EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)のユーザーのなかには、災害時などに備えてV2Hの導入を考えている人も多いでしょう。ただ、よく似ている設備として定置型の蓄電池もあり、どちらを選べばいいか迷っている人もいるかもしれません。そこで、V2Hと蓄電池のそれぞれの特徴と違い、選び方、2つの機器を併用するメリットと方法についてEV DAYS編集部が解説します。
- V2Hと蓄電池、それぞれの特徴を簡単に解説!
- V2Hと蓄電池はどう違う? 4つの比較ポイントで解説
- V2Hと蓄電池、それぞれに合うのはどんな人?
- V2Hと蓄電池は併用できる? そのメリットは?
- ライフスタイルに合った設備を選んで安心な暮らしを実現しよう
V2Hと蓄電池、それぞれの特徴を簡単に解説!
V2Hと蓄電池は「家庭に電気を供給できる」という意味でよく似ていますが、機能や特徴が違います。まずV2Hと蓄電池がそれぞれどのような特徴をもつ設備なのか、簡単に紹介しましょう。
そもそも「V2H」とは?
V2Hとは「Vehicle to Home(ヴィークル・ツー・ホーム)」、つまり「車から家へ」という意味です。EV・PHEVの大容量バッテリーに蓄えられた電気を家庭で活用するための設備やシステムのことです。
EV・PHEVが搭載するバッテリーは大容量で、EVには充電1回あたりの航続距離が500kmを超える車種もあります。それだけ大きなバッテリーがあるのですから、走行していない時間帯も活用したほうが効率的です。そこで、V2HでEV・PHEVと家をつなぎ、車に蓄えた電気を家庭用電源として有効活用しようというわけです。
ただし、あくまでもEV・PHEVのバッテリーを家の電源に活用する機器ですから、V2H自体には蓄電機能はありません。また、現時点ではすべてのEV・PHEVがV2Hに対応しているわけではなく、対応車種が限られているので注意が必要です。
そもそも「蓄電池」とは?
蓄電池とは、電気を貯めたり、必要なときに電気機器などに電気を供給したりすることのできる設備のことです。V2Hと違って電気を貯めることのできる蓄電機能をもつ一方、一般的な家庭用定置型蓄電池の容量はEV・PHEVのバッテリーに比べると非常に小さくなります。
ただし、太陽光発電を導入している場合、通勤などで昼間にEV・PHEVを使うと、V2Hでは発電量の多い時間帯に充電することができませんが、蓄電池なら充電が可能です。車で外出していても充電や給電ができるのは定置型蓄電池の大きなメリットでしょう。
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V2Hと蓄電池はどう違う? 4つの比較ポイントで解説
前述のように、V2Hと蓄電池は「家庭に電気を供給できる」という点でよく似た設備ですが、細かく見ていくとさまざまな違いがあります。V2Hと蓄電池の違いについて、「利用できるタイミング」「蓄電できる容量」「導入にかかる費用」「利用できる補助金」の4つのポイントで比較しながら解説します。
ポイント①利用できるタイミング
V2HはEV・PHEVに乗って外出してしまうと、電気を貯めることも自宅に給電することもできません。それに対し、蓄電池は自宅に一度設置してしまえば、いつでも充電したり給電したりすることが可能です。このような使い勝手、言い換えると設備を利用できるタイミングがV2Hと蓄電池のもっとも大きな違いと言えるでしょう。
ポイント②蓄電できる容量
家庭用定置型蓄電池の容量は約3kWhから最大でも15kWh程度と、それほど大きいものではありません。それに対し、V2Hを通じて家庭で活用されるEV・PHEVのバッテリーは大容量で、国内でもっとも普及しているEVの日産「リーフ」はベースグレードでも40kWh、上位グレードの「e+」なら60kWhあります。
現状V2Hに対応している車種のなかでもっとも容量が大きいのはメルセデス・ベンツの「EQS」と「EQS SUV」で、容量はなんと107.8kWhにものぼります。
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ポイント③導入にかかる費用
導入にかかる費用はV2H・蓄電池ともにそれなりに高額です。V2Hの場合、機器によりますが、本体価格は55万〜100万円程度で、設置工事の費用を合わせると90万〜130万円程度の費用がかかります。一方、蓄電池の価格は工事費を含め容量1kWhあたり18.7万円が目安(2019年度時点)1)で、一定以上の容量を求めると価格が100万円以上になります。
どちらのほうがコストパフォーマンスがよいかという観点で見ると、次のようになります。
EV・PHEVの車種によって異なりますが、たとえばバッテリー容量66kWh、車体価格が539万円(2023年7月18日時点)の日産「アリアB6」の場合、移動手段としての車の価値をまったく考えず、単純に蓄電池としての価値だけで計算しても、容量1kWhあたり約8.2万円となります。これにV2Hの費用で高いほうの約130万円を加えたとしても、容量1kWhあたり約10.1万円となり、定置型蓄電池の18.7万円よりも低くなります。
このように、EV+V2Hのほうが1kWhあたりの費用で比較すると非常にコストパフォーマンスがよいことがわかります。
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ポイント④利用できる補助金
V2H・蓄電池ともに一定の条件を満たせば国や自治体の補助金を利用することが可能です。V2Hの場合、今年度の国の補助金は2023年5月23日時点で予算額を超過したため申請受付を終了しましたが2)、自治体によっては補助金の申請を受け付けているところがあります。
たとえば、東京都では都内の戸建住宅を対象にV2Hの導入補助を行っており、その補助率はV2H本体購入費および設置工事費の2分の1(上限50万円)となっています3)。
一方、蓄電池の場合も国や自治体から各種補助がでています。一例として、環境省の「令和4年度・令和5年度 戸建住宅ZEH化等支援事業」では、新築住宅を建築・購入する場合の蓄電池の導入に対する補助制度をもうけており、補助額は1kWhあたり2万円(補助対象経費の3分の1、または20万円のいずれか低い額を加算)です4)。ただし、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)※などの要件を満たすことが必要です。
※外皮の断熱性能の大幅な向上と、高効率な設備・システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネを実現(省エネ基準比20%以上)。そのうえで、再エネを導入して、年間の一次エネルギーの収支をゼロとすることを目指した住宅のこと。
参考資料
2)次世代自動車振興センター「令和4年度補正・令和5年度補助金(V2H充放電設備)のご案内」
3)東京都地球温暖化防止活動推進センター「【令和5年度】戸建住宅におけるV2H普及促進事業 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」
4)環境共創イニシアチブ「【環境省戸建ZEH】令和4年度・令和5年度 戸建住宅ZEH化等支援事業 ZEH支援事業 公募情報」
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V2Hと蓄電池、それぞれに合うのはどんな人?
V2Hと蓄電池のどちらを選ぶべきかは、それぞれのライフスタイルによって異なります。具体的に言えば、EV・PHEVを日常的にどのように使うかがもっとも重要なポイントとなります。「蓄電池よりV2Hがおすすめの人」「V2Hより蓄電池がおすすめの人」の2タイプに分けてそれぞれ紹介しましょう。
蓄電池より「V2H」がおすすめの人
前述のように、V2HはEV・PHEVの大容量バッテリーを家庭で活用する設備です。つまり、EV・PHEVに乗っているときには、電気を貯めることも自宅に給電することもできません。毎日通勤で車を使っていて、ほとんど自宅に車がない状態になる人の場合、活用できるタイミングが少なくなってしまいます。
そういう意味では、車を「近所に買い物へ行くときだけに利用する人」「おもに送り迎えだけに利用する人」「週末だけしか乗らない人」などは、蓄電池よりもV2Hが向いているでしょう。
また、バッテリーが大容量のため、長時間・長期間の大規模な災害時の停電が心配な方にもV2Hのほうが向いています。
なお、V2Hは蓄電池と異なりEV・PHEVの充電器としての顔も持ち合わせていて、機種によりますが、「倍速充電機能」によって充電時間を大幅に短縮することが可能です。
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V2Hより「蓄電池」がおすすめの人
逆に言うと、EV・PHEVを通勤に利用するなど、毎日乗っているような人の場合、V2Hよりも蓄電池のほうがおすすめでしょう。
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V2Hと蓄電池は併用できる? そのメリットは?
ここまで見てきたように、V2Hと蓄電池は機能や特徴が異なり、おすすめのユーザーのタイプも違います。ただし、この2つは併用することが可能です。V2Hと蓄電池を併用するメリットを紹介します。
メリット①非常時に安定した電源を確保できる
V2Hと蓄電池を併用する最大のメリットは、万が一の災害発生時にEV・PHEVが自宅になかった場合でも蓄電池で急場をしのぐことができることでしょう。また、車のバッテリーと蓄電池の両方が停電時の電気をバックアップするので、大規模な自然災害時にも大容量で安定した電源を確保できるのも安心です。
国内では近年、自然災害が頻発しており、こうした災害時の停電では家庭の電気が復旧するまで最大で数日間かかる場合もあります。
メリット②電気代の節約効果をより期待できる
V2Hと蓄電池、太陽光発電は同時に導入すると、電気代の節約効果が高まります。近年太陽光で発電した電気は売電するよりも自家消費したほうが経済的におトクな場合が多くなってきています。
たとえば、EV・PHEVに乗って日常的によく外出するご家庭でも、昼間に太陽光発電でつくった電気を蓄電池にしっかり貯めて、自家消費を最大化することができるわけです。
V2Hと蓄電池の併用は非常時への備えとして役立つだけでなく、太陽光発電も併用することで日々の電気代の節約も期待できるのです。
導入費用を安く抑える方法もある
多くのメリットが見込まれるとしても、V2Hと蓄電池を併用すればその分導入費用が高くなります。ただでさえ高額な費用がかかる設備ですから、簡単に手が出せないと思うかもしれません。
しかし、東京電力グループの「エネカリ」というサービスを利用すれば、初期費用0円でV2Hや蓄電池を導入することができます。「エネカリ」についてもっと詳しく知りたい人は以下のサイトをご覧ください。
【おすすめ情報】V2H・蓄電池の導入を手軽にする「エネカリ」
東京電力グループのTEPCOホームテックでは、V2H・蓄電池の設置工事はもちろん、必要に応じ電気契約容量の変更提案、補助金の申請などもワンストップで行うことができます。また、「エネカリ」というサービスを利用すれば、初期費用0円で導入することも可能です。詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。
ライフスタイルに合った設備を選んで安心な暮らしを実現しよう
V2Hと蓄電池は自宅に電気を供給する役割は同じでも、特徴や機能が異なるので、導入に向いているご家庭のタイプも違います。まずEV・PHEVをどのように使っているかをよく考え、そのうえでライフスタイルに合った設備を選んで安心な暮らしを実現しましょう。
なお、V2Hや蓄電池には一部の自治体が交付する補助金を利用できる場合がありますので、V2Hや蓄電池を導入する際は必ず事前に販売業者や施工業者に相談することをおすすめします。