【2024年最新版】V2Hの対応車種(EV・PHEV)一覧。バッテリー容量・価格も徹底解説

V2H対応車種一覧

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)は大容量バッテリーを搭載し、蓄えた電気を「V2H」を通じて家庭で有効活用することができます。ただし、V2HはEVのある暮らしを豊かにしてくれる一方、すべてのEVやPHEVがV2Hに対応しているわけではありません。そこで、V2Hに対応している車種をメーカー別にご紹介(2024年1月現在)。V2Hの導入を考えている方は、対応車種を確認したうえで検討するようにしましょう。

※この記事は2022年11月24日に公開した内容をアップデートしています。

 

 

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V2H対応車種のメリットとは?

V2H(Vehicle to Home)とは、直訳すると「車から家へ」という意味になり、EVPHEVが搭載する大容量バッテリーを家庭で有効活用するためのシステムや考え方を指す言葉です。そもそも、V2H対応車種にはどんなメリットがあるのか、導入時の注意点と合わせて紹介します。

 

EVの大容量バッテリーを家庭で有効活用できる

近年のEVやPHEVのバッテリーは数百kmもの長距離走行に対応できるほど大容量になっています。しかし、それだけの大容量バッテリーですが、走行していない時間帯には、いわば「置物」になってしまっているという、もったいない事実があります。

この「もったいない」を有効活用するのがV2Hです。V2Hを導入すれば、普通の蓄電池に比べ数倍~数十倍もの容量があるEVやPHEVの大容量バッテリーを家庭用電源としても使えるようになり、万が一の停電時に非常用電源として役立つほか、電気代の節約も期待できます。また、V2Hを導入することでEVやPHEVの充電をより速く効率的に行えるようにもなります。

〈図〉V2Hがある場合・ない場合の違い

〈図〉V2Hがある場合・ない場合の違い

 

 

V2Hに「対応する車種」と「対応しない車種」がある

その一方、現時点では国産車・輸入車のすべてのEVやPHEVがV2Hに対応しているわけではありません。国産車のEVは多くがV2Hに対応していますが、輸入車のEV、とくに欧州車はほとんどがV2H非対応となっていますから注意が必要です。これは、V2HがCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電口を使用するため、そもそもPHEVに多い、急速充電に対応していない車種は利用できません。また、急速充電に対応している車種の中でも、V2H機能に対応している車種と対応していない車種があるからです。

なお、V2H機器の機種によっても、接続できるEVやPHEVの車種が異なる場合があります。EVやPHEVを購入する際には、事前にV2H対応車種かどうかを調べておくことが重要です。

【メーカー別】V2Hに対応するEVをご紹介

いま日本で新車購入できるV2H対応車種は国産車が中心となります。EV、PHEVのほか、FCEV(燃料電池自動車)にもV2H対応車種がありますが、電気を多く貯められるという点を考えれば、バッテリーが大きい車ほど有利なのは言うまでもありません。

また、大きなバッテリーを積んでいればいるほど、万が一の停電時などに長時間、家庭に電気を供給することができます。災害時対応を考えると、V2Hと組み合わせるには「容量の大きなバッテリーを積むEV」がもっとも適していると言えます。

そこで、V2Hに対応するEVやPHEVのうち、まずはEVからV2H対応車種の顔ぶれを見ていくことにしましょう。

〈表〉V2Hに対応する販売中のEV  ※メーカー50音順

メーカー 対応車種
スバル ・ソルテラ
トヨタ(レクサス) ・トヨタbZ4X
・レクサスRZ
・レクサスUX300e
日産 ・リーフ
・アリア
・サクラ
ヒョンデ ・KONA
・IONIQ 5
BYD ・ATTO 3
・DOLPHIN
ホンダ ・Honda e
マツダ ・MX-30 EV MODEL
三菱 ・eKクロスEV
・ミニキャブEV
メルセデス・ベンツ ・EQS
・EQS SUV
・EQE
・EQE SUV

※IONIQ 5のバッテリー電圧は一般的なEVの倍近い800V級のため、V2Hで充電・給電を行う際には、変圧に伴い相応の電力ロスが生じ、通常より効率が落ちます。そのため本稿での車種別の紹介は割愛します。詳しくはヒョンデが発表しているお知らせをご覧ください。

 

現在、V2Hに対応しているEVは上記の表のとおりです。ここからはそれぞれの車種について、メーカーの特徴とともに解説します。

 

スバル

スバルロゴ

 

スバルは2050年のカーボンニュートラルを目指しています。ただし商品ラインアップの電動化については、まだまだこれからといった段階で、ここでご紹介する「ソルテラ」が唯一のゼロエミッション車です。

 

ソルテラ 1)

 

「ソルテラ」はトヨタと共同開発したSUVスタイルのEVで、駆動方式は前輪駆動(最高出力150kW)と四輪駆動(最高出力160kW)を用意しています。バッテリー容量は71.4kWhと共通で、急速充電の最大受入能力は150kWにも及びます。一充電航続距離は487~567km、V2Hに活用する急速充電口は左前のフェンダー部分に置かれています。

 

バッテリー容量 71.4kWh
普通充電時間 約43時間(1.6kW)
約21時間(3.2kW)
約12時間(6kW)
※0-100%の理論値
新車価格 627万円~715万円

 

【スペック確認はこちら!】
▶EV車種一覧ページ スバル「ソルテラ」

 

参考資料
1)スバル「ソルテラ」

 

トヨタ(レクサス)

HEV(ハイブリッド)による電動化では自動車業界をリードするトヨタですが、V2H対応車種についてはその規模からするとかなり限られている印象です。EVでV2H対応しているのは「bZ4X」のみ。トヨタの高級ブランドであるレクサスは2035年までに全ラインナップをEVとするとしており、「UX300e」「RZ」がともにV2Hに対応しています。

 

トヨタ bZ4X 2)

トヨタ

 

「bZ4X」はスバル「ソルテラ」と共同開発された兄弟車です。基本的なハードウェアは共通しているので、バッテリー容量や急速充電口の位置なども「ソルテラ」と共通です。

日本でのデビュー当初はサブスクリプションサービス「KINTO」専用モデルでしたが、2023年11月の一部改良に合わせて一般販売も始まっています。前輪駆動と四輪駆動が用意され、いずれもバッテリー容量は共通。ベーシックなGグレード(前輪駆動)の一充電走行距離は567kmとなっています。

 

バッテリー容量 71.4kWh
普通充電時間 約21時間(3.2kW)
約12時間(6kW)
※充電警告灯点灯から満充電までの参考値
新車価格 550万円~650万円

 

 

レクサス RZ 3)

レクサス

 

2023年3月に発売されたレクサス「RZ450e」はバッテリーEV専用プラットフォームに基づく、同ブランド初のEVといえます。新四輪駆動力システム「DIRECT4」を標準装備していることからもわかるように、前後それぞれにモーターを配置しています。フロントモーターの最高出力は150kW、リアモーターの最高出力は80kWと前よりのバランスになっています。また、2023年11月には前輪駆動モデル「RZ300e」が追加されました。

 

バッテリー容量 71.4kWh
普通充電時間 約21時間(3.2kW)
約12時間(6kW)
※充電警告灯点灯から満充電までの参考値
新車価格 820万円~880万円

 

 

レクサス UX300e 4)

レクサス

 

2020年にレクサス・ブランド初のバッテリーEVとして誕生したのが「UX300e」です。デビュー当初はV2Hに対応していませんでしたが、2023年3月のマイナーチェンジでV2Hに対応。同時に新開発のバッテリーによって一充電走行距離を512kmに伸ばすなど、EVとしての基本性能も向上させました。

 

バッテリー容量 72.8kWh
普通充電時間 約21時間(3.2kW)
約12時間(6kW)
※充電警告灯点灯から満充電までの参考値
新車価格 650万~705万円

 

 

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日産

日産自動車ロゴ

 

2010年に初代リーフを発売して以来、世界のEVマーケットをけん引する日産は、V2Hについても初期の頃から熱心に対応しています。V2H機器とのマッチングなども含めて、ベンチマークとなっているのが日産のEVです。

 

リーフ 5)

日産「リーフ」

 

日本のEV市場を切り開いたモデルが「リーフ」です。2022年4月のマイナーチェンジ後は、40kWhと60kWhという2種類のバッテリー容量を搭載。前者の最高出力は110kW、後者は160kWとスペックも異なっています。

 

バッテリー容量 40kWh/60kWh
普通充電時間 <40kWh>
約16時間(3kW)
約8時間(6kW)
<60kWh>
約23.5時間(3kW)
約12.5時間(6kW)
※残量警告灯が点灯した時点から満充電までのおおよその時間
新車価格 408万1000円~583万4400円

 

 

アリア 6)

日産「アリア」

 

SUVスタイルの新型EVとして誕生した「アリア」は、2種類のバッテリー(66kWhと91kWh)、2つの駆動方式(前輪駆動と四輪駆動)というメカニズムを用意しています。ただし、現時点でカタログモデルとして販売されているのは66kWhバッテリーで前輪駆動の「B6」グレードだけとなっています(現在は受注を一時停止中。詳しくは「アリア」公式サイトをご覧ください)。

 

バッテリー容量 66kWh
普通充電時間 約25.5時間(3kW)
約12時間(6kW)
※残量警告灯が点灯した時点から満充電までのおおよその時間
新車価格 539万円~

 

 

サクラ 7)

サクラ

 

日産の軽自動車は三菱自動車との合弁会社であるNMKV社で開発され、三菱が生産を担当しています。2022年に完全なニューモデルとして登場した「サクラ」は、そうした両社の知見を活かした軽EVです。手ごろな価格設定ですが、急速充電に標準対応しており、V2Hでの使用も考慮した設計となっています。

 

バッテリー容量 20kWh
普通充電時間 約8時間(2.9kW)
※残量警告灯が点灯した時点から満充電までのおおよその時間
新車価格 254万8700円~304万400円

 

 

 

ヒョンデ

ヒョンデ ロゴ

 

日本ではまだ馴染みの薄いヒョンデは韓国のメーカーです。現代自動車という社名を聞けば、実績あるメーカーであることがわかるでしょう。なかでもEVの「KONA(コナ)」は300万円台から購入できるなど、お手頃価格が魅力の1台です。

 

KONA 8)

KONA

 

2023年11月に発売されたヒョンデ「KONA(コナ)」は、魅力的な価格帯を実現したコンパクトSUVスタイルのEVです。バッテリー容量は48.6kWhと64.8kWhの2種類を設定。後者は最高出力150kW、一充電走行距離は最大625kmです。充電ポートはフロント部分に置かれています。

 

バッテリー容量 48.6kWh/64.8kWh
普通充電時間 非公開
新車価格 399万3000円~489万5000円

 

【スペック確認はこちら!】
▶EV車種一覧ページ ヒョンデ「KONA」

 

参考資料
8)ヒョンデ「KONA」

 

BYD

BYD

 

BYDは世界各国でシェアを拡大している中国発の新世代EVメーカーです。「BYD」というブランド名は「Build Your Dreams」の略称であり、まさに名は体を表しています。BYDは自動車メーカーとしてはめずらしくバッテリーメーカーをルーツに持つため、EV時代に大きく成長しているのも納得です。日本国内でのラインナップは現状「ATTO 3」と「DOLPHIN」の2モデルのみですが、2024年春にはセダンタイプの「SEAL」も発売予定となっています。

 

ATTO 3 9)

ATTO3

 

BYDが日本市場に進出するにあたって、その尖兵として登場したのが「ATTO3(アットスリー)」です。新興メーカーというだけでなく、バッテリーにリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を採用しているのも特徴のひとつ。フロントタイヤを駆動するモーターの最高出力は150kW、一充電走行距離は470kmです。

 

バッテリー容量 58.56kWh
普通充電時間 非公開
新車価格 440万円~

 

 

DOLPHIN 10)

dolphin

 

BYDの日本向けラインナップ第二弾となる「DOLPHIN(ドルフィン)」は、容量の異なる2種類のバッテリーを積むグレードを設定しています。立体駐車場に対応するコンパクトなボディや300万円台で購入可能なリーズナブルな価格も、その特徴といえるでしょう。一充電走行距離は400km~476kmです。

 

バッテリー容量 44.9kWh/58.56kWh
普通充電時間 15時間/19.5時間(3kW)
7.5時間/9.8時間(6kW)
※理論値
新車価格 363万円~407万円

 

 

参考資料
9)BYD「ATTO 3」
10)BYD「DOLPHIN」

 

ホンダ

ホンダ ロゴ

 

四輪だけでなく二輪や汎用機でも大手のホンダは、全社を挙げて2050年のカーボンニュートラルを目指しています。現在、日本で購入できるEVは「Honda e」だけですが、北米ではGMと共同開発したEV「プロローグ」を発売予定。日本でも2024年春には、商用軽EV「N-VAN e:」の発売を計画しています。

 

Honda e 11)

honda

 

「Honda e」はEVのニーズを突き詰め、街乗りに特化した1台に仕上がっているコンパクトカーです。ハンドルの切れ角を大きくするために後輪駆動としているのは、街乗りスペシャルを目指したことの証左といえます。デビュー当初は2グレード構成でしたが、現在は「Advance」のみのモノグレードとなっています。

 

「Honda e」は2024年1月をもって生産終了することがホンダからアナウンスされています。生産分が売り切れ次第、販売も終了となり、一部カラーをお選びいただけない場合があるとのことです。詳しくは販売会社にお問い合わせください。

 

バッテリー容量 35.5kWh
普通充電時間 12時間(200V)
※満充電までの時間
新車価格 495万円~

 

 

参考資料
11)ホンダ「Honda e」

 

マツダ

マツダ自動車ロゴ

https://www.mazda.co.jp/

 

ブランドイメージ的にはエンジンにこだわっている印象も強いマツダですが、EVには古くからチャレンジしてきています。量産初モデルとしては「MX-30 EV MODEL」が唯一のモデルですが、2025年までに計3車種のEVを発売することを宣言しています。

 

「MX-30 EV MODEL」 12)

マツダ

 

「MX-30 EV MODEL」は、前後ドアを開けると大きな開口部を生み出す「観音開き」構造が特徴的なクロスオーバーSUV「MX-30」のバリエーションとして用意されているEVです。2022年10月のマイナーチェンジによってV2Hに対応するようになりました。

 

バッテリー容量 35.5kWh
普通充電時間 約6時間40分(3kW)
約3時間40分(6kW)
※約20%から80%への充電
新車価格 451万円~501万6000円

 

 

 

三菱

三菱自動車ロゴ

 

EVやPHEVといった車の量産において常に先行してきたのが三菱自動車です。現在は、ルノー・日産とのアライアンスを活かしつつ、独自の技術を注ぎ込んだ電動車をラインアップしています。

 

eKクロスEV 13)

サクラ

 

日産「サクラ」の兄弟車となる「eKクロスEV」は、「サクラ」がEV専用の外観なのに対して、あえてガソリンエンジンを積む「eKクロス」との統一感を出しているのが特徴です。EVが特別なものではなく、ガソリン車と横並びで比べて選ぶものということをアピールしています。

 

バッテリー容量 20kWh
普通充電時間 約8時間(2.9kW)
※残量警告灯が点灯してから満充電までのおおよその時間
新車価格 254万6500円~308万1100円

 

 

ミニキャブEV 14)

ミニ

 

2011年に生まれた商用軽EV「ミニキャブ・ミーブ(バン)」が、2023年11月に大幅改良されて「ミニキャブEV」に生まれ変わりました。バッテリーが新世代となり容量も増加、後輪を駆動するモーターも高効率タイプに進化しています。なお、V2Hを使用するには、メーカーオプションの急速充電機能が必要です。

 

バッテリー容量 20kWh
普通充電時間 約7.5時間(3kW)
※バッテリー残量計が1目盛(警告灯と相互点滅)になってから満充電までのおおよその時間
新車価格 243万1000円~248万6000円

 

【スペック確認はこちら!】
▶EV車種一覧ページ 三菱「ミニキャブEV」

 

 

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メルセデス・ベンツ

ベンツロゴ

 

メルセデス・ベンツは、2030年までに「Electric Only」を掲げ、市場の状況が許す限り、すべての地域で電気自動車を販売する準備を整えるとしています。欧米系ブランドとしては初めて日本のV2Hに対応するなど、社会的なサスティナビリティにも貢献するという強い意志も感じられます。

 

EQS 15)

メルセデスベンツ「EQS」

 

メルセデスのフラッグシップである「Sクラス」の価値観を専用プラットフォームのEVとして表現したモデルです。巨大なバッテリー容量と、Cd値0.20という驚異的に少ない空気抵抗により、「EQS 450+」は一充電走行距離が国内販売EV最長クラスの700kmを誇ります。

 

バッテリー容量 107.8kWh
普通充電時間 約16時間(6kW)
※電池残量10%から100%までのおおよその充電時間
新車価格 1563万円~2375万円

 

 

EQS SUV 16)

SUV

 

「EQS SUV」は全長5.1m、全幅2.0mを超える大型SUVモデルです。その巨体に7人乗りの3列シートを備えています。日本向けのラインナップは2グレードで、いずれも4WD。一充電走行距離は589~593kmとなっています。

 

バッテリー容量 107.8kWh
普通充電時間 約14時間(6kW)
※電池残量10%から80%までのおおよその充電時間
新車価格 1542万円~1999万円

 

 

EQE 17)

EQE

 

メルセデスのガソリン車のラインナップでいうと「Eクラス」に相当するEVが「EQE」です。全長4955mmという立派な体格、3ボックスのセダンタイプとなっているのも、Eクラスの電動版というイメージを強めています。

 

バッテリー容量 90.6kWh
普通充電時間 約16時間(6kW)
※電池残量10%から100 %までのおおよその時間
新車価格 1251万円~1925万円

 

 

EQE SUV 18)

EQE

 

2023年8月に発売された「EQE SUV」はその名のとおり、「EQE」のSUVモデルです。エクステリアは「EQS SUV」と共通性の高いデザインが与えられていますが、こちらは5人乗りのミッドサイズSUV。グレードはベースグレードの「EQE 350 4MATIC SUV」と高性能グレードとなる「Mercedes-AMG EQE 53 4MATIC+ SUV」の2モデルが用意され、一充電走行距離は449km〜528kmとなっています。

 

バッテリー容量 89kWh
普通充電時間 約17時間(6kW)
※電池残量10%から100 %までのおおよその時間
新車価格 1369万7000円〜1707万円

 

 

 

今後はV2Hに対応した輸入車が増えていく?

ここまで見てわかるように、メルセデスの最新モデル、そしてヒョンデやBYDなどのアジア圏のメーカーを除いたほとんどの輸入車はV2H非対応となっています。

そこに明確な理由を見出すのは難しいのですが、V2Hは急速充電のCHAdeMO(チャデモ)規格を使い、ニチコンが世界で初めて商品化するなど、日本発祥の技術であることも影響しているでしょう。

とはいえ、V2Hに対応しているかどうかは国のCEV補助金で最大20万円の差にも影響しますから、対応するインセンティブにはなるはずです。技術的に不可能ではありませんから、市場でV2Hへのニーズが高まってくれば、輸入車にもV2H対応モデルが増えてくるかもしれません。

 

PHEVでV2Hに対応している車種は?

V2Hへの対応はEVの専売特許というわけではありません。国産車で言えば、三菱「アウトランダーPHEV」や「エクリプス クロスPHEVモデル」、輸入車ではメルセデス・ベンツ「C 350 e」など、以下の表のようにPHEVにもV2H対応車種があります。

〈表〉V2Hに対応するPHEV  ※メーカー50音順

メーカー 対応車種
マツダ ・CX-60 PHEV
・MX-30 Rotary-EV
三菱 ・アウトランダーPHEV
・エクリプス クロス PHEVモデル
メルセデス・ベンツ ・S 580 e
・GLC 350 e
・C 350 e

 

ただし、一般論としてPHEVはエンジンで発電もできるため、バッテリー容量は同じ車格のEVに比べると小さめとなります。貯めておける電力量が少ないわけですから、車のバッテリーを利用できる幅が、通常時はEVより狭いということです。

V2Hというシステムが持つメリットを最大限に引き出すためには、EVと組み合わせるのがやはりベストと言えます。上記のPHEVの対応車種のなかから国産車に絞って詳しく見ていきましょう。

 

マツダ「CX-60 PHEV」19)

マツダ

 

日本向けモデルとしては、現在マツダのフラッグシップといえる「CX-60」は、直列6気筒エンジンをフロントに縦置き、後輪駆動を基本とするプラットフォームを採用しています。ただし、PHEV仕様は2.5Lの 4気筒ガソリンエンジンと8速AT、駆動モーターを組み合わせた四輪駆動となっています。

 

バッテリー容量 17.8kWh
普通充電時間 約7時間(3kW)
約3時間(6kW)
※0%から満充電まで
新車価格 609万9500円~646万2500円

 

 

MX-30 Rotary-EV 20)

MX30

 

10年余り前までマツダを象徴する代名詞となっていたのがロータリーエンジンでした。そのロータリーエンジンを搭載するシリーズ式PHEVとして話題を集めているのが「MX-30 Rotary-EV」です。新型ロータリーエンジンは発電のみに使われ、走行はすべてモーター駆動。EV走行換算距離(等価EVレンジ)は107kmですが、ロータリーエンジンによる発電でさらなる長距離走行にも対応しています。

なお、給電機能に関しては「MX-30 Rotary-EV」「CX-60 PHEV」ともに、災害時において17.8kWhのバッテリー満充電と燃料タンク満タンのエンジンによる発電を組み合わせ、約9.1日分(※)の電力供給が可能としています。

※マツダの自社調べにもとづき、一般的な家庭での1日の使用電力量を10kWhとした場合の試算です。V2H機器等の変換効率は含みません。

 

バッテリー容量 17.8kWh
普通充電時間 約3時間50分(3kW)
約1時間50分(6kW)
※20%から80%まで
新車価格 423万5000円~491万7000円

 

 

️三菱「アウトランダーPHEV」 21)

三菱 アウトランダーPHEV

 

「アウトランダーPHEV」のバッテリー容量は20kWhです。軽EVと同レベルの容量ですから、日常的にバッテリーの電力を有効活用することが期待できます。また、非常時などの際には、満充電の状態でエンジンでの発電も組み合わせれば、ガソリン満タンで一般家庭最大約12日分(約10kWh/日で試算)の電力供給が可能とされており、この点も魅力的と言えるでしょう。

 

バッテリー容量 20kWh
普通充電時間 約7.5時間(3kW)
※バッテリー残量表示の目盛が最低の状態から満充電まで
新車価格 499万5100円~630万4100円 

 

 

三菱 「エクリプス クロス」PHEV モデル 22)

三菱 エクリプス クロスPHEV

 

「アウトランダーPHEV」よりコンパクトなボディで、ひと世代前のシステムを積んでいるため、バッテリー容量は13.8kWhと少なめ。それでもエンジンによる発電を利用すれば一般家庭10日分の電力供給ができるとされています。非常時の電力供給についてはプラグインハイブリッドが優位な部分もあります。

 

バッテリー容量 13.8kWh
普通充電時間 約4.5時間(3kW)
※バッテリー残量表示の目盛が最低の状態からまで
新車価格 409万4200円~465万800円

 

 

 

EVのバッテリーで、モビリティの新しい活用法を見出そう!

一般家庭でV2Hを導入するには、それなりのコストがかかるのは事実ですが、車として使っていないときにもEVのバッテリーを有効活用できるというのは、モビリティの新しい活用法と言えます。環境意識、災害時の安心感など、コストに見合った満足が得られることでしょう。

EVの購入を検討されているならば、ぜひともV2H対応についても考えていただきたいと思います。また、すでにV2H対応のEVを所有されているならば、V2H機器の導入も検討されてみてはいかがでしょうか。

 

この記事の著者
山本 晋也さん
山本 晋也

1969年生まれ。1990年代前半に自動車メディア界に就職し、中古車雑誌編集長などを経て、フリーランスへ転身。2010年代からWEBメディアを舞台に自動車コラムニストとして活動中。タイヤの有無にかかわらずパーソナルモビリティに興味があり、過去と未来を俯瞰する視点から自動車業界の行く末を考えている。