太陽光発電は、生み出した電気を自家消費したり売電したりすることで電気代を節約できます。しかし、実際にどれくらい電気代を節約できるのかわからず、導入を躊躇している人も多いのではないでしょうか。この記事では、太陽光発電で電気代を節約できる仕組みや、蓄電池やEV(電気自動車)などと併用して電気代を実質0円(売電収入≧電力会社に支払う電気代と考えます。以下同じ)に近づける方法について解説します。
- 太陽光発電を自宅に導入すると電気代が安くなる
- 太陽光発電を導入した場合の電気代をシミュレーション(参考)
- 太陽光発電と蓄電池やEVの組み合わせで電気代をさらに節約
- 太陽光発電とオール電化との組み合わせで光熱費を大幅にカット
- 太陽光発電で電気代をはじめとする家計の負担を軽減しよう
太陽光発電を自宅に導入すると電気代が安くなる
太陽光発電を自宅に導入すると、毎月の電気代を安くできる可能性があります。まずはその仕組みから説明しましょう。
太陽光発電で電気代はどう変わる?
太陽光発電で生み出した電気は、パワーコンディショナーによって直流電流から交流電流に変換することで、家庭の電力として使用できます。自給自足となるため、その分の電気代は発生しません。これにより電力会社から購入する電気量が減り、毎月の電気代(再エネ賦課金・消費税相当額込み)は少なくなります。たとえば、実際には、曇りの日も雨の日もありますが、晴天で昼間に必要な電気をすべて太陽光発電でまかなえた場合には、電力会社から電気を購入する電気代がかかるのはソーラーパネルに日の当たらない(発電量が使用量を下回る)時間帯のみです。
また、多くの家庭で「電気を使った量に応じて電気料金単価を決定する」プラン(月の合計の使用電力量が増えると段階的に電気料金単価/kWhが上がるプラン)が採用されています。そのため、太陽光発電によって電力会社から購入する電気量を減らせば、単価の安い区分になることが期待できるのです。ライフスタイルなどに応じて、太陽光発電あるいは蓄電池、EVなど導入機器に応じて最適な電気料金プランを試算・検討することが大切です。
さらに蓄電池やEVと組み合わせるなど、工夫次第で電気代を節約できます。その方法については後述します。
太陽光発電の仕組みを基本から知りたい方はこちら
▶︎【図解つき】太陽光発電の仕組みを初心者向けにわかりやすく解説!
太陽光発電だけで電力会社に支払う電気代をゼロにするのは難しい
電力会社と契約せず太陽光発電のみというライフスタイルもあるとは思いますが、一般的には太陽光発電を駆使して電気代を節約することはできても、それだけで電力会社に支払う電気代をゼロにすることは太陽光発電の発電特性からいって現実的には難しいところです。その理由を説明しましょう。
発電量は日照時間、気候や季節によって左右される
太陽光発電は、夜は発電しません。また、発電量も天候により左右されます。そのため、太陽光発電が発電しない時間帯、太陽光発電量が使用電力量を下回る場合は、電力会社から電気を購入することになり電気代が発生します。また、そもそも、電力会社と電気の契約をしていれば仮に電気の購入量がゼロでも基本料金が発生する場合がほとんどです。
太陽光発電で電力会社に支払う電気代を実質ゼロに近づけるためには
太陽光発電で電力会社に支払う電気代を実質ゼロにするポイントは下記の3つ。
①省エネ機器の導入などで電気の使用量を減らすこと。
②太陽光発電の容量を大きくし発電量を上げ、売電収入を確保すること。
③蓄電池やEVにより自家消費を増やすこと。
これらの対応により年間家計収支での電気代を実質ゼロに近づける可能性は高まります。肝心なのは電気代だけではなく、導入コストやメンテナンス・交換・廃棄も含めて、事前にシミュレーションし、メリット・デメリットをしっかり把握することです。
※太陽光発電の発電量は天候などにより想定に比べ変動する場合があるので注意が必要です。
太陽光発電を導入した場合の電気代をシミュレーション(参考)
では、太陽光発電を導入した場合、電気代はどれくらい節約できるのでしょうか。各省庁の試算データをもとにシミュレーションしてみましょう。ここでは、5kWの太陽光発電システムを導入したケースを想定し、売電収入を差し引いた電気代を参考シミュレーションします。
太陽光発電5kWの発電量、売電収入、電気代を参考シミュレーション
まずは、年間でどれくらいの電気を発電できるのか計算しましょう。設置する屋根の構造や気象条件などさまざまな要因で発電量が変わるため、ここでは、あくまでも参考値として環境省のデータを使います。以下の表によると、日本の平均年間発電量は、太陽光発電の容量1kWにつき1,215kWhです。そのため、容量5kWの太陽光発電の場合、年間の発電量は平均6,075kWhになると考えられます。
<表>日本各地の年平均日射量と年間予想発電量(都道府県庁所在地の地域別発電量係数)
さらに経済産業省のデータによると、発電した電力のうち、売電される割合は平均69.4%(2021年1-6月)となっていることから、自家消費される割合は平均30.6%となります。このデータをもとに考えると、年間にして約4,216kWhが売電に、約1,858kWhが自家消費にまわされることになります。参考までに、こちら数字を使って年間の売電収入と、自家消費によって節約できる電気代を割り出してみましょう。
【売電収入(推計)】
年間売電量4,216kWh
× 売電価格19円(2021年度の場合)
= 年間売電収入80,104円
【節約できた電気代(推計)】
年間自家消費量1,858kWh
× 電気料金単価26円(※)
= 年間電気代節約額48,308円相当
(※東京電力 従量電灯Bプラン 第2段階(120kWhをこえ300kWhまで)料金単価(税込、26.48円の小数点以下切り捨て)で計算)
もちろん、正確な金額は家族構成やライフスタイルなどによって異なりますが、太陽光発電によって推定128,412円相当の経済的メリットが毎年生まれることになるのです。
さて、太陽光発電で電気代は実質ゼロになるでしょうか? 読者の皆さんが、戸建住宅にお住まいで、2~4人の家族で生活していらっしゃれば、ご自身の年間の電気代を割り出して比較してみましょう。ここでは、政府統計のデータを使ってみます。2人以上の世帯の年間の電気代は平均128,052円(10,671円/月)とされています。この数値で比較すると支払った電気代128,052円に対して128,412円の経済的メリットを差し引くと収支はプラスとなりました。このケースではあくまで試算ですが電気代が実質ゼロになっていると言えます。
1年間での試算例
【これまでどおりすべての電気を購入した場合】
●年間の電気代
→128,052円
【5kWの太陽光発電を導入して1年間使用した場合】
●売電収入
→80,104円
●自家消費することで節約できた電気代
→48,308円
【収支】
80,104円+48,308円-128,052円
=360円
参考資料
■環境省「令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務報告書」第3章2_住宅用太陽光の導入ポテンシャルの再推計
■経済産業省 第73回 調達価格等算定委員会配付資料「太陽光発電について」
■総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要
ソーラーパネルメーカーなどのシミュレーションサイトを活用しよう
本記事で算出した金額は、各省庁の異なる統計データをもとにしており、節約できる電気料金は、実際は契約している電気料金プランなどにより変わります。あくまでも大まかな参考であり目安として捉えてください。さらに詳しくシミュレーションしたい方は、ソーラーパネルのメーカーサイトで詳細なシミュレーションツールを公開している場合があります。居住エリアやパネルの設置方法など細かい条件で発電量が算出できますので活用しましょう。
主なメーカーなどの
シミュレーションサイト
■京セラ
太陽光発電・蓄電システムシミュレーション
■Panasonic
エネピタ
■カナディアンソーラー
発電シミュレーション
■シャープ
発電量シミュレーション
太陽光発電と蓄電池やEVの組み合わせで電気代をさらに節約
太陽光発電ができない夜間などの電気を自給する方法として蓄電池があります。蓄電池とは、電気を蓄える設備です。住宅用太陽光発電システムと一緒に使うことで、昼間に発電した電気を貯めて夜も使えるようになるため、電気の自給率が増えます。先ほどの1年間のシミュレーション例では、太陽光発電システムの売電量は約1,858kWhですが、蓄電池の利用で自家消費が1,500kWh増え、その分売電は減るとすると、買電単価26円と売電単価19円の差7円×1,500kWhで10,500円、電気代が節約できることになります。
蓄電池について詳しくはこちら
▶︎太陽光発電で使う蓄電池の仕組みとは? 電気が使えるまでを解説!
EVを導入して、家計全体でコスト節約をする
蓄電池の代わりに自家用車をEV(電気自動車)に買い換える選択肢もあります。現時点で選択肢は決して多くはありませんが、EV(や外部受給電ができるPHEV)とV2Hを導入すれば、太陽光発電で発電した電力をEVのバッテリーに蓄え、そのEVを蓄電池として夜間の住宅の電力に使用することができます。そして電気のみを動力源とするEVなら車自体も電気で動くので、普段のガソリン代は不要になります。つまり、仮にEVの電気も太陽光発電の自家消費でまかなえるとしたらガソリン代も減らすことになり家計全体でコストを抑えることができる可能性があります。
EVを家庭用電源にする方法についてはこちら
▶︎EVを家庭用電源にする「V2H」とは? 仕組みやメリットをイラストで解説!
太陽光発電とオール電化との組み合わせで光熱費を大幅にカット
さらに太陽光発電と相性がよいのがオール電化住宅です。太陽光発電とオール電化を組み合わせることで、電気代だけでなくガス代などの光熱費を節約できる可能性があります。
おひさまエコキュートを導入して光熱費全体のコストを下げる
空気の熱で効率よくお湯を沸かすヒートポンプ式給湯機エコキュートに切り替えることでガス代を無くし、トータルの光熱費を抑える方法もあります。エコキュートは、一般的に電気料金単価の安い夜間の電力でお湯を沸かして貯湯し約1日分の給湯をまかなうことで、ガスで給湯する場合に比べて光熱費が抑えられます。さらに太陽光発電と組み合わせて、新たに開発されたご家庭の電気の自家消費を促進する「おひさまエコキュート」を導入し、昼間にお湯を沸かすことで、太陽光発電の自家消費でお湯を沸かした場合には光熱費の節約に繋がる可能性があります。
<図>年間光熱費比較
<木造戸建4LDK(約120㎡)4人家族の場合>
おひさまエコキュートについて、詳細は以下のサイト「TEPCOの新電化生活」でご確認ください。
オール電化でトータルの光熱費を節約
オール電化住宅とは、照明や空調だけでなく給湯に加えて調理の熱源など、家庭内で利用するエネルギーを電気でまかなう住宅のことです。基本的に都市ガス・プロパンガスや灯油を使わないため、ガス代や燃料費の支出はありません。給湯や調理などの電気を太陽光発電でまかなうと自家消費が増え、太陽光発電で発電できない夜間は蓄電池に蓄えた電気を上手に活用することができる。つまり、家庭のエネルギーをオール電化にして太陽光発電、さらに蓄電池やEVも組み合わせるとトータルの光熱費の節約に繋がる可能性があるのです。
■オール電化を簡単に導入する方法
東京電力グループのサービス「エネカリ/エネカリプラス」では、初期費用は0円※、月々定額の利用料のみで太陽光発電システムをはじめ、蓄電池、エコキュート、IHクッキングヒーター、V2H、おひさまエコキュートなどの設備を導入することができます。
各家庭の事情や予算に合わせて選択できますので詳細は以下のサイト「TEPCOの新電化生活」で確認してみましょう。
※エネカリプラスは別途足場代等の費用がかかる場合があります。
太陽光発電で電気代をはじめとする家計の負担を軽減しよう
電気代を実質ゼロにすることは難しい可能性があるものの、電気に対する経済的負担を大幅に軽減できる太陽光発電。もちろん、電気代をどれだけ節約できるかは、太陽光発電設備の容量や同時に導入する設備、住まいの地域の日照量やその年の気候、家族構成やライフスタイルなどの条件によって左右されます。一方で、使い方によってはかなりのメリットを得られる可能性があることは確かです。設備導入に要する費用は決して安くはありませんが、時間軸を長くみれば費用が回収できる可能性もあり、費用負担の選択肢もいろいろあります。ぜひ検討してみましょう。