2023年は「中古EV元年」かも。EVの中古車市場、果たしてどうなる?

EVの中古車

日本には車検制度があり、新車販売から3年を境に現行モデルの中古車が市場に溢れます。EVもまた然り。しかしバッテリーの経年劣化が危惧されたり、中古車購入時には補助金の恩恵が受けられないことなどから、EVの中古車はちょっと…と考える人が多いかもしれません。そこで今回はEVの中古販売現場から、市場の実情をレポートします。

Ev CArSの外観

 

埼玉県杉戸町にあるEv CArSは、全国でも珍しい中古EVの専門店です。屋内には日産「サクラ」やテスラ「モデルS」が並んでおり、いずれも売約済み。このことが物語るように、実はEVの中古車需要は引きも切らない状況なのだとか。

 

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法人需要を中心に、盛り上がりを見せつつある中古EV

EVの中古車

 

「弊社では新車も取り扱いできますが、圧倒的に中古EVの問い合わせが多い状況です。また個人もさることながら、法人のお客様からのお引き合いをかなりいただいています。ガソリン車からEVに切り替えると、ランニングコストが約3分の1になる。しかし新車価格はガソリン車より高めです。1台当たり500万円する新車のEVを営業車として5台揃えれば2500万円ですから。そこで有力な選択肢が中古車というわけです。中古車ならその3分の2か半額も可能です」

 

Ev CArSの社長の佐久間竜一さん

 

こう語るのが、社長の佐久間竜一さん。新車よりも中古車の方が導入コストが安いのは当たり前だが、購入時に補助金がないほか、バッテリーの劣化問題など、EVならではの心配もありそうですが、「そうでもないんです」と教えてくれたのが、同社の村辺多一郎さん。テスラの日本法人で中古車部門立ち上げを主導した経歴を持つ、中古EVのスペシャリストです。

 

実はそこまでバッテリーが劣化しない、最近のEV

Ev CArSの村辺多一郎さん

 

村辺さん「テスラの場合、実はバッテリーを10%劣化させるのに、30万km走行しなければならないとされているんです。年間1万kmの走行距離なら、ゆうに30年かかる。つまり状態のいい中古EVなら、そもそもほとんど劣化していないわけです。また確かに中古車は補助金が交付されませんが、もともと車両価格は新車より割安ですし」

Ev CArSでは、バッテリー診断機で損耗状況を確認して車両状態の情報として提示するとか。またメーカーによるメンテナンスや修理を確実に受けられるよう、保証継承をしっかり行うそう。バッテリーの現状とメーカーの保証継承の2点を押さえておけば、中古EVもガソリン車の中古車のように安心して乗ることができるようです。

佐久間さん「実はEVって壊れにくいんです。10万km走ってもぜんぜん壊れない。なぜなら、ガソリン車に比べて圧倒的に構成部品の数が少ないからです」

 

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個人の中古EVへの需要は、自宅の電源設備とセット

中古EV購入を検討するユーザーは、法人のみならず個人でも多いといいます。

 

EVの充電設備

 

佐久間さん「それはやはり、値段が安いからですね。その際に特徴的なのが、V2Hを設置される方が多いことかもしれません。とくに国のV2H補助金が始まった去年から個人の方の引き合いが増えました。弊社はもともとV2Hや太陽光発電の提供事業者です。テスラのパワーウォールなどさまざまな蓄電池を取り扱っていて、各選択肢のコストメリットをご説明しています。世界でもV2Hのような設備はかなり珍しい。災害が多い土地柄もあり、停電時の電源供給のためにEV購入を検討される方も多くいらっしゃいます。新車ではなく中古EVを選択することで、全体的な導入コストを安く抑えることができるわけです」

V2Hとは、EVやPHEVに搭載されるバッテリーを、自宅用の蓄電池として使えるようにする設備のこと。EVの購入に際しては、自宅の充電設備とセットの需要が多くあります。V2Hや充電設備といった付帯設備に対するサポート体制の構築も、中古EV普及のカギとなりそうです。

 

振り返ったとき、2023年は「中古EV元年」になるかもしれない

Ev CArSの看板

 

佐久間さん「そもそも弊社は太陽光発電や蓄電池などエネルギー設備を販売していました。その仕事の一環で、2019年に中国の深センに行って、JICA(国際協力機構)の講演を聞きました。街には多くのEVが走り、9割方の公用車がEVだと聞き、驚いたんです。いずれ日本もそうなるだろうと思い、市場調査を始め、各ディーラーを回りました。しかし正確にEVの導入メリットを答えられる人はいなかったんですね。そこで、我々が販売のプロになろうと考えたわけです」

専門の中古車販売店がなく、さらにEVならではの活用方法があり、そのうえ価格が安く抑えられる中古車市場は、今後大きな盛り上がりを見せそうです。

 

Ev CArSの社長の佐久間竜一さんと村辺多一郎さん

 

村辺さん「私たちは、この1~2年が『中古EV元年』になると見ています。というのも日本でEVの普及に一役買ったテスラ『モデルS』発売・納車から8年経ち、ちょうど8年16万kmまでのメーカー保証が切れます。また『モデル3』は発売が4年前で、メーカー保証が4年ですから、ちょうど今年切れます。それに4年乗れば、補助金を返納する必要がなくなります。まさに今、手放す方が殺到している状況なんです」

 

下取り価格は割安=中古EVは買いやすい状況

手放すことを考えているユーザーはもちろん、新車購入を検討している人にとって気になるのは、なんといっても下取り価格でしょう。EVの中古車市場全体が黎明期であり、割安な状況だとか。

 

EVの中古車

 

佐久間さん「たとえば日産『リーフ』などは、ディーラー主導で値付けしています。というのも正規中古車販売店がもっとも多く在庫を持っているため、その値付けが市場価格になるからです。とはいえ現時点では、EVのリセールバリューはまだ安い状況です。しかしEV中古車店がどんどん増えていけば、この先上がっていく可能性がありそうです」

裏を返せば中古のEVは今年から多く出回り始め、かつお買い得な状況であるということ。買う側にとってのメリットが大きい状況がうかがえます。

 

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中古EV購入はメンテナンス視点も大事。インフラ整備に期待

佐久間さん「ですからまさに『中古EV元年』なんですよ。そこで弊社では村辺が主導し、フランチャイズ事業を始めています。全国から75社ほど見学に来て、今のところ28社の手が挙がっています。全国にEv CArSができれば、それこそインフラになります」

佐久間さんによると、正規ディーラー以外でEVを購入した際、ユーザーにとって大きな不安要因のひとつがメンテナンスなのだとか。中古EVを購入する際、アフターケアの可否は購入店舗を見極める大事なポイントになりそうです。

 

テスラの中古車

 

村辺さん「中古EVであっても、購入希望のお客さまのエコ意識は高く、また情報感度も高い印象です。ご自分で調べられるリテラシーがある方なら、安心して購入いただけることでしょう。そして一度快適さを知ると、絶対にハマっちゃうのがEVです」

中古市場の追い風を受けて、EVの知識を有する専門店は、同社のみならず今後も増えていきそうです。

 

【今回の取材先】
Ev CArS

Ev CArS


テスラ中古車在庫台数は日本トップクラスの品揃えを誇る、EV専門の中古車販売店。運営母体はエネカリサービス提携の電化設備事業者なので、充電設備やV2Hに関する知識も豊富。店舗は再生可能エネルギー100%で、ソーラーのカーポートも設置予定。

https://evcars.shop

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
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