マンションに電気自動車の充電器を設置するには?手順と注意点を解説

マンションでの電気自動車の充電

電気自動車(EV)への乗り換えや新規購入を検討している人にとって、大きな課題となるのが自宅の充電環境です。特にマンションに住んでいる場合、駐車スペースにEV充電器がないことで、購入をためらうケースもあるでしょう。この記事では、マンションをはじめとする集合住宅にEV充電器を設置したいと思ったときに知っておくべき基礎知識や注意点、一般的な設置の手順について解説します。

 

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マンションにおけるEV充電器設置の現状は?

マンションのイメージ

画像:iStock.com/mapo

 

まずは、マンションにおけるEV充電器設置の現状と今後の動きについて、簡単にまとめてみました。

 

EV購入に興味を持っている人の4割がマンション住まい


経済産業省の資料1)によると、EVに興味を持っている人(試乗希望者)のうち、40%がマンションなどの集合住宅に住んでいると回答しています。対して、実際にEVを所有している人の90%が戸建に住んでいると答えています。

〈図〉EV試乗希望者と、実際のEV購入者の住宅の割合の違い(2017年)

〈図〉EV試乗希望者と、実際のEV購入者の住宅の割合の違い(2017年)

 

この結果からわかるのは、EVを所有したいものの、マンションに住んでいるため、購入をためらっている人が多いことです。その最大の理由と考えられるのが、マンションにおけるEV充電器設置の難しさでしょう。個人の判断だけで充電器が設置できる戸建に対し、駐車スペースが共有部になることが多いマンションの場合は、原則として住民全体の合意がなければ充電器を設置できない事情があるのです。

 

 

国や自治体はマンションのEV充電器設置を推進している


とはいえ、マンションのEV充電環境も徐々に改善されつつあります。EV充電器を設置する新築マンションが増えていることに加え、既築のマンションに対しても、国や自治体がEV充電器の設置を積極的に支援するようになったからです。

たとえば東京都は、2030年までに都内のマンションに6万基のEV充電器を設置することを目標に掲げています2)。そのための取り組みとして、2025年4月から施行される「改正環境確保条例」では、マンションを含む都内の新規建築物にEV充電器を設置することが義務化されました3)

つまり、2025年4月以降に東京都内で新築されるマンションに住むのであれば、基本EV充電器が整備されていることになるわけです。また、既築のマンションにEV充電器を設置する場合も、国や自治体から補助金が交付されるため、費用面でのハードルはかなり下がっています。

これからEVの普及が進めば、EV充電器はマンションにとって欠かせない設備になり、EV充電器の有無がマンションの資産価値を左右する可能性も出てくるでしょう。国や自治体の後押しでマンションにEV充電器を設置する動きは加速しています。そうした動きに応じ、マンションのEV充電器設置を支援するサービス事業者も増えているので、設置のハードルは今後さらに低くなっていくといえるでしょう。

 

 

 

マンションにEV充電器を設置する際の注意点は?

注意点のイメージ

画像:iStock.com/SeiyaTabuchi

 

前述したように、これから新築されるマンションは、EV充電器が設置されている可能性が比較的高いといえます。しかし、すでにマンションを購入したり、マンションを借りて住んでいたりする場合は事情が異なります。

戸建に住んでいるのなら、自分の判断だけでEV充電器を設置することができます。しかしマンションの場合は、たとえ自分専用の駐車スペースであっても、勝手にEV充電器を設置することはできません。

なぜなら、駐車スペースは基本的にマンションの共用施設となるからです。またEV充電器の電源も、共用部の電気を使用することになります。つまり、マンションの駐車スペースにEV充電器を設置するということは、マンションの住民全体で共有している施設を改築するほか、共用部の電気を利用することになるため、住民全体の合意を得る必要があるのです。

住民全体の合意を得るための窓口となるのは、主にマンションの管理組合やその理事会です。EV充電器の設置の提案をする際には、設置場所や費用、運営方法などに関する具体的な案を用意しておくと、管理組合・理事会への説明がスムーズに行えます。そのためにもEV充電器の設置方法と種類などの基礎知識をつけておきましょう。

 

マンションにEV充電器を設置する具体的な方法は?

充電器のイメージ

画像:iStock.com/onurdongel

 

EV充電器の設置方法や種類によって、導入費用やランニングコストは異なります。まず大前提として「基礎充電」にあたるマンション充電では、急速充電器ではなく普通充電器の設置が現実的です。ここでは現在主流となっているものをご紹介します。

 

設置方法は「専有型」と「シェア型」の2つ


マンションのEV充電器の設置方法は、個別の駐車スペースに専用の充電器をそれぞれ設置する「専有型」と、共用の駐車スペースに充電器を設置しそれをシェアして利用する「シェア型」の2種類に分類されます4)

〈図〉「専有型」のイメージ

〈図〉「専有型」のイメージ

 

「専有型」の場合、好きなときに好きなだけ充電でき、車を移動させる手間もない点がメリットとなります。しかし、EVの台数分だけ充電器が必要になるため、設置や運用のコストが高めになる点はデメリットといえるでしょう。

〈図〉「シェア型」のイメージ

〈図〉「シェア型」のイメージ

 

一方、「シェア型」の場合、駐車スペースとは別の場所に充電スペースを用意し、複数台のEVで充電器を共有することになります。一般的に専有型よりも設置や運用コストを抑えられる点がメリットですが、充電待ちが生じる可能性や車の移動が必要な点はデメリットといえるでしょう。

現状では、マンション内でEVを所有している人の数が少ないことから、駐車場とは別に充電スペースを設け、1~数基程度の充電器を複数台のEVで共有する「シェア型」が主流になっています。設置や運用のコストが比較的低いことから、管理組合の合意も得やすいでしょう。

 

 

マンションに設置するEV充電器は主に2種類

電気自動車の充電器のイメージ

画像:iStock.com/sarawuth702

 

設置方法とあわせて確認しておきたいのが、EV充電器の種類です。マンションに設置する場合の選択肢は、「コンセントタイプ」か「充電器タイプ」の2種類になります。

コンセントタイプのほうが、設置単価や保守面でもお手頃です。ただし、利用時に車載ケーブルが必要な点や、充電出力が現状3kWまでしか対応していないため、バッテリー容量が大きい車種ほど充電時間がかかるなどのデメリットがあります。

充電器タイプはケーブル付きである点や、6kWの高出力にも対応しているものがあるため、コンセントタイプに比べて充電時間が短く済みます。その一方で、設置コストや保守費用はコンセントタイプよりもかかるのが特徴です。

なお、コンセントタイプは「専有型」で、充電器タイプは「シェア型」で利用される傾向にあります。これは設置単価の問題に加えて、出力を大きくできる充電器タイプのほうが多人数で利用する場合に都合がよいためです。

 

“マンション設置ならでは”のシステム導入が必要な場合も


また、設置方法や機器周りでもうひとつ認識しておくべき点は、マンションにEV充電器を設置する場合、「多人数で使うためのシステム導入」が必要なケースがある、ということです。

運用方法によってさまざまなケースがあるため、一概に言えませんが、集合住宅にEV充電器を設置した場合、「誰が、いつ、どのくらい利用したのか」を把握し、料金徴収を行う場合が多いです。そのためには、使用状況を把握できるシステムの導入と、そのシステムと連動できるEV充電器を利用する必要があります。

このように、戸建住宅に設置するEV充電器とは事情が異なることは理解しておきましょう。

 

 

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EV充電器の設置にかかる費用の相場は?

電気自動車のイメージ

画像:iStock.com/takasuu

 

EV充電器の設置方法を確認したところで、気になるのが設置費用の相場でしょう。

 

導入費用の目安は1基あたり50万~150万円程度


マンションにEV充電器を設置する際にかかる費用は、EV充電器自体にかかる費用と、設置工事費の合計額となります。

EV充電器にかかる費用の目安は、メーカーや製品ごとに異なります。参考までに、次世代自動車振興センターの資料4)では、「コンセントタイプ」なら1基1万円程度、「充電器タイプ」なら1基30万円程度を、標準的な価格として紹介しています。一方で、設置工事費の目安は「標準的な規模での工事を行った場合」の参考例として、1基あたり50万~150万円程度とされています。

ただし、設置工事費は、設置方法(専有型かシェア型か)や設置場所、設置するEV充電器の数や電気ケーブルの長さなどによって大きく変わります。具体的な事例での金額を知りたい人は、マンション計画修繕施工協会などの資料5)を参考にしてみましょう。

 

 

マンションのEV充電器設置には補助金が使える


マンションにEV充電器を設置する費用の目安を前述しましたが、この金額すべてを負担する必要はありません。マンションへのEV充電器設置に対しては、国や自治体から補助金が出ているからです。申請が通れば、実際の負担額はかなり少なくなります。

国の補助金6)を利用すれば、充電設備費の最大50%、工事費の最大100%が補助されます(各上限額あり)。つまり国の補助金を最大限に利用できた場合は、充電設備費の半額のみで、マンションにEV充電器を設置できるのです。ただし、現時点では2023年度の補助金は当初予算額超過のため申込受付を終了しています。予備費や補正予算の動向については最新の情報を確認の上で活用しましょう。

さらに自治体の補助金が併用できる場合もあります。たとえば、東京都の補助金7)は、国の補助金と併用することができるので、両方を併用すれば負担額はさらに少なくなります。

 

 

設置後にかかるランニングコストも忘れずに


このように、EV充電器の設置費用の大部分は、国や自治体の補助金でまかなうこともできます。しかし、設置後にランニングコストがかかることを忘れてはいけません。

ランニングコストは「固定費」と「変動費」に分けることができます。固定費は電気の基本料金と充電器のシステム費などで、充電器の種類や数、設置や運営の方法によって大きく変わります。変動費は電気の使用量料金などで、利用するEVの台数や、利用頻度によります。つまり、ケースバイケースとなるため、一般的な費用の目安を出すことは難しいといえます。

このランニングコストを「誰が負担するか」も重要な問題です。EVユーザーの利用料金にすべて転嫁するパターンや、管理組合が一部を負担するパターンなど、管理組合の考え方によって、さまざまな負担方法が考えられるでしょう。

 

マンションにEV充電器を設置する一般的な流れと期間は?

時間のイメージ

画像:iStock.com/Tatomm

 

では、EV充電器を設置するまで、実際にどのくらいの時間がかかるのでしょうか。ケースバイケースではあるものの、国や自治体の補助金を活用する場合は、半年~1年程度が目安です。サービス事業者に相談して、すべて任せてしまうこともできますが、設置までの主な流れを理解しておきましょう。

 

①設置計画を立て費用の見積もりを用意する


前述したように、マンションにEV充電器を設置するためには、管理組合を通じ住民全体の合意が必要になります。そのための提案資料として、まずEV充電器の設置計画を立て、費用の見積もりを用意することになります。

 

②マンション全体で設置の意思決定をする


もっとも大切なステップのひとつとなるのが、管理組合を通じ、総会にてマンションの住民全体の合意を得ることです。経済的負担の軽減や資産価値の向上など、EVを所有していない人が損をせず、メリットを感じられるように提案するのがポイントです。

 

③補助金の申請を行う


住民全体の合意を得ることができたら、EV充電器の設置に対する補助金の申請を行います。補助金を利用するためには、工事開始前に申請を通過させる必要があります。時期によっては、申請が通るまでに2カ月以上かかる場合もあるので注意しましょう。

 

④設置工事を行う


補助金の交付を受ける場合は、申請が通った時点から設置工事を始めることができます。また、工事が完了し、EV充電器の運営が始まったあとも、国や自治体へ実績報告などをする必要があります。

なお、マンションにEV充電器を設置する際の手順や注意点を詳しく知りたい場合は、下記の記事をあわせてご参照ください。

 

 

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EV充電器の設置を検討するなら、まず事業者への相談がおすすめ

契約のイメージ

画像:iStock.com/dima_sidelnikov

 

ここまでに紹介したとおり、マンションにEV充電器を設置するためには、住民全体の合意を得る必要があるほか、補助金の申請を行うなど複雑な手順を踏まなければなりません。時間がかかるだけでなく専門知識も必要になるため、個人ですべて手掛けるのは、かなり難しいといえるでしょう。

そこで役立つのが、マンション向けEV充電器の設置を支援するサービス事業者の存在です。マンションごとの事情にあわせて適切な設置計画と見積りを作成してくれるのはもちろん、補助金の申請までワンストップで支援してくれる事業者も登場しています。

既築のマンションにEV充電器を設置することは、EVユーザーの利便性向上だけでなく、マンションの資産価値向上にもつながります。現在お住まいのマンションにEV充電器を設置したいと考えている方は、まずサービス事業者に相談してみることをおすすめします。

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
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