するとドアが開けづらくなって乗り降りするのが大変です。
30分ほどかけて家主さんとすり合わせを行い、最終的にスペアタイヤが置かれた駐車場奥のスペースに設置することになりました。個々の自宅の状況によりますが、意外とこの工程は時間を要します。
[10:00]V2H機器と接続する分電盤の状況を確認
次に浴室の脱衣所に設置された分電盤を確認します。家庭に送られてきた電気は各部屋・機器へといくつもの回路に分けられていますが、こうした電気の分配のほか、使いすぎや漏電を防ぐブレーカーなどが設置されているのが分電盤です。
V2Hを導入する場合、V2H用のブレーカーと停電時の自立運転のための切替スイッチを新たに取りつける必要がありますが、今回はスペース的に分電盤に収納できません。そこで分電盤の隣にV2H用のブレーカーと切替スイッチを収めるボックスを設置することになりました。
[10:30]分電盤とV2H機器間の配線ルートをチェック
分電盤を確認したら、分電盤とV2H機器とをつなぐケーブルの配線ルートを天井裏や建物の床下を見て念入りにチェックします。
今回の設置工事では、分電盤から浴室天井裏にケーブルを通し、そこから床下にケーブルを伸ばして駐車場に設置したV2H機器に接続しました。ただ、天井裏や床下を通せない場合も稀にあり、配線ルートは個々の家の状況で変わるそうです。
[11:00]駐車場に基礎を設置し、V2H機器を搬入
配線ルートの確認と並行して、駐車場にコンクリートブロックの基礎を設置します。さらに、2人がかりでV2H機器を持ち上げて駐車場に搬入し、コンクリートブロックの基礎の上に設置。しっかりとV2H機器を固定します。
この間にV2H用ブレーカーと切替スイッチを取りつけることを家主さんに説明。また、停電時はこのスイッチで自立運転に切り替えて、EVにコネクタを挿して起動することなども説明します。
[11:30]ブレーカーと切替スイッチのボックスを仮設置
ケーブルを通す壁の穴の位置を決めるため、分電盤の横にV2H用のブレーカーと切替スイッチのボックスを仮設置します。さらに、その反対側には「HEMS連携機能」とスマートフォンやタブレット専用の「コントローラーアプリ」を使用するための通信アダプタも仮設置します。
なお、HEMS(ヘムス)は「ホーム・エネルギー・マネジメント・システム」の略称で、家庭で使うエネルギーを効率的に管理するシステムのことです。V2Hなどの電気設備や家電とつないで、使用状況をモニター画面などで「見える化」したり、各機器を「自動制御」したりしてくれます。
[12:00]ボックスの裏側から天井裏へケーブルを通す
仮設置したブレーカーや切替スイッチのボックスを取り外して壁に穴を開け、そこから天井裏へケーブルを通し、床下へと落とします。大小4本のケーブルからなる太いケーブルなので、穴に通すのにもひと苦労です。
今回のお宅には太陽光発電が設置されていたため、太陽光発電との連携を確認するのに、暗くならないうちに作業を終わらせる必要があるので、職人さんたちはテキパキと作業を進めていきます。
[13:30]駐車場でケーブルの配管工事を行う
30分程度の短いお昼休みが終わると、V2H機器が設置された駐車場の動きが活発になります。まずは、先ほど床下へ落としたケーブルを駐車場まで運び、床下と外壁側でケーブルの受け渡しを行います。
その後、建物の床下から4本のケーブルを出し、屋外用のコルゲートチューブ(スリット加工が施されているケーブルを保護するチューブのこと)に収納していきます。
さらに、コルゲートチューブと同色のクランプとビスで建物の外壁にケーブルを固定し、外からは目立たないように建物に沿ってV2H機器のほうへとケーブルを伸ばしていきます。
[14:00]ブレーカーと切替スイッチの配線工事
駐車場で配管工事を行うのと同時に、追加した分電盤にV2H用ブレーカーと切替スイッチを取りつけ、配線工事を進めます。なお、工事中の音は思ったよりも大きくなく、ほとんど建物の外には漏れていませんでした。これなら近所迷惑を心配しなくてもいいでしょう。
[14:30]V2H機器にケーブルを接続する
配管工事が終わると、いよいよ次はV2H機器への接続です。機器下部のパイプ入力部からケーブルを挿し込んでケーブルを接続します。
V2H機器には「系統電力用」「自立出力用」の2本の電線と、「通信アダプタ用」「CT用」の2本の通信線を、それぞれ接続端子や接続コネクタに1本ずつ接続していきます。
[15:40]システムが正常に動作するかを確認
V2H機器本体へ接続したら、EVの充電口に充電ケーブルを挿し込み、家主さんを交えてシステムの動作確認を行います。
写真ではわかりづらいですが、EVに充電しているときはV2H機器上部にあるオレンジ色の「充電」ボタンが光り、EVの大容量バッテリーに蓄えられた電気を自宅に給電するときは水色の「放電」ボタンが光ります。問題なく動作したので家主さんもひと安心です。
[16:00]コントローラーアプリの初期設定をする
設置工事は終わりましたが、まだいくつかやることが残っています。そのひとつがアプリの設定です。今回設置した「EVパワーステーション プレミアムモデル」は、専用のコントローラーアプリを使ってV2Hを操作したり運転状況を確認したりすることができます。
[16:10]家の電源を落として自立運転テストを実施
通常時の動作確認が終わると、次に停電時の自立運転テストを行います。V2Hは災害時の非常用電源に活用できるのが大きなメリットとなるシステムですから、この自立運転テストは非常に重要です。
[16:20]家主さんに切替スイッチの使い方をご説明
最後に家主さんに設置工事の報告、そして切替スイッチやコントローラーアプリの使い方をご説明し、疑問点などにお答えします。これで9:30にスタートしたV2H設置工事がようやく終了となりました!
V2H設置工事で注意したいポイントは?
今回の設置工事はあくまで一例にすぎません。施工現場のレポートを見てもまだ導入に不安を感じているEV・PHEVユーザーもいることでしょう。そこで、TEPCOホームテックからV2H導入にあたって注意すべきポイントをいくつか教えてもらいました。
ポイント①V2H機器の設置場所をよく打ち合わせる
事前に現地調査を行っていても、V2H機器の設置場所の決定には想像以上に時間がかかります。「EVパワーステーション プレミアムモデル」の場合、充電ケーブルの長さが7.5mなので、EV・PHEVの充電口とV2H機器の距離や位置関係をよく考えなければいけません。実際に今回の設置工事では最初に設置場所を決めるのに30分以上の時間を費やしました。
設置工事を依頼するときは駐車場のどこにV2H機器を設置すると使いやすいか、施工業者とよく打ち合わせしたほうがいいでしょう。
ポイント②駐車場の構造によって配管工事が変わる
今回の設置工事では屋根裏や床下にケーブルを通し、また、建物の外壁と同じ色のコルゲートチューブに収納することで配線を目立たなくすることができましたが、こうした配線工事は個々の住宅や駐車場の構造によって変わってきます。たとえば、今回の工事ではケーブルを駐車場の土を掘って地中に埋める案も検討されました。
V2H機器に接続するケーブルをどのように処理したいか、どうカモフラージュしたいかを現地調査の際に施工業者とよく打ち合わせておくと、当日の設置工事がよりスムーズに進むかもしれません。
ポイント③ライフスタイルを考えて導入を検討する
V2Hは自分のライフスタイルをよく考えて導入を検討することをおすすめします。
たとえば、V2Hは太陽光発電でつくられた余剰電力をEV・PHEVに充電し、フル充電になったら売電に割り振るといった使い方ができることもメリットのひとつです。しかし、日中にEV・PHEVに乗って頻繁に移動する人だとこの利点が薄れてしまいます。
そのため、自分のEV・PHEVの使い方、ライフスタイルがどういうものなのかをよく考えて導入を検討することをおすすめします。
V2H導入を検討中なら気軽にお問い合わせを!
EV・PHEVの普及とともに注目度が高まりつつあるV2Hですが、まだそれほど一般的とは言えません。しかし、EV・PHEVユーザーが導入すればV2Hには多くのメリットがあり、ご覧のように設置工事もそう難しいものでなく、1日で設置が完了します。
東京電力グループのTEPCOホームテックは電気に関する知識が豊富で、V2Hの設置工事はもちろん、自宅の電気契約容量などの相談にも応じてくれます。V2H導入を検討中でしたら、まずはTEPCOホームテックへ相談してみてはいかがでしょうか。自宅に最適な提案をしてくれます。
また、初期費用が心配な方に最適なサブスク型サービス「エネカリ」で、初期費用0円でV2Hを導入することもできます。詳しくは、以下からお問い合わせください。