【2024年8月6日更新】電気自動車(EV)と家をつなぎ、災害時の対策や電気代節約も期待できるV2H(Vehicle to Home)。しかし、機器の購入や設置にかかるコストは低くないため、導入をためらう人も多いのではないでしょうか。そこで活用したいのが国や自治体が交付する補助金です。V2Hを導入する際に欠かせない補助金について、制度の概要や利用条件、上限額などの基礎知識を紹介します。
- V2Hの補助金、いくらもらえる?
- 国のV2H補助金は上限45万円
- 国のV2H補助金(2024年度)の詳細
- 自治体のV2H補助金(2024年度)の一例
- V2H補助金を申請する際の注意点
- 【申請時のポイント】補助金を利用する際には、販売・設置業者に相談しよう
- 補助金を利用しV2Hを導入するなら早めの決断を!
注:本記事で「電気自動車(EV)」と表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しており、PHEVやFCEVとは区別しています。
V2Hの補助金、いくらもらえる?
EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)などの大容量バッテリーを、家庭で有効活用するためのシステムであるV2H。多くのメリットがある一方で、機器の本体価格と設置費用をあわせると、85万~180万円程度と高額になる点が、導入の大きなハードルと言えます。
しかし一定の条件を満たせば、その費用の多くを、国や自治体が交付する補助金によって補うことが可能です。まずは、V2Hの補助金の基本構造を大づかみに捉えていきましょう。
国のV2H補助金は上限45万円
2024年度の補助金の上限額、申請期間を表にまとめました。
2024年度の国のV2H補助金は「令和5年度補正予算」と「令和6年度当初予算」によるもので、補助金の上限額は機器購入費と工事費をあわせて45万円(個人宅へ設置する場合)です。なお、場合によっては自治体の補助金との併用ができることもありますので上手に使いましょう。
それでは、ここからV2H補助金の目的や種類、その内容について詳しく見ていきましょう。
国や自治体がV2H導入に補助金を交付する理由は?
国や自治体がV2Hの導入費用を補助する目的は、環境にやさしい社会の実現や災害対策など、補助金の種類によって異なります。
たとえば、国の「V2H充放電設備の導入補助金」1)と東京都の「戸建住宅におけるV2H普及促進事業補助金」2)の目的は、以下のような違いがあります。
〈表〉V2H補助金の目的
国の補助金の目的 | 東京都の補助金の目的 |
災害時に、電気自動車等の外部給電機能の活用を促進することによるレジリエンス(回復力)の向上を図ること | 自動車から排出される二酸化炭素の削減を図ること |
※目的は、原文より意訳しています
つまりV2Hを導入すれば、EVの大容量バッテリーを災害時の電源として活用したり、二酸化炭素排出削減に貢献する効果があるというわけです。
またV2Hは太陽光発電との相性がよいため、再生可能エネルギーの有効利用という観点から、自治体によっては、自宅に太陽光発電システムがあると支給額を増額しているケースもあります。
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交付される補助金は、国と自治体の2種類
V2H導入で利用できる補助金は、国と自治体から交付されています。
2024年度の国の補助金は経済産業省が交付するV2H補助金は、「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」のひとつです。補助金の概要と交付条件については、後ほど詳しく紹介します。
一方、自治体が交付する補助金はさまざまで、自治体ごとに上限額や交付条件が異なります。また、すべての自治体が補助金を交付しているわけではありません。基本的には現在お住まいの自治体の補助金を申請することになるので、まずは、お住まいの自治体のホームページなどで概要を確認しましょう。
参考資料
1)一般社団法人次世代自動車振興センター「令和5年度補正・令和6年度当初予算 V2H充放電設備の導入補助金 ご案内」
2)クール・ネット東京「【令和6年度】戸建住宅におけるV2H普及促進事業 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」
国と自治体の補助金を併用する際の注意点
補助金を利用するうえで、まず覚えておきたいのが、国の補助金と自治体の補助金は、併用できる場合があるということです。もし、両方とも受給できれば、V2H導入費用の多くを補助金でまかなうことも可能になります。
〈図〉V2Hの補助金の構造
ただし、自治体によってはV2Hの本体価格などの条件によって併用できない、または併用できても実質的に補助金の金額が0円になってしまう場合もあります。
制度として併用できるか否か、実質的に併用できるか否か、どのような条件であれば併用できるのかといった最新情報は、各自治体に問い合わせてみましょう。
国のV2H補助金(2024年度)の詳細
国のV2H充放電設備の導入補助金の申請は、販売・設置業者がサポートしてくれる場合が多いですが、自分でもある程度の概要を理解しておいたほうが、相談しやすくなります。そこで、国が交付する補助金の概要を紹介しましょう。
V2H充放電設備の導入補助金とは?
V2H充放電設備の導入補助金は、経済産業省が行う「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」の予算から交付される補助金で、一般社団法人次世代自動車振興センターが運営しています1)。
補助金の目的は?
このうちのV2H充放電設備の補助金の目的は「災害時に、電気自動車等の外部給電機能の活用を促進することによるレジリエンス(回復力)の向上を図ること」です。つまり、V2Hの導入でEVなどを災害時の非常用電源として活用することを促進するための補助金というわけです。
上限額は?
2024年度のV2H充放電設備の導入補助金(個人宅)の上限額は、機器費と工事費をあわせて45万円です。
機器費と工事費の2つに分けられ、それぞれ上限額が設定されています。
〈表〉V2H充放電設備の補助金額(個人宅)
機器費 | 機器購入費の1/3(上限30万円) |
工事費 | 上限15万円 |
※発注された工事費等すべてが補助対象になるとは限りません。
ちなみに、2023年度の補助金の上限額は合計115万円でした。減額の理由のひとつとして、経済産業省は“2023年度の補助金が申請受付開始から約2カ月という短期間で予算を超過し、早期に受付が終了してしまったこと”を挙げています。
ある程度限られる予算の中で幅広く行き渡ることをねらいとして、上限額の引き下げが行われたと言えるでしょう。
対象となるV2H機器は?
補助金の対象となるのは、指定されたV2H機器です。対象外となるV2H機器では補助金は交付されません。対象となるおもなV2H機器のメーカー・型式・上限額は以下をご覧ください。
〈表〉おもなV2H機器の機器費補助上限額
メーカー名 | 型式 | 補助上限額 |
オムロン ソーシアルソリューションズ | KPEP-A-SET-AC | 30万円 |
ダイヤゼブラ電機 | EPJ-S60EV | 30万円 |
デンソー | DNEVC-SD6075 | 30万円 |
東光高岳 | CFD1-B-V2H1 | 25万円 |
ニチコン | VCG-666CN7 | 29万9000円 |
VCG-663CN7 | 18万2000円 | |
VSG-666CN7 | 30万円 |
V2H充放電設備の導入補助金の対象となるのは新品のV2Hに限られる点にご注意ください(表に含まれる機種でも中古品は対象外となります)。
補助対象となるV2H機器について、一覧表は発表の詳細をご覧ください。
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交付条件は?
家庭向け(個人宅)のV2Hの導入(購入・設置)で補助金を受給するために必要な条件は、おもに「EV等の保有」「設置に関する情報提供」と「災害時における国や自治体への協力」、そして「原則として5年間の保有義務」です。
V2H充放電設備の導入補助金を受給するには、当たり前ですがEV等を保有していることが条件となります。ただし、申請時に保有していなくても、購入のための発注が完了している場合は、実績報告時に保有を報告することで受給が可能となります。
また、V2Hの設置に関する情報について、要請があった場合には情報提供を了承しなければなりませんし、災害時等に要請があった場合には、可能な範囲で協力するよう努めることが求められます。さらに、原則として5年間は設置したV2Hを許可なく処分することはできません。
申請期間・予算は?
2024年度のV2H充放電設備の導入補助金は、申請期間が2回に分けられています。
具体的には、第1期の申請受付期間は2024年の6月20日〜7月17日、第2期の受付期間は8月19日〜9月30日です。
〈表〉V2H充放電設備の導入補助金の受付期間
受付期間 | |
第1期 | 2024年6月20日〜7月17日 |
第2期 | 2024年8月19日〜9月30日 |
なお、交付決定通知書は、受付日から1~2カ月程度を目途として通知されるとされています。補助金を受ける場合、交付決定を受ける前にV2H充放電設備の発注や設置工事に着手することはできないので、注意しましょう。
ちなみに、V2H充放電設備の導入補助金(個人宅/その他施設)の予算は、第1期が30億円、第2期は15億円と発表されています。
経済産業省の資料では「執行状況によって、配分の見直しの可能性あり」と注記があり、第1期・第2期いずれも申請日順に審査を行い、予算額を超過する申請が入った時点で申請受付を中止する、とも発表されています。
例年、予算が少なくなった場合には適宜発表がされますので、最新情報の更新に注意しましょう。
自治体のV2H補助金(2024年度)の一例
V2Hの補助金は、国だけでなく、自治体からも交付される場合があり、国と自治体の補助金は併用できることもあります。2024年度も補助金を出すことを公表している自治体があります。一例として東京都と埼玉県の補助金について見てみましょう。
Ⅰ.東京都の補助金
2024年度の東京都のV2Hへの補助金事業は、2023年度と同様の内容で継続されます。5月31日より契約前の事前申込の受付を開始しています。補助金の概要は以下のとおりです3)。
〈表〉2024年度の補助金(助成金)の概要(個人の場合)
補助対象者 | 助成対象機器(V2H機器)の所有者 | |
おもな助成要件 |
・都内の戸建住宅に新規に設置された助成対象機器であること。 |
|
受付期間 | 令和6年5月31日〜令和7年3月31日 | |
助成率 | V2H機器(通常) | 機器費および工事費の1/2(上限50万円) |
V2H機器(増額申請) ※実績報告時に太陽光発電システムおよびEVまたはPHEVが揃う場合(新規導入・既導入済みどちらの場合でも可) |
機器費および工事費の10/10(上限100万円) |
通常の補助額上限が50万円であるのに対して、条件を満たして増額申請を行なった場合、補助額上限が100万円となっています。
増額申請の場合、機器費および工事費の100%まで補助対象額となるため、一般的な金額のV2H機器を設置した場合でも、国の補助金と併用できる可能性が高まります。
いくら助成が受けられるのかは、条件によって異なりますので、詳しくはクール・ネット東京のウェブページに提示されている「助成金シミュレーション」を利用してみましょう。
Ⅱ.埼玉県の補助金
2024年度の埼玉県の「令和6年度 埼玉県電気自動車等導入費補助金事業」では、EV・PHEVだけでなくV2H機器設置に関する補助金を準備しており、2024年6月7日から申請受付を開始しています4)。
自動車から排出される二酸化炭素等の削減を図るとともに災害時のレジリエンス機能を強化することを目的としており、V2H機器本体の購入経費の一部を補助する内容となっています。概要は下記のとおりです。
〈表〉2024年度の補助金の概要(個人の場合)
補助対象者 |
個人のうち、以下のいずれにも該当する者 1.EVまたはPHEVを所有している者(新たに所有する者を含む) |
|
おもな補助要件 | ・国が実施するCEV補助金の交付対象のV2H充放電設備であること。 ・交付決定後に発注されたもの(中古品を除く)。 ・国が実施するCEV補助金の交付の対象となる車両であり、かつV2Hに対応している車種であること。 |
|
補助額 | 15万円(定額) | |
受付期間 |
令和6年6月7日から令和6年12月16日 |
なお、補助金の交付決定よりも前に発注が行われてしまった場合、補助金交付の対象になりませんので、ご注意ください。さらに詳しい要件などは、以下のウェブサイトからご確認ください。
V2H補助金を申請する際の注意点
V2H導入に欠かせない補助金ですが、申請を検討するにあたり注意すべき点もいくつかあります。事前に知っておきたい4つの注意点を紹介します。
Ⅰ.交付条件や金額は毎年変わる
国と自治体、どちらの補助金も、交付条件や限度額が毎年、都度更新されます。ネット検索で表示される記事は、情報が古いままになっている場合もあるので、申請を検討する際には、国や自治体のホームページで最新情報をチェックしましょう。
Ⅱ.申請の受付は先着順となる
国と自治体、どちらの補助金も事前に決められた予算の範囲内で交付されます。そのため、ほとんどの場合、申請の受付は先着順となります。受付期間内だからといって、必ず補助金を受給できるわけではない点に注意しましょう。
Ⅲ.申請手順を間違えると受給できない場合がある
申請手順についても注意が必要です。V2Hの発注や購入・工事を行う“前”に、申請を先に行い、審査・交付決定後に発注等を行う手順をとらないと補助金を受給できない場合が多いです。発注や購入前に必ずチェックするようにしましょう。
Ⅳ.V2H導入だけでは補助金を受給できない場合がある
自治体が交付する補助金の中には、太陽光発電システムの所有を条件とするものもあります。V2Hを導入しただけでは補助金が支給されない場合がありますので、詳しい条件などは、お住まいの自治体のホームページなどをご確認ください。
【申請時のポイント】補助金を利用する際には、販売・設置業者に相談しよう
国と自治体、どちらの補助金も申請の手続きは複雑です。ある程度の知識がなければ、スムーズに申請を済ませることは難しいでしょう。
そこでおすすめしたいのが、V2Hの販売・設置業者に相談することです。最新情報の提供や申請に必要な知識のアドバイスが受けられるほか、業者によっては申請をサポートしてくれる場合もあります。V2Hを導入する際には、補助金に関する質問や相談をするようにしましょう。
東京電力グループのTEPCOホームテックでは、V2Hの設置工事はもちろん、必要に応じ電気契約容量の変更提案、補助金の申請補助などもワンストップで行うことができます。
同社では、導入方法も選ぶことができ、補助金活用の一括購入のほか、初期費用0円で導入することができる「エネカリ」というサービスもあります。エネカリでは月額定額支払いにできるため、まとまった費用のお支払いに不安がある場合にはぜひご相談ください。
補助金を利用しV2Hを導入するなら早めの決断を!
国と自治体の補助金を活用することで、V2H導入に必要な費用の多くを補うことも不可能ではありません。しかし、補助金は先着順の受付となるため、申請が遅れると受給できない場合があります。V2H導入を本格的に検討しているなら、早めに販売・設置業者に相談することをおすすめします。
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