電気自動車(EV)やPHV・PHEV(プラグインハイブリッド車)は、自宅で充電することができます。この自宅充電において、もっとも安く手軽に設置できる充電設備が「充電用コンセント」です。しかし、これからEV・PHEVに乗り始める方は、充電用コンセントとはどのようなものか、充電設備にはどのような選択肢があるかについて、知らない方がほとんどでしょう。そこで、充電用コンセントの種類や充電設備の基本、設置工事の相場感などについて紹介します。
- EV・PHEVの充電用コンセントとは
- 充電用コンセントの設置を考えたとき、知っておきたい3つのポイント
- 充電用コンセントの工事の流れ・費用感・製品例
- コンセントだけじゃない! 充電設備の種類を紹介
- 充電用コンセントの設置は手軽。ただ、他の有力な選択肢があることも知ろう
EV・PHEVの充電用コンセントとは
EV(電気自動車)やPHV・PHEV(プラグインハイブリッド車)は、自宅で充電するのが基本です。
コンビニや高速道路のサービスエリア(SA)といった公共充電スポットは、おもに長距離を移動するときに「補給」目的で利用することが多いのに対し、通常は自宅に設置した充電器で車を使わない時間帯に充電を行うことが基本となります。
なぜ自宅充電が基本なのかというと、自宅で充電するほうがEV・PHEVを運用するコスト(充電の電気代)も安くなり、ガソリン車のように燃料補給のために外出する必要もありません。自宅で充電できるのはEV・PHEVの大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、EV・PHEVを自宅で充電するには専用の充電設備が必要となります。その充電設備のうち、もっとも安価で手軽に設置できるのが「充電用コンセント」です。
充電用コンセントが必要な理由は「規格と出力」
わざわざ専用のコンセントを設置しなくても、電化製品などに使用する一般的なコンセントでEV・PHEVを充電すればいいと思われるかもしれません。
しかし、安全に充電するためには専用の充電用コンセントが必要です。
基本的に、EV・PHEVの充電用コンセントは日本配線システム工業会規格に準拠し、専用の電源プラグに対応しています。一般的なコンセントでも通電可能なものはありますが、電源プラグのロック機能が働きません。なお、差し込みが不十分な場合、火災などの原因となる可能性があります。
〈図〉EV・PHEVの充電用コンセントの規格例(200V用)
また、出力の問題もあります。基本的に、充電速度は充電器や充電用コンセントの出力(kW)の数値が大きいほど速くなります。一般的にEV・PHEVの自宅充電では単相AC200Vの充電用コンセントを使用し、その出力は約3kWとなります。家庭用の一般的なコンセントは通常100Vで、出力も半分以下となっています。
なお、一部のEV・PHEVでは単相AC100Vの充電用コンセントを使用して充電可能な車種もありますが、その際の出力は0.6kW~1.2kW程度と200Vの半分以下のため、充電するのに時間がかなりかかってしまうでしょう。
「車載充電ケーブル」を利用するのが基本
自宅に設置するEV・PHEV用の充電設備にはいくつか種類があります(詳しくは、後述)。そのなかでも、もっともコンパクトなのが充電用コンセントです。壁面に取り付けるタイプなので設置する際に場所をとりません。
ただし、充電用コンセントは「車載充電ケーブル」の使用が前提となっています。下の図のように、電源プラグを充電用コンセントに、充電用コネクタを車の充電口にそれぞれ接続して充電を行います。
〈図〉充電するときの接続状況
注意が必要なのは、車載充電ケーブルは車種ごとに異なる専用品で、電源プラグからコントロールボックスまでの長さがそれぞれ少しずつ違うことです。
設置する充電用コンセントの高さや種類によっては、コントロールボックスがコンセントを取り付ける壁に干渉してしまうおそれがあります。事前に長さを確認しておいたほうがよいでしょう。
充電用コンセントには「100V」と「200V」がある
充電用コンセントには「200Vコンセント」「100Vコンセント」の2種類があります。しかし、実際には100Vを選ぶEV・PHEVのユーザーはあまりいないようです。
その理由は、大容量のバッテリーを搭載するEV・PHEVの充電には出力の大きい充電設備が必要となり、100Vでは時間がかかりすぎてしまうためです。
たとえば、出力3.0kWの200Vコンセントの場合、バッテリー容量30kWhのEVをおよそ10時間で満充電できます。帰宅後に車を充電用コンセントに接続して充電を開始すれば、翌朝には満充電になっている計算です。
一方、出力1.2kWの100Vコンセントの場合、10時間充電しても電池残量は50%未満です。これでは日常的にEV・PHEVに乗る人は困ることになるでしょう。そうしたことから200Vコンセントを選ぶ人が多いのです。
〈図〉10時間の充電で貯まるバッテリー容量
なお、200Vコンセントを選択する場合、当たり前ですが200Vの電気が自宅にきている必要があります。ここ10〜20年の間に建てられた戸建住宅は200Vに対応しているケースがほとんどのため問題ないですが、もしそうでない場合はまず200V化の電気工事が別途必要になります。
メリットは「設置費用の安さ」と「手軽さ」
いくつかある充電設備の中から充電用コンセントを選ぶメリットを考えてみましょう。もっとも大きなメリットは、製品自体の価格が「安い」ということです。
充電用コンセントは、多くの製品が3000円台から1万円程度で購入できます。導入費用を安く抑えるという意味でこの価格は魅力的と言えるでしょう。
また、充電用コンセントはほかの充電設備に比べて工事も簡単です。分電盤からコンセントの設置場所までの配線の長さなどの条件で変動しますが、工事費を含めた費用の目安は10万円前後と考えてください(費用に関して、詳細は後述します)。
自宅に設置する充電設備は「普通充電器」
本記事では、ここまで充電設備のことを単に「充電器」とひと括りで表現してきましたが、正確に言うと、充電器には「普通充電器」と「急速充電器」の2種類があります。
しかし、急速充電器が設置されているのは、おもに高速道路のSAや商業施設、車のディーラーなどの場所で、いわば移動途中に短時間でEVを充電するための公共の充電設備です。出力も20〜50kWと高く、個人の方がプライベート用として自宅に設置することは皆無かつ困難です。
EV・PHEVの所有者が自宅の駐車場に設置し、日々の充電を行うのは、あくまでも家庭用電源を使用した普通充電器であることは覚えておいたほうがいいでしょう。
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充電用コンセントの設置を考えたとき、知っておきたい3つのポイント
EV・PHEVを所有し、充電用コンセントの設置を検討しているなら、充電設備に関する基礎知識を知っておいたほうがいいでしょう。充電用コンセントの設置を考えている人が知っておくべき4つのポイントを紹介します。
ポイント①設置には「第二種電気工事士」以上の資格が必要
昨今は家にいる時間が増え、DIYが盛り上がりを見せています。なかには「充電用コンセントの取り付けを自分でやってみよう」と考える人もいるかもしれません。
しかし、電気工事は、定められた資格を持つ人以外は原則行ってはならないと法令で定められています。具体的に言うと、充電設備の設置工事を行うには、第二種電気工事士(一般住宅や店舗などの600V以下で受電する設備の工事に従事できる資格)以上の資格を有していなければなりません。
なぜかというと、電気工事はひとつ間違うと感電事故や漏電による火災などにつながるため、専門的な知識と正確な技術が要求される作業だからです。充電用コンセントの設置工事は自分でやろうとせず、必ず資格を持つ施工業者に依頼しましょう。
東京電力グループのTEPCOホームテックでは、充電設備の設置を承っております。工事の10年保証もついているので、充電用コンセントの設置を考えている方は参考にしてみてください。
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ポイント②自宅の環境に応じて、工事のレベルが変わる
充電設備の設置工事を行う場合、自宅の環境を確認しておくことも大切です。なぜかというと、環境によって、設置工事の種類やそれにともなう工事費なども変わってくるからです。
まず、充電用コンセントが設置できるのは、現状戸建住宅であることが基本です。マンション等の集合住宅で設置することもできないわけではありませんが、大家さんや管理組合、ほかの住民と費用負担などについての合意を得る必要があります。
また、戸建住宅の場合でも、自宅環境によって工事のレベルは変わります。基本的に、200Vの充電用コンセントの設置工事を行う場合、「専用ブレーカーの設置」「配線の敷設」「充電用コンセントの設置」という3つの作業が必要です。自宅の分電盤の状況や分電盤からコンセントを設置する駐車場までの距離などによって、作業工数も変わります。
そのため、充電用コンセントを設置する際は施工業者に現地調査をしてもらい、まず自宅の状況を把握することが大切です。それによって工事費も変わるので、事前に見積もりを取ることも忘れないようにしましょう。
ポイント③充電用コンセント以外の選択肢もある
自宅に設置するEV・PHEVの充電設備を考えたとき、設置費用の安さ、設置工事の手軽さという意味で第一候補となるのが充電用コンセントです。しかし、自宅に設置できる充電設備は充電用コンセントだけではありません。
詳細は後述しますが、ほかにも「スタンドタイプ」や「V2H機器」などでも充電することができます。
これらは車載充電ケーブルを使用する必要がなく、充電器に付属された充電用コネクタを車に差し込むだけで充電できます。「V2H」はEV・PHEVの大容量バッテリーに蓄えられた電気を取り出して自宅で使用できるなど車を蓄電池代わりに使用することができるため、使い勝手や利用用途が変わります。
いずれも充電用コンセントに比べると費用は高くなりますが、自宅の状況やそれぞれの人が求める機能によって充電設備の選び方は変わってくるわけです。
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充電用コンセントの工事の流れ・費用感・製品例
ここからはもっと具体的に充電用コンセントに関する情報を見ていきましょう。まずは自宅に充電用コンセントを設置する際に、EV・PHEVユーザーが考えなければならないこと、すべきことを設置工事の流れとともに紹介します。
設置工事の流れ
(1)施工業者を選ぶ
まずは施工業者の選定です。ポイントは、おもに「EV・PHEVの充電設備の施工経験が多いこと」です。
なお、標準的な工事による設置費用の目安は施工業者のホームページなどで確認できます。ただし、正式な費用見積りは現地調査の後になります。
また、充電時に使い過ぎによるメインブレーカーの動作(停電)が起こらないか、おトクな充電時間帯はいつかなど、電気の契約容量や電気料金プランなどにも詳しい施工業者かどうかも大事なポイントになります。
(2)現地調査に立ち会う
施工業者に依頼したからといって、すぐに設置工事へと移るわけではありません。設置工事の詳細や費用は、依頼者立ち会いのもと、施工業者が充電器の設置場所や自宅の環境を現地調査してから決まります。
なぜかというと、設置場所を下見し、分電盤から駐車場までの距離や位置関係、充電設備を設置する壁面の材質などを確認しなければ、必要な配線の長さなどを確定できないためです。
(3)契約して工事に立ち会う
現地調査を終え、工事内容や費用が確定したら正式な見積りをもらいます。その後契約を結んで工事日を決めます。設置工事では、おもに「専用ブレーカーの設置」「配線の敷設」「充電用コンセントの設置」を行い、最短半日で作業が終わります。
気になる点があったら、遠慮せずにその場で施工業者に質問しましょう。
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充電用コンセントの設置工事・製品の費用感は?
設置工事の総額費用の目安
充電用コンセントの設置費用は、製品、施工費用を合わせて10万円前後が目安です。ただし、分電盤からコンセント設置場所までの配線の長さなどの条件で費用が変わります。
充電用コンセントの製品例
EV・PHEVの充電用コンセントにはどのような種類があるのか、実際の製品を見てみましょう。
充電用コンセントの製品バリエーションは多くありません。ここでは充電用コンセントでシェアの高いパナソニックの代表的な2つの製品を紹介します。
●パナソニック「EV・PHEV充電用 屋外コンセント」1)
もっともスタンダードなタイプのEV・PHEVの充電用コンセントです。電源プラグを差し込むときに回転させなくてもロックすることが可能で、片手だけで電源プラグを抜き差しできるように配慮されています。
「15A・20A兼用 接地屋外コンセント」
種類 | 定格 | 希望小売価格 |
200V用 | 20A 250V AC | 3850円(税込) |
●パナソニック「EV・PHEV充電用 カバー付屋外コンセント」2)
この充電コンセントは「保護カバー」と「簡易鍵」を装備しています。保護カバーを閉め、簡易鍵を施錠することにより、コンセントの差込口や充電ケーブルへのいたずら防止、電気の窃盗防止に効果があります。
価格は上記の製品の倍以上ですが、それでもほかの充電設備と比べると購入コストはかなり安く抑えることができます。
「カバー付 15A・20A兼用 接地屋外コンセント」
種類 | 定格 | 希望小売価格 |
200V用 | 20A 250V AC | 1万1000円(税込) |
コンセントだけじゃない! 充電設備の種類を紹介
自宅でEV・PHEVを充電する場合、設備の選択肢は充電用コンセントだけではありません。それぞれ具体的に紹介していきます。
自宅充電の方法は2つがある
まずEV・PHEVの充電方法から説明していきましょう。ひと口に充電といっても、大きく分けて2種類の方法があります。
(1)車載充電ケーブルを利用して充電する
ひとつは、車載充電ケーブルを使用して充電設備と車を接続して充電する方法です。充電用コンセントを自宅に設置する場合はこちらの方法で充電を行います。設備費用が安いというメリットがあります。
(2)車載充電ケーブルを利用せずに充電する
もうひとつは、車載充電ケーブルを使用せず、充電器本体に装備された「充電ケーブル」の充電用コネクタを車に差し込んで充電する方法です。車載充電ケーブルを使用する方法に比べて手間はかかりませんが、その分、充電器本体の価格や工事費などの設置費用は高くなります。
自宅に設置する充電設備3タイプ
さらに、EV・PHEVを自宅で充電するための充電設備には大きく分けて次の3タイプがあります。「壁面取り付けタイプ(充電用コンセント含む)」「スタンドタイプ」「V2H機器」です。
(1)壁面取り付けタイプ
駐車場や建物の壁面に取り付ける充電設備で、充電用コンセントはこのタイプに含まれます。充電器本体に充電ケーブルを備えた製品も販売されており、使い勝手がよくデザイン製に優れているのが特徴です。
壁面取り付けタイプの充電器は駐車場と建物の距離が近い場合に選択されることが多いです。
●壁面取り付けタイプの商品例3)
|
ELSEEV hekia S Mode3/パナソニック |
希望小売価格:15万4000円〜(税込) |
※工事費は別途
(2)スタンドタイプ
商業施設や公共施設の充電設備として設置されるケースが多いのがスタンドタイプです。ただし、自宅に設置することを想定した製品もあり、駐車場と建物の距離が離れている場合は選択肢のひとつとなるでしょう。
このタイプには車載充電ケーブルを使用するコンセントタイプの製品のほか、本体に充電ケーブルを備えたタイプの製品もあります。
●スタンドタイプの商品例①コンセントタイプ4)
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ELSEEV mine/パナソニック |
希望小売価格:10万9780円(税込) |
※工事費は別途
●スタンドタイプの商品例②充電ケーブル付属タイプ5)
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ELSEEV mine Mode3/パナソニック |
希望小売価格:26万4000円(税込) |
※工事費は別途
(3)V2H機器
V2Hは「ヴィークル・ツー・ホーム」の略で、簡単に言えば、EV・PHEVの大容量バッテリーに蓄えられた電気を家庭内で使えるようにするシステムのことです。
非常災害時や効率的な電気の利用を目的として導入されるケースが増えているほか、高出力で充電できるため、EV・PHEVの充電時間を短くできるメリットもあります。
もっとも、V2H機器は高性能でメリットが多い分、設置費用はほかの充電器に比べてかなり高くなります。機器本体の価格が40~90万円程度、設置工事費を含めると80万円程度〜が目安となるでしょう。
●V2H機器の商品例6)
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EVパワー・ステーション スタンダードモデル/ニチコン |
希望小売価格:43万7800円(税込) |
※工事費は別途
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参考資料
3)パナソニック「[EV・PHEV充電用] 充電器 ELSEEV hekia S Mode3」
4)パナソニック「[EV・PHEV充電用] 充電スタンド ELSEEV mine」
5)パナソニック「[EV・PHEV充電用] 充電スタンド ELSEEV mine Mode3」
6)ニチコン「クルマを暮らしの電源に」
充電用コンセントの設置は手軽。ただ、他の有力な選択肢があることも知ろう
充電用コンセントは、ほかの充電設備と比べると製品価格を含めた設置費用が安く済むので、これからEV・PHEVに乗る方にとって非常に手軽に感じるはずです。
しかし、EV・PHEVの利用者が自宅で充電を行うための設備の選択肢は、充電用コンセントだけではありません。これまで説明してきたように、充電設備の機能や使い勝手と費用感は比例しています。特にV2Hは単に充電するだけでなく、EV・PHEVを大容量の蓄電池代わりに使用できるという機能も兼ね備えています。非常災害時の電源としてや、太陽光発電を有効利用する手段としても大きなメリットがあるため、選択肢のひとつとして検討する価値はあるでしょう。
自身にとって、自宅で充電するときに優先順位の高いものは何か、その点をよく考えて、施工業者とも相談しつつ、ほしい機能や設置条件などをじっくり検討したうえで充電設備を選ぶことをおすすめします。