太陽光発電と蓄電池の仕組みとは?発電→蓄電→消費の流れを図解!

蓄電池の仕組み

蓄電池は、太陽光発電でつくった電気を蓄え、夜間や停電時に家に戻して使用するための設備です。電気の自給自足や自家消費に役立つため、今、大きな注目を集めています。太陽光発電と蓄電池の導入を検討する際、両方を同時に設置したほうがいいのか、あるいは太陽光発電だけでもいいのか迷うことがあるでしょう。太陽光発電と蓄電池を同時に設置する仕組みや活用方法、メリットとデメリットを詳しく紹介します。

※この記事は2022年2月7日に公開した内容をアップデートしています。

 

 

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太陽光発電の仕組み

太陽光パネル

 

太陽光発電には、メガソーラーと呼ばれる大規模な事業用の設備から家庭用の小規模なものまでさまざまな種類があります。この記事では、住宅の屋根に設置して電気を使用したり売電したりするための「住宅用太陽光発電システム」についてご紹介します。

まず、太陽光発電システムの仕組みは、大きく「電気をつくる(発電)」「電気を変換する」「電気を振り分ける」「電気を使う」という4つのステップに分けられます。この4つのステップを順番に見ていきましょう。

①電気をつくる

まずは、ソーラーパネルで電気をつくります。ソーラーパネルは「太陽電池モジュール」とも呼ばれ、太陽光があたることで光エネルギーから電気をつくり出します。住宅用太陽光発電システムでは、屋根の上などに設置される場合が多いでしょう。

②電気を変換する

次に、太陽電池モジュールでつくられた電気を家庭で使えるようにします。太陽電池モジュールで発電された電気は、そのままでは家庭内で使うことができません。というのも、普段家庭でつかっている電気と発電された電気とでは、電気の性質が違うからです。

太陽電池モジュールが発電した電気は「直流(DC)」ですが、家庭で使われる電気は「交流(AC)」です。そのため、発電した電気を直流から交流に変換する必要があるのです。

③電気を振り分ける

続いて「交流」に変換された電気を分電盤などを通して各部屋や家電などに振り分け利用します。なお、発電した電気を使いきれないときは、電線を通して電力会社へ売る(売電する)こともできます。

④電気を使う

③でも記したとおり、太陽光発電でつくった電気は蓄電池などに貯めない限り、そのときに使うもしくは売電するしかありません。そのため、原則として太陽光発電でつくった電気は昼間に消費することになります。

 

 

太陽光発電システムに必要な機器とは?

太陽光発電に欠かせない5つの機器

 

次に、太陽光発電に欠かせない5つの機器の役割について解説します。

A 太陽電池モジュール

「太陽電池モジュール(※図中A)」は、太陽から降り注ぐ光エネルギーを電気エネルギーに変える役割を持っています。一般住宅で太陽光発電を導入する場合には、住宅の屋根などに設置されることが多く、近年では屋根と一体化したタイプも存在します。

B パワーコンディショナー

太陽電池モジュールで発電された電気を直流から交流に変換するための装置が「パワーコンディショナー(※図中B)」です。

太陽光電池モジュールの電気を家庭で使うためには、パワーコンディショナーで電気の性質を交流に変換しなければいけません。電気を活用するために、なくてはならない設備です。

C 接続箱

太陽電池モジュールからはたくさんの配線が伸びていますが、それらを一本にまとめてパワーコンディショナーにつなげるものを「接続箱(※図中C)」といいます。ただし、パワーコンディショナーの仕様などによっては、接続箱を設置しない場合もあります。

D 分電盤

「分電盤(※図中D)」は、パワーコンディショナーで交流に変換された電気を各部屋や家電などに振り分けるための設備です。

なお、太陽光発電設備の有無にかかわらず、一般的な住宅には分電盤が設置されています。停電時などに操作する「ブレーカー」が入っている装置が分電盤です。分電盤は、電気を使い過ぎたり漏電したりした際にブレーカーを落とし、安全を保つ重要な役割をもっているのです。

E スマートメーター

発電した電気を使いきれなかった場合、余った分を電力会社へ売ることができます。電力会社へ売る電気の量や、電力会社から買う電気の量を計測する装置が「スマートメーター(※図中E)」です。

昨今のスマートメーターは、1台で売電する電力量と購入する電力量を計量することができます。

 

 

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蓄電池の仕組み

蓄電池仕組み

 

蓄電池とは、化学反応によって電気を蓄える「充電」や電気を使う「放電」を行える装置です。このように何度も充電・放電できる電池は「二次電池」と呼ばれます。蓄えられる電気の種類は「直流」です。

蓄電池は、2つの電極と電解液で構成されています。正極(プラス極)と負極(マイナス極)の2つの電極の間を電子が動くことで、充電したり放電したりするのです。電極や電解液の素材によって、蓄電池の種類が変わります。

太陽光発電システムでは、蓄電池を併用することが多くあります。電気を蓄えておける蓄電池は、昼間しか発電できない太陽光発電システムの弱みをカバーしてくれる存在だからなのです。

ここでは蓄電池の種類や乾電池との違いなどについて解説しましょう。

蓄電池の種類と特徴

蓄電池には、以下のような種類がありますが、近年、家庭用の蓄電池は「リチウムイオン電池」が主流になりつつあります。

〈表〉蓄電池の種類

種類 特徴
鉛蓄電池 正極に二酸化鉛、負極に鉛を使った蓄電池。古くからあり、車の補機用バッテリーによく使われています。
ニッケル水素電池 正極にニッケル酸化化合物、負極に水素化合物を使った蓄電池。ハイブリッド車の動力源としても使われています。
リチウムイオン電池 正極にリチウムを含む材料が使われている蓄電池。スマホやパソコン、電気自動車(EV)など幅広い用途で使われています。

 

リチウムイオン電池は、これまでの蓄電池に比べると、エネルギー密度や出力、寿命の面で性能が優れていることが特徴です。小型化も進み、家庭用蓄電池や電気自動車(EV)などさまざまな製品に活用されている身近な蓄電池です。

家庭用もパソコン用も蓄電池の仕組みは同じ

もっとも身近なリチウムイオン電池を使った製品といえば、ノートパソコンやスマートフォンでしょう。リチウムイオン電池は、多くのエネルギーを蓄えられると同時に小型化が可能なのです。

実はこうした電子機器に使われている蓄電池も太陽光発電と併用する家庭用定置型蓄電池も、基本的には蓄電の仕組みは同じです。用途に応じて蓄電する容量を柔軟に変更することができる点も、リチウムイオン電池の長所の1つだと言えます。このように、リチウムイオン電池は私たちの身近なところでいろいろな製品として役立っているのです。

 

 

太陽光発電と蓄電池を併用したときの電気の流れ

太陽光発電と蓄電池を併用したときの電気の流れ

 

太陽光発電と蓄電池を併用すると、太陽光発電でつくった電気を貯めておけるようになります。

太陽光発電システムでは、電気をつくる、電気を変換する、電気を振り分ける、電気を使うという4つのステップで電気を利用しますが、蓄電池を併用することで、このステップの中に「電気を貯める」を加えることができるのです。

①電気をつくる

蓄電池を利用する場合も、電気のつくり方は利用しない場合と同じです。太陽電池モジュールに太陽光があたり、光エネルギーから電気をつくりだします。

②電気を変換する

電気をつくったあとは、パワーコンディショナーで直流の電気を家庭で使える交流に変換します。これも、蓄電池を併用しない場合と変わりません。ただし、蓄電池に蓄えられる電気も直流のため、蓄電池用にも別途パワーコンディショナー機能が必要となります。

③電気を振り分ける

次に、分電盤を通して各部屋や家電などに電気を振り分けます。蓄電池を利用しない場合と同様ですが、蓄電池を併用する場合、余った電気を売電するのではなく、蓄電池にも振り分けることができます。

④電気を貯める

分電盤から電気を振り分ける際、蓄電池に電気を送ることで電気を貯めることができます。ただし、分電盤からではなくパワーコンディショナーから直流のまま電気を受け取って貯める方法もあります。どのように電気を貯めるのかは、パワーコンディショナーや蓄電池のタイプによって変わります。

⑤貯めた電気を使う

蓄電池に貯めた電気は、必要に応じて使うことができます。夜間や停電時などに活用することで、昼間発電した電気を無駄なく自家消費できるでしょう。

 

ハイブリッドパワーコンディショナーなら変換ロスを抑え停電時も安心

ハイブリッドパワーコンディショナーは、太陽光発電と蓄電池のパワーコンディショナーを1台で兼用できる機器です。パワーコンディショナーが各々別の場合、太陽光発電で発電した電気を蓄電池に貯める際、直流→交流、交流→直流と2度変換することになり、変換時のロスが大きくなってしまいます。ハイブリッドパワーコンディショナーであれば、発電した直流の電気をそのまま蓄電池に貯めることができるため、変換時のロスを最小限にとどめることができるのです。

また、通常2台必要なパワーコンディショナーを1台にすることで、省スペース、省コストにもつながります。

蓄電池にはさまざまな種類があります。蓄電池をどのように利用したいのか、どのくらいの電気をまかなえるようにしたいのかなど、それぞれのご家庭ごとのライフスタイルに応じて検討しましょう。

 

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太陽光発電と蓄電池を併用するメリット・デメリット

太陽光発電と蓄電池を併用するメリット・デメリット

 

蓄電池の利用には、メリットとデメリットの両方があります。メリット、デメリットそれぞれを知ったうえで、太陽光発電と併用すべきかどうかを検討しましょう。

メリット①非常時の電源として活躍する

蓄電池の大きなメリットが、非常時の電源として活躍することです。災害などで停電しても、機器が正常に作動すれば、一定の時間は自宅で電気を利用できます。もちろん、太陽が出ていれば太陽光発電システムで発電した電気をそのまま使ってもいいですし、追加で蓄えられる可能性もあります。

太陽光発電と蓄電池を併用していれば、万が一、停電期間が長引いてしまっても、生活に必要な最低限の電気なら昼夜まかなうことができるかもしれません。

メリット②光熱費の削減につながる可能性がある

太陽光発電と蓄電池の併用は、活用の仕方によっては光熱費の削減にもつながります。

以前は、FIT(固定価格買取制度)の売電価格が電気料金単価より高かったのですが、近年は売電価格が下がり、電気料金単価が高騰しています。太陽光発電の発電量が多い場合、そのまま使用したり、蓄電池に貯めておいて夜間に自宅で使用したほうが金銭的なメリットが大きい場合もあります

また、太陽光発電の発電量がそれほど多くなくても、電気料金プランによっては夜間の割安な電気を蓄電池に貯めて昼間に使うといった節約方法も可能です。

デメリット:導入・維持にかかるコストが高い

非常時の備えや光熱費削減に役立つ蓄電池ですが、導入や維持にコストがかかるという問題もあります。

家庭用蓄電池であるリチウムイオン蓄電池は、決して安いものではありません。経済産業省の第3回「定置用蓄電システム普及拡大検討会」資料によると、2019年度の工事費を含む蓄電システムの平均価格は、蓄電容量1kWhあたり18.7万円とされています。1)

また、導入にかかるコストだけでなく、経年後の交換コストなども考える必要があります。自治体などが補助制度を用意している場合もありますが、補助金を活用したとしても、蓄電池を導入するにはある程度まとまった資金が必要です。

 

蓄電池のメリット・デメリットについて詳しくはこちら
▶︎太陽光発電に蓄電池は必要? 蓄電池のメリット・デメリットを解説【図解あり】

 

蓄電池や太陽光発電の初期費用がゼロ円
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東京電力グループが提供している「エネカリ/エネカリプラス」は、太陽光発電システムをはじめ、蓄電池やおひさまエコキュートなどを初期費用ゼロ円で導入することができるサービスです。

しかもメンテナンスや保証もついているので維持コストを含めて将来の家計を計画的に設計することができます。「エネカリ/エネカリプラス」について詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。

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※エネカリプラスは別途足場代等の費用がかかる場合があります。

 

 

太陽光発電と蓄電池は同時に設置するのがおすすめ!

太陽光発電でつくった電気を効率よく自家消費したいなら、蓄電池を一緒に使うのがおすすめです。

太陽光発電は、太陽が上り始めると発電量が増え、太陽が沈むと発電しなくなるといった具合に、昼間に電気をつくります。ところが、私たちのライフスタイルは、太陽が出ていないときほど電気をたくさん使う傾向にあります。日中は仕事や学校などで家に人がいないのに対して、朝方や夜には家事などでたくさん電気を使っているのです。

このように、電気をつくるタイミングと使うタイミングがマッチしないケースでは、電気を蓄えておく蓄電池がなければ、せっかくつくった電気を十分に使うことができません。たっぷり発電しても、使わないまま電力会社に売ってしまうことになります。蓄電池があれば、時間を選ばずいつでもつくった電気を使うことができるでしょう。

本記事をお読みの方の中には「つくった電気を使えなくても、売れればいいじゃないか」と考える方がいるかもしれません。ですが現状、私たちが電力会社から買う電気は、電力会社へ売る電気よりも高い場合が多い状態になっています(※加入している電気料金プランや太陽光発電の導入時期等によって異なる場合があります)。そのため、自家消費を増やして電力会社から買う電気を上手に減らすことが、電気代の節約につながります。

今後、太陽光発電と蓄電池の存在感は増していく

日本は、2050年までに「カーボンニュートラル」を目指しています。今後、住宅に太陽光発電や蓄電池を導入したいという方も増えてくるでしょう。こうしたエネルギーの自給自足の取組みが広がれば、日本のエネルギー自給率の低さの改善につながるかもしれません。

また、ライフスタイルの多様化や電気の安定供給に対する懸念などのために、今後、住宅に太陽光発電を設置したいと考える方も増えてくると思われます。

太陽光発電と蓄電池の仕組みを知り、それぞれのご家庭にとってのメリットがどの程度あるのかを専門家によく相談して、導入を検討しましょう。

 

 

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
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