現在のところ、電気自動車(EV)は、ガソリン車と比べて高価な印象があるかもしれません。しかしEVには、活用次第でガソリン車では得られないメリットがいくつもあります。特に太陽光発電と併用すれば、光熱費の節約や災害対策などができ、より豊かな暮らしにつながります。この記事では、EVの購入を検討している方に向けて、太陽光発電を併用することで得られるメリットや、導入費用の目安について解説します。
- EVと太陽光発電を一緒に使うとどんなメリットがあるの?
- EVと太陽光発電、さらに効率よく使うならV2Hも導入しよう
- EVと太陽光発電、V2Hを導入する際の費用は?
- EVや太陽光発電、V2Hは補助金を利用できる場合がある
- EVと太陽光発電を併用すれば、災害にも強く家計にもやさしい
【あわせて読みたい記事】
▶︎【体験談】太陽光発電、つけてよかった!後悔しないコツも解説
EVと太陽光発電を一緒に使うとどんなメリットがあるの?
EVと太陽光発電は、それぞれ単体でも多くのメリットを生み出してくれますが、一緒に使うことでより大きな相乗効果を発揮します。EVと太陽光発電を併用するメリットを3つご紹介します。
メリット①EVの走行コストを抑えることができる
1つ目のメリットは、EVの走行コストが節約できるということです。EVはガソリン車に比べ燃料代(電気代)が安いということはよく聞く話かと思います。電気で動くEVは充電が必要ですが、太陽光発電を自宅に導入し、発電した電気を使ってEVの充電をすることで、さらにもう一段階走行コスト(電気代)を削減することが可能です。
簡単に言えば、これから太陽光発電を導入する場合、太陽光で発電した電気のほうが、電力会社から買う電気よりも安くなるということです。また、自宅で使いきれなかった余剰電力は電力会社に売電することになりますが、FIT(固定価格買取制度)の売電価格は年々低下して2022年度は17円/kWh※になっていますし、10年間のFIT終了後の売電価格がさらに安価になります。つまり、太陽光で発電した電気を売電するよりも、自宅でなるべく多く使用する(自家消費する)ほうが経済的なメリットが多い状況です。そのため「自宅で発電した電気をEVに充電する(自家消費)」という方法で運用すると、走行コストを抑えられるようになります。このように、太陽光発電とEVを一緒に使うことによって、毎月の経済的負担を減らすことが見込めるでしょう。
※太陽光発電の出力が10kW未満の単価
メリット②環境負荷を軽減し、地球に優しい暮らしができる
次に、太陽光発電とEVは極めて環境負荷が少ない点が挙げられます。再生可能エネルギーである太陽の光を利用して電気を作る太陽光発電で、走行時にCO2(二酸化炭素)などを出さない環境に優しいEVに電気を補給するというのは、ダブルで環境保全に貢献できる方法と言えるでしょう。
EV自体はクリーンな乗り物ですが、それを動かすための電気を、CO2の排出が多い火力発電などから得るのでは、なんだかもったいないと考える方もいるでしょう。せっかく環境に優しいEVに乗るのであれば、発電時にCO2を出さない太陽光発電の電気でまかなえば環境性はさらに高まります。カーボンニュートラルが叫ばれる現代、環境保全の観点から見ても社会的に大きなメリットがあると同時に、乗っていても気持ちがいいかもしれませんね。
メリット③EVが太陽光発電の蓄電池代わりになる
3つ目のメリットは、EVが蓄電池の役割を果たしてくれるということです。太陽光発電を設置しただけでは、ソーラーパネルに日光が当たって発電している日中にしか電気を使うことができません。太陽光発電で作られた電気は、基本的に貯めておくことができないのです。
そこで、据え置きの定置型蓄電池を導入し、発電した電気を貯めて効率的に使うことがあるかと思います。しかし“動く蓄電池”とも呼ばれるEVがあれば、EVに搭載されている大容量バッテリーを定置型蓄電池の代わりとして活用することができるのです。しかも、定置型蓄電池の容量は多くても10kWh程度ですが、EVのバッテリーはその数倍の容量があります。
詳しくは後述しますが、これはV2H(Vehicle to Home)と呼ばれるシステムや考え方です。EVやPHEV(プラグインハイブリッド車)を家につないで使うことで、車を自宅に駐車している間は蓄電池として活用することができます。
ただし、EVを蓄電池代わりに使用するためには、V2H機器の設置が必要になります。V2Hの仕組みやメリットについては、次の章で詳しくご紹介します。
EVと太陽光発電、さらに効率よく使うならV2Hも導入しよう
前述したとおり、太陽光で発電した電気をEVに充電し、EVに貯めた電気を逆に家に戻し使用するためには、V2Hという仕組みが必要になります。
V2Hとは、「Vehicle to Home(車から家へ)」の略称であり、EVと家をつなぐことで、家庭の電気を有効活用する考え方や仕組みのことを言います。
〈図〉V2H機器導入時の電気の流れ
通常の充電器の場合、家から車に充電するだけしかできません。しかし、V2H機器を利用すれば、家から車に電気を送るだけでなく、車に貯めた電気を家に送って使うことができます。
そのため、V2H機器を家に導入しておくことで、災害時に停電が起こっても電気が使えるなど、様々なメリットがあります。V2H機器を自宅に導入するメリットを3つご紹介します。
V2Hの仕組みについて詳しくはこちら
▶︎EVを家庭用電源にする「V2H」とは? 仕組みやメリットをイラストで解説!
V2Hのメリット①災害時の非常用電源として活用できる
V2H機器を導入し、太陽光発電で発電した電気をEVに貯めることができるようになれば、EVのバッテリーを家庭用の電源として利用できるのはもちろん、災害時には非常用電源としても活用できます。停電時に定置型蓄電池だと1日分程度の電気しか容量が持ちませんが、EVの大容量バッテリーは定置型蓄電池の数倍~数十倍の容量があるため、車種によって異なりますが約3~5日分の電気を供給することが可能です。
さらに太陽光発電が稼働していれば、停電していても昼間に使いきれない電気をEVに充電し、バッテリーの蓄電量を増やすことも可能です。
【あわせて読みたい記事】
▶︎電気自動車は災害時に本当に使える?非常用電源として活用する方法を解説
V2Hのメリット②定置型蓄電池よりもコスパがいい
太陽光発電で発電した電気を貯める蓄電機器の選択肢には、住宅用の定置型蓄電池もあります。国の調査によると、2019年度の工事費を含む定置型蓄電池の価格相場は、容量1kWhあたり18.7万円です1)。
一方、EVの場合は車種にもよりますが、たとえばバッテリー容量60kWh、車体価格が約423万円の日産「リーフe+ X」の場合、移動手段としての車の価値を全く考えず、単純に蓄電池としての価値だけで計算しても容量1kWhあたり約7万円です。このように、EVの方が1kWhあたりのコストで比較すると非常にメリットが大きいことがわかります。
EVを住宅用の蓄電池として活用するためには、V2H機器を別途購入する必要がありますが、総合的に見れば定置型蓄電池を購入するよりもV2H機器を購入したほうが、コスパがいいと考えることもできるでしょう。
V2Hのメリット③EVの充電時間が短縮できる
一般的に家庭用の普通充電器の出力は3kWですが、V2H機器はその倍の6kWで充電できるため、EVの充電時間が半分に短縮されます。V2HとEVは、急速充電用のチャデモ規格の充電口を通じて接続されるため、普通充電では3kWまでの出力にしか対応していないEVでも、急速充電の仕組みを使ったV2Hの充電では6kWと倍の出力で充電できるのです。
ただし、日本国内で発売されているすべてのEVがV2Hに対応しているわけではありません。輸入車のEVのほとんどはV2Hには非対応なのでその点に注意しましょう。
EVと太陽光発電、V2Hを導入する際の費用は?
EVと太陽光発電を併用するメリットを理解したところで、気になるのは導入にかかる費用でしょう。ここからは、EVと併せて太陽光発電やV2Hを導入する際の費用の目安について解説します。
EVと一緒に太陽光発電を導入する場合
はじめに、太陽光発電を導入するためには、ソーラーパネル以外にもパワーコンディショナーと呼ばれる変換器や架台など、様々な設備を組み合わせる必要があります。これらをまとめて「太陽光発電システム」と呼びます。
メーカーや住宅の条件によって費用は異なりますが、経済産業省のデータ2)によると、住宅用太陽光発電の2021年の設置費用(新築・既築計)は、太陽光発電の出力1kWあたり平均28.8万円です。ソーラーパネルの容量は、一般的に3~5kWが多いことから、設置費用の相場は2021年の場合、計算上約86~144万円と考えられます。
〈表〉住宅用太陽光発電の設置費用の相場(新築・既築計)
3kW | 86万円 |
4kW | 115万円 |
5kW | 144万円 |
※工事費用を含む
また詳しくは後述しますが、国や自治体からの補助金を利用すれば、目安金額よりおトクに導入することができるでしょう。
なお、以下のようなサービスを利用して、初期費用をかけずに太陽光発電を利用することもできます。太陽光発電を自宅に導入しようとお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。
初期費用をかけずに太陽光発電を導入できる!
太陽光発電を自宅に導入したいけれど、初期費用はかけたくない。そのような場合は、東京電力グループが提供しているサービス「エネカリ/エネカリプラス」がおすすめです。初期費用ゼロ円※で自宅に太陽光発電を導入できるうえ、設置からメンテナンス、保証もつくため、維持コストも含めて将来の家計を計画的に設計することができます。
「エネカリ/エネカリプラス」について詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。
※「エネカリプラス」は別途足場代等の費用がかかる場合があります。
太陽光発電の設置費用について詳しくはこちら
▶︎太陽光発電の設置費用の相場は? 機器の価格や売電収入との関係についても解説
EVと一緒に太陽光発電とV2Hを導入する場合
太陽光発電の費用は上述のとおりですが、V2Hの費用は機器代が約55~90万円(ニチコンの場合)3)、設置工事にかかる費用が約30~40万円となり、合計で約90~130万円が目安となります。
ここでご紹介した金額はあくまで目安であり、正確な金額は販売・施工会社に見積りをもらいましょう。また、詳しくは後述しますが、V2HもEVや太陽光発電と同様で国や自治体からの補助金を利用することができます。併せてチェックしてみましょう。
V2Hの設置費用について詳しくはこちら
▶︎V2Hの設置費用はいくら? 機器代・工事費までマルッと解説!
参考資料
3)ニチコン「EVパワー・ステーションとは」
EVや太陽光発電、V2Hは補助金を利用できる場合がある
EVや太陽光発電、V2Hを導入する際には、国や自治体の補助金を利用することで、導入費用を節約することができます。それぞれの補助金について解説します。
EVの補助金
EVの場合は、国と自治体で補助金を出しており、条件によっては両方を併用できる場合もあります。
国の「CEV補助金」では、2022年度は最大85万円の補助金を受け取ることができます(軽EVの場合は最大55万円)4)。
国の補助金に加え、地方自治体からの補助金を期待できるケースもあります。たとえば、2022年度、東京都では条件により45~75万円の補助金を支給しています。国の85万円と合計すれば、購入時に最大160万円(軽EVの場合は最大130万円)も補助されることになります5)。東京都の補助金において、太陽光発電(新規・既設)設置の場合には最高額の75万円となるなど、EVと太陽光発電の導入を都としても促進していることが分かります。
なお、自治体の補助金は、自治体ごとに金額や条件が異なります。詳細はお住まいの自治体にご確認ください。
EVの補助金について詳しくはこちら
▶︎電気自動車(EV)の補助金は上限いくら? 国や自治体の制度、注意点を解説
※補助金の交付に関する最新情報は、国や自治体等のホームページにてご確認ください。2022年度の国の補助金は、申請受付終了見込みが10月末目処と公表されています(2022年10月13日公表)。
太陽光発電の補助金
太陽光発電の場合、利用しやすいのは自治体の補助金です。たとえば東京都の「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」6)では、蓄電池やV2H(新規・既設)などの設置を条件として、太陽光発電を新たに設置する場合、1kWあたり10~15万円の補助金を受け取ることができます。
なお、自治体による補助金は、自治体ごとに金額や条件が異なります。詳細はお住まいの自治体にご確認ください。
V2Hの補助金
V2Hの場合は、国と自治体で補助金を出しています。条件によっては両方を併用できる場合もあります。
国の「CEV補助金」では、機器の購入費と設置工事費を合わせて最大115万円の補助金を受け取ることができます。
一方、自治体による補助金は、自治体ごとに金額や条件が異なります。たとえば、東京都の補助金は、通常上限が50万円となりますが、EV・PHEVと太陽光発電が揃う場合に限り増額申請ができ、機器の購入費と設置工事費合わせて最大100万円の補助金を受け取ることができます7)。
そのほかの自治体の情報は、お住まいの自治体にご確認ください。
V2H機器の補助金について詳しくはこちら
▶︎V2Hの補助金は上限いくら? 国や自治体の制度、注意点を解説
※補助金の交付に関する最新情報は、国や自治体等のホームページにてご確認ください。2022年度の国の補助金は、申請受付終了見込みが10月末目処と公表されています(2022年10月13日公表)。
EVと太陽光発電を併用すれば、災害にも強く家計にもやさしい
EV・V2Hや太陽光発電は、それぞれ単体で利用しても便利なものですが、併用することにより光熱費の節約や災害時の安心など、暮らしを豊かにする相乗効果を発揮することがわかります。EVの購入を検討している方は、この機会に太陽光発電やV2H機器の導入もご検討してみてはいかがでしょうか。