購入を検討する人が徐々に増えている電気自動車(EV)ですが、よく指摘されるのが高額な車両価格です。実際のところ、どれくらいの予算で購入できるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。一方でEVの価格は、将来的には安価になっていくとも予想されています。そこでこの記事では、EVの車種別価格を一覧でご紹介。さらにはEVにおける価格とバッテリー容量の関係、補助金などについても解説します。
※この記事は2021年11月9日に公開した内容をアップデートしています。
- 電気自動車(EV)の価格相場はいくら? 新車・中古車別に紹介
- 【価格帯別】国内販売電気自動車(EV)の車種別価格一覧
- 電気自動車(EV)の価格はバッテリー容量で大きく変わる
- 補助金や税制優遇、電気(充電)代など、費用はトータルで考えよう
- 電気自動車(EV)は将来、安くなる?
この記事の監修者
コンテンツ制作プロダクション三軒茶屋ファクトリー代表。一般社団法人日本EVクラブのメンバー。2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成。ウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開。電気自動車情報メディアや雑誌特集などに多く寄稿している。著書に『電気自動車で幸せになる』(Kindle)など。
電気自動車(EV)の価格相場はいくら? 新車・中古車別に紹介
一般的に高額と言われているEVですが、実際にどれくらいの予算で購入できるかは気になるところです。ここではEVの価格相場を、新車・中古車に分けて紹介します。なお、具体的な価格は車種やグレードによって異なるため、あくまでも大まかな目安として捉えてください。
新車の価格相場
新車の価格相場は、以前は300万~600万円前後のスタンダードな価格帯と、1000万円以上のハイクラスな価格帯の2種類に大きく分けられていました。しかし、ここ1、2年の間に200万円台で購入できる軽EVをはじめ、数多くの車種が登場したことから、価格帯のバリエーションが広がりました。
<図>選択肢が広がるEVの新車価格
大きく分けると、300万円以下で購入できる軽EVや超小型EV、400万~600万円前後の大衆車、600万~800万円前後の高級車、1000万円以上の超高級車の4つの価格帯があります。
中でもボリュームゾーンといえるのは、400万~600万円台の車種です。その背景には、低価格のEVで躍進を続けるBYDや、2022年に日本再参入を果たしたヒョンデといったメーカーの存在、テスラの価格最適化などが挙げられます。
また、日本ではエコや環境保護の観点からEVの利用が推進されており、新車購入時には国や地方自治体による補助金のほか、税制優遇などの制度を活用することもできます。なかには100万円以上安上がりになるケースもあるので、予算を考える際にはそれらも含めて計算しましょう。
中古車の価格相場
中古車の価格相場は数十万円〜ほぼ新車同等と幅広いです。
〈表〉代表的な車種の平均中古価格
車種 | 平均中古価格 |
BMW iX3 | 577万1000円 |
テスラ モデル3 | 421万9000円 |
日産 リーフ | 183万7000円 |
プジョー e-208 | 342万9000円 |
ポルシェ タイカン | 1450万7000円 |
ホンダ Honda e | 340万4000円 |
三菱 i-MiEV | 56万2000円 |
メルセデス・ベンツ EQC | 676万2000円 |
※価格はカーセンサーの車両本体価格調べ。2023年10月16日時点1)
新車で購入する半額以下の価格になっている車種もありますが、EVの中古車を購入するときには、バッテリーの残容量性能(SOH)に注意する必要があります。異様に安く売られている車両は、バッテリーの劣化によって航続距離が短くなっている可能性もあります。エンジン車なら年式や走行距離などで劣化の度合いもわかりますが、EVでは充電した回数などによってバッテリー劣化の度合いに差が出るため、それらの情報はあまり参考になりません。
ところが、バッテリーの残容量は、中古車ディーラーに聞いても教えてくれないことが多いです。購入を検討している車両にはぜひ試乗して、満充電時の航続距離の表示を確認しましょう。直前の運転の仕方によっても航続距離は変わるため、航続距離が短かった場合は、穏やかに運転して回復するかを試してみるのも有効です。
参考資料
1)カーセンサー「中古車 電気自動車検索」
【価格帯別】国内販売電気自動車(EV)の車種別価格一覧
では、実際にどのような車種が市場に出回っているのでしょうか。ここからは現在国内で販売されている電気自動車(EV)の主な車種別の新車価格を価格帯別に紹介します。
なお、バッテリー容量と価格は各車種のエントリーグレードのもの、価格は2023年10 月20日時点でメーカー公式サイトに記載されている車両本体価格(税込)を採用しています。価格は変動することがあるため、最新の情報はWebサイトなどでチェックしましょう。
また、価格以外のスペックも確認したい人は、以下のページをチェックしてみてください。
以下、価格順で表示しています。
300万円以下(軽EV・超小型EV)
車種(メーカー) | バッテリー容量 | 価格 |
C+Pod(トヨタ) | 9.06kWh | 166万5000円~ |
eKクロス EV(三菱) | 20kWh | 254万6500円 |
サクラ(日産) | 20kWh | 254万8700円 |
300万~400万円台
車種(メーカー) | バッテリー容量 | 価格 |
DOLPHIN(BYD) | 44.9kWh | 363万円~ |
KONA(ヒョンデ) | 48.6kWh | 399万3000円 |
リーフ (日産) | 40kWh | 408万1000円~ |
ATTO 3(BYD) | 58.56kWh | 440万円 |
MX-30 EV MODEL(マツダ) | 35.5kWh | 451万円~ |
e-208 (プジョー) | 50kWh | 469万4000円~ |
IONIQ 5(ヒョンデ) | 58kWh | 479万円 |
Honda e(ホンダ) | 35.5kWh | 495万円 |
500万~600万円台
車種(メーカー) | バッテリー容量 | 価格 |
ID.4(フォルクスワーゲン) | 52kWh | 514万2000円~ |
500e(フィアット) | 42kWh | 522万円~ |
リーフ e+(日産) | 60kWh | 525万3600円~ |
アリア(日産) | 66kWh | 539万円~ |
Ë-C4(シトロエン) | 50kWh | 554万8500円 |
EX30(ボルボ) | 69kWh | 559万円 |
Model 3(テスラ) | 未公表 | 561万3000円~ |
Model Y(テスラ) | 未公表 | 563万7000円~ |
e-2008(プジョー) | 50kWh | 576万4000円 |
ソルテラ(スバル) | 71.4kWh | 594万円~ |
bZ4X(トヨタ) | 71.4kWh | 600万円~ |
UX300e(レクサス) | 72.8kWh | 630万円~ |
Audi Q4 e-tron(アウディ) | 82kWh | 638万円~ |
XC40 Recharge(ボルボ) | 73kWh | 679万円~ |
i4(BMW) | 70.3kWh | 698万円~ |
iX1(BMW) | 66.5kWh | 698万円 |
C40 Recharge(ボルボ) | 73kWh | 699万円~ |
700万~800万円台
車種(メーカー) | バッテリー容量 | 価格 |
EQA(メルセデス・ベンツ) | 66.5kWh | 782万円 |
EQB(メルセデス・ベンツ) | 66.5kWh | 822万円~ |
RZ450e(レクサス) | 71.4kWh | 880万円 |
900万~1000万円台
車種(メーカー) | バッテリー容量 | 価格 |
iX3(BMW) | 80kWh | 922万円 |
EQC(メルセデス・ベンツ) | 80kWh | 991万円 |
i5(BMW) | 83.9kWh | 998万円~ |
iX(BMW) | 76.6kWh | 1098万円~ |
Audi Q8 e-tron(アウディ) | 95kWh | 1099万円~ |
1100万~1400万円台
車種(メーカー) | バッテリー容量 | 価格 |
EQE(メルセデス・ベンツ) | 90.6kWh | 1248万円 |
タイカン(ポルシェ) | 79.2kWh | 1286万円~ |
Model S(テスラ) | 未公表 | 1296万9000円~ |
Model X(テスラ) | 未公表 | 1446万9000円~ |
Audi e-tron GT (アウディ) | 93.4kWh | 1494万円~ |
1500万円台以上
車種(メーカー) | バッテリー容量 | 価格 |
I-PACE(ジャガー) | 90kWh | 1517万1000円~ |
EQS(メルセデス・ベンツ) | 107.8kWh | 1578万円~ |
i7(BMW) | 105.7kWh | 1598万円~ |
電気自動車(EV)の価格はバッテリー容量で大きく変わる
そもそも電気自動車(EV)の価格はどのように決まっているのでしょうか。実はEVとエンジン車では、価格を左右するポイントが異なります。
EVはバッテリー容量が大きいものが高額になる
EVでは、バッテリー容量が大きくて航続距離の長いものが、高額になる傾向があります。
エンジン車の場合、最高出力や最大トルクといったエンジンの性能が、価格に大きく影響しています。ですが、EVには加速力やレスポンス、動きのスムーズさが高水準で備わっているため、これらの指標はエンジン車ほど重要ではありません。
そのため、「自分は最高出力などの性能をさほど気にしないから」とエンジン車のような感覚で安いEVを購入してしまうと、航続距離が足りず、日常使いで不便を感じることになりかねません。
EV購入時には、自分の用途に合ったバッテリー選びが大切
そして、バッテリー容量は、EV選びの最も大切なポイントでもあります。
なぜなら、バッテリー容量が航続距離を左右するからです。そのため、日常的に長距離を移動する人がバッテリー容量の少ないEVを選んでしまうと、自宅や外出先で頻繁に充電しないといけなくなり、やや不便です。一方で大容量バッテリーを搭載しているEVなら、より長い航続距離を一気に走行することができます。
ただし、必ずしも大容量バッテリーを搭載したEVを購入するのが正解とは限りません。大切なのは、自分の用途に合った本当に必要なバッテリー容量の車種を選ぶことです。ただし、同じ車種であっても、グレードによってバッテリー容量が異なる場合もある点に注意が必要です。
バッテリー容量が大きすぎると短距離の移動時にも重いバッテリーを運ぶことになり、購入時の車両価格は高額になります。かといって容量不足のものを購入すると、長距離移動の際により多くの急速充電を行う必要が生じます。日常的な航続距離や充電環境、長距離ドライブの頻度や急速充電(経路充電)を面倒と感じるかといった条件を考慮して、必要十分なバッテリーサイズの車種を選ぶのが賢明です。
充電器の設置費用もセットで考える
また、EVを快適に利用するためには、自宅や会社といった日常使いをする駐車場に充電設備を設置することが望ましいです。そのため、EVの価格を検討するなら、車両価格だけでなく充電器の設置費用もセットで考えましょう。
車種によっては、充電器の設置費用の一部をメーカーやディーラーが負担してくれるケースもありますので確認してみてください。
補助金や税制優遇、電気(充電)代など、費用はトータルで考えよう
また、EVの購入や所有コストを決めるのは車両価格だけではありません。補助金や税制優遇といった制度のほか、電気代などのランニングコストにも目を向け、トータルで費用を考えることが大切です。
EVの補助金
2023年度に国が用意している補助金は「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」で、上限額は85万円となります。
ただし、実際に交付される補助金の金額は、購入するEVの車種やグレード、給電機能の有無などによって変わります。
また、国の補助金以外に、地方自治体が独自に補助金を実施している場合もあります。地方自治体の補助金は国の補助金と併用できることも多いため、あらかじめ確認しておきましょう。
基本的に、各種の補助金は予算上限に達すると受付終了となります。現在、申請を受け付けているのかどうかなど、詳細情報については以下の記事をご覧ください。
【あわせて読みたい記事】
▶︎電気自動車(EV)の補助金は上限いくら? 国や自治体の制度、注意点を解説
EVの税制優遇制度
さらにEVはエンジン車と比べて、税制優遇制度も手厚いです。具体的には「グリーン化特例」と「エコカー減税」という、2種類の税制優遇制度の恩恵を受けることができます。
グリーン化特例は、車の燃費性能や環境性能に応じて、新車登録年度の翌年度分の自動車税が軽減される制度です。軽減率は購入する車の区分や購入時期によって変わりますが、EVの場合は概ね75%が軽減されます。
エコカー減税は、排出ガス性能及び燃費性能に優れた車に対して、性能に応じ自動車重量税の軽減が受けられる制度です。2026年4月30日までの間に、新車登録等を行った場合に適用されます。軽減率は自動車燃費基準の達成割合に応じて変化し、EVの場合は新車登録時と初回車検時(継続検査)の自動車重量税が免税されます。
加えて、車の取得時に車の環境性能に応じて納める税金である「環境性能割」は、自動車取得税に代わり新設されたものですが、EVの場合非課税となるため納める必要はありません。
EVの税制優遇等に関する詳細は、以下の記事をご覧ください。
【あわせて読みたい記事】
▶︎電気自動車(EV)の税金はいくらおトク? 税制優遇の具体例を紹介
電気自動車(EV)は将来、安くなる?
前述のように、1、2年前に比べ、EVの価格帯はバリエーションを広げながらも、400万~600万円台の“大衆車”がボリュームゾーンとなっています。そんな中、注目したいのは、ヒョンデやBYDといったメーカーの動向です。
2022年の販売台数で世界第3位のヒョンデは、今後10年間で109.4兆ウォン(約12兆円)を投資し、2030年までにEVをグローバルで年間200万台販売する目標を掲げています2)。日本市場には2022年5月に再参入し、「IONIQ5」をオンラインで販売しています。
一方、中国発のBYDは車載用バッテリーメーカーとして世界シェア3位3)を誇ります。同社は、LFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーの弱点を克服したブレードバッテリーを開発4)。コストパフォーマンスにも優れたこのバッテリーを搭載することで低価格のEVを実現させています。
ヒョンデの「IONIQ5」は479万円~、「KONA」は約399万円~、BYDの「DOLPHIN」は363万円~、「ATTO3」は440万円、といずれも500万円を切るスタート価格で、補助金を活用すればさらに手ごろな価格で購入できます。2メーカーの躍進を見るに、今後こうした“手に取りやすい価格帯”のEVでの競争が激化することが予測されます。
参考資料
2)Hyundai Mobility Japan「Hyundai、2023 CEO Investor Dayにて『Hyundai Motor Way』戦略によって、加速する電動化と将来のモビリティ目標のための進路を設定」
3)SNE Research「Global Top10 Battery Makers’ Sales Performance in 2022」
4)BYD「BYD Manufacturer Stories. vol. 1ブレードバッテリーのひみつ」