電気自動車(EV)には「走行コストが安い」「災害時の非常用電源に使える」など多くのメリットがあります。その一方、「車両価格が高い」「航続距離が短い」といったデメリットも指摘されます。そこでEVに乗っているオーナーたちの声を交えつつ、よくいわれるEVのデメリットの誤解や解消法について解説します。
※この記事は2023年6月26日に公開した内容をアップデートしています。
- 電気自動車とエンジン車との違いを簡単に解説!
- よく指摘される電気自動車のデメリット9つ
- EVオーナーに聞く! 実際に乗ってみてどうだったのか?
- 電気自動車のデメリットを解消する方法とは?
- デメリットばかりに目を向けず、EVの進化に期待しよう
電気自動車とエンジン車との違いを簡単に解説!
よくいわれるEVのデメリットは、EVとエンジン車との構造上の違いに起因している場合があります。そこで、デメリットを紹介する前に、まずEVとエンジン車の構造の違いを簡単に解説しましょう。
シンプル構造のEVはエンジン車よりコスト面で有利
EVを含む電動車両(電気を動力にして動く車両)とエンジン車の構造上の違いは、簡単に言うと、タイヤを駆動させるエネルギーを生み出すものとして「エンジンを使っているか」「モーターを使っているか」という点にあります。
日本で多く普及しているHEV(ハイブリッド車)の多くはエンジンとモーターを併用してタイヤを回転させています。ブレーキをかけたときの減速エネルギーから生み出した電気や、エンジンで発電した電気を使ってモーターを動かしています。
さらに、HEVのバッテリーを大きくして外部から充電できるようにした車両にPHEV(プラグインハイブリッド車)があります。このPHEVからエンジンや燃料タンクなどを取り除いたのがEVです。
EVは電気を使ってモーターで走行するのでエンジンを搭載する必要がなく、車の構造としてとてもシンプルです。エンジン車に比べて筋のいいメカニズムを持っていますから、本来的にはHEVなどに比べて車両価格のコスト面では有利なはずなのです。
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エンジン車に比べてEVの車両価格が高くなる理由
しかし、現実的にはEVの車両価格はエンジン車に比べて高く、その価格の高さがデメリットのひとつとされています。なぜエンジン車に比べてEVの価格は高い傾向にあるのでしょうか。
その理由のひとつは、EVが大容量のバッテリーを搭載しているからです。エンジン車の燃料タンクが金属や樹脂で作られた空洞なのに対し、バッテリーの内部は化学反応を起こす金属や液体などが満たされ、使用される素材には希少なものも少なくありません。
また、EVで実用的な航続距離 を確保するには、同じクラスのHEVやPHEVよりも多くのバッテリーを積む必要があります。現時点では希少な素材を使うバッテリーのコストがかさんでしまっているため、どうしてもEVの車両価格は高くなってしまう傾向にあるわけです。
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よく指摘される電気自動車のデメリット9つ
具体的にEVにはどのようなデメリットが指摘されているのでしょうか。単なる誤解であるものや、解消法があるものも含め、よくいわれるEVの代表的なデメリットを9つ紹介します。
デメリット①車両価格が高い
エンジン車との違いを理解するうえで、車両価格の高さはよく挙げられる項目です。EVとエンジン車の車両価格の違いを比較するときに、わかりやすい例となるのが軽自動車の価格帯です。日産のラインナップで比べてみると、軽EVの「サクラ」の価格帯が約260万〜308万円なのに対し1)、同クラスかつ同じプラットフォームを使っているエンジン車の「デイズ」は約144万〜200万円となっています2)。
世界的な経済状況の影響などにより、HEVもミドルクラスのSUVやミニバンの車両価格は軒並み400万円近くに上昇しています。EVだけが絶対的に高価な車というわけではありませんが、同クラスの車種で比べた場合、エンジン車よりもEVの価格のほうが高いのは事実でしょう。
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デメリット②車種が少ない
車両価格が高いだけでなく、EVはエンジン車に比べて「選べる車種」が多くありません。たとえば、コンパクトカーやハッチバック、SUVのEVはあるものの、国内で人気の高いスライドドアを採用したミニバンタイプのEVは国産車メーカー・輸入車メーカーを問わず、2024年7月時点で国内販売されていません。
EVはこれから普及していく車であり、また欧州や中国が市場を牽引するグローバル商品です。それらの市場ではミニバンのEVも存在しますが、より高級感のある大型SUVやセダンなどのほうが人気を集めています。現時点で国内導入されるEVの車種が少ないのは仕方ない部分があるのです。
デメリット③航続距離が短い
EVは1回の満充電で走行できる「航続距離がエンジン車に比べて短い」という指摘もあります。前述のように、構造的にはシンプルなEVの車両価格がエンジン車に比べて高い傾向にあるのは、バッテリーにかかるコストが高いからです。そして、EVのバッテリー容量というのは航続距離の長さにほぼつながります。
そのため車両価格を高くすれば、EVの航続距離を伸ばすことは十分に可能です。たとえば、日本国内で購入可能な車種を例に挙げると、車両価格1500万円台のメルセデス・ベンツ「EQS」の航続距離は700km、バッテリー容量は107.8kWhです3)。もっとも流通している車両価格400万円台の日産「リーフ」(40kWh)の航続距離が322km4)であることを考えると、バッテリー容量によっていかに航続距離が伸ばせるかがわかります。
そういう意味では、EVの航続距離はコストバランスを考えた結果として、ユーザーが「短い」と感じるレベルに現状は落ち着いているともいえるでしょう。
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デメリット④充電に時間がかかる
EVを運用するうえでのデメリットとしてよく指摘されるのが「充電に時間がかかる」という点です。たしかに自宅などで行う普通充電の場合、バッテリー容量や充電器の出力によっては、充電率20%から100%にするのにひと晩から丸1日程度かかることもめずらしくありません。
公共充電スポットの急速充電器を利用する場合も、多くのユーザーが30分程度かかると認識しています。仮に大容量バッテリーを積んで航続距離を伸ばしても、バッテリーが大きくなった分だけ充電時間も長くなりますから、ガソリンを給油するのに比べて時間がかかるという指摘はもっともな部分もあります。
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デメリット⑤充電スポットが少ない
充電に時間がかかる以前に、そもそも「公共充電スポットが少ない」との声もあります。ガソリンスタンドは年々減少し、逆に公共充電スポットは年々増加していますが、2023年3月末時点のガソリンスタンド数は日本全国で約2万8000カ所5)である一方、2024年3月末時点の公共充電スポット数は約2万2000カ所6)と、まだガソリンスタンドの方が多いのが現状です。
ただし、国は充電インフラの普及促進や規制緩和を進めていて、2030年の設置目標を現在の10倍にあたる30万口に引き上げることを発表しています7)。年々増加していることも踏まえて、都市部では「言われるほど少なくない」というのがユーザーの実感ではないでしょうか。
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デメリット⑥バッテリーが劣化する
航続距離や充電インフラの課題は、日常的な運用において指摘されることが多いデメリットですが、EVを長く使っていくうえでの課題として挙げられるのが「バッテリーの劣化問題」です。
多くのEVは駆動用バッテリーにリチウムイオン電池を採用しています。スマホもリチウムイオン電池を使っていますので(厳密には自動車用と異なる)、電池が劣化することでバッテリーの持ちが悪くなるという経験をしている人は多いでしょう。
そのためEVが搭載する駆動用バッテリーも購入から数年程度で劣化するのでは、と心配するユーザーが一定数いるようです。
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デメリット⑦リセールバリューが低い
このバッテリーの劣化問題への心配はEVのリセールバリューを悪化させる一因ともなっています。車種によって異なりますが、HEVであれば5年後のリセールバリューは新車価格の35〜50%程度が相場でしょう。しかし、EVのリセールバリューはそれを下回ると考えられます。まだ中古車の流通も少ない現状では、EVのリセールバリューが悪いというのはたしかにそのとおりかもしれません。
デメリット⑧車両火災が心配
EVのバッテリーにはもうひとつ、ユーザーの心配の種となっているものがあります。それは車両火災です。多くのEVが駆動用バッテリーに採用するリチウムイオン電池は衝撃や圧力などが加わると発熱や発火する可能性が指摘されており、その発火リスクは高性能なバッテリーになればなるほど高くなるとされています。
もっとも、実際には国内でも海外でもエンジン車のほうが車両火災の発生率は圧倒的に高く、国産EVにかぎればリチウムイオン電池に起因する火災事故はほとんど発生していません。
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デメリット⑨タイヤが摩耗しやすい
EVは大容量の駆動用バッテリーをフロア下に敷き詰めるように搭載していますが、このバッテリーは非常に重く、同クラスのガソリン車に比べて車両重量が重くなります。車両重量が重くなれば、その分大きな荷重がタイヤにかかってタイヤの摩耗が早くなり、タイヤ交換時期が早くなる可能性があります。
実際に車両価格と同様に日産の軽自動車でエンジン車とEVの車両重量を比較してみると、ガソリン車の「デイズ」はもっとも重いグレードの「ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション」でも車両重量が940kgなのに対し2)、EVの「サクラ」はもっとも軽い「X」グレードでも1070kgあります1)。
参考資料
1)日産「サクラ」
2)日産「デイズ」
3)メルセデス・ベンツ「EQS」
4)日産「リーフ」
5)資源エネルギー庁「令和4年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました」
6)GoGoEV「EV充電スポット数の推移【2023年3月~2024年3月】」
7)経済産業省「充電インフラ整備促進に向けた指針」
EVオーナーに聞く! 実際に乗ってみてどうだったのか?
こうしたよく指摘されるデメリットについて、実際にEVに乗っているオーナーたちはどのように感じているのでしょうか。EV DAYS編集部では今回、複数のEVオーナーにアンケート調査を実施。そのなかから、回答の多かった項目を紹介します。
購入前に心配したのは「EVの航続距離の短さ」
まず購入前に心配していたEVのデメリットから紹介しましょう。目立ったのは「航続距離の短さ」という声です。前述 のように、EVに指摘されるデメリットには「車両価格が高い」「車種が少ない」「バッテリーが劣化する」などがありますが、オーナーはエンジン車に比べると短い航続距離を心配していた人が多いようです。
それでは、実際にEVに乗ってみてそのデメリットはどうだったのでしょうか。いくつか回答をピックアップして紹介します。
■EVオーナーの声
「東京在住で半径100km以内の移動がほとんどなので、航続距離の短さは心配無用だった。遠出はゴルフがほとんどだが、ゴルフ場に充電設備があり、プレー中に充電できて助かっている」(東京都、50代、日産「リーフ」)
「普段の通勤や買い物程度ではまったく問題ないが、高速道路を使うような遠出では何度か充電が必要になる。ある程度事前に充電スポットを調べ、休憩等のタイミングと合わせて行動計画を何パターンか考えておくことで充電時間によるロスを抑えています」(三重県、30代、日産「リーフ」)
乗って感じたオーナーの声「外充電での待ち時間」
上記の回答にもあるように、「航続距離が短い」というEVのデメリットは「充電スポットが少ない」という心配にもつながります。購入前に心配していたデメリットとして「外出時の充電」などを挙げていたオーナーもいました。では、実際にEVに乗ってみて「充電待ち」や「充電に時間がかかる」というデメリットはどうだったのでしょうか。
■EVオーナーの声
「自宅外で充電したくても充電器を別の車が使用しており、待たされることが最近増えた」(東京都、50代、日産「リーフ」)
「最初のころは充電に時間がかかるのがデメリットだと思っていたが、慣れるにつれてその時間を別のことに使うのが日常になっていき、気にならなくなった」(埼玉県、50代、テスラ「モデルS」)
このように、充電待ちの時間をデメリットと感じるオーナーがいる一方、それを有効活用するポジティブなオーナーもいるようです。
電気自動車のデメリットを解消する方法とは?
よくいわれるEVのデメリットには事実もありますが、単なる誤解や、デメリットを解消する方法があるものも少なくありません。具体的な例を挙げながらそれぞれのデメリットについて解説していきます。
補助金を利用して「エンジン車との価格差」を解消
エンジン車の車両価格と比べた場合、軽EVでも1.5倍以上の価格差があると聞くと、たしかにEVを割高に感じるでしょう。しかし、EVの購入時には国や自治体の補助金を利用することができます。
たとえば、2024年度の国の補助金は、車種や性能、メーカーの取組みに応じて金額が異なりますが、軽EVで最大55万円、登録車のEVでは最大85万円の給付を受けられます。このほか、地方自治体に補助金が用意されている場合もあり、東京都では条件により異なりますが、最大35~95万円の補助金を受けられます。
たとえば、日産「サクラ X」の車両価格は約260万円ですが、東京都にお住まいなら国と自治体の補助金を合わせた交付額が基本でも110万円となり、実質的な負担は150万円以下になります。補助金ありきのコスト比較とはいえ、価格の高さがEVのデメリットとは一概にいえないわけです。
また、購入時・車検時についてもEVには税制優遇措置がありますので、エンジン車に比べると税金が軽減されます。さらに、走行コストの安さはもちろん、メンテナンスコストも、エンジンがないシンプルな構造のためエンジン車に比べると安くなります。こうした点も勘案すると、現時点でもエンジン車との価格差を埋めるほどのコスト面のメリットがEVにはあると考えられます。
EVの「航続距離の短さ」は大きな問題にならない
航続距離もそれほど心配する必要はありません。わかりやすいように再び日産「サクラ」を例に挙げますが、「サクラ」の満充電からの航続距離は180km(WLTCモード)となっており1)、短いと感じる人もいるかもしれません。しかし、軽自動車で片道100kmを超える距離を毎日移動する人がどれほどいるのでしょうか。
下の図のとおり、乗用車ユーザーの平日の平均走行距離は50kmまでが約95%を占め、平均すると約19kmです。休日でも50kmまでが約86%を占め、平均は約28kmです8)。
〈図〉乗用車ユーザーの平均走行距離(平日)
また「自宅充電」ができるというのはエンジン車との大きな違いです。自宅に200Vの充電コンセントなどを設置すれば、エンジン車のようにガソリンスタンドに立ち寄って給油する手間が必要なくなり、帰宅後に充電ケーブルを車につなぐだけでいいのです。
たしかに長距離を毎日移動するような使い方は難しいかもしれませんが、ビジネス用途でもルート配送のような業務なら、200km程度の航続距離があればEVでも事足りることが多いでしょう。
逆にいうと、仕事に使うにせよ普段使いするにせよ、ある程度計画的に利用できる環境でニーズを満たしているかぎり、EVの航続距離は多くの人が心配するような大きな問題にならないといえます。
充電時の待ち時間は「必要な分だけ充電」で短縮可能
移動ルートや充電プランを計画的に考えれば「充電に時間がかかる」というデメリットもほとんど気にならなくなります。前述 のように、基本的にEVは自宅などで普通充電器につないでおくことにより、ほとんどの充電ニーズをカバーできます。
また、国内の多くの急速充電器は「1回30分まで」と決められていますが、それは何がなんでも30分充電しなければいけないということではありません。
たとえば、職場からの帰り道に想定外の寄り道をしてバッテリー残量が心もとなくなった場合、帰宅すれば普通充電器につないで100%まで充電できるのですから、極端な話、数分だけ急速充電で補充すればいいのです。
そうやって割り切れば、外出先での充電の待ち時間は5~10分程度で済むでしょう。外出先では「必要な分だけ充電する」と頭を切り替えれば、充電の待ち時間はかなり短縮できるはずです。
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公共充電とガソリンスタンドの数はいずれ逆転する?
公共充電スポットとガソリンスタンドの数の差は着実に縮まりつつあります。ガソリンスタンドの廃業が続いている現状と充電スポット数の増加のスピードを考えると、近い将来に充電スポットとスタンドの数が逆転するのは確実で、充電スポットが少ないというデメリットはいずれ心配なくなると考えられます。
〈図〉公共充電スポットの設置数の推移6)
そもそも急速充電というのは、目的地に向かう途中や帰宅する途中にバッテリー残量が少なくなったとき、継ぎ足し的に利用する充電方法です。EV運用の基礎は「自宅充電」であり、日々のルーティンで走る道のりと航続距離のバランスさえ取れていれば、基本的には自宅充電だけでEVを走らせることも可能です。
公共充電インフラが整えばユーザーは安心してEVに乗ることができますが、多くのユーザーが車の性能を把握してバランスよくEVを使えば、大きな不便を感じることは少ないのかもしれません。
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バッテリーの劣化に対するメーカー保証が付いている
リチウムイオン電池の劣化は避けられないものですから、「バッテリーが劣化する」という心配については「劣化しない電池」の開発を待つしかありません。ただし、EVの量産が始まった10年前はともかく、現在のリチウムイオン電池はバッテリーマネージメントの進化などにより、実用上困るほどの劣化はしないようになっています。
さらに、EVの多くは製造から8年程度まではメーカーによってバッテリー容量の劣化に対する保証が付けられており、それよりバッテリーが劣化したときにはバッテリーパックを交換してもらえる場合もあります。バッテリーが劣化するのは事実ですが、必要以上に劣化を心配する必要はありません。
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EVの実質的リセールバリューはHEVと同等レベル
よくいわれる「EVはリセールバリューが悪い」というデメリットについても一部ミスリードな面があります。車の残存価値はメーカー希望小売価格から割り出しますが、EVの導入には現状補助金の活用が欠かせません。つまり、メーカー希望小売価格から補助金を差し引いた実質的な車両価格でリセールバリューを計算する必要があるわけです。
たとえば、400万円のEVを購入するのに110万円の補助金が交付されるとしましょう。この場合、実質的な車両価格は290万円となります。290万円のEVが5年後に仮に100万円で売れるとすれば、リセールバリューはおよそ25%から35%に上がり、HEVと同等レベルになります。そう考えると、補助金を活用すればEVの実質的なリセールバリューはそれほど低くないといえます。
バッテリーについては今後、劣化が抑制されるようなマネージメントやバッテリー技術の進化が期待できますから、EVのリセールバリューはこの先向上していくと考えるのが妥当かもしれません。
車重が重いとタイヤの減りが早いのはエンジン車も同じ
タイヤの減りが早いという点はどうでしょうか。大手タイヤメーカーのミシュランタイヤによると、「一般的にタイヤの特性として荷重が10%増えると摩耗度も10%増す」といい、エンジン車に比べて重量が重いEVがその点で不利なのは事実かもしれません。
しかし、エンジン車も排気量1.5Lのコンパクトカーと比較すれば3.0Lの大型SUVの車両重量は重く、その分タイヤの摩耗が早いことになります。つまり、「重量が重いとタイヤの減りが早くなる」というのは、EVだけでなくどの車にもいえるわけです。
最近は耐摩耗性能を高めたEV対応タイヤも登場しており、タイヤの減りについてもそれほど過剰に心配する必要はないでしょう。
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EVをエンジン車と同じ感覚で使おうとするとデメリットと感じる部分があるのは事実です。しかし、EVにはエンジン車と異なる運用方法があると考えれば、デメリットはけっしてウィークポイントではなく、メリットの裏返しであることが理解できるのではないでしょうか。
エンジン車に比べれば、さまざまな面でEVはハードルが高い車かもしれません。しかし、カーボンニュートラルを求める世界的な流れからすると、EV普及が加速することは確実で、そうなるとコストも抑えられるようになるでしょうし、インフラ整備も進むはずです。
化石燃料や合成燃料の価格次第では、ランニングコストの面でEVが圧倒的に有利になる時代がやって来るかもしれません。EVのデメリットばかりに目を向けるのではなく、EVの進化に期待して、納得できるタイミングでEVへシフトすることをおすすめします。