太陽光発電を住宅に導入する際、日々の電気代はもちろんですが、ソーラーパネルなどの設置にかかる初期費用も気になるところです。そこで太陽光発電システムの設置費用の相場や必要な機器についてまとめました。また、売電収入の仕組み(FIT制度)を活用して将来的に設置費用を回収できるかを検証してみます。さらに、購入しなくても太陽光発電を導入できる方法も紹介します。
※この記事は2022年2月7日に公開した内容をアップデートしています。
- 太陽光発電システムの設置費用、最新相場は78.3万円(3kWの場合の目安)
- 太陽光発電システムに必要な設備と価格(目安)
- 太陽光発電を設置した後の費用
- 太陽光発電は元を取れる? 売電収入をシミュレーション
- 年々下がりつつある太陽光発電の設置費用
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太陽光発電システムの設置費用、最新相場は78.3万円(3kWの場合の目安)
太陽光発電を導入するためには、ソーラーパネル以外にもパワーコンディショナーや架台など、さまざまな設備を組み合わせる必要があります。それらを組み合わせたものを「太陽光発電システム」といいます。2022年における住宅用の太陽光発電システムの設置費用は、78.3万円(3kW)~130.5万円(5kW)と言われています。
もちろん、これは目安であり、購入するメーカーや住宅の条件によって費用は異なります。実際にどの程度の規模の太陽光発電を設置でき、どのくらいの費用がかかるかは、最終的には専門の設置業者に確認することが必要です。そこで、設置業者に依頼する際にも最低限押さえておきたい知識をまとめました。
太陽光発電の容量と設置面積で費用は大きく異なる
太陽光発電システムの設置費用を大きく左右するのは、ソーラーパネルの量です。経済産業省のデータによると、太陽光発電の設置費用は、2022年が1kWあたり平均26.1万円(新築の場合)1)となっています。住宅用のソーラーパネルの容量は、一般的に3~5kWが多いことから、設置費用の相場は2022年の場合、計算上78.3万~130.5万円となります(※補助金の対象となった場合の価格ではありません)。
このように容量が大きくなれば、発電量も増えますが、当然、設置費用も増えます。容量に応じた設置費用の相場は以下をご覧ください。
〈表〉屋根面積に応じた太陽光発電の設置費用の相場(新築)
3kW | 78.3万円 | ||
4kW | 104.4万円 | ||
5kW | 130.5万円 | ||
6kW | 156.6万円 | ||
7kW | 182.7万円 | ||
8kW | 208.8万円 | ||
9kW | 234.9万円 | ||
10kW | 261万円 |
ただし、容量1kWあたりの設置費用は年々低下傾向になっています。
〈図〉システム費用平均値の推移
上の図のように、2012年には1kWあたり平均43.1万円だった新築物件における設置費用が、2022年には26.1万円にまで下がっています。仮に容量5kWの太陽光発電の導入を想定すると、2012年の設置費用は平均215.5万円だったのに対し、2022年の設置費用は平均130.5万円で、10年間で85万円も安くなった計算です。
ただし、太陽光発電の容量を上げると、その分ソーラーパネルの枚数が増えます。屋根の向き、形状や種類によっては設置方法に工夫が必要になります。たとえば、南側の屋根だけでなく東側の屋根にもソーラーパネルを設置する場合や、瓦屋根で特殊な取り付けが必要になる際などは当然、その分だけ工事費用もかかります。
太陽光発電システムの設置費用は、新築よりリフォームのほうが高くなる傾向
ところで、先ほどの図にも記載がありますが、2022年の新築の設置費用が平均26.1万円なのに対し「既築」、つまりリフォームの際に設置する場合は平均28.1万円と高くなっています。
新築時に太陽光発電を設置する場合は、着工前であれば新築工事に合わせて設計でき、電気配線や屋根での工事も新築工事と同じタイミングで行うことで工事費用を安く抑えることが可能です。それに対してリフォームの場合は、新築時のメリットがない分高くなっていることが考えられます。
太陽光発電システムに必要な設備と価格(目安)
太陽光発電システムは、ソーラーパネル以外にもパワーコンディショナーや架台など、さまざまな設備の組み合わせで構成されます。設置費用の内訳にはこれらの設備が含まれており、先述の経済産業省のデータによると、2022年の住宅用太陽光発電の設置費用が1kWあたり26.1万円という金額の内訳※は以下の通りです。
〈図〉システム費用(新築)の内訳(値引き前)
ソーラーパネル | 14.5万円 | ||
パワーコンディショナー | 4.2万円 | ||
架台 | 2.1万円 | ||
その他の設備 | 0.2万円 | ||
工事費 | 7.1万円 |
〈図〉システム費用(新築)の内訳
ここからは設置費用に含まれる基本的な設備と、その役割を見ていきましょう。
ソーラーパネルの価格
ソーラーパネルは、小さな四角い板の太陽電池を複数集めアルミ枠に入れて大きなパネル状にした製品です。「太陽光パネル」や「太陽電池モジュール」とも呼ばれています。ソーラーパネルの2022年の価格相場は1kWあたり14.5万円なので、住宅用で多い容量3~5kWの太陽光発電の場合、およそ43.5万~72.5万円がかかる計算になります。
パワーコンディショナーの価格
パワーコンディショナーは、ソーラーパネルで作った「直流」の電気を、家庭内で使用できる「交流」に変換するための機器です。パワーコンディショナーの2022年の価格相場は1kWあたり4.2万円なので、住宅用で多い容量3~5kWの太陽光発電の場合、およそ12.6万~21万円がかかる計算になります。ただ、メーカーによっては単体(3kW)で10万円を切る商品もありますのであくまで目安と考えてください。
架台の価格
架台(かだい)とはソーラーパネルを屋根などに固定する台のことで、太陽光を効率よく受けられるように、高さや角度を調整する役割を担っています。架台の2022年の相場は1kWあたり2.1万円なので、住宅用で多い容量3~5kWの太陽光発電の場合、およそ6.3万~10.5万円がかかる計算になります。屋根の状況や使用するパネルなどにより設置する工法はさまざまです。それに合わせて使用する部材もパネルによって異なります。屋根の状況やパネルのメーカーによっては架台が不要な場合もあります。
太陽光発電の設置工事費
太陽光発電システムを設置する工賃としての工事費は、経済産業省の資料では、1kWあたり7.1万円とされていますので、住宅用で多い容量3~5kWの太陽光発電の場合、21.3万~35.5万円が目安となります。ただし、屋根の形状や工法によって値段は大きく変わります。設置工事にあたっては、太陽光パネルの反射光やパワーコンディショナーから生じる音など、近隣への影響にも注意が必要です。
その他の費用項目の例
太陽光発電の設置においては電力会社や国への申請、補助金の対象となればその申請費用、保証費用、諸経費、消費税などの項目が費用として見積書に記載される可能性があるでしょう。
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蓄電池を併せて設置する場合
今、ご説明している太陽光発電システムの設置費用に含まれない機器として「蓄電池」があります。太陽光発電で作られた電気は、基本的に蓄えておくことができません。この「基本的にできないこと」を可能にするのが、蓄電池です。蓄電池を設置し太陽光発電と組み合わせて利用すると、昼間に太陽光で発電した電気を蓄えておいて、それを夜間に使うということができるようになります。また、蓄電池があることで太陽光発電にプラスして災害時の停電への備えの安心度が増します。
ただし、蓄電池にはメーカーや蓄えておける電気の容量などいろいろなタイプがあり、充放電による電池性能の劣化などの耐用年数があることなどを理解しておく必要があります。
蓄電池に関しては、以下で詳しく解説しています。
蓄電池について詳しくはこちら
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「エネカリ/エネカリプラス」で太陽光発電の初期費用を0円※にする
太陽光発電や蓄電池の初期費用などの導入コストを抑える方法として、東京電力グループが提供する「エネカリ/エネカリプラス」があります。
「エネカリ」は、初期費用0円、月々定額の利用料のみで太陽光発電をはじめ、蓄電池、エコキュート、V2HやIHクッキングヒーターなどの設備を導入することができるサービスです。また、太陽光発電で余った電気を売って収入を得ることができます。
利用期間中は故障時の修理費用も無料で、風水害や落雷などの自然災害補償も付いています。さらに、利用期間満了後には、そのまま設備を無償で得ることができます。
「エネカリプラス」もエネカリと同様に、太陽光発電と蓄電池、さらに昼間にお湯を沸かす「おひさまエコキュート」をおトクに利用できるサービスです。エネカリとの大きな違いは、売電収入がない分月額利用料を安く抑えられること。各家庭の事情や予算に合わせて選択できますので詳細は以下のサイトで確認しましょう。
※「エネカリプラス」は別途足場代等の費用がかかる場合があります。
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太陽光発電を設置した後の費用
太陽光発電に費用がかかるのは、設置時だけではありません。メンテナンス・部品交換、保証対象とならないもしくは保証期間以降の万一の修理費用、屋根等の住宅のメンテナンスで撤去する時など、設置後も状況に応じて費用がかかる可能性があります。費用は安価ではない場合もあり得ますので理解しておきましょう。新築時に太陽光発電を設置する場合は、設置後の費用についても事前に確認しておくのがいいでしょう。
安心して長く使うには、太陽光発電システムのメンテナンスは必要
前述の通り、太陽光発電システムはソーラーパネルやパワーコンディショナー、架台のほか、各種ケーブル類等の機器を組み合わせて作られています。安心して長く運用していくためには、国に提出した保守点検計画やメーカーの取扱説明書に沿って、設置者や場合によっては有資格者・専門業者による点検・メンテナンスが必要です。
発電量維持や安全性確保の観点から3〜5年ごとに1回程度の定期点検が推奨され、点検の費用は業者にもよりますが、1回あたり平均3.5万円程度(2022年)1)とされています。主に製品の不具合や運転の点検はもちろんのこと、電圧測定や絶縁抵抗測定といった数値測定も実施します。場合によっては設備の修理・交換が必要になることもあります。
鳩駆除や鳩対策の費用
ソーラーパネルの下などに鳥が営巣するなど、太陽光発電設備のメンテナンスとは別に、思わぬ出費があることがあります。設置時にこうしたトラブル事例についても設置業者によく相談するとよいでしょう。太陽光発電設備を設置するタイミングで、対策をした方が安価な場合もあるからです。
ソーラーパネルの撤去費用
ソーラーパネルは老朽化や住宅のリフォームなど、さまざまな理由で撤去することになるケースもあります。しかもソーラーパネルには有害物質である鉛、カドミウム、セレンなどが含まれているため、法令やガイドラインを遵守しリユース、リサイクル、廃棄といった処分を行う必要があります。
処分方法については、まずは、設置業者や解体業者などに相談するとよいでしょう。一般社団法人太陽光発電協会の「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」によりソーラーパネルに含まれる化学物質の含有率はメーカーのホームページで公表されています。
自治体の補助金制度を利用して太陽光発電の設置費用を抑える
太陽光発電については、余剰電力の固定価格買取制度(FIT)により設置コストを回収する仕組みがあります。太陽光発電設備の設置が必須のZEH住宅を対象とした補助金もあります。リフォームの一部として実施した場合、所得税の控除制度の対象となる場合もあります。
上述に加えて一部の自治体では独自に太陽光発電設備への補助金を実施しています。
たとえば、東京都の「令和5年度住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進事業」2)では、設置した太陽光発電システムの出力に応じて交付されます。
〈表〉出力1kWあたりの交付金額
出力 | 新築住宅 | 既築住宅 |
3kW以下 | 15万円/kW | 18万円/kW |
3kW超 | 10万円/kW ※1 | 12万円/kW ※2 |
※1 3kWを超え3.6kW以下は一律36万円
※2 3kWを超え3.75kW以下は一律45万円
自分の住む地域で補助金や助成制度等について、対象となるかどうか設置業者や行政に確認するなどして事前に必ずチェックしましょう。
補助金や助成制度には対象要件のほか予算枠、対象期間、締め切りなどがあります。繰り返しになりますが、機会を逸することがないように早めに十分な確認が大切です。
太陽光発電は元を取れる? 売電収入をシミュレーション
決して導入費用が安くない太陽光発電ですが、補助金や情報収集、電気の利用方法などにより、時間を要する場合もありますが、自家消費での電気代削減と売電収入により経済的なメリットを生み出す可能性があるでしょう。
また、停電時の安心など経済的なメリット以外を重視する方もいらっしゃるでしょう。
経済産業省のデータを見ると電気代の削減と売電収入では売電収入が多いと考えられるため、ポイントとなるのは売電収入です。
太陽光発電で生み出し、自家消費できなかった分の余剰電力は、電線を通じて電力会社に買い取ってもらえます。売電価格は国の定めたFIT制度により、太陽光発電を設置してから10年間は固定価格での買い取りとなります。太陽光発電を設置した年度によって売電価格は異なり、たとえば2023年度にFIT制度の適用を受けた場合、2033年まで1kWhあたり16円(容量10kW未満)で売電できる仕組みです。
これをもとに、FIT制度が適用される10年間でどれくらい設置費用を回収できるのかを試算してみましょう。ただし、年間の売電収入を正確に予測することは現実的にはできません。使用電力量や天候などにより変動するためです。
今回はあくまで概算として発表されている試算データを活用しました。まず、環境省のデータ3)によると、日本の住宅用太陽光発電の平均年間発電量は、容量1kWにつき1215kWhです。そのため、容量5kWの太陽光発電の場合、年間の発電量は平均6075kWhになると考えられます。
さらに経済産業省のデータによると、発電した電力のうち、売電される割合は平均68.8%(2022年)1)となっています。これらのデータをもとに考えると、年間にして約4180kWhが売電にまわされることになります。こちら数字を使って年間の売電収入を割り出してみましょう。
【売電収入(推計)】
年間売電量4180kWh
× 売電価格16円(2023年度の場合)
= 年間売電収入6万6880円
仮に売電単価を2023年度の16円、太陽光発電の容量を5kWとした場合、年間で6万6880円、10年間で66万8800円を得られることになります。
2022年の設置費用の相場は5kWで130.5万円となりますが、東京都で導入した場合、10万円/kWの補助金が受け取れると考えると初期費用は80.5万円。つまり、10年かけても売電価格が下がってきている現在、それだけで全額は回収できません。
ただし、昨今の電気代高騰により、売電収入よりも自家消費によって毎月の電気代を抑えるコストメリットの方が大きくなっています。その電気代削減分を含めれば収支がプラスになる可能性は十二分にあるでしょう。なお、メンテナンス費用などが別途かかる場合もあり、あくまで一例として理解してください。
売電収入の仕組みについて詳しくはこちら
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年々下がりつつある太陽光発電の設置費用
これまで年々下がり続けている太陽光発電の設置費用。電気代削減や売電収入による経済的なメリットを考えれば、導入を検討する価値は十分にあります。「高額な設置費用が……」と懸念されている方も、導入方法の選択肢も増えていますし、環境面や防災面などのメリットやデメリットをしっかり理解して太陽光発電を改めて検討してみてはいかがでしょうか。