電気自動車用バッテリーの寿命はいつ? 交換や値段、仕組みについて解説

電気自動車(EV)を上手にライフスタイルにとり入れるためには、EVの心臓部ともいえるバッテリーについて最低限の知識を持っておくことが大切です。エンジン車にもバッテリーは搭載されていますが、EVのバッテリーとどう違うのか。容量や電圧などの基本的な仕組みから、劣化や交換といった使用する際の疑問、さらに長持ちさせる方法(乗り方)について解説します。

 

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EVのバッテリーに寿命はある? 交換目安は?

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画像:iStock.com/ golubovy

まずは、そもそもEVのバッテリーに“寿命”というものがあるのか、またある場合にはその目安をどうやって判断すればいいかを説明します。

結論から先に言うと、EVのバッテリーは正確には“寿命”というような完全に使えなくなる状態にはならず、徐々に劣化していきパフォーマンスの低下が発生します。その状態をいわゆる“寿命”と表現しています。

① EVのバッテリーの基礎知識

寿命について確認する前に、まずはEVのバッテリーについて、役割や種類、容量などの基礎知識を確認しておきましょう。

【基礎知識その1】EVには2種類のバッテリーが搭載されている

駆動用バッテリーと補機用バッテリー

 

EVには、役割が異なる2種類のバッテリーが搭載されています。ひとつは、走るためのエネルギーを供給する「駆動用バッテリー」です。最近発売されるEVのほとんどで、駆動用バッテリーには大容量のリチウムイオン電池が使われています。最高出力や一充電航続距離など、EVの自動車としての性能の多くは、この駆動用バッテリーの性能や容量によって決まると言ってもいいくらい重要な役割を果たしています。

もうひとつが、エンジン車と同様に12Vの直流電気を供給し、ライトを点灯したり、オーディオ機器やパワーウィンドウを動かしたりといった操作の動力源となる「補機用バッテリー」です。エンジン車とちがい、EVには大容量の駆動用バッテリーがあるのに、どうして補機用バッテリーが必要なのでしょうか。

大きな理由は「安全」のためといえます。EVに搭載されている駆動用バッテリーはおおむね数百ボルトの高電圧仕様です。そのため、メインスイッチ(EVの駆動システム)をオフにしているときは、駆動用バッテリーから電気が流れ出さないように、補機用バッテリーとは切り離して安全性を高めているのです。

また、車の電装品はもともと12Vという小さな電気で動くように作られており、消費電力の変化が激しい電装品に、わざわざ駆動用バッテリーから電圧を下げた電気を送るのは効率が悪いという理由もあります。

 

 

【基礎知識その2】EVのバッテリーの種類

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画像:iStock.com/ Petmal

バッテリーにさまざまな種類があることはご存じでしょう。EVやPHV・PHEVの駆動用バッテリーに使われているのは、ほとんどが「リチウムイオン電池」です。また、外部から充電ができないHVにはこれまで「ニッケル水素電池」が使われていました(現在はHVもリチウムイオン電池になりつつあります)。そして、12Vの補機用バッテリーには、エンジン車と同様、EVでも「鉛蓄電池」が使われているのが一般的です。

なぜ、いろんな電池が使い分けられているのでしょうか。おもな理由は「エネルギー密度」と「価格」にあります。

〈図〉バッテリーの種類と「エネルギー密度」「価格」の関係イメージ図

バッテリーの種類と「エネルギー密度」「価格」の関係イメージ図

エネルギー密度とは、一定の重さの電池の中に、どれくらいの電力を蓄えることができるかを示す性能です。「鉛蓄電池<ニッケル水素電池<リチウムイオン電池」の順にエネルギー密度は高くなります。

一方、エネルギー密度が高い電池は、それだけ高価になる傾向があります。つまり、エネルギー密度に比例して「鉛蓄電池<ニッケル水素電池<リチウムイオン電池」の順に価格が高くなっていくのです。

リチウムイオン電池が現在のように使いやすくなる前は、自動車メーカーが試作したり、試験的に販売するEVにも駆動用バッテリーとしてニッケル水素電池や鉛蓄電池が搭載されたりすることがありました。しかし、リチウムイオン電池が進化して性能が向上し、価格も抑えられるようになってきたことから、最近市販されるEVにはリチウムイオン電池を搭載するのが主流になっています。

リチウムイオン電池の中にも、おもに電極に使う素材によってさまざまな種類があります。現在の中心となっているのは、電極にコバルトなどを使った「三元系」と呼ばれる電池です。ほかには、コバルトを使用せず安価に製造することが可能な「リン酸鉄」と呼ばれる電池も注目度が高まっています。ただし、安価なリン酸鉄の電池は三元系に比べてエネルギー密度が低く、低温時に性能が低下する傾向があるなど、種類によって一長一短があるのが現実です。

また、リチウムイオン電池には形状による種類もあります。おもな種類としては、テスラなどが採用している「円筒型」、日産リーフなどが採用している「パウチ型(ラミネート型)」、レクサス『UX300e』などが採用している「角型」に大別できます。

〈図〉リチウムイオン電池の種類

リチウムイオン電池の種類

今後は、さらにエネルギー密度などの性能が向上し、価格を抑えたリチウムイオン電池の開発が進んでいくと見込まれています。

【基礎知識その3】EVのバッテリーの容量

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画像:iStock.com/ Vertigo3d

EVが搭載している駆動用バッテリーの容量(総電力量)は、一般的に「kWh(キロワットアワー)」という単位で示されます。急速充電器やモーターの出力を示す単位「kW(キロワット)」と、表記が似ていて混同しやすいので注意しましょう。「kW」と「kWh」は、次のような数式で求めることができます。

〈表〉出力と総電力量を求める数式

出力=kW=電圧(V)×電流(A)
総電力量=kWh=出力(kW)×時間(h)

ほかにもバッテリー容量を示す単位としては、EVのカタログなどに「Ah(アンペアアワー)」という単位で示されていることがあります。電池の電圧は決まっているので、仮に「100Ah」の容量をもった電池からは「100Aの電力を1時間取り出し続けることができる」ことになります。

「kWh」で示す総電力量も、一般的には「Ah」と同じ「バッテリー容量」と呼ばれることが多いので少しややこしいですね。とはいえ、電費を示す際には「6km/kWh」や「150Wh/km」など、「kWh」基準が使われることが多いので、「容量=kWh」と理解しておくといいでしょう

EVの駆動用バッテリーは、エンジン車におけるガソリンタンクのようなものとよく言われます。たとえば、先に説明した40kWhの日産リーフより、62kWhのバッテリーを搭載した『リーフ e+』のほうが、一回の充電でより長距離を走ることができます。

また、バッテリーには「どのくらいの電力を一気に出し入れできるか」という性能があり、この性能が優れているとより高出力でモーターを回したり、より高出力での急速充電に対応することができることになります。つまり、EVのバッテリーは「エンジン車におけるガソリンタンク」というだけでなく、まさにエンジン(動力源)そのものと評することさえできる、とても重要なパーツであることがわかります。

 

 

駆動用バッテリーが「上がる」ことはある?

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画像:iStock.com/ juniorbeep

エンジン車と同じように、EVの補機用バッテリーに使われる鉛蓄電池に蓄えた電気がなくなってしまうことを「バッテリーが上がる」と言うことがあります。一方、駆動用バッテリーの電気がなくなってしまった場合は「上がる」ではなく「電欠」と呼ばれることが一般的になってきています。はたして、バッテリーが「上がる」や「電欠」とは、どういう状態のことなのでしょう。

EVのバッテリーの仕組み

一般的なリチウムイオン電池は「正極」と「負極」の間をリチウムイオンが移動することで、電気を出し入れすることができます。

〈図〉リチウムイオン電池の充電・放電時の流れ

リチウムイオン電池の充電・放電時の流れの図

リチウムイオン電池の充電・放電時の流れの図


一方で、鉛蓄電池は鉛の電極(正極と負極)の間を電子が行き来することで電気を出し入れします。電極や電気を運ぶ物質は違いますが、化学反応によって電気を得られるという基本的な仕組みは同じといっていいでしょう。

鉛蓄電池にしても、リチウムイオン電池にしても、バッテリーにどのくらいの電気を蓄えているかを判別する方法はいくつかありますが、「電圧」によって判別することも一つの手法です。電池にはそれぞれ定められた範囲の電圧があり、その上限に達すると「満充電」となり、電圧が下限まで低下してしまうと「上がる」状態や「電欠」の状態になってしまいます。

EVの駆動用バッテリーとして使われているリチウムイオン電池は、「セル」と呼ばれる小さめの電池を数多く組み合わせ、直列に接続することで、EVの駆動用システムが必要とする大きな電圧(現状では400V前後が主流)を得る仕組みになっています。

セルひとつの電圧はおおむね3.6~3.7Vほど。これが、たとえば2.7V以下になると「過放電」、4.2Vを超えると「過充電」(電圧の範囲などは電池によって異なります)になってしまいます。つまり、セル電圧2.7Vが電池残量「0%」、4.2Vが「100%」ということですね。

バッテリーが電欠したらどうすればいい?

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画像:iStock.com/xijian

エンジン車の場合、エンジンを始動するためのセルモーターをバッテリーの電力で動かします。したがって、バッテリーが上がるとセルモーターが回らずエンジンを始動できなくなってしまいます。

EVの場合、まず12Vの補機用バッテリーが上がってしまうと、システムを起動できなくなるので、エンジン車と同様に走ることができません。また、駆動用バッテリーが電欠すると、同様にそれ以上走ることができなくなってしまいます

エンジン車同様安全のためのマージンが設けられているので、メーターの電池残量表示が「0%」になった途端に止まってしまうことはありません。しかし、マージンを使い切ってしまうと当然のことながらまったく身動きできなくなってしまいます。

もし電欠してしまった場合、安全な場所に停車してJAFなどの救援を呼ぶしかありません。エンジン車でガス欠して救援を呼ぶと燃料を補給してくれることもありますが、EVの場合は「最寄りの公共充電スポットまで運んでもらう」のが一般的な対処法になっています。

メーターの残量ぎりぎりまで無理することは避け、早めの充電を心掛けるのをおすすめします。

 

②バッテリーの寿命とは

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画像:iStock.com/Dontstop

バッテリーの基礎知識をおさらいしたところで、あらためてバッテリーの“寿命”について説明します。バッテリーの性能状態を示す指標には、どのくらい充電されているかを示す「SOC(State Of Charge)」と、新品時に比べて満充電でどの程度の容量があるかを示す「SOH(State of Health)」があります。ともに、単位は「%」で表します。

前述のように、リチウムイオン電池の内部では電極などの素材が化学変化を起こすことで電気を蓄えることができます。充放電を繰り返すうちに素材が変質してしまうなどの原因によって、徐々に蓄電できる容量が減ってしまう、つまりSOHの値が低下する性質があり、容量が減ってしまうことが電池の「劣化」と呼ばれています。スマートフォンやノートパソコンなどにもリチウムイオン電池が使われているので「満充電にしても使える時間が短くなった」という感覚は多くの方に心当たりがあるでしょう。

SOHが低下して蓄電可能な容量が減少しても、すぐさま電池として使えなくなるわけではありません。したがって、バッテリーの「寿命」とは、「ユーザーが実用上の不便を我慢できないくらい容量が減ってしまった時」ということになります。

たとえば新車時のバッテリー容量が40kWhのEVで考えると、SOHが80%まで低下すると電池残量計(SOCを測定します)で100%まで満充電にしても32kWhの電力しか蓄えることができません。仮に、6km/kWhの電費性能で、40kWhの新車時には一充電航続距離が240kmだったEVも、計算上は「6km×32kWh=192km」しか走れなくなるということです。また、日常的な運転シーンで露骨に感じることは少ないですが、バッテリーの劣化が進むと瞬間的に放電可能な出力も低下して、走行性能の低下に繋がることがあります。

〈図〉新車時バッテリー容量40kWhのEVの航続距離の変化

〈図〉新車時バッテリー容量40kWhのEVの航続距離の変化

SOHが何%以下になったら、あるいは新車購入時から何年経ったら寿命という明確な基準があるわけではありません。とはいえ、大容量と高出力が求められるEVの場合、おおむねSOH70%程度を目安として、多くの自動車メーカーの保証制度が用意されています。

一点、補足しておくと、EVのトラブルで意外と多いのが、12Vの補機用バッテリーが寿命を迎えてしまうことなどによるバッテリー上がりです。前述したように、補機用バッテリーが上がってしまうと、EVは駆動システムの起動ができなくなってしまいます。定期点検時には、補機用バッテリーの容量(寿命)にも注意しておきましょう。

バッテリーの交換はできる?

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画像:iStock.com/Shutter2U

スマートフォンなどでは、劣化してしまった電池を交換するケースが少なくありません。では、EVの駆動用バッテリーも交換できるのでしょうか。

① EVのバッテリー交換は可能?

もちろん、EVの駆動用バッテリーを交換することは可能です。しかし、EVのバッテリーはエンジン車におけるエンジンのようなもの。エンジンも交換することはできますが、故障したエンジンを交換してまで同じ車に乗り続けるケースはそんなに多くないでしょう。

海外メーカーのなかには、急速充電の代わりにバッテリーを簡単に積み替えられる仕組みを用意しているところもあるので、バッテリー交換が非現実的とまでは言えません。とはいえ、駆動用バッテリーはEVを構成する最も高価なパーツでもあり、実際に交換すると高額の費用が掛かります

日常の使用に耐えられないほどバッテリーが劣化したEVでは、バッテリーを交換するよりも新しいEVに買い替える選択をするユーザーが多いのが現状といえます。

②バッテリーの保証期間とは?

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画像:iStock.com/RossHelen

ただし、EVやバッテリーの個体によっては、そんなに充電回数を重ねていない、あるいは走行距離は少ないのにバッテリーの劣化が進んでしまうケースがないとは言えません。そのため、EVを市販するメーカーでは、バッテリー容量が一定以下に減少した場合、無料で修理や交換を行って規定のバッテリー容量を確保する保証制度を設定しています。

たとえば、現行型の日産リーフ(40kWhと62kWh)の場合、電池の容量性能を12セグメントに区切られた容量計で表示していますが、「正常な使用条件下において新車登録から8年間または160,000kmまでのどちらか早い方において、容量計が9セグメントを割り込んだ(=8セグメントになった)場合、修理や部品交換を行い9セグメント以上へ復帰する」ことを保証しています。1)(※日産ではセグメントごとの容量は公表していませんが、9セグメントで約70%前後と推定されます)

保証の期間や走行距離、保証内容などはメーカーによって異なります。EVを購入する際には、念のためバッテリーの保証について確認し把握しておくのがおすすめです。また、中古車で購入する場合も、保証の内容が新車とは異なることがあるので、きちんと確認しておきましょう。

〈表〉車種別バッテリー容量保証の例

車種 期間と走行距離 (どちらか早い方が適用される) 保証容量
日産『リーフ』1) 8年または160,000km 9セグメント
レクサス『UX300e』2) 8年または160,000km 70%
テスラ『モデル3』 (スタンダードレンジ)3) 8年または160,000km 70%
ジャガー『I-pace』4) 8年または160,000km 70%
プジョー『e-208』5) 8年または160,000km 検査により、経年劣化以上の容量低下がみられた場合
メルセデス・ベンツ『EQA』6) 8年または160,000km 検査により、経年劣化以上の容量低下がみられた場合

表で示したように、日本国内で市販されるEVの多くが、バッテリー容量は「8年または160,000km(どちらか早い方が適用される)」まで「70%以上」を保証しています。また、各メーカー、車種によって、バッテリー容量以外にも期間や条件が異なるさまざまな保証制度が用意されているので、検討している車種については確認するようにしましょう。

 

 

③バッテリーの交換費用はいくらくらい?

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画像:iStock.com/baona

万が一、自費でEVのバッテリーを交換する場合、費用はどのくらい必要なのでしょうか。車種ごとのバッテリーの種類、容量などによって一概には言えませんので、あまり公表情報はありません。
ひとつの目安として、日産が実施している有償交換プログラムによると、新品バッテリーへの交換は、24kWhが71万5000円、40kWhが90万2000円(すべて税込)に4〜5万円程度の工賃がプラスされる価格となっています。また、再生バッテリーを使った電池への交換は24kWhが42万3500円、30kWhが48万円(すべて税込)プラス工賃という価格です。

家庭用の定置型蓄電池のほとんどはEVと同じリチウムイオン電池を使っており、日本での相場が工事費込で1kWh当たり20~30万円程度はすることを考えると、24kWhが71万5000円(約3万円/kWh)という価格はEV用の電池がそれ自体とても安いとも言えます。しかし、24kWhの中古車が70〜80万円前後で購入できることを考えると悩ましいところです。90kWhや100kWhといった大容量バッテリーであれば、当然、交換費用はさらに高額になります。

バッテリーの劣化を防ぐ方法ってあるの?

リチウムイオン電池が使っているうちに劣化してしまうのは避けられないことです。とはいえ、劣化して容量が減ってしまうと、航続距離などの性能に大きく影響するのですから、EVユーザーにとっては大問題。できるだけ劣化を防ぎ、バッテリーを長持ちさせるコツについて紹介します。

① ドライブするときのコツ

istock画像 運転する女性

画像:iStock.com/metamorworks

まずは走行時における、バッテリーを長持ちさせるためのコツを紹介します。

高速道路でもスピードは控えめに

EVのバッテリーは、急激に電気を出し入れするときに発熱します。そして、長時間バッテリーが高温になることは、バッテリー劣化の要因のひとつになります。そのため、スピードの出しすぎる走り方はおすすめできません。高速道路では法定速度を守ってスピードは控えめに走るようにして、バッテリー温度が上がりすぎないように留意しましょう。

電池の「おいしい範囲」を使う

リチウムイオン電池には、満充電に近づいていくと急速充電の受け入れ電力を抑える特性があります。そのため、急速充電を何度か行うような長距離ドライブをするときには、充電の速度が落ちたり、電池温度が上昇しやすくならないよう、バッテリー残量の「30~80%」目処に、電池が最も性能を発揮してくれる「おいしい範囲」を使って走るよう心掛けるのがおすすめです。
また、残量が少ない(目安としては20%以下程度)状態で急なアクセル操作などを行うことも、電池に負担をかけてしまいます。

②充電するときのコツ

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画像:iStock.com/Volodymyr Kalyniuk

つぎに、充電を行う際にできる、バッテリーを長持ちさせるコツを紹介します。

満充電で長時間放置しない

EVのリチウムイオン電池には、満充電で長時間放置すると高電圧の環境下で化学変化が必要以上に促進されるため、劣化が早く進んでしまう性質があります。

また、完全に「空」にしてしまうのもよくありません。日常的な充電時にはいつでも満充電にするのではなく、ドライブ時のコツである「30~80%」程度を目安に運用するのが、EVのバッテリーを長持ちさせるポイントです。たとえば「満充電にするのは長距離ドライブの予定がある前夜だけ」と決めてガレージでの充電量をコントロールするのが、上手なEVの活用法といえます。

また、バッテリーが高温を嫌うのは前述の通り。「炎天下の駐車場で何日も満充電放置」といった環境では、バッテリーの劣化がより早く進んでしまうことがあります。

なお、充電の回数はリチウムイオン電池の劣化を左右する要因ではありますが、高出力で行う急速充電よりも、3~6kWの出力でゆっくり行う普通充電の方がバッテリーにはやさしいとされています。

 

 

EVバッテリーの課題は、ライフスタイルの課題?

istock画像 EV車充電

画像:iStock.com/baona

EVは高過ぎる、EVは充電に時間がかかる、EVは航続距離が短い、などなど、「EVの欠点」とされる事柄は、すべからくバッテリーと深く関わる課題です。

しかし、価格については最近ではEV用の電池の価格が下がりつつあり、数年のうちには同程度のエンジン車より安価になるとも言われています。

給油に比べて充電に時間がかかるというのは、電池の性質上やむを得ないところがあります。しかし、たとえば長距離ドライブ途中の急速充電も必ず30分しなければいけないものではありません。目的地で充電できることがわかっていれば、途中の急速充電は10分程度にとどめておくなどという選択肢もあります。エンジン車では給油の度に「満タン」にするのが当たり前だった人も、EVでは「30~80%」を上手に活用するよう工夫するのがおすすめです。

航続距離についても、大容量バッテリーを搭載して一充電で400km以上走れるEVが数多くデビューしています。充電は休憩のついでにすればいいので、一気に400km走れてもまだ足りないというケースは、そんなに多くないでしょう。

バッテリーを大容量にすれば航続距離は延びますが、電池を増やす分だけ車重は重くなり、車両価格も高価になってしまいます。中国でバッテリー容量が小さく急速充電もできない安価なEVが大ヒットしているというニュースをご存じの方も多いでしょう。航続距離やバッテリー容量も、ライフスタイル=自動車の使い方を工夫することで、それほど大容量なものは必要ないと評価されているのです。

つまり、「EVのバッテリーの課題」とはエンジン車に慣れた私たちの「ライフスタイルの課題」と結びついており、今までのライフスタイルを振り返るいいきっかけになるかもしれません。

もちろん、より高性能で低価格なバッテリーの開発には、世界中の企業がチャレンジを続けています。バッテリーの進化がすなわちEVの進化に結びついていくことは間違いありません。

 

この記事の監修者
寄本 好則
寄本 好則

コンテンツ制作プロダクション三軒茶屋ファクトリー代表。一般社団法人日本EVクラブのメンバー。2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成。ウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開。電気自動車情報メディアや雑誌特集などに多く寄稿している。著書に『電気自動車で幸せになる』(Kindle)など。