5kWのソーラーパネルで家電を何台動かせる?太陽光発電の実力を考える

ソーラーパネル、家電

太陽光発電は、太陽電池をたくさん集めた「ソーラーパネル」で電気をつくります。住宅の屋根に設置されたソーラーパネルを見たことのある方もいるでしょう。しかし、「自宅にソーラーパネルを設置した場合、どれくらいの発電量が見込めるの?」「発電量の目安を聞いてもイメージがわかない」という方も多いでしょう。そこで、首都圏最大級のメガソーラー施設を訪問し、ソーラーパネルの実物を見学! 太陽光発電の実力を知るとともに、家庭用ソーラーパネル5kWで家電が何台動くのかをシミュレーションしてみました。

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首都圏有数のメガソーラー施設を訪問!

大規模太陽光発電所

 

神奈川県川崎市の京浜工業地帯の一角にある「浮島」と「扇島」は海に面した埋立地です。この2つの島には、最大出力が合わせて2万kW(キロワット)にも及ぶメガソーラー(大規模太陽光発電所)があります。これらのメガソーラーは、川崎市と東京電力による共同事業として設置されました。ソーラーパネルについて考えを深めるために、浮島にあるメガソーラーを見ていきましょう。

メガソーラーの敷地面積は東京ドーム2.3個分

「かわさきエコ暮らし未来館」のアテンダントリーダー、峯菜々子さん

 

案内してくれたのは浮島太陽光発電所に併設された「かわさきエコ暮らし未来館」のアテンダントリーダー、峯菜々子さん。この施設では、おもに地球温暖化、再生可能エネルギー、資源循環の3つのテーマについて体験しながら学ぶことができます。

「これが浮島太陽光発電所のメガソーラーです」。そう言って峯さんが案内してくれた場所には、見たこともないような膨大な数のソーラーパネルが設置されていました。

ソーラーパネル

 

全長約500m、全幅約250m、東京ドーム約2.3個分もある広大な敷地に設置されたソーラーパネルの面積はおよそ10ha(ヘクタール)。その枚数はじつに3万7926枚、最大出力は7000kW、年間発電量は約906万kWhにも及ぶそうです。黒っぽいパネルが地面全体を覆うように設置された様子は、まさに圧巻! 峯さんが言うには、浮島、扇島両地区のメガソーラーで、川崎市・約76万世帯の使用電力量のうちの約0.8%分をカバーしているとのことでした。

そもそも1世帯が1日に使う電気の量はどのくらい?

Adobe Stock:部屋

画像:Adobe Stock/imaginima

 

その規模感を理解するために、私たちが普段の生活でどれくらい電気を使っているか考えてみましょう。

1ヵ月あたり平均360kWh、1日あたりなら12kWh

環境省のデータ1)によると、1世帯あたりの年間使用電力量は全国平均で、4322kWhとなっています。これを1ヵ月で計算すると、約360kWh。仮に1ヵ月を30日として計算すると、1日約12kWhの電気を使用していることがわかります。

ただし、この数字はあくまで目安であり、単身世帯と複数世帯、集合住宅と一戸建て、さらに住んでいる地域によっても使用電力量は変わります。

 

 

メガソーラーは一般家庭5800世帯分の使用電力量を発電

Adobe Stock:街の景色

画像:Adobe Stock/Bim

 

前述で、川崎市・約76万世帯のうち、約0.8%の電気をまかなっていると説明しましたが、扇島分を合わせると一般家庭の約5800世帯分の使用電力量に当たるそうです2)

一般的に総人口が5000人以上の地域は「町」とされていますが、約5800世帯というのは、これらのメガソーラーでひとつの町の使用電力量をまかなえるということです。たとえば、東京都で言うと奥多摩町の総世帯数が約2600世帯ですから、奥多摩町約2町分の使用電力量をカバーできることになります。

 

 

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家庭用ソーラーパネルではどのくらい自宅の電気をまかなえる?

家電

画像:iStock.com/Grassetto

 

ここまで読んできた方の中には、「メガソーラーで5800世帯か…。それなら家庭用の太陽光発電の発電量も、たかが知れているのでは?」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、そう悲観するほど家庭用太陽光発電の発電量は少なくありません。また、発電量もさることながら、家の中の電気をリアルでどれくらいカバーできているかの最大出力も気になるところ。そこで、イメージしやすいように、ソーラーパネルの電気で電化製品を最大何台同時に使用できるかをシミュレーションしてみましょう。

5kWのソーラーパネルでは、消費電力が大きい電化製品を4~5台同時に動かせる!

一般家庭の太陽光発電で使われるソーラーパネルの多くは、システム容量が3~5kW程度です。

では、仮に5kWのソーラーパネルの場合、太陽光発電でつくり出される電気だけで、何台同時に家電が動かせるのでしょうか。世帯人数別にシミュレーションしてみました。

●2人暮らし(夫婦)の生活シーンシミュレーション

はじめに、2人暮らしのご家庭のワンシーンを考えてみましょう。たとえば、「休日の昼下がり、奥さんはコーヒーを飲みながらスマホ操作、旦那さんはリビングでくつろいでテレビを見ている…」と考えてみましょう。

2人暮らしの家庭のワンシーン

※千葉県千葉市「ピークに賢くみんなで節電」3)を参考に作成
※消費電力は平均的な目安の数値であり、製品ごとに異なります。
※1kW=1000W

 

冷蔵庫、エアコン、テレビなどで5kWに収まりますね。2人暮らしには5kWのソーラーパネルで十分過ぎるくらいだと考えられます。

●3人暮らし(夫婦、子ども1人)の生活シーンシミュレーション

続いて、3人暮らしのファミリー世帯の場合を見ていきましょう。たとえば、「休日の午前中に奥さんが掃除機と洗濯機をフル稼働させ家事を行なっている中、そこに旦那さんと子どもが起きてきました。子どもはテレビを見ており、旦那さんは電子レンジで朝食を温めている…」というシーンを考えてみましょう。

3人暮らしのファミリー世帯の場合

※千葉県千葉市「ピークに賢くみんなで節電」3)を参考に作成
※消費電力は平均的な目安の数値であり、製品ごとに異なります。
※1kW=1000W

 

これだけ多くの家電を同時に動かしても、5kWに収まりますね。もちろん、3人家族の場合でもこれらを同時に使うのは1日の限られた時間です。5kWのソーラーパネルで十分でしょう。

●二世帯家族の生活シーンシミュレーション(夫婦、子ども1人、親世帯夫婦、計5人)

最後に、夫婦と子ども1人、親世帯が同居する二世帯家族の場合を見ていきましょう。「休日の午前中にリビングで旦那さんと子どもが電子レンジを使い遅い朝食を食べながらくつろいでおり、奥さんは掃除機と洗濯機を使って家事をしています。さらに、祖父・祖母は自分たちの部屋でテレビを見ている…」というシーンを考えてみましょう。

二世帯家族の場合

※千葉県千葉市「ピークに賢くみんなで節電」3)を参考に作成
※消費電力は平均的な目安の数値であり、製品ごとに異なります。
※1kW=1000W

 

エアコンや洗濯機、掃除機、電子レンジなどの、消費電力の高い家電を5つ稼働させると、さすがに5kWをオーバー。しかし、2世帯住宅のような大家族の場合は、このような場面は大いにありえます。よって、二世帯家族の場合は5kWのソーラーパネルではやや不足があることがわかります。もちろん、太陽光発電の最大出力を超えて家電を使ったとしても停電になることはありません。不足分は電力会社から購入する電気で常にバックアップされているので安心してください。

とはいえ、これだけの家電を同時に稼働できる電力を生み出すソーラーパネルは、電気代の節約に一役買ってくれますね。

 

電力の単位「kW」と「kWh」に注意!

電気のことを学ぶ上で知っておいてほしいのが、同時使用が可能かどうかを判断する際に使う「(消費)電力(kW)」とそれに時間を掛けた「(消費)電力量(kWh)」の意味の違いです。

上記でシミュレーションしたのは、瞬時の出力値である電力の単位(消費電力)で、消費電力量ではありません。たとえば、ドライヤーを5分使用した場合は、下記の計算で消費電力量を算出する必要があります。

1200W(電力)×5分(時間)=100Wh=0.1kWh(消費電力量)

太陽光発電協会(JPEA)4)によると、住宅の屋根における太陽光発電の「システム容量」1kWあたりの年間発電量は、1000kWhが目安とされています。そのため、1日あたりの発電量の目安は、この1000kWhを365日で割って、約2.7kWhと算出することができます。仮に、システム容量が5kWのソーラーパネルの場合の発電量の目安は、1日あたり13.5kWhということになります。

この13.5kWhを、先ほど算出したドライヤーを5分使用した場合の消費電力量・0.1kWhと比較すると、ソーラーパネルの発電量がイメージしやすいかもしれません。

 

 

太陽光発電で電気代はゼロになる?

コストについて

 

前述のように、家庭用ソーラーパネルでこれだけ多くの電気を発電できるなら、太陽光発電で「電気代をゼロにできる」と思う方もいることでしょう。電力会社から買う電気をゼロにするという意味では、残念ながら難しいでしょう。
夜間や雨天時など太陽光が発電しない時は、少なからず電気を買うことになるためです。ただし、実質的に電気代の収支をゼロにするという意味では可能性は十分あります。太陽光の余剰電力の売電金額が電力会社から買う電気代を上回れば、実質的には電気代をゼロか逆に収入を得られることになるからです。どちらにしろ、電気代の節約効果をかなり実感できるはずです。

また、蓄電池やEV(電気自動車)を導入して太陽光で発電した電気の自家消費を増やすこともおすすめです。昼間に蓄電池やバッテリーに余剰電力を貯め、夜間や天気が悪い日に利用して自家消費率を高めれば、電力会社から買う電気をさらに減らすことができ、電気代の節約が期待できます。また、万が一、自然災害などで停電したとしても、大切なライフラインである電気をしっかりバックアップしてくれるというメリットもあります。

 

 

太陽光発電に興味をもった方は、自宅への導入を検討してみよう

メガソーラー

 

メガソーラーを入り口に、太陽光発電の発電量や1世帯の使用電力量の目安を比較しながら見ていくことで、イメージしにくい電力について理解を深めることができたかと思います。また、家庭用ソーラーパネルの電気で家電が何台動かせるのかを普段の生活のシーンをイメージしながら考えることで、身近に感じてもらえたのではないでしょうか。

今回の記事を読んで、太陽光発電に少しでも魅力を感じた方は、自宅に実際に導入する選択肢を考えてみましょう。太陽光発電は購入するほかに、初期費用を抑えられる導入方法も存在します。自分に合った方法があるので、ぜひ検討してみてください。

 

太陽光発電を賢く導入する方法

初期費用などの導入コストを抑える方法として、東京電力グループが提供する「エネカリ/エネカリプラス」を利用する方法があります。

初期費用ゼロ円でソーラーパネルを導入できるうえ、設置からメンテナンス、保証もついているので、維持コストを含めて将来の家計を計画的に設計することができます。

エネカリ/エネカリプラス」について詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。



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※「エネカリプラス」は別途足場代等の費用がかかる場合があります。

 

【今回ご協力いただいた施設】
かわさきエコ暮らし未来館

かわさきエコ暮らし未来館


川崎市が運営する、浮島太陽光発電所に隣接するPR施設「かわさきエコ暮らし未来館」。地球温暖化、再生可能エネルギー、資源循環の3つのテーマを体験して学ぶことができます。

ソーラーパネル


写真は館内に展示されている浮島太陽光発電所の実物のソーラーパネルです。6枚のソーラーパネルで1つのセット(1アレイ)になっており、敷地内には、合計6321アレイのソーラーパネルが設置されています。太陽光パネルが黒っぽいのは光を吸収しやすいためです。また、光沢のある見た目のとおり、パネルはガラスコーティングされているため、表面の掃除はほぼ不要だとのことです。

展望スペースは、メガソーラーや羽田に離発着する飛行機が間近に見られる最高のロケーションです。メガソーラーを構内から間近に見学できるガイドツアー(予約制)も行われています。是非一度足を運んでみてください。
http://eco-miraikan.jp

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
EV DAYS編集部