電気自動車の4WDのおすすめは?自動車ジャーナリストが推奨する10車種

新緑の中を走るEVの4WD

 

eチャージバナー

 

 

EV(電気自動車)の普及とともに、各メーカーのラインナップに4WD(四輪駆動)モデルも増えてきました。山間部や寒冷地などにお住まいのユーザーには「4WDのEV」が気になる人も多いでしょう。そこで、モータージャーナリストの岡本幸一郎さん監修のもと、4WDのEVの特徴やメリット、国内で購入できる4WDのEVのおすすめ車種をEV DAYS編集部が紹介します。

4WDの電気自動車の特徴とメリットを解説!

EVの4wdが走る様子

画像:iStock.com/ferrantraite

 

このところSUV系だけでなく、欧州メーカーを中心に高級車やスポーツカーにも4WDを採用したモデルが増えています。では、「EVの4WD」にはどのような利点があるのでしょうか。おすすめの車種の前に、まず4WDのEVの特徴とメリットを紹介します。

 

4WDは前輪駆動や後輪駆動より走行安定性が高い

高速道路

画像:iStock.com/IGphotography

 

4WDはひと昔前までトヨタ「ランドクルーザー」やジープ「ラングラー」のような本格的オフロード車のみでしたが、現在は山間部や積雪地に住む人々にとって日常の足となる“生活四駆”と呼ばれるコンパクトカーやミニバンまで幅広く設定されています。

いずれも「滑りやすい路面や悪路を走る車」とのイメージです。もちろんそれも正解ですが、じつは4WDには舗装路を走るうえでも大きなメリットがあります。それは「走行安定性の高さ」です。

FWD(前輪駆動)やRWD(後輪駆動)は2つの車輪で路面に駆動力を伝えますが、4WDは4つの車輪に駆動力を分散させて走行します。FWDやRWDに比べて1つのタイヤがそれぞれ受け止めるパワーが少なくなるのでスリップしにくく、横に曲がろうとするタイヤの力にも余裕が生まれるので、車両の挙動が乱れにくく、より安定して走れるようになるのです。

FWDやRWDを問わず、こうした2WDに対する4WDの優位性は雨の日に停車状態から発進するときに少しアクセルを強めに踏んだだけでもわかります。とくに最高出力が500馬力を超えるハイパワー車では、4WDでなければタイヤがパワーを受け止めきれず、タイヤが空転して乗りづらくなるので、安定性や安心感をより実感できるはずです。

 

 

「EV」+「4WD」には数多くのメリットがある


電気を使ってモーターで走るEVにとって、4WDはとても相性のいい駆動システムです。たとえば、FWDのエンジン車を4WD化する場合、トランスミッションからリアのデフ(デファレンシャルギア)まで、床下に配置したプロペラシャフト(車体中央を前後に走る回転軸)を通じて駆動力を後輪に伝えるのが一般的です。

センターサポートベアリング付きSUVカードライブシャフト

画像:iStock.com/Toa55

 

一方、EVの場合は駆動方式を問わず、駆動すべき車輪の近くにモーターを搭載すればいいので、プロペラシャフトで前後をつなぐ必要がなく、エンジン車の4WDのようにセンタートンネルで室内スペースを犠牲にする必要がありません。つまり、4WDのEVはエンジン車に比べて室内空間を広く確保することができるのです。

また、車が発進した瞬間から最大トルクが発生するEVは、4つの車輪にパワーを分散させることのできる4WDと組み合わせることで、さらに安定性や安全性が向上します。

なかにはフロント2モーター、リア1モーターの計3モーターを搭載した4WDのEVもいくつか存在します。フロントの2つのモーターは左右の車輪それぞれの駆動を担当して左右のトルクをコントロールします。それにより、旋回性能が向上して安定した車両姿勢の制御が可能となるのです。

 

 

4WDのEVは車両価格が割高で航続距離も短い?


このように4WDには数多くのメリットがありますが、デメリットがないわけではありません。たとえば、そのひとつがFWDやRWDに比べて車両価格が高くなる傾向があることです。

4WD化するためのコンポーネントを搭載するためのスペースが必要になるほか、その分のコストもかかり、それらはもちろん車両価格に反映されます。そのため、現状では一定以上の車格のEVにしか4WDは採用されていません。また、4WDは車重が重たくなるので、FWDやRWDに比べて電費の面では不利になります。

 

 

eチャージバナー

 

4WDの電気自動車の現行車種はどれくらいある?

具体的に4WDのEVの現行車種がどれくらいあるかを見てみましょう。2023年5月時点で、日本国内で購入可能な4WDのEVは国産車・輸入車を合わせておよそ24車種あります。

 

国産EVの4WDはトヨタや日産などの4車種

レクサス「RZ」

レクサス「RZ」

 

4WDの国産EVはまだそれほど多くなく、現在は4車種の4WDモデルがラインナップされています。

〈国産車の4WD設定のあるEV〉※メーカー50音順

車種 価格
スバル「ソルテラ」1) 638万円〜
トヨタ「bZ4X」2) 650万円(リースのみ)
日産「アリア(limited)」3) 予約受付終了
レクサス「RZ」4) 880万円〜

※価格は各メーカーの公式サイトより。すべて税込価格です。

 

ただし、4車種のうち、スバル「ソルテラ」とトヨタ「bZ4X」は基本的なメカニズムを共有する兄弟車です。また、2023年3月に発売されたレクサス「RZ」は、「bZ4X」と一部を共有しつつも、より強力なモーターをフロントに搭載するほか、内外装も別物に仕立てられています。

スバル「ソルテラ」

スバル「ソルテラ」

 

なお、日産「アリア」は「B6 e-4ORCE limited」「B9 e-4ORCE limited」の2モデルの4WDをラインナップしていましたが、limitedモデルの予約受付はすでに終了しており、通常のカタログモデルは今後の発売が予定されています。

 

 

輸入車は4WDが約20車種とラインナップ豊富

アウディ「Audi Q8 e-tron」

アウディ「Audi Q8 e-tron」

 

輸入車のEVはもともとの車種が多いため、国産車のEVに比べると4WDモデルも豊富です。また、以下の表を見ればわかるように、価格が1000万円前後する高級車ほど4WDのラインナップが多く、高性能車ほど4WDのシステムが進化しています。

〈輸入車の4WD設定のあるEV〉※メーカー50音順

車種 価格
アウディ「Audi Q8 e-tron」5) 1099万円~
アウディ「Audi Q8 Sportback e-tron」6) 1317万円~
アウディ「Audi e-tron GT」7) 1494万円~
アウディ「Audi RS e-tron GT」8) 1899万円~
ジャガー「I-PACE」9) 1005万円~
テスラ「モデルS」10) 1296万9000円~
テスラ「モデルX」11) 1446万9000円~
テスラ「モデル3」12) 646万1600円~
テスラ「モデルY」13) 679万7600円~
BMW「iX」14) 1098万円~
BMW「iX1」15) 698万円~
BMW「i4」16) 1132万円~
BMW「i7」17) 1710万円~
ヒョンデ「IONIQ 5」18) 589万円~
ポルシェ「タイカン」19) 1489万円~
ポルシェ「タイカン クロスツーリスモ」20) 1364万円~
メルセデス・ベンツ「EQB」21) 906万円〜
メルセデス・ベンツ「EQC」22) 991万円~
メルセデスAMG「EQE」23) 1922万円~
メルセデスAMG「EQS」24) 2372万円~

※2023年5月25日時点の価格

 

2WDと4WDの両方をラインナップしている車種において、2WDモデルは廉価版という位置づけになっています。車両価格が比較的高い輸入車のEVでは、今後は4WDモデルが中心となり、2WDはベースグレードのみというラインナップになっていく可能性もあります。

 

 

4WDの電気自動車のおすすめ10車種

上記の4WDのEV約24車種のなかから、モータージャーナリストの岡本幸一郎さんがおすすめする10車種を「国産車」と「輸入車」に分けてそれぞれ簡単に紹介していきましょう。

 

【国産車編】4WDのEVのおすすめ4車種

トヨタ「bZ4X」

トヨタ「bZ4X」

 

スバル「ソルテラ」とトヨタ「bZ4X」は、そつなくつくられているのでやや面白味に欠けていますが、いずれも完成度の高い4WDのEVです。兄弟車と言ってもスバル版とトヨタ版で装備や足回りなどの味つけが異なり、それぞれのメーカーの車づくりの考え方が出ているので、実際に乗り比べてみるといいかもしれません。

また、「bZ4X」とは別物に仕立てられたレクサス「RZ」も、4WDのEVとして注目の一台と言えるでしょう。

日産「アリア」

日産「アリア」

 

高出力モーターを前後に搭載し、大容量のバッテリーを搭載して長い航続距離を実現した日産「アリア B9 e-4ORCE」は、「アリアB6 2WD」の上位車種です。先進性を感じさせる内外装デザインに加えて、モーターの出力とブレーキ制御を緻密に統合制御する「e-4ORCE」により卓越したハンドリングを楽しむことができます。

 

 

【輸入車編】4WDのEVのおすすめ6車種


前述のように、輸入車のEVでは2023年5月時点で約20車種の4WDがラインナップされていますが、発売予定の車種含めおすすめ車種を6車種に絞って紹介します。

ポルシェ「タイカン Turbo S」

ポルシェ「タイカン Turbo S」

 

2019年に登場したポルシェ初のフル電動スポーツカーの「タイカン」は、ベースモデルを除いてすべて4WDで、出力の違いにより「4S」「ターボ」「ターボS」があります。もちろんEVなので実際にターボが搭載されているわけではありません。ターボというのは高性能ポルシェの象徴としての名称です。

どのモデルもポルシェらしく「期待に応えてくれる実力」を備えており、価格は高くてもそれだけの価値がある車です。なお、EVのモーターは走行時にほぼ無音ですが、ポルシェはユーザーのために「フェイクサウンド」のオプションを用意しています。

 

 

テスラ「モデルY」

テスラ「モデルY」

 

テスラ車は基本的にどのモデルも完成度が高く、なかでも「モデルY」はコンパクトなボディと500万円台から購入できる価格が魅力のEVです。上位グレードとなる2モーター4WDの「モデルYロングレンジ」は、航続距離が605kmと長いのでとても使いやすく、また、テスラ独自の急速充電網「スーパーチャージャー」を利用できるという点もポイントでしょう。

 

 

メルセデス・ベンツ「EQB」

メルセデス・ベンツ「EQB」

 

メルセデス・ベンツ「GLB」のEV版となる「EQB」は、国内で唯一の3列シートを備えるEVで、その4WDモデルが「EQB 350 4MATIC」です。もともと「GLB」自体のパッケージが優れているため、ミニバン的に利用できるなど非常に使い勝手がよく、また“メルセデスクオリティ”もしっかり備えるのが特徴です。

 

 

BMW「i4」

BMW「i4」

 

BMW「i4」は「4シリーズ グランクーペ」のEV版で、EVとしては比較的めずらしいクーペスタイルが特徴です。エンジンで名を馳せたBMWらしく、EVでありながら内燃エンジンの吹け上がりに通じるドライビングプレジャーを感じさせます。4WDの「i4 M50」は1000万円オーバーの高級モデルですが、そのパフォーマンスはさらに高価な「M3セダン」「M4クーペ」に勝るとも劣りません。

 

 

ヒョンデ「IONIQ 5」

ヒョンデ「IONIQ 5」

 

手が届きやすいEVで言うと、ヒョンデ「IONIQ 5」の最上位グレード「IONIQ 5 ラウンジAWD」も非常によくできた4WDのEVです。また、「ラウンジAWD」は最上位グレードながら600万円を切る価格なので、比較的手が届きやすいはずです。

 

 

BYD「SEAL」

BYD「SEAL」

 

2023年中に発売が予定されているBYD「SEAL」も注目の4WDのEVと言えるでしょう。セダンタイプのEVですが、そのスポーティなスタイルはどこかポルシェ「タイカン」を彷彿とさせます。また、BYDが搭載するリン酸鉄リチウムイオン電池は安価で耐久性が高く、コストパフォーマンスも優れています。

 

 

4WDの電気自動車は中古で購入できるの?

EVのカギ

画像:iStock.com/Toa55

 

4WDはEVのなかでも高価な車種が多いので、「安い中古車で購入できたら」と思う人もいるかもしれません。もちろん中古車のEVを購入するのも選択肢のひとつですが、問題はEVの中古市場がまだ小さく、4WDは“タマ”がほとんどないことです。

EVは新車購入時に補助金が利用できますが、これは「4年間所有すること」が前提となっています。補助金を使って新車のEVを購入し、4年経たずに売った場合は補助金を返納しなければなりません。だから高年式のEVの中古車はほとんどないわけです。

現実的にEVの中古車が増えていくのは、現在新車で販売されている車種の“補助金縛り”が終了する3、4年後以降になると予測されます。なお、その際にはバッテリーの劣化を心配する人もいるかもしれませんが、3年や5年で大幅な劣化を心配する必要はあまりないでしょう。

むしろ、エンジン車と比べて部品点数が少なくエンジン熱の影響もないEVは、劣化が少ない車とも言えます。

 

eチャージバナー

 

せっかくEVに乗るなら4WDを選んで損はない

4WDのEVには設計の自由度の高さによる運動能力や、そのパフォーマンスを安全に操ることのできる安定性があります。せっかくEVに乗るのであれば、4WDを選んで損はありません。

山間部や積雪地にお住まいの人だけではなく、ガソリン車からの買い替えを検討している人、少しでもEVに興味ある人は、アクションを起こして4WDのEVに乗ってみてください。きっとEVという車がもつ良さをより味わうことができるはずです。

 

 

この記事の著者
岡本幸一郎
岡本 幸一郎

1968年富山県生まれ。父の仕事の関係で幼少期の70年代前半を過ごした横浜で早くもクルマに目覚める。学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作や自動車専門誌の編集に携わったのちフリーランスへ。これまで乗り継いだ愛車は25台。幼い二児の父。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。