太陽光発電は、生み出した電気を自家消費したり売電したりすることで電気代を節約できます。しかし、実際にどれくらい電気代を節約できるのかわからず、導入を躊躇している人も多いのではないでしょうか。この記事では、太陽光発電で電気代を節約できる仕組みや、蓄電池やEV(電気自動車)などと併用して電気代を実質0円に近づける方法について解説します。
※この記事は2023年2月8日に公開した内容をアップデートしています。
- 太陽光発電を自宅に導入すると電気代が安くなる
- 太陽光発電を導入した場合の電気代をシミュレーション
- 太陽光発電の導入例:実際にどれだけ電気代が浮いている?
- 太陽光発電で電気代を実質0円に近づけるには
- 太陽光発電で家計の負担を軽減しよう
太陽光発電を自宅に導入すると電気代が安くなる
太陽光発電を自宅に導入すると、毎月の電気代を安くできる可能性があります。まずはその仕組みから説明しましょう。
太陽光発電で生み出された直流の電気は、パワーコンディショナーによって交流に変換されることで、家庭内で使用(自家消費)できるようになります。これにより電力会社から購入する電力量が減り、毎月の電気代は安くなります。たとえば、晴天で昼間に必要な電気をすべて太陽光発電でまかなえた日の場合、電力会社から電気を購入するのは、ソーラーパネルに日の当たらない夜の時間帯のみです。
多くの家庭では、電気を使った量に応じて、適用される電気料金単価が異なる電気料金プラン(使用電力量が増えると段階的に適用される電気料金単価が上がるプラン)を採用しています。そのため、太陽光発電によって電力会社から購入する電力量を減らせば、単価の安い区分になることが期待できるのです。
さらに蓄電池やEVと組み合わせるなど、工夫次第で電気代を節約できます。その方法については後述します。
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太陽光発電を導入した場合の電気代をシミュレーション
では、太陽光発電を導入した場合、電気代はどれくらい節約できるのでしょうか。各省庁のデータをもとにシミュレーションしてみましょう。ここでは、5kWの太陽光発電システムを導入するケースを想定し、売電収入を差し引いた電気代を参考シミュレーションします。
太陽光発電5kWの発電量、売電収入、電気代は?
まずは、年間でどれくらいの電気を発電できるのか計算しましょう。設置する屋根の状況や気象条件などさまざまな要因で発電量が変わるため、ここでは、あくまでも参考値として環境省のデータ1)を使います。以下の表によると、日本の平均年間発電量は、太陽光発電の容量1kWにつき1,303kWhです。そのため、容量5kWの太陽光発電の場合、年間の平均発電量は6,515kWhになります。
<表>都道府県庁所在地の年間予想発電量
県庁所在地 | システム容量1kWあたりの 年間予想発電量 (kWh/年・kW) |
県庁所在地 | システム容量1kWあたりの 年間予想発電量 (kWh/年・kW) |
札幌市 | 1225 | 大津市 | 1271 |
青森市 | 1162 | 京都市 | 1255 |
盛岡市 | 1234 | 大阪市 | 1337 |
仙台市 | 1288 | 神戸市 | 1388 |
秋田市 | 1108 | 奈良市 | 1304 |
山形市 | 1219 | 和歌山市 | 1386 |
福島市 | 1267 | 鳥取市 | 1183 |
水戸市 | 1392 | 松江市 | 1177 |
宇都宮市 | 1364 | 岡山市 | 1346 |
前橋市 | 1441 | 広島市 | 1332 |
さいたま市 | 1361 | 山口市 | 1279 |
千葉市 | 1352 | 徳島市 | 1401 |
新宿区 | 1345 | 高松市 | 1348 |
横浜市 | 1366 | 松山市 | 1330 |
新潟市 | 1140 | 高知市 | 1407 |
富山市 | 1163 | 福岡市 | 1224 |
金沢市 | 1189 | 佐賀市 | 1262 |
福井市 | 1190 | 長崎市 | 1276 |
甲府市 | 1522 | 熊本市 | 1309 |
長野市 | 1428 | 大分市 | 1263 |
岐阜市 | 1368 | 宮崎市 | 1345 |
静岡市 | 1431 | 鹿児島市 | 1256 |
名古屋市 | 1382 | 那覇市 | 1217 |
津市 | 1392 | 平均 | 1303 |
さらに経済産業省のデータ2)によると、発電した電力のうち、売電される割合は平均70.0%、自家消費される割合は平均30.0%となります。このデータをもとに考えると、年間にして約4,560kWhが売電に、約1,955kWhが自家消費にまわることになります。こちらの数字を使って年間の売電収入と、自家消費によって節約できる電気代を割り出してみましょう。
【売電収入(推計)】
年間売電量4,560kWh
× FIT売電単価16円/kWh(2024年度の場合)
= 年間売電収入7万2960円
【節約できる電気代(推計)】
年間自家消費量1,955kWh
× 電力量料金単価31円/kWh(※)
= 年間電気代節約額6万605円
※「全国家庭電気製品公正取引協議会」公表の税込目安単価3)。なお、電力量料金のみの金額です。基本料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は加味していません。
もちろん、正確な金額は家族構成やライフスタイルなどによって異なりますが、太陽光発電によって13万3565円相当の経済的メリットが毎年生まれることになるのです。
さて、5kWの太陽光発電を導入して1年間使用した場合、太陽光発電で電気代は実質いくらになるでしょうか?
年間の収支試算例
【これまでどおりすべての電気を購入した場合】
●年間の電気代 → 14万7180円
【5kWの太陽光発電を導入した場合】
●FIT売電収入 → 7万2960円
●自家消費することで節約できる電気代 → 6万605円
合計 13万3565円
【収支】
13万3565円-14万7180円=-1万3615円
総務省の統計データ4)によると、2人以上の世帯の年間の電気代は平均14万7180円(1万2265円/月)とされています。
この数値で比較すると、【電力会社に支払う電気代】14万7180円に対して、【FIT売電収入】7万2960円+【自家消費することで節約できる電気代】6万605円=13万3565円です。【これまでどおり】の電気代から、太陽光発電を導入することによる経済的メリットを差し引くと、収支は-1万3615円とマイナスになりますが、実質約91%も電気代を軽減させることができています。
これはあくまでも収支試算ですが、太陽光発電を導入することで電気代を大幅に軽減できると言えるでしょう。
参考資料
1)環境省「令和3年度再エネ導入ポテンシャルに係る情報活用及び提供方策検討等調査委託業務報告書」P115
2)経済産業省 資源エネルギー庁「太陽光発電について」P41
3)全国家庭電気製品公正取引協議会「よくある質問 Q&A」
4)総務省「家計調査報告(家系収支編)2023年(令和5年)結果の概要」P5
ソーラーパネルメーカーなどのシミュレーションサイトを活用しよう
さらに詳しくシミュレーションしたい場合は、ソーラーパネルメーカーのサイトなどでシミュレーションツールを公開しています。居住エリアやパネルの設置方角など細かい条件で発電量や電気代削減額などが算出できますので活用しましょう。
主なメーカーなどのシミュレーションサイト
■サンクル
太陽光発電シミュレーション
■シャープ
太陽光発電・蓄電池システム シミュレーション
■パナソニック
エネピタ
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太陽光発電の導入例:実際にどれだけ電気代が浮いている?
シミュレーションではなかなか理解しづらい、という人もいるかもしれません。続いては、実際に太陽光発電を導入した人々の感想を紹介します。
事例①オール電化住宅の電気代を年間で半額まで削減
【導入した設備】
太陽光発電(9.75kW) + 蓄電池(7.04kWh) + エコキュート
群馬県にお住まいの小山佳孝(こやま よしたか)さんは、7人家族の大黒柱であり、3児のやさしいパパ。新築3年目に太陽光発電をリフォーム導入しました。
■導入した感想
1年過ごしてみて、電気代の削減効果は素直にスゴい!と思いましたね。季節によって発電量が違うので、月々で差はあるのですが、年間で考えると電気代を半額まで削減することができたのです。逆に、今までどれだけ電気にお金を使っていたのかも実感しました(苦笑)。また、電気代を削減できた上に、売電もそれなりにできています。
小山さんのインタビュー記事はこちら
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事例②電気代より売電料金が高く、おトク感を実感
【導入した設備】
太陽光発電(4.97kW) + V2H + エコキュート
神奈川県にお住まいの菱沼和幸(ひしぬま かずゆき)さんと玲(れい)さんは、新築6年目で太陽光発電を導入。電気代削減、エコ、災害時の備えとして太陽光発電に以前から興味があったそう。
■導入した感想
和幸さん「(導入してから)節電意識が高くなりましたし、災害時にも安心です。もし興味があるなら、まずは施工業者の方など、プロに話を聞いてみてはどうでしょうか? プロフェッショナルな人にしか教えてもらえない実態がわかりますよ」
玲さん「ウチは屋根の形がよかったので発電量も多くなったのですが、そうとも限らないので。家の形状や条件によって、発電量は異なるようですからね。もし、新築を検討されている方なら、新築時に導入されるのがおすすめです」
菱沼さんのインタビュー記事はこちら
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事例③電気のほとんどを太陽光発電でまかなえている
【導入した設備】
太陽光発電(9kW) + 蓄電池(13.5kWh)
神奈川県にお住まいの梅本祐紀(うめもと ゆうき)さんと佐和子(さわこ)さんは、2020年にご自宅を建てられ、その2年後(2022年)に太陽光発電と蓄電池を取り入れるリフォームを実施。
■発電量や蓄電量は?
祐紀さん「太陽光発電は約9kW、蓄電池は約13kWhの容量なので日常で困ることはないですし、雨天でも1kWほどは発電します。『こんな天気でも発電するんだね』と夫婦で驚きました。スマホアプリでモニタリングできるので『この天気だとどのくらいだろう?』とチェックしながら楽しんで生活しています」
■売電による収入は?
祐紀さん「雨が続いた週でも、電気の自給率は最も低くて70%後半くらい、大半は100%まかなえています。売電目的の導入ではありませんでしたが、売れたらやっぱりうれしいですね。手元計算で4月は1万7000円ほどの収入がありました」
梅本さんのインタビュー記事はこちら
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太陽光発電で電気代を実質0円に近づけるには
上述で、収支計算上は電気代を大幅に軽減させることができることを紹介しましたが、太陽光発電にも弱点があります。
それは、太陽光発電が夜は発電しないといこと。そして発電量も天候により左右されてしまうということ。そのため、太陽光発電が発電しない時間帯や太陽光発電量が使用電力量を下回る場合は、電力会社から電気を購入することになりますし、基本料金や最低料金もありますので、必ず電気代の支払いは発生します。収支試算上の金額と現実金額とで開きが生じることになります。
ただし、次のような工夫をすることで購入する電気代をさらに減らすことはできます。
・省エネ機器の導入で電気の使用量自体を減らす
・太陽光発電の容量を大きくし発電量を上げ、自家消費や売電収入を増やす
・蓄電池やEVにより自家消費を増やす
さらに太陽光発電と相性がよいのがオール電化住宅です。太陽光発電とオール電化を組み合わせることで、電気代だけでなくガス代などの光熱費を節約できる可能性があります。
①エコキュートなどの省エネ機器導入で光熱費全体のコストを下げる
空気の熱で効率よくお湯を沸かすヒートポンプ式給湯機のエコキュートに切り替えることでガス代を無くし、トータルの光熱費を抑える方法もあります。エコキュートは、一般的に電気料金単価の安い夜間の電力でお湯を沸かすことで、ガス給湯器に比べて光熱費が抑えられるうえ、ヒートポンプ式のためエネルギー消費量も少なくなります。具体的には以下の図5)のように、エコキュートを導入する場合、従来型ガス給湯器に比べ、約31%の省エネにつながります。
さらに太陽光発電と組み合わせて、新たに開発された自家消費を促進する「おひさまエコキュート」を導入すれば、昼間の余剰電力を自家消費してお湯を沸き上げることができ、さらなる光熱費の節約に繋がります。
おひさまエコキュートについて、詳細は以下の記事でご確認ください。
おひさまエコキュートについて詳しくはこちら
▶︎業界初! 太陽光でお湯を沸かす「おひさまエコキュート」を大解剖。ダイキンのショールームを訪問!
②太陽光発電に蓄電池を組み合わせる
太陽光発電ができない夜間などの電気を自給する方法として蓄電池があります。蓄電池とは、電気を蓄える設備です。太陽光発電と一緒に使うことで、昼間に発電した電気を貯めて夜も使えるようになるため、電気の自給率・自家消費率が増えます。
先ほどの1年間のシミュレーション例では、太陽光発電の売電量は約4,560kWhですが、蓄電池の利用で仮に自家消費が1,500kWh増え、その分売電は減るとすると、買電単価31円と売電単価16円の差15円×1,500kWhで年間22,500円、電気代が節約できることになります(蓄電池の変換効率は加味していません)。
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③EVを導入して、家計全体でコスト節約をする
蓄電池の代わりにマイカーをEV・PHEV(プラグインハイブリッド車)に買い換える選択肢もあります。EV・PHEVがあれば、太陽光発電の電気で充電することにより自家消費を増やせますし、V2Hも導入すれば、EVの大容量バッテリーを蓄電池として夜間などにその電気を家に戻して使用することができます。
電気のみを動力源とするEVなら車自体も電気で動くので、普段のガソリン代は不要になります。つまり、仮にEVの電気も太陽光発電の自家消費でまかなえるとしたらガソリン代も減らすことになり家計全体でコストを抑えることができます。
④オール電化でトータルの光熱費を節約
オール電化住宅とは、照明や空調だけでなく給湯に加えて調理の熱源など、家庭内で利用するエネルギーをすべて電気でまかなう住宅のことです。基本的に都市ガス・プロパンガスや灯油を使わないため、ガス代や燃料費の支出はありません。
エコキュート(おひさまエコキュート)については先ほど話しましたが、給湯や調理などの電気を太陽光発電でまかなうと自家消費が増え、太陽光発電で発電できない夜間は蓄電池やEVに蓄えた電気を使うなど、電気を上手に活用することができます。つまり、家庭のエネルギーをオール電化にして太陽光発電、さらに蓄電池やEV・V2Hも組み合わせるとトータルの光熱費の節約に繋がるのです。
ひとつ肝心なのは、ランニングコストの電気代だけではなく、機器の導入コストやメンテナンス・交換も含めて、事前にシミュレーションし、メリット・デメリットをしっかり把握することです。
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オール電化を簡単に導入する方法
東京電力グループのサービス「エネカリ/エネカリプラス」では、初期費用0円※、月々定額の利用料のみで太陽光発電をはじめ、蓄電池、エコキュート(おひさまエコキュート)、IHクッキングヒーター、V2Hなどの設備を導入することができます。各家庭の事情や予算に合わせて選択できますので、詳細は以下のサイトで確認してみましょう。
※エネカリプラスは別途足場代等の費用がかかる場合があります。
太陽光発電で家計の負担を軽減しよう
太陽光発電は電気代の家計に対する経済的負担を大幅に軽減することができます。もちろん、電気代をどれだけ節約できるかは、太陽光発電の容量や同時に導入する設備、住まいの地域の日照量やその年の気候、家族構成やライフスタイルなど様々な条件によって左右されます。
一方で、使い方によってはかなりのメリットを得られる可能性があることは確かです。設備導入に要する費用は決して安くはありませんが、時間軸を長くみれば費用が回収できる可能性もあり、費用負担の選択肢もいろいろあります。ぜひ検討してみましょう。
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