家庭用蓄電池とは?仕組みや種類、設置するメリット・デメリットを解説

蓄電池とは

家庭用蓄電池に電気を貯める機能があるということは多くの人が知っているでしょう。しかし、その仕組みについて把握しているという人は少ないはずです。また、自宅に蓄電池を設置しようと考えている人にとっては、家庭用蓄電池のメリット・デメリットは気になるポイントでしょう。この記事では、家庭用蓄電池の仕組みやタイプ、メリットやデメリットについてわかりやすく解説します。

 

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家庭用蓄電池とは

家庭用蓄電池

 

家庭用蓄電池とは、電気を貯めたり、必要なときに電気機器などに電気を供給したりすることができる設備のことです。このように、電気を放出(放電)するだけでなく、充電して繰り返して使うことができる電池のことを「二次電池」と呼びます。

私たちの身の回りには、さまざまな二次電池があります。たとえば、スマートフォンやパソコン、デジタルカメラなどのバッテリー、車やバイクのバッテリーなどです。こうしたバッテリーは、一度電気を使い切ってしまっても、充電すれば再び使うことができます。

家庭用蓄電池は、電気を貯める蓄電ユニット、パワーコンディショナー、リモコンなどによって構成されています。また、家庭用蓄電池と一口に言ってもさまざまなタイプがあり、住宅の状況や電気の使い方に合わせて選ぶことが大切です。タイプや選び方については、後述で詳しく説明します。

家庭用蓄電池に貯められる「2種類の電気」

2種類の電気

 

家庭用蓄電池に貯める電気は大きく2つに分けられます。1つ目は電力会社から買った電気、もう1つは太陽光発電などでつくった電気です。

電力会社から買う電気は、電力会社により料金単価などが設定されています。たとえばエコキュートなどをお持ちで夜間の電力量料金単価が安い料金プランに加入している場合、夜間に蓄電池に電気を貯めておき、反対に料金単価が高くなる日中に利用するなどの工夫ができます。こうすることで、電気代を多少安く抑えることができます。また、災害対策として一定の電気を蓄電池に貯めておく、という使い方も挙げられます。

一方、太陽光発電で電気をつくる場合、設備の設置コスト・メンテナンスコストがかかりますが、環境にやさしくCO2を発生しないほか、長期的な視点で見れば経済的である点が特徴です。最近、電気代が高騰しているため、さらに経済的効果が大きくなるでしょう。

この太陽光発電でつくった電気の経済性をさらに高めてくれるのが、蓄電池です。太陽光発電は電気をつくることはできますが、電気を貯めておくことはできません。蓄電池を導入すれば、使いきれずに余った電気を貯めて夜間や雨天時に使うこともできるようになります。

もちろん災害対策としても大きな力となります。停電になり、電力会社から電気が送られなくなっても、太陽光発電で電気をつくり、蓄電池に電気を貯めることができます。昼夜問わずに電気が使えるようになるのです。

このように、蓄電池と太陽光発電を上手に組み合わせることで、発電した電気をより有効に活用できるようになります。蓄電池は、災害に備える安心感だけでなく、エコでおトクな暮らしをアシストするすぐれものなのです。

EVを蓄電池代わりにする方法もある

EVを蓄電池にする方法も

 

V2H(Vehicle to Home)」というシステムを利用すれば、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の大容量バッテリーを蓄電池のように利用できるようになります。

V2Hを直訳すると“車から家へ”となることからもわかるように、V2HとはEVやPHEVに蓄えられた電気を家庭で有効活用するためのシステムや考え方を指す言葉です。

近年のEVやPHEVに搭載されるバッテリーは、数百kmもの長距離走行に対応できるほど大容量になっています。しかし、それだけの大容量バッテリーが走行していない時間帯には、いわば「置物」になってしまっているという、もったいない事実があります。

この「もったいない」を有効活用するのがV2Hです。V2Hを導入すれば、普通の蓄電池に比べて数倍~十数倍もの容量があるEVやPHEVの大容量バッテリーを家庭用電源としても使えるようになるのです。また、V2Hは倍速充電機能を備えているためEVやPHEVの充電をより短時間に行えるようにもなります。

 

 

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家庭用蓄電池を理解するための4つのキーワード

家庭用蓄電池の商品選びを始めると、知らない言葉がたくさん並んでいるはずです。そこでここでは、蓄電池を理解するためのキーワードである「パワーコンディショナー」「リチウムイオン電池」、「容量」と「出力」の違い、「全負荷」と「特定負荷」の違いについて解説します。

 

①「パワーコンディショナー」ってなに?

家庭用蓄電池を調べると、必ず「パワーコンディショナー」という言葉が出てきます。じつは蓄電池単体では家庭の電気を使用することができないのです。

パワーコンディショナーとは、電気を「直流から交流へ」あるいは「交流から直流へ」変換するための機器で、略して「パワコン」とも呼ばれています。

蓄電池に充電された電気は「直流」ですが、家庭用の電気は「交流」であり、そのままの状態では家庭で利用することができません。そこで、電気の直流・交流を変換するパワーコンディショナーが必要になります。ちなみに、変換する際には数%程度の電気のエネルギーロスが生じるため、その分使える電気が減ってしまいます。

②「リチウムイオン電池」ってなに?

現在、家庭用蓄電池で主流なのはリチウムイオン電池です。リチウムイオンがプラスとマイナスの電極の間を行き来することによって電気を貯めたり放出したりします。リチウムイオン電池はコンパクトでありながらパワフルで長持ちすることが大きな特徴です。

なお、リチウムイオン電池は身近なところで使用されています。たとえば、EVやPHEV、スマートフォンなどのバッテリーにもリチウムイオン電池が使用されています。

③「容量(kWh)」と「出力(kW)」の違いって?

「容量(kWh)」と「出力(kW)」の違いは?

 

家庭用蓄電池を選ぶ基準のひとつが、蓄電池の「容量」と「出力」です。蓄電池のカタログなどでもよく見かける言葉ですが、実はそれぞれの違いをきちんと理解できていないという人もいるかもしれません。そこで、上図を参照しながら蓄電池の「容量」と「出力」の意味について解説します。

水の貯まったタンクにたとえると、蓄電池の「容量」はタンクの容積に相当します。キャパシティと言ってもいいでしょう。タンクの容積が大きいほど、貯められる水の量も多くなります。蓄電池も同様に、「容量」が大きいほどたくさんの電気を蓄えられるというわけです。

一方、蓄電池の「出力」とは、蓄電池から瞬間的に取り出すことができるパワーのことを指します。蓄電池の出力が大きいほど、一度にたくさんの電気機器に電気を供給することができ、逆に出力が小さいと、限られた電気機器にしか電気を送ることができなくなります。上図でたとえると、「出力」は蛇口の大きさとなり、「出力」の大きなほうがタンクから水を多く出すことができます。

④「全負荷」と「特定負荷」の違いって?

家庭用蓄電池のカタログなどで登場する「全負荷」「特定負荷」は、停電した際にどこまで電気を供給するのかという範囲を示しています。

 

「全負荷」の蓄電池とは

蓄電池で全負荷と表現する場合、停電時に家庭で使う電気をすべて蓄電池から供給できるという意味です。IHクッキングヒーターやエアコンなどの200V機器にも電気を供給することができます。家庭全体に電気を供給するため、必然的に蓄電池の容量が大きくなります。ただし、家庭内すべてとはあくまで範囲を示していますので、最大で使える電気は蓄電池・パワーコンディショナーの最大出力によります。

「特定負荷」の蓄電池とは?

一方、特定負荷と表現する場合、停電時に特定の部屋などにだけ蓄電池から100Vの電気を供給します。製品やメーカーなどによって異なりますが、15〜20Aに相当するブレーカーのおよそ1〜2回路へ電気を送ることができるイメージです。停電時にどうしても使いたい回路に絞って電気を送ることになります。

〈図〉全負荷(左)と特定負荷(右)の違い

〈図〉全負荷と特定負荷の違い

 

ほかの設備との関係から考える。4タイプの家庭用蓄電池

家庭用蓄電池は、太陽光発電やV2Hなどの設備と組み合わせて使用することが多い設備です。何の設備との組み合わせかで仕組みが異なり、設置の仕方も変わります。ここでは、4つのタイプ別に家庭用蓄電池を解説します。

①単機能型

単機能型

 

まずご紹介する家庭用蓄電池は「単機能型」というタイプです。

「単機能型」の場合、蓄電池についているパワーコンディショナーは蓄電池のみに作用します。

当たり前のことのように思えますが、じつは非常に重要です。というのも、太陽光発電と併用する場合、「単機能型」だと太陽光発電にもパワーコンディショナーが必要だからです。

つまり、蓄電池と太陽光発電を併用する場合、それぞれが独立したシステムで構成されます。

「単機能型」のメリットは太陽光発電のメーカーと蓄電池のメーカーが異なる場合でも設置しやすいことです。また、太陽光発電を先に設置し、蓄電池を追加で導入する場合などには、この単機能型がよく選ばれます。設置にかかる費用が、後述の「ハイブリッド型」より安く抑えられることもあります。

一方で、「単機能型」は太陽光発電から蓄電池に電気を貯める際にパワーコンディショナーを2回経由(直流→交流→直流)するため、電気の変換ロスが大きくなるというデメリットがあります。

また、2台分のパワーコンディショナーを設置するためのスペースを確保しなければならないため、スペースの限られた住宅などには適さないケースもあるでしょう。

メーカーによっては、全負荷と特定負荷の両方の単機能型蓄電池をラインアップしているところがあります。自宅の設置条件やライフスタイル、蓄電池によって何をもっとも実現したいかといった優先順位をはっきりさせた上で選定するのがよいでしょう。

②ハイブリッド型

ハイブリット型

 

次にご紹介する家庭用蓄電池は、「ハイブリッド型」というタイプです。

「ハイブリッド型」の場合、「パワーコンディショナー」の構造に大きな違いがあり、1台で太陽光発電と蓄電池の両方を動かすことができるのが特徴です。

「ハイブリッド型」のメリットは、電気の変換ロスを抑えることができる点です。太陽光発電で発電された電気を一度交流に変換することなく直流のまま直接蓄電池へ貯めることができます。できる限り変換ロスを抑えて、電気を効率よく使いたいという人には「ハイブリッド型」がおすすめです。

一方、「ハイブリッド型」にもデメリットがあります。それは、単機能型と比べて価格が高い場合があるということです。また、すでに太陽光発電を設置している住宅に蓄電池を導入する場合、条件によっては「ハイブリッド型」の導入が難しいこともあるため、事前に販売・施工会社などへ確認する必要があります。

③多機能型

多機能型

 

3つ目にご紹介するのが、太陽光発電、蓄電池、V2Hを1台のパワーコンディショナーで制御する「多機能型」です。

商品の種類はまだ多くありませんが、現在、ニチコンが開発した全負荷タイプの商品がリリースされており、「トライブリッド型」とも呼ばれています1)

太陽光発電・蓄電池・V2H間をすべて直流でつなぐため変換ロスを抑えらますし、EVで外出したときも蓄電池があるため、太陽光発電でつくった電気をしっかり貯め、自家消費を最大化することができます。また、今はEVに乗っていなくても将来EVに買い替えた際にV2Hを後付けでき、拡張性があって便利です。

なお、東京電力グループは2022年3月、太陽光発電、蓄電池、EVの3つの電源を制御するパワーコンディショナーを含む「多機能パワコンシステム」を共同開発しました2)。このシステムでは、AIを活用して家全体の電気の使い方を上手にコントロールするため、電気代を最小化するなどの効果が期待されます。

 

 

④スタンドアロン型

④スタンドアロン型

 

最後にご紹介するのは、電力会社の系統に接続しない「スタンドアロン型」というタイプです。

アウトドアなどで使われるポータブル蓄電池と似ていますが、主に屋内で使用されること、ポータブル蓄電池より容量が大きいものが多いことなどが違いとして挙げられます。とはいえ、前述の「単機能型」や「多機能型」などと比べると充電できる容量は小さくなります。

メリットは、家庭のコンセントにつないで充電するため、大きな設置工事を必要としない点です。マンションなどでも簡単に導入することができるでしょう。また、基本的に蓄電池本体にあるコンセントに、使いたい電気機器を差し込んで使う形になります。

 

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家庭用蓄電池のメリットは主に2つ

家庭用蓄電池を導入することのメリットは大きく2つあります。普段の暮らしでも、停電などの非常時にも役立つ家庭用蓄電池のメリットを説明します。

メリット①災害などによる停電時にも電気機器が使える

近年、毎年のように大規模な台風などによる災害が起こっています。「停電したらどうしよう」「停電が長引いてしまったらどうすれば?」と不安に思う人もいるでしょう。

自然災害などで停電した際には、家庭用蓄電池が非常用電源として役立ちます。大容量の蓄電池なら、停電時でもスマートフォンの充電、照明やエアコン、冷蔵庫などを使える場合もあります。万が一の備えとして大きな安心につながるでしょう。

メリット②電気代の節約につながる

昨今、電気代の高騰が大きなニュースになっています。また、不安定な世界情勢などの影響から、燃料価格も上昇を続けています。そのため、電気代を節約したいと考える人も多いのではないでしょうか。

たとえば、エコキュートなどをお持ちで夜間の電力量料金単価が安い料金プランに加入している場合、夜間の安い電気を蓄電池に貯めておき、昼間に住宅に戻して使うと、昼夜間の料金単価差の分だけ、電気代の節約につながります。

また、太陽光発電と家庭用蓄電池を一緒に使うことで、自宅で発電した電気をより有効に自家消費できるようになります。たとえば、日中に発電した電気を蓄電池に貯めて夜間に使うことで、電力会社から買う電気を減らすこともできるでしょう。

 

 

家庭用蓄電池は充放電回数に上限がある

家庭用蓄電池に使用されるリチウムイオン電池には、充放電のサイクル数に上限があるとされています。サイクル数とは、電池の残量が0%のときから100%まで充電し、再び電気を使い切るまでを1サイクルとして、これを何回繰り返すことができるかを示したものです。

家庭用蓄電池のサイクル数はメーカーや機器によって異なり、6000〜10000回以上など大きく幅があります3)。また、メーカーや機器によっては一定の充電容量を一定期間保証する制度が設けられている場合が多いので、購入前に確認するとよいでしょう。

 

コラム:蓄電池の変換ロスに注意しよう

蓄電池の変換ロスに注意

画像:iStock.com/Ivan Bagic

蓄電池を使用する際に注意したいのが、パワーコンディショナーにおいて充電(交流→直流)や放電(直流→交流)をする際にどうしても電気の変換ロスが発生してしまうという点です。変換ロスは、電気を充電する際、放電する際のそれぞれで発生します。

たとえば、変換効率が90%だとすると、充電・放電を合計した総合変換効率は81%となります。つまり、100kWhの電気を充電・放電して使おうとすると、使用できる量は81kWhに減ってしまうのです。このように、蓄電池では充電した電気を100%使えるわけではないということを覚えておきましょう。

 

 

家庭用蓄電池の導入費用は?

家庭用蓄電池の設置には、蓄電池・パワーコンディショナーの機器本体費用に加え、設置工事、配線などの費用が発生します。経済産業省の第3回「定置用蓄電システム普及拡大検討会」資料によれば、2019年度の家庭用蓄電池の工事費を含んだ平均的な蓄電システム価格は、蓄電容量1kWhあたり18.7万円とされています4)。これはあくまで平均的な価格であり、機器や設置する条件などによって異なることに注意しましょう。

このように、家庭用蓄電池の設置には高額の費用がかかるため、地方自治体によっては補助制度を通じて支援しているところもあります。一例を挙げると、東京都では「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」として、蓄電池や太陽光発電の導入などに対する補助を行っています5)

また、東京電力グループの「エネカリ/エネカリプラス」というサービスを利用することで、初期費用ゼロ円で蓄電池や太陽光発電などを導入する方法もあります。

 

初期費用をかけずに蓄電池を導入できる!

蓄電池や太陽光発電を自宅に導入したいけれど、初期費用はかけたくない。そのような場合は、東京電力グループが提供しているサービス「エネカリ/エネカリプラス」がおすすめです。初期費用ゼロ円で自宅に蓄電池や太陽光発電を導入できるうえ、設置からメンテナンス、保証もつくため、維持コストも含めて将来の家計を計画的に設計することができます。

エネカリ/エネカリプラス」について詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。

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※「エネカリプラス」は別途足場代等の費用がかかる場合があります。

 

 

EVを蓄電池代わりにした場合の費用感

家庭用蓄電池の代わりに、EVやPHEVの大容量バッテリーを活用したいという人もいるでしょう。EVなどから住宅に電気を送るには、V2Hシステムを導入する必要があります。

V2Hの費用は機器代と設置工事の費用を合わせて約90万~130万円が目安となります。この金額はあくまで目安であり、正確な金額は販売・施工会社に見積ってもらうのがよいでしょう。また、V2Hに対応していない車種もあるため、事前に確認するようにしましょう。

 

 

家庭用蓄電池は普段の暮らしにも非常用電源としても役立つ

家庭用蓄電池は、太陽光発電と組み合わせて使えば、夜間や雨天時なども発電した電気を使うことができるようになります。また、停電などの際には非常用電源として利用できるため、万が一の備えとしても頼もしい存在です。

こうしたメリットがある一方で、価格が高額などのデメリットも考えられます。しかし、地方自治体の補助制度や、初期費用ゼロ円のリースやPPAサービスをうまく活用すれば、蓄電池をおトクに利用することができます。ライフスタイルに合った蓄電池を選んで、より安心でエコな電化生活を送りましょう。

 

この記事の監修者
藤山 哲人
藤山哲人

あらゆる家電を使い込んで比較して、性能を数値やグラフにする技術系家電ライター。『マツコの知らない世界』(TBS系)では番組史上最多の6回の出演を果たしたほか、出演番組100本以上。「家電Watch」「文春オンライン」「現代デジタル」などのWeb媒体やラジオのレギュラーを持つ。