EV(電気自動車)に興味があっても、未知への不安からエンジン車からの買い替えを決断できない人は多いことでしょう。しかし、元サッカー日本代表の槙野智章さんは、まだEVがめずらしかった約6年前に、日本上陸からまもないテスラ「モデルX」をいち早く購入。槙野さんは「テスラに6年以上乗ってきたが、EVを買って失敗したと思ったことは一度もない」と言います。
【今回の取材でお話を聞いた方】
槙野智章さん
元サッカー日本代表。2022年12月に現役引退し、現在はサッカー指導者、解説者、実業家として幅広く活動中。2017年にテスラ「モデルX 100D」を購入。2021年7月に自身のYouTubeチャンネルで公開した「モデルX」の紹介動画は、67万回以上も再生されるなど大きな注目を集めた(2023年7月時点)。
槙野智章さんがテスラ購入を決めた「3つの理由」
槙野さんがテスラ「モデルX」を購入したのは約6年前の2017年のことです。その当時、日本国内の新車販売に占めるEVのシェアは現在よりもずっと少ない0.5%程度1)で、公共充電スポットなどのインフラ整備もまだ不安視されている時期でした。
それでも、槙野さんは日本国内の販売が開始されたばかりのテスラ「モデルX」の購入を躊躇なく決めたといいます。
槙野さん「もともと起業家として名高いイーロン・マスク氏に興味があり、マスク氏がCEOをつとめるテスラに以前から注目していたんですね。そんなとき、テスラ初のSUV『モデルX』が国内販売されると聞いて、僕もテスラに乗ってみたいと思ったんです」
槙野さんがテスラを選んだ理由はそれだけではありません。「人と違う車に乗りたい」という思いもその理由のひとつでした。
槙野さん「プロスポーツ選手が乗る車と聞くと、多くの人はメルセデス・ベンツやポルシェ、BMWなどを思い浮かべると思います。たしかに、クラブハウスの駐車場に行くと、そうしたエンジン車の高級車がズラリと並んでいます。僕自身も、以前は独自のカスタムを施したポルシェ『カイエン』に乗っていました」
しかし、上陸まもないテスラに乗れば、欧州プレミアムブランドの車に乗るほかの選手と“被る”ことはなく、また、多くの人が想像する「スポーツ選手の愛車」のイメージも覆すことができます。
槙野さん「サッカー選手というのは子どもたちの憧れであり、夢を与える存在ですから、僕らが最先端のEVに乗るのは意味があることだと思います。実際、この車に乗り始めると、最初はチームメイトの多くが『なぜEV?』という反応でしたが、1〜2年後には『俺もEVに乗りたい』と話す人が増えていきました」
さらに、最後となる3つめの理由がEVのコスト面です。槙野さんは「モデルX」を購入する少し前、結婚してご自宅を新築しているのですが、その家に太陽光パネルを設置するなど、EVに乗ることも想定して建てたものだったそうです。
槙野さん「太陽光発電でつくった電気でEVを充電すれば、走行にかかるコストをかなり削減できます。また、EVは購入時に補助金を利用することができ、税金の優遇措置もあります。単に人と違う車に乗りたいというだけでなく、ランニングコストの安さなどもしっかり考えて『モデルX』を購入しようと決めました」
【あわせて読みたい記事】
▶電気自動車(EV)は太陽光発電と相性抜群! 一緒に使用するメリットを解説
テスラを充電する時間は自分自身の充電にもなる
とはいえ、槙野さんがテスラに乗り始めた2017年当時はEVの台数がまだ少なく、充電スポットもそれほど認知が広がっていなかった段階です。不便さは感じなかったのでしょうか。
しかし、槙野さんは「テスラに乗っていて何か困ったり、充電環境にストレスを感じたりしたことは一度もない」と言います。
槙野さん「高速充電できる『ウォールコネクター』というテスラの充電器を当時所属していた浦和レッズの練習場に設置していましたし、2021年にヴィッセル神戸に移籍したときも、練習場にウォールコネクターを設置することを契約条項に盛り込んでいたんです。だから日々の充電に困ったことはまったくないですね」
もちろん、槙野さんがEVに乗るのは自宅と練習場の往復だけではありません。とくに現役引退後はさまざまな仕事で長距離を移動し、公共充電スポットを利用する機会が増えたはずです。
そんなときは、テスラならではとも言えるNetflixなどのビデオストリーミングやゲームプレイといったエンターテインメント機能をうまく活用し、充電時間を有意義に過ごしているそうです。
槙野さん「最初は充電が面倒くさいと思いましたが、その30分程度の充電時間って、いつもはせかせか急いでいる自分自身をクールダウンさせたり、普段できないことをする時間に充てたりできるので、めちゃくちゃ重要だなと気がついたんです。充電時間というのはEVだけでなく、自分自身の充電にもなるんですよ」
ひと息をつく時間が重要だと気づけたのも、テスラという最先端のEVに乗っているおかげだと槙野さんは言います。
槙野さん「普通の車は購入したときがマックス(もっとも車が新しくてよい状態)ですが、テスラはWi-Fi経由でソフトウェアがアップデートされ、新しい機能が次々と増えていきます。車自体は同じなのに、どんどん新しくなっていくんですよ。車を買い替えたような感じにもなって乗っていてすごく楽しいし、だから6年乗っていても飽きないんです」
槙野さんがテスラ「モデルX」の次に買う車とは?
従来のエンジン車からEVに買い替えることについて、槙野さんはガラケーからスマホへの移行になぞらえてこう説明します。
槙野さん「みなさんが使う携帯電話は、いまはスマホのほうが圧倒的に多いじゃないですか。でも、思い返すと、ガラケーからスマホに移行するとき、みんな最初は恐る恐るだったはずです。あるいは周囲がスマホにしたからと自分も替えてみたり…。エンジン車をEVに買い替えることも、それとよく似ていると思います」
新しいものを取り入れるときは、誰でも不安なことやマイナス面ばかりを考えてしまいがちです。しかし、槙野さんはアスリートらしく、「ネガティブなことばかり考えていたら、新しいことに挑戦することも、前に進むこともできません」と話します。
槙野さん「失敗するのが怖いという気持ちはよくわかります。でも、僕自身はEVを買って失敗だったと感じたことは一度もありません。6年前にEVに乗り始め、いまもエンジン車に戻ることなくEVに乗り続けている。それが答えではないでしょうか」
ちなみに、槙野さんはすでに新しい愛車を注文済みで、ついに6年乗り続けた「モデルX」を乗り換えるそうです。その新しい車とは、テスラ「モデルX Plaid(プラッド)」。そう、同じ車種の最新モデルです。たしかに「それが答え」なのかもしれません。
【あわせて読みたい記事】
▶連載:EV REAL LIFE 〜EVオーナーに直撃インタビュー〜