一般的に電気自動車(EV)の車両価格はガソリン車に比べて高く、日本ではまだ車種も少ないのが実情です。そのせいでEV導入に二の足を踏んでいる人もいることでしょう。しかし、EVの維持コストは充電方法などによって想像以上に低く抑えることができますし、補助金制度や減税措置があり、購入コストを抑えることも可能です。EVのメリット・デメリットについて、実際に利用して感じた意見を交えて解説します。
- EVは環境へのメリットが大きい
- EVの6つのメリット
- EVの4つのデメリット
- 「EVのデメリット」だと誤解されている、3つのこと
- EVとの違いは? 「HV」「PHV」「FCV」のメリット・デメリットも確認
- 現時点でもメリットは多い。今後の進化にも期待しよう
注:本記事で「電気自動車(EV)」と表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しており、PHVやFCVとは区別しています。
EVは環境へのメリットが大きい
ニュースなどでEVが取り上げられる機会が増えてきました。日産が新型電気自動車『アリア』を発表したり、ホンダ、トヨタ(レクサス)、マツダなど国産自動車メーカーから相次いで登場したり、海外の自動車メーカーからも続々と新型車が発売されたりしています。
「未来の車」だったEVが、どんどん「身近な存在」になっているのです。 なぜEVが世界的に注目されているのでしょうか。その答えは「カーボンニュートラル(炭素中立)」にあります。
「脱炭素社会」の実現にEVが不可欠
世界各国で大きな課題となっているのが気候変動(地球温暖化)への取り組みです。CO2(二酸化炭素)の排出量が増えたことで、地表の温度が上昇し、異常気象などのさまざまな悪影響を引き起こしているとされています。そこでCO2排出量の削減が急務となっているのです。
気候変動への取り組みとして、世界は今「カーボンニュートラル」へ向かっています。カーボンニュートラル(炭素中立)とは、CO2の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になること。化石燃料を使用せず、太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーを使用すれば、理論上はCO2排出量と吸収量は同じになります。世界が目指しているのは、CO2を排出せずに暮らしていける「脱炭素社会」の実現です。
カーボンニュートラルには車の電動化が欠かせません。動力に電気モーターを使えば走行中にCO2を排出せず、その電気を再生可能エネルギーで発電すればカーボンニュートラルを実現できます。そうした理由から、近年は世界中でEVに注目が集まっているのです。
2015年に国連で採択されたパリ協定に沿って、日本を含む先進各国が「2050年までのカーボンニュートラル」を宣言しています。「脱炭素社会」を実現するためには、EVを普及させることが不可欠なのです。
EVの最大のメリットは「ゼロ・エミッション」で走れること
なぜEVは走行中にCO2を排出しないのでしょうか。従来の車はエンジンを搭載し、ガソリンなどの化石燃料を燃やして走っていました。CO2を排出しながら走ることは避けられません。
一方、EVはエンジンではなくモーターで走ります。化石燃料は使わないので、CO2だけでなく、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素化合物)、PM(粒子状物質)などの大気汚染物質を出さないことから、ゼロ・エミッション・ビークル(ZEV:Zero Emission Vehicle;排出される大気汚染物質〈≒エミッション〉がゼロの乗り物)とも呼ばれます。
〈図〉ガソリン車とEVの違い
走行中のゼロ・エミッションは、EVならではの強みであり、最大のメリットです。EVが普及することによって車の走行による大気汚染を抑えることができるのです。
もっとも、いくら走行中はゼロ・エミッションでも、「車を走らせる電気を火力発電所で作っていたら意味がない」との意見もあります。さらに、EVはバッテリーを製造するときに多くのエミッションを発生させるという見方もあります。しかし、少しずつですが、現在は発電や製造時の脱炭素化が進んでいます。あらゆる段階でカーボンニュートラルの実現を目指して進んでいるのが、今の世界の潮流です。
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EVの6つのメリット
ここからはEVに乗ることのメリットを考えてみます。実際にEVを所有し、使っている経験からお話しすると、EVに乗るメリットには大きく分けて次の6つがあります。
(メリット1)高級車のような乗り心地
まずEVに乗って感じるのは走行中の静かさです。モーターは「ヒューン」という音をわずかに発生するだけで、ガソリン車のような騒音はありません。さらに良いのは振動も少ないことです。音や振動が少ない車は疲れにくいです。遠方に出かけても意外なほど体の疲労が少ないのです。
力強い加速もEVの魅力です。ガソリン車は、エンジンの回転数をある程度上げないと加速できませんが、モーターは走り出した瞬間に最大の回転力(トルク)を発生するため、アクセルを少し踏むだけでスムーズ&滑らかに加速します。さらに踏み込めば、スポーツカーのような加速感を楽しむこともできます。
音が静かで振動が少なく加速も力強い、というのは、ガソリン車の場合は高級車の特徴でした。これらの要素をすべて備える電気自動車は、本質的に従来の高級車に近い車と言えるでしょう。
〈図〉EVオーナー192人へのアンケート調査
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(メリット2)ガソリン車よりコストが低い
走行コストの低さもEVの大きなメリットです。自宅での普通充電(家充電)をメインに利用すれば、ガソリン代よりも電気代のほうが圧倒的に安くなります。ざっと試算したところ、その差は約2.6倍。燃費の悪いガソリン車からの乗り換えなら、3~4倍以上の差となるでしょう。
また、家充電は、「給油のためにガソリンスタンドに行く」という手間も省いてくれます。頻繁に給油していた人はこうした点もメリットに感じられるはずです。
(メリット3)各種の補助金・減税が受けられる
走行コストだけではなく、EVは購入コストも低く抑えられます。たしかにガソリン車などに比べると車両価格は高めですが、EVは購入時に国などから補助金を受けられるメリットがあるのです。
国が用意しているのが経済産業省の「CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金)」で、電気自動車(新車初度登録時に限定)購入時の補助金額は最大42万円となっています(ただし、4年間保有する義務が発生)。また、自治体がEVなどの環境性能に優れた車種への補助金を用意している場合もあります。
さらに、令和3年度には環境省と経済産業省が再生可能エネルギー電力や災害時の給電設備などの導入促進と合わせたEV導入への補助制度を実施することになりました。補助制度には条件などがあり、一般人には少々やっかいな申請も必要なので、購入時にカーディーラーなどで確認するのがおすすめです。
さらに、エコカー減税もあります。自動車取得税に代わって登場した「環境性能割」は、環境性能に応じて取得価額(≒購入・取得にかかった総額)の最大3%が課されますが、EVは非課税です。また、EVの場合、購入時にかかる重量税は免税(100%減税)、自動車税も、EVは購入時から登録翌年度分までが75%減税(東京都と愛知県では5年間免税)になります。たとえば、日産リーフX(40kWh)をモデルケースに見てみると、46万8500円も優遇を受けられるのです。
〈表〉日産リーフXの補助金・減税例
項目 | 減税額(減税率) | 補助金額 |
---|---|---|
重量税 | 3万円(100%) | |
自動車税(登録翌年度) | 1万8500円(75%) | |
環境性能割 | 非課税 | |
CEV補助金 | 42万円 | |
総額 |
46万8500円 |
※メーカー希望小売価格:381万9200円(税込)の場合。環境性能割は自家用登録(届出)の場合。2021年3月22日時点の情報です
EVの場合、自動車税はガソリン車のもっとも安い区分(排気量1000cc未満)と同額の年額2万5000円となるので、減税期間が終わったあとも税負担は少なくて済みます。
なお、基本的に各種の補助金は予算上限に達すると受付終了となります。現在、申請を受け付けているのかどうかなど、詳細情報については以下の記事をご覧ください。
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(メリット4)「エネルギー意識」が高まる
EVに乗っていると自然と「エネルギー意識」が高まります。
充電ひとつ取ってみても、「深夜の電気代が安いのはなぜか」「この電気はどのように作られたのか」と考えるようになります。
また、EVはガソリン車以上に走り方で燃費(電費:エネルギー消費)が変化します。急加速を繰り返せば、たちまちバッテリー残量が少なくなり、エアコンのオン・オフによっても残りの電力量で走れる距離が変わるのです。
「回生ブレーキ」もエネルギーを意識させてくれる機能のひとつでしょう。回生ブレーキとは、減速する際のエネルギーでモーターを発電器として使いバッテリーに充電する、EVならではのシステムのこと。つまり、長い坂道を下ると、走るほどにバッテリー残量が増えていきます。これは、エンジン車では体験できない感覚です。日産リーフ(24kWh)で富士山の5合目から麓まで下ったときなど、回生ブレーキによってバッテリー残量が約30%も回復したことがありました。
(メリット5)非常時の電源として使える
EVは容量の大きいバッテリーを搭載しています。たとえば、一般家庭の消費電力が1日平均で10kWhとした場合、バッテリー容量40kWhの日産リーフの場合、家庭で使う電力の4日分もの電力を蓄えられるバッテリーを搭載しているのです。
この大容量バッテリーは、非常時の電源として活用することができます。EVから電気を取り出す給電用機器があれば、家電などと直接繋ぐことが可能です。また、「V2H(Vehicle to Home)」と呼ばれる充放電機器を自宅に設置すれば、万が一停電が起きたとしても、自分が所有するEVを電源として、家庭内の電化製品が使えるようになるのです。
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(メリット6)メンテナンスのコストが低い
あまり知られていないことですが、EVはガソリン車よりもメンテナンスコストを低く抑えることができます。
エンジンを搭載していないため、当然ながらエンジンオイルの交換は必要なく、回生ブレーキが多用されることで、ブレーキパッドの消耗も少なく抑えられます。
オイル交換が不要なら、交換したオイルを廃棄物として処理する必要もありません。また、ブレーキが減りにくいというのは、粉塵の発生を減らせるということです。メンテナンスの手間やコストが省けるだけでなく、こうした面でもEVは環境にやさしいといえます。
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〈コラム〉EVなら夏場の「富士山マイカー規制」から除外される
富士山では、夏場に登山客や観光客が集中することによる交通渋滞を解消するため、「富士山マイカー規制」が実施されています。ところが、EVや燃料電池自動車(FCV)は規制の対象外となっていて、マイカーであっても通行OK(2020年度までの実績)なのです。
通行規制は富士山だけではありません。海外では、大気汚染による環境悪化や森林破壊を防ぐため、ガソリン車やディーゼル車の都市部・山間部への乗り入れを禁止する動きもあります。
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EVの4つのデメリット
ものごとにはメリットもあればデメリットもあるものです。メリットに比べれば数は少ないものの、EVにもガソリン車と比べて課題となっている点が存在します。実際に利用して感じた4つのデメリットを紹介しましょう。
(デメリット1)車種が少ない
日本の自動車メーカーから国内向けに発売されているEVは、日産リーフ、三菱ミニキャブ・ミーブ、ホンダe、レクサスUX300e、マツダ MX-30 EVの5車種しかありません(2021年2月現在、PHV・PHEVは除く)。
このうち、三菱ミニキャブ・ミーブは商用車で、ホンダeとレクサスUX300e、マツダ MX-30 EVは台数がとても少なく限定されていて、日本で選べる国産の乗用車EVは実質的にリーフしか選択肢がないといえる状態です。ガソリン車などでは人気である3列シートミニバンやSUV、冬でも安心な四輪駆動モデルなどが選びにくいのは、購入を考えている人にとってはデメリットでしょう。
輸入車の場合、国産車より車種は多いものの、おしなべて価格が高額です。テスラやメルセデス・ベンツ、ジャガー、アウディなどが発売しているSUVモデルは1000万円クラス。多くの人が気軽に購入できる車ではありません。
2021年には、日産から四輪駆動モデルもあるSUVのアリアが発売されることになっています。さらに、これから数年内に日本で購入できるEVの車種はどんどん増えてくることが予想できます。ただ、今の段階で、300万〜400万円台以下で買える車種と考えると、中古車まで含めても選択肢が少ないのが実状です。
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(デメリット2)充電に時間がかかる
わざわざガソリンスタンドに行かず、燃料を補充できるのはEVのメリットです。しかし、ガソリン車の給油が数分で終わるのに対し、EVの普通充電は数時間かかります。充電スポットにある急速充電器を利用する場合も30分が基準となっています。
ガソリン車のように「数分もあれば満タン」というわけにいかないのはEV購入を検討する人にはデメリットと感じるでしょう。
EVに乗り慣れたユーザーとしては、普通充電は「寝ている間に満タンにできる」から便利ですし、急速充電はロングドライブの休憩として過ごします。つまり、ガソリン車では当たり前だった「ガソリンタンクがほとんど空になるまで走って給油する」というスタイルから、「バッテリー残量を見ながら走り方や休み方を工夫する」といった、車の使い方の変化を受け入れることが大切になってきます。
充電に時間がかかるということよりも、こうしたライフスタイル変革を求められることが、ガソリン車の常識を基準とした場合のデメリットと言えるのかもしれません。
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(デメリット3)高速道路のSAで「充電渋滞」が起こる
ロングドライブの途中、高速道路SA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)の充電スポットで充電しようと思ったとしましょう。しかし、充電スポットの前には順番待ちのEVの列ができていて、1時間も待たされることに……。これが「充電渋滞」です。このようなことが時折起こることがあります。
これはEVのデメリットというより、最適な充電インフラの整備に関する問題です。SAの多くは、まだ急速充電器を1台しか設置していません。ひとつの充電スポットに複数台の急速充電器を設置したり、あるいは急速充電器をもっと高出力にするなど、充電インフラにはまだ課題もあります。
ただし、充電スポットの数そのものは比較的多くあります。コンビニエンスストアやショッピングモールの駐車場、カーディーラーなど、地域によってはガソリンスタンドよりも多いくらいです。
(デメリット4)EVを上手に活用するには充電の知識が必要
EVを上手に活用するには、電気や充電に関してある程度の知識があると安心です。
たとえば、出力3kWの普通充電器を使い、40kWhバッテリー搭載のEVを「バッテリー残30%」から「バッテリー残80%」まで、50%(20kWh)を充電するとします。その場合、頭の中で「20kwh÷3kw=6.67h」と計算し、「約6時間半の充電時間が必要だ」と判断しなければなりません。
〈図〉普通充電の計算式の例
外出先で急速充電器を使うなら別の考え方も必要になります。なぜなら、急速充電器は時間ごとの課金になるからです。また、時間あたりの料金は同じでも、「出力50kWの急速充電器」と「30kWの急速充電器」では充電できる電力量が単純計算で6割も違います。
このように、実際に運用する場合、電気の単位(kWとkWhの違い)、電力の計算方法、充電器の性質などは最低限知っておく必要があります。ほとんどが中学校の理科レベルの知識ではあるものの、苦手意識がある人は苦労する可能性はあります。
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「EVのデメリット」だと誤解されている、3つのこと
EVにネガティブな印象を抱く人は少なくありません。車体価格が高い、航続距離が短い、充電スポットが少ない……。このような思い込みから「EVに乗るのはハードルが高い」と考える人が多いようです。しかし、購入費用は補助金や減税措置で抑えられますし、最近のEVは航続距離も短くないのです。
日産リーフなら40kWhモデルでも航続距離は322km、62kWhモデルなら458kmに達します(WLTCモード※)。片道200km以上も走るような使い方をしなければ、途中で何度も充電しなければならないような不便さはありません。実際にEVに乗ってみれば、日本の平均的なマイカーの使い方の場合、外出先で急速充電をする機会はそれほど多くないことがわかります。
※WLTCとは、「世界統一試験サイクル」といわれる国際的な試験方法に基づいて測定されたデータのこと
また、公共の場所にある充電スポットも着々と増えており、ガソリンスタンドの6割に上る1万7740カ所となっています(2021年2月時点ゼンリン調べ)。この数を少ないと感じる方もいると思いますが、家充電をメインにする人の場合、これらの充電スポットはサブ的な位置づけです。つまり、そもそもガソリンスタンドと同程度の数が必要ではないのです。この問題は、EVの利用方法を知ることで解消されるでしょう。
さらに、よく指摘されるバッテリーの寿命に関しても、日産リーフに「8年16万キロ保証」がついていることからもわかりますが、問題になるほど短命ではありません。
〈表〉「デメリット」だと誤解されることが多いEVの情報一覧
誤解されている情報 | 正しい情報 |
---|---|
車体価格が高い | 400万円台以上の高価な車種が多いのは事実だが、各種補助金や減税、維持費用のメリットで、実際には自家用車を所有するためのトータルの費用は抑えられる。 |
航続距離が短い | 航続距離300km以上の車種も少なくない。日常的に1日で300km以上走るような車の使い方をする人やケースは多くない。 |
充電スポットが少ない | 全国の充電スポット数は1万7740カ所に上り、ガソリンスタンドの約6割。また、家充電する場合は外部の充電スポットの利用頻度自体が低い。 |
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EVとの違いは? 「HV」「PHV」「FCV」のメリット・デメリットも確認
環境にやさしい車は、EVのほかにハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)、燃料電池自動車(FCV)などがあります。これらの車はEVやガソリン車と何が違うのでしょうか。HVやPHV・PHEV、FCVのメリット・デメリットについても簡単に解説しておきましょう。
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Ⅰ.ハイブリッド車(HV)
【概要】
「ハイブリッド」という言葉は、異なる種類を混ぜ合わせる“混成の”という意味です。HVでは、“動力の混成”を意図しており、エンジンとモーターという2つの動力を利用して走行します。
電気モーターのみで走行を行う「シリーズ方式」や、エンジンと電気モーターの両方を使って走行する「パラレル方式」などがあります。
【メリット・デメリット】
HVはエンジンとモーターを組み合わせているため、ガソリン車と比べると燃費性能が良いというメリットがあります。また、EVほどではないものの、環境にやさしく、購入時に各種の減税措置が受けられます。もっとも、エンジンとモーターの両方を搭載するのは良いことだけではなく、車のシステムが複雑になるなどのデメリットがあります。
Ⅱ.プラグインハイブリッド車(PHV・PHEV)
【概要】
PHV・PHEVは、外部からの充電ができるHVのことです。外部充電で得た電力のみで走行できる距離が長い点がHVとの大きな違いです。
【メリット・デメリット】
大容量バッテリーとガソリンタンクを両方備えていて、トータルの航続距離が長いことが特徴です。電気だけで走れる距離も長いので、たとえば往復で30km程度の通勤に使うような場合、ほぼEVとして運用できること、そして休日のロングドライブでもバッテリー残量をさほど気にせずに走れる点が、PHV・PHEVの最大のメリットでしょう。もちろんHVと同様に、購入時に各種の減税措置が受けられます。
ただし、HVよりもバッテリーを大容量化しているため、その分だけ価格が高くなります。この価格の高さがPHV・PHEVの最大のデメリットでしょう。
Ⅲ.燃料電池自動車(FCV)
【概要】
水素は石油に代わるエネルギーとして注目されています。FCVは、この水素を高圧タンクに貯蔵し、化学反応させることで電気を発生させ、モーターで走る自動車です。EVのように外部充電するのではなく、水素スタンドで水素を充填・補給します。
【メリット・デメリット】
水素エネルギーの活用という点で将来性のある車ですが、水素を充填するスタンドは全国に100カ所程度しかなく、燃料電池が非常に高価だというデメリットがあります。天然ガスなどから水素を生成する際に多くのCO2を排出したり、超高圧で水素を充填するときに多くの電力を消費するといった、カーボンニュートラルの観点からの課題もあります。また、車種が少なく、現状の日本ではトヨタMIRAIとホンダ クラリティFCVの事実上2車種しかありません。現時点では使い勝手のいい車とは言い難い部分があります。
現時点でもメリットは多い。今後の進化にも期待しよう
ここまで読んでくださった方は、きっとEVの購入や所有に少しでも興味のある人でしょう。実際に購入を前向きに考えている人かもしれません。もし、ご自宅のガレージに充電器を設置できる環境であれば、「ぜひ一度、所有してみてください!」と背中を押したいと思います。EVがよく指摘される航続距離や充電スポットの問題は、実際に使ってみると「誤解だった」「工夫すれば気にならない」などと気づけることがほとんどです。
最もネックとなるのは、現時点の日本では選べる車種が少ないことでしょう。しかし、これからの時代、車種が増えていくことは間違いありません。自分が本当に欲しいと思えるEVの登場を待つのも選択肢のひとつです。これからますます、EVの進化に注目し、期待してください。