電気自動車の電気代の目安はいくら?ガソリン車比較、安く抑えるポイントも解説

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ガソリン車に比べて、走行にかかるコスト(=充電にかかる費用)が低いと言われる電気自動車(EV)。しかし、最近では電気代が上昇傾向にあるため、ガソリン車と差がないのでは? と思う方もいるでしょう。現在、EVにかかる電気代はどれくらいなのでしょうか。自宅で充電する場合を例として、電気代の目安やガソリン車とのコスト比較、そして電気代を安く抑えるポイントについて解説します。

 

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電気自動車にかかる電気代の目安は?

充電器が差し込まれた電気自動車

画像:iStock/24K-Production

 

ひと口にEVの電気代(充電にかかる費用)と言っても、充電には大きく分けて「自宅充電」と、自宅以外の充電設備を利用する「外充電」があり、充電料金の目安が異なります。

EVはガソリン車と異なり、「自宅充電」できるのが大きなメリットであり、コストも低く抑えられます。そこで今回は、自宅充電をする場合を例にして、電気代の目安を確認していきます。

 

自宅充電なら満充電まで数百円〜2000円程度

EVを自宅で充電をする場合、専用のコンセントや充電器の設置が必要になりますが、充電コストをグッと抑えることができます。

EVのバッテリー容量によりますが、1回あたり数百円〜2000円程度の電気代で満充電にすることができます。航続距離が異なるため、シンプルに比較するのは難しいですが、ガソリン車を満タンにする費用を考えると、かなり安いのがわかるのではないでしょうか。

 

〈表〉国産EV別の充電料金目安

車種 バッテリー容量
(航続距離 ※1
充電料金目安※2 
トヨタ「bZ4X」 71.4kWh(567km) 2213円
スバル「ソルテラ」 71.4kWh(567km) 2213円
日産「サクラ」 20kWh(180km) 620円
日産「リーフ」 40kWh(322km) 1240円
日産「アリア」 66kWh(470km) 2046円
ホンダ「Honda e」 35.5kWh(259km) 1100円
マツダ「MX-30 EV MODEL」 35.5kWh(256km) 1100円
三菱「eKクロス EV」 20kWh(180km) 620円

※1 エントリーグレードの航続距離(WLTCモード

※2 0%から満充電する場合、1kWhあたり31円(「全国家庭電気製品公正取引協議会」の発表1)より)と想定して算出。電力量料金のみの金額で、基本料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は加味していません。

 

ただし、ガソリン車の給油が5分程度で終わるのに比べて、一般的なEVですと、バッテリー残量が少ない状態から満充電までは数時間〜十数時間が必要です。

なお、EV充電専用コンセントの設置の初期費用の目安は10万円程度です(分電盤からコンセントまでの距離など条件によって異なります)。自宅用の充電設備の設置にかかる費用の目安については、後ほど詳しく紹介します。

 

 

 

 

1カ月の電気代の目安は4000円程度

電球と電卓

画像:iStock/years

ではEVを所有した場合、継続的にどのくらいの電気代がかかるのでしょうか。

目安として年間の走行距離を約1万kmと考え、すべての充電を自宅で行うと仮定した場合、1週間の充電料金は約1000円。1カ月の電気代は約4000円となります。

具体的にシミュレーションした条件は、以下のとおりです。

 

〈表〉EVの電費・電気料金単価

EVの電費 6km/kWh
自宅充電の電気料金単価 31円/kWh

※1kWhの電力量でEVが走れる距離

 

〈表〉EVの走行距離・利用方法

1週間の走行距離 200km
年間の走行距離 9600km(200km×4週×12カ月)
EVの利用頻度 週6日
利用方法(平日) 通勤(片道10km、週5日)
利用方法(休日) 買い物・レジャー(合計100km)

 

今回のシミュレーションでは、EVを週6日使い、おもに片道10kmの通勤、休日の買い物やレジャー(100km)に利用すると想定しました。この場合、1週間の走行距離は200km(月800km)になります。

 

〈表〉充電料金

1週間の充電電力量 33.3kWh(200km÷6km/kWh)
1週間の充電料金 1032円(33.3kWh×31円/kWh)
1カ月の充電料金 4128円(1032円×4週)

 

このように、高頻度でEVを利用する場合であっても、電気料金単価が31円/kWhの場合、1週間の充電料金は1032円。1カ月の電気代は、4128円となるのです。(電力量料金のみの金額です。基本料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は加味していません)

なお、外充電も含めた電気代のシミュレーションは、以下よりご確認ください。

 

 

電気代が高騰しているけど、ガソリン代とどちらが安い?

電気自動車とガソリン車

画像:iStock/Tomwang112

 

ご存知のとおり、近年電気代は高止まり傾向にあります。実際、EVの充電料金とガソリン車の燃料代はどちらが安いのでしょうか。結論からお伝えすると、性能が同等のガソリン車と比較した場合、EVの走行コストのほうがかなり安いと言えます。

 

EVとガソリン車のコスト差は? 走行距離1万kmで比較!


ここからは、1万kmを走行した場合のガソリン車とEVとの走行コストを比べます。条件は次のとおりです。

 

〈図〉ガソリン車とEVの燃費(電費)・コスト条件

ガソリン車とEVの燃費(電費)・コスト条件

 

上記の条件で1万km走行したときの、それぞれの走行コストは以下となります2)

 

〈図〉1万kmを走行した場合のコスト比較

1万kmを走行した場合のコスト比較

 

その結果、ガソリン車の走行コストが10万9890円、EVの走行コストが5万1646円となりました。両者の走行コストを比較すると、2倍以上の差があります。

電気代は高止まり傾向にあるとはいえ、ガソリン価格も同様に高騰しています。これだけの差がありますので、EVの走行コストの方が低いという状況はしばらく変わらないでしょう。

※電気代は電力量料金のみの金額です。基本料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は加味していません

 

10年間走ったときのコスト差は?


また仮に同じ車種のEVとガソリン車をそれぞれ10年間乗り続けた場合、両者の走行コストの差は約58万円になります。いかにEVの走行コストが低いかがわかります。

 

〈図〉年間1万km×10年間走ったときのコスト比較

年間1万km×10年間走ったときのコスト比較

 

 

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電気自動車の電気料金を安く抑えるポイント

ここまで読んで、自宅充電を行った場合のEVの走行コストはいかに低いかよくわかっていただけたのではないでしょうか。

しかし、今回紹介したのは自宅充電のみの例で、自宅充電に加えて外充電を併用する場合もあるため、その分のコストについても考える必要があります。

そこで、自宅充電にかかるコストを上手にもっと抑えるコツを紹介しましょう。

 

ポイント①電気料金プランを吟味する

電気料金

画像:iStock/Tatiana Sviridova

 

「電気料金プランを吟味する」と自宅充電の料金を抑えられ、走行コストをさらに安くすることができる可能性があります。

電気料金プランには時間帯によって電力量料金単価が変わるものがあります。この記事の試算では1kWhあたり31円として計算しましたが、自宅の電気料金プランを吟味し、単価が安い時間帯に充電するなど意識すれば、もっと充電コストを安くできます。

たとえば、東京電力エナジーパートナーのオール電化住宅向け料金プランである「スマートライフ」にご加入の場合、深夜帯(深夜1時~早朝6時)の電力量料金単価は1kWhあたり27.86円です。これは昼間(35.76円)に比べると割安になっています。

そのため、料金プランに合わせてEVのタイマー充電機能を活用するなど賢く充電を行うことが、大きく充電料金を下げるコツです。

なお、電気料金プランを見直す場合は、充電だけでなく家全体の電気の使用状況を総合的に鑑みて検討するようにしましょう。

 

 

ポイント②太陽光発電を導入する


自宅に太陽光発電を設置した場合、発電した分はいわば「無料」で使うことができます。そのため、EVの充電すべてを太陽光発電での発電でまかなうことができれば、走行コストをゼロにすることも可能なのです。

もちろん、太陽光発電の設置には費用がかかります。2023年における住宅用の太陽光発電システムの設置費用は、容量1kWあたり平均28.8万円(新築の場合)と言われています。一般的に3~5kWの容量を設置することが多いので、86.4万~144万円となるでしょう。(※補助金の対象となった場合の価格ではありません)。

とはいえ、太陽光発電でまかなえるのはEVの電気代だけではありません。初期費用を抑える方法もあり、家全体でのコストメリットも大きいので、検討してみることをおすすめします。

 

 

太陽光発電の初期費用を抑える方法


太陽光発電の導入コストを抑える方法として、東京電力グループが提供する「エネカリ/エネカリプラス」があります。

「エネカリ」は、初期費用0円、月々定額の利用料のみで太陽光発電をはじめとした設備を導入することができるサービスです。また、太陽光発電で余った電気を売って収入を得ることができます。

利用期間中は故障時の修理費用も無料で、風水害や落雷などの自然災害補償も付いています。さらに、利用期間満了後には、そのまま設備を無償で譲り受けることができます。

「エネカリプラス」もエネカリと同様に、太陽光発電をおトクに利用できるサービスです。エネカリとの大きな違いは、売電収入がない分月額利用料を安く抑えられること。各家庭の事情や予算に合わせて選択できますので詳細は以下のサイトで確認しましょう。

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※「エネカリプラス」は別途足場代等の費用がかかる場合があります。

 

ポイント③EV特有のエコドライブを意識する

ハンドルを握る人

画像:iStock/show999

EVにかかる電気代を安く抑えるためには、エコドライブを心掛けることも大切です。EVはガソリン車以上に走らせ方によって燃費(電費)が変わります。特に、急加速はなるべく控えることと、エアコン(特に暖房)の影響が大きいことを覚えておくとよいでしょう。

エコドライブのコツはガソリン車とそれほど違いません。もっとも重要なのは、極端なアクセルワークを避けること。速度変化が少なく穏やかな運転をすることが、燃費(電費)にやさしい走り方です。

そして、想像以上に電気を使ってしまうのがエアコンです。外気との温度差が大きい冬の暖房が夏の冷房より消費電力が大きくなり、エアコンのオン・オフでメーターパネルに表示される航続可能距離が大きく変わってしまうことがあるほどです。

設定温度を抑え、エアコンに比べて消費電力が小さいシートヒーターを活用するなど、EVならではの工夫をすることも大切です。

 

 

電気自動車の自宅充電設備の設置費用はいくら?

 電気自動車用充電器

画像:iStock/FG Trade Latin

先述したように、自宅でEVを充電するためには、専用の充電設備が必要です。といっても、大がかりな工事をするわけではありません。最低限、充電できるようにするだけならば、駐車場に200Vの充電用コンセントを設置する簡単なもので済みます。分電盤から駐車場(コンセント)までの距離にもよりますが、工事費込みで10万円程度が目安と考えておけばよいでしょう。

 

自宅に設置できる充電設備の種類


自宅に設置できる充電設備は、簡単なものから高価なものまでさまざまな種類があります。代表的な3種類の充電設備を紹介します。

 

①コンセントタイプ


もっとも設置工事が簡単で、簡易な充電設備がコンセントタイプです。単なるコンセントなので、EVの車載充電ケーブルを都度取り付けて充電する必要があります。なお、製品自体は3000〜1万円程度で購入できます。分電盤からコンセント設置場所(おもに住宅の側壁)までのケーブルの長さなどの条件で費用が変わりますが、工事費を含めて10万円程度が目安です。

 

充電コンセント

 

②壁掛けケーブル付きタイプ


駐車場や自宅の壁面などに取り付ける壁掛けタイプの充電設備は、使い勝手がよくデザイン性に優れているのが特徴です。一般的に充電ケーブルと一体式になっていて、充電のたびにわざわざ車載の充電ケーブルを取り出す必要がありません。また、壁掛け型の充電器の中には、コンセントタイプより早く充電できる高出力タイプもありますが、高出力充電に対応していない車種もあるので注意してください。製品を含めて導入費用は20万円程度〜が目安となります。

 

③スタンドタイプ


スタンドタイプは、商業施設の駐車場など公共の充電設備として設置されるケースが多い自立型の形状です。とはいえ、自宅や会社の駐車場などに設置することを想定した機種もあって、壁掛けタイプと同様にケーブルが一体となっていることが多い点は便利です。本体はおおむね10万円以上の機種が多く、これに設置時の工事費が追加されます。また、課金装置などを追加できる機種もあります。ただし、課金機能まで備えたような充電器を自宅に設置するケースはほとんどありません。

 

 

集合住宅にEV充電器を設置する方法

集合住宅

画像:iStock/paprikaworks

2025年4月から施行予定の「改正環境確保条例」によると、東京都ではマンション、商業施設やオフィスビルなどすべての新築建築物にEV(電気自動車)充電設備の設置を義務づけています。

東京以外でも、これから新築されるマンションは、EV充電器が設置されている可能性が比較的高いでしょう。しかし、すでにマンションを購入したり、マンションを借りて住んでいたりする場合は事情が異なります。

戸建に住んでいるのなら、自分の判断だけでEV充電器を設置することができます。しかしマンションの場合は、たとえ自分専用の駐車スペースであっても、勝手にEV充電器を設置することはできません。

なぜなら、駐車スペースは基本的にマンションの共用施設となるからです。またEV充電器の電源も、共用部の電気を使用することになります。つまり、マンションの駐車スペースにEV充電器を設置するということは、マンションの住民全体で共有している施設を改築するほか、共用部の電気を利用することになるため、住民全体の合意を得る必要があるのです。

なお、最近では集合住宅への充電設備の設置から運用まで相談に乗ってくれる業者も多くなってきました。「EVに乗りたいけど住まいがマンションなので充電設備がない」という方は以下の記事を参考にしてみてください。

 

 

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生活スタイルに合った電気料金プランと充電設備を選ぼう

全国を通じてほぼ一律の価格で販売されるガソリン代と異なり、電気代は料金プランや時間帯によって大きく価格が変わります。

大切なのは、自宅充電を上手に活用しながら、自分に合った電気料金プランや充電設備を選ぶことです。ぜひ、ご自身に合った上手なEVの運用方法を探してみてください。

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります。

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
EV DAYS編集部