【2023年6月28日更新】電気自動車(EV)と家をつなぎ、災害時の対策や電気代節約も期待できるV2H(Vehicle to Home)。しかし、機器の購入や設置にかかるコストは低くないため、導入をためらう人も多いのではないでしょうか。そこで活用したいのが国や自治体が交付する補助金です。V2Hを導入する際に欠かせない補助金について、制度の概要や利用条件、上限額などの基礎知識を紹介します。
【最新情報】国のV2H補助金の申請受付終了について
「令和4年度補正予算」および「令和5年度当初予算」で実施している国の「V2H充放電設備・外部給電器の導入補助事業」について、多数の交付申請があり、5月23日時点で予算額を超過しました。そのため、申請受付を終了しています。詳細はこちらをご確認ください。
- 【最新情報】国のV2H補助金の申請受付終了について
- V2Hの補助金、いくらもらえる?
- V2H補助金を申請する際の注意点
- 【申請時のポイント】補助金を利用する際には、販売・設置業者に相談しよう
- 国が交付する「充電インフラ補助金」の上限額や条件は?
- 自治体が交付する補助金の上限額や条件は?
- 補助金を利用しV2Hを導入するなら早めの決断を!
注:本記事で「電気自動車(EV)」と表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しており、PHEVやFCVとは区別しています。
V2Hの補助金、いくらもらえる?
EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)などの大容量バッテリーを、家庭で有効活用するためのシステムであるV2H。多くのメリットがある一方で、機器の本体価格と設置費用をあわせると、90万~130万円程度と高額になる点が、導入の大きなハードルと言えます。
しかし一定の条件を満たせば、その費用の半額以上を、国や自治体が交付する補助金によって補うことが可能です。まずは、V2Hの補助金の基本構造を大づかみに捉えていきましょう。
2023年度、国のV2H補助金は上限115万円
特に気になるのは、やはり「補助金をいくらもらえるか」でしょう。詳細については、これから説明していきますが、まずは補助金の上限額、申請期間を表にまとめてみました。なお、条件はそれぞれの補助金で大きく異なりますので、詳細は後述を確認してください。
2023年度の国のV2H補助金は「令和4年度補正予算」と「令和5年度当初予算」によるもので、補助金の上限額は機器購入費と工事費をあわせて115万円です。なお、場合によっては自治体の補助金との併用ができることもありますので上手に使いましょう。
それでは、ここからV2H補助金の目的や種類、その内容について詳しく見ていきましょう。
国や自治体がV2H導入に補助金を交付する理由は?
国や自治体がV2Hの導入費用を補助する目的は、環境にやさしい社会の実現や災害対策など、補助金の種類によって異なります。
たとえば、国の「充電インフラ補助金」1)と東京都の「戸建住宅におけるV2H普及促進事業補助金」2)の目的は、以下のような違いがあります。
〈表〉V2H補助金の目的
国の補助金の目的 | 東京都の補助金の目的 |
災害時に、EVやFCVの外部給電機能の活用を促進することによるレジリエンス(回復力)の向上を図る | 自動車から排出される二酸化炭素の削減を図る |
※目的は、原文より意訳しています
つまりV2Hを導入すれば、EVの大容量バッテリーを災害時の電源として活用したり、二酸化炭素排出削減に貢献する効果があるというわけです。
またV2Hは太陽光発電との相性がよいため、再生可能エネルギーの有効利用という観点から、自治体によっては、自宅に太陽光発電システムがあると支給額を増額しているケースもあります。
交付される補助金は、国と自治体の2種類
V2H導入で利用できる補助金は、国と自治体から交付されています。
2023年5月現在、国の補助金は経済産業省が交付する「充電インフラ補助金」の1種類です。充電インフラ補助金の概要と交付条件については、後ほど詳しく紹介します。
一方、自治体が交付する補助金はさまざまで、自治体ごとに上限額や交付条件が異なります。また、すべての自治体が補助金を交付しているわけではありません。基本的には現在お住まいの自治体の補助金を申請することになるので、まずは、お住まいの自治体のホームページなどで概要を確認しましょう。
国と自治体の補助金を併用する際の注意点
補助金を利用するうえで、まず覚えておきたいのが、国の補助金と自治体の補助金は、併用できる場合があるということです。もし、両方とも受給できれば、V2H導入費用の大半を補助金でまかなうことも可能になります。
〈図〉V2Hの補助金の構造
ただし、自治体によってはV2Hの本体価格などの条件によって併用できない、または併用できても実質的に補助金の金額が0円になってしまう場合もあります。
制度として併用できるか否か、実質的に併用できるか否か、どのような条件であれば併用できるのかといった最新情報は、各自治体に問い合わせてみましょう。
V2H補助金を申請する際の注意点
V2H導入に欠かせない補助金ですが、申請を検討するにあたり注意すべき点もいくつかあります。事前に知っておきたい4つの注意点を紹介します。
Ⅰ.交付条件や金額は毎年変わる
国と自治体、どちらの補助金も、交付条件や限度額が毎年、都度更新されます。ネット検索で表示される記事は、情報が古いままになっている場合もあるので、申請を検討する際には、国や自治体のホームページで最新情報をチェックしましょう。
Ⅱ.申請の受付は先着順となる
国と自治体、どちらの補助金も事前に決められた予算の範囲内で交付されます。そのため、ほとんどの場合、申請の受付は先着順となります。受付期間内だからといって、必ず補助金を受給できるわけではない点に注意しましょう。
Ⅲ.申請手順を間違えると受給できない場合がある
申請手順についても注意が必要です。補助金によっては、V2Hの発注や購入・工事を行う“前”に、申請を先に行い、審査・交付決定後に発注等を行う手順をとらないと補助金を受給できないものもあります。発注や購入前にチェックするようにしましょう。
Ⅳ.V2H導入だけでは補助金を受給できない場合がある
自治体が交付する補助金の中には、太陽光発電システムの所有を条件とするものもあります。V2Hを導入しただけでは補助金が支給されない場合がありますので、詳しい条件などは、お住まいの自治体のホームページなどをご確認ください。
【申請時のポイント】補助金を利用する際には、販売・設置業者に相談しよう
国と自治体、どちらの補助金も申請の手続きは複雑です。ある程度の知識がなければ、スムーズに申請を済ませることは難しいでしょう。
そこでおすすめしたいのが、V2Hの販売・設置業者に相談することです。最新情報の提供や申請に必要な知識のアドバイスが受けられるほか、業者によっては申請をサポートしてくれる場合もあります。V2Hを導入する際には、補助金に関する質問や相談をするようにしましょう。
東京電力グループのTEPCOホームテックでは、V2Hの設置工事はもちろん、必要に応じ電気契約容量の変更提案、補助金の申請などもワンストップで行うことができます。
同社では、導入方法も選ぶことができ、一括購入のほか、初期費用0円で導入することができる「エネカリ」というサービスもあります。エネカリでは月額定額支払いにできるため、まとまった費用のお支払いに不安がある場合にはぜひご相談ください。
国が交付する「充電インフラ補助金」の上限額や条件は?
V2H導入の補助金の申請は、販売・設置業者がサポートしてくれる場合が多いですが、自分でもある程度の概要を理解しておいたほうが、相談しやすくなります。そこで、V2H導入に利用できる補助金の軸となる、国が交付する充電インフラ補助金の概要を紹介しましょう。
充電インフラ補助金とは?
充電インフラ補助金とは、経済産業省が行う「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進事業」の予算から交付される補助金で、一般社団法人次世代自動車振興センターが運営しています1)。
補助金の目的は?
このうちのV2H充放電設備の補助金の目的は「災害時に、EVやFCVの外部給電機能の活用を促進することによるレジリエンス(回復力)の向上を図ること」です。つまり、V2Hの導入でEVなどを災害時の非常用電源として活用することを促進するための補助金というわけです。
補助金の上限額は?
充電インフラ補助金の上限額は、以下のとおりです。設備費と工事費の2つに分けられ、それぞれ上限額が設定されています。
〈表〉充電インフラ補助金の上限額(個人)
設備費 | 機器購入費の1/2(上限75万円) |
工事費 | 上限40万円※ |
※発注された工事費等すべてが補助対象になるとは限りません。
機器別の設備費の上限額は以下のとおりとなります。なお、充電インフラ補助金の対象となるのは新品のV2Hに限られる点にご注意ください(表に含まれる機種でも中古品は対象外となります)。
〈表〉主なV2H機器の設備費補助上限額
メーカー名 | 型式 | 補助金交付上限額 |
デンソー | DNEVC-D6075 | 55万円 |
東光高岳 | CFD1-B-V2H1 | 37万5000円 |
ニチコン | VCG-666CN7 | 44万9000円 |
VCG-663CN3 | 24万9000円 | |
VCG-663CN7 | 27万4000円 |
補助金の交付条件は?
家庭向け(個人)のV2Hの導入(購入・設置)で補助金を受給するために必要な条件は、主に「設置に関する情報提供」と「災害時における国や自治体への協力」、そして「原則として5年間の保有義務」です。
充電インフラ補助金を受給する人は、V2Hの設置に関する情報について、要請があった場合には情報提供を了承しなければなりませんし、災害時等に要請があった場合には、可能な範囲で協力するよう努めることが求められます。また、原則として5年間は設置したV2Hを許可なく処分することはできません。
補助金の申請の受付期間は?
「令和4年度補正予算」と「令和5年度当初予算」による申請受付期間は「2023年3月31日~10月31日」となっています。しかし、申請が多く、5月23日時点で申請終了がアナウンスされました。
自治体が交付する補助金の上限額や条件は?
V2Hの補助金は、自治体からも交付される場合があり、国と自治体の補助金は併用できることもあります。一例として東京都と神奈川県の補助金を見てみましょう。
Ⅰ.東京都の補助金
2023年度の東京都のV2Hへの補助金事業は、2022年度と同様の内容で継続されます。5月29日より事前申込の受付を、6月30日より交付申請兼実績報告の受付を開始することになっています。補助金の概要は以下のとおりです3)。
〈表〉2023年度の補助金(助成金)の概要(個人の場合)
補助対象者 | 助成対象機器(V2H機器)の所有者 | |
主な助成要件 |
・都内の戸建住宅に新規に設置された助成対象機器であること。 |
|
受付期間 | 令和5年5月29日〜令和6年3月29日 | |
助成率 | V2H機器(通常) | 機器費および工事費の1/2(上限50万円) |
V2H機器(増額申請) ※実績報告時に太陽光発電システムおよびEVまたはPHEVが揃う場合(新規導入・既導入済みどちらの場合でも可) |
機器費および工事費の10/10(上限100万円) |
通常の補助額上限が50万円であるのに対して、条件を満たして増額申請を行なった場合、補助額上限が100万円となっています。
増額申請の場合、機器費および工事費の100%まで補助対象額となるため、一般的な金額のV2H機器を設置した場合でも、国の補助金と併用できる可能性が高まります。
いくら助成が受けられるのかは、条件によって異なりますので、詳しくはクール・ネット東京のウェブページに提示されている「助成金シミュレーション」を利用してみましょう。
Ⅱ.神奈川県の補助金
【最新情報】2023年度の神奈川県の「V2H充給電設備導入費補助金」は、予算上限に達したため、6月27日送達分をもって申請受付が終了しました。
2023年度の神奈川県の「V2H充給電設備導入費補助金」は、4月27日から開始しています4)。
EVの充電環境の整備を促進するため、EVと建物の間で充給電を行うV2H機器を導入する経費の一部を補助する内容となっており、県内の新築・既存の住宅等に導入する際などに利用できます。概要は下記のとおりです。
〈表〉2023年度の補助金(助成金)の概要(個人の場合)
補助対象者 | 県内に在住する、またはこれから在住する人 | |
補助対象経費 | V2H本体にかかる経費(工事費は対象外) | |
補助額 | 次のうち、いずれか低い額。 ・補助対象経費に3分の1を乗じた額 ・25万円(補助上限額) ・補助対象経費からV2H本体に対する国の補助金の額を控除した額 |
|
受付期間 | 令和5年4月27日から令和5年12月28日まで (予算がなくなり次第、終了) |
なお、補助金の審査には1.5カ月ほどかかる見込みのため、事業の着手予定日の1.5か月以上前に申請書を提出しましょう。さらに詳しい要件などは、以下のウェブサイトからご確認ください。
補助金を利用しV2Hを導入するなら早めの決断を!
国と自治体の補助金を活用することで、V2H導入に必要な費用の大半を補うことも不可能ではありません。しかし、補助金は先着順の受付となるため、申請が遅れると受給できない場合があります。V2H導入を本格的に検討しているなら、早めに販売・設置業者に相談することをおすすめします。
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