【2023年7月31日更新】世界では「ガソリン車の新車販売禁止へ」「100年に一度のエネルギー変革」などと言われ、日に日に電気自動車(EV)への関心が高まっています。しかし、まだまだ日本ではEVが広く普及していると感じにくい状況かもしれません。実際のところ、日本や世界各国ではどの程度、EVが普及しているのでしょうか? 自動車ジャーナリスト・桃田健史さん監修のもと、日本と世界のEV事情をまとめました。
この記事は2022年11月25日に公開した内容をアップデートしています。
- 【最新版】日本のEV普及率は年々上昇中
- 【最新版】海外のEV普及はさらに進行中
- EVの普及に向けた日本・世界の取り組み
- 【グラフで見る】日本・世界のEV普及率の変遷
- 日本の充電インフラの普及状況
- 【将来予測】今後のEV普及率はどうなる? 現在の課題とは?
- EV普及には、社会全体の変化と理解が必要
注:本記事で「EV」とのみ表現する場合、「BEV(Battery Electric Vehicle)」を意味しています。プラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)とは区別しています。
【最新版】日本のEV普及率は年々上昇中
Ⅰ.日本のEV普及率(2022年)
それでは、日本のEV普及率を見ていきましょう。
まずは2022年(1〜12月)の普及状況から確認します。一般社団法人 日本自動車販売協会連合会が発表している「燃料別販売台数(乗用車)」1)によれば、2022年(1〜12月)のEV(普通乗用車のみ。軽自動車は除く)の新車販売台数は、約3万1600台に上ります。
2020年が約1万5000台、2021年が2万1000台でしたから、伸長率は前年比約150%と大きく向上しています。なお、普通乗用車全体の販売台数が約222万台なので、EVの割合は全体の約1.42%です。
〈図〉2022年の燃料別新車販売台数(普通乗用車)の割合
販売台数 | 割合 | |
ガソリン車 | 93万8750台 | 42.2% |
HEV | 108万9077台 | 49.0% |
PHEV | 3万7772台 | 1.70% |
EV | 3万1592台 | 1.42% |
ディーゼル車 | 12万5200台 | 5.63% |
FCV | 848台 | 0.04% |
その他 | 64台 | 0.00% |
計 | 222万3303台 | 100% |
※HEV=ハイブリッド車、PHEV=プラグインハイブリッド車、FCV=燃料電池自動車のことを指します。
なお、この販売台数には軽自動車は含んでいません。2022年6月には軽EVである日産「サクラ」、三菱「eKクロス EV」が登場し、200万円台という価格で注目を浴びました。
全国軽自動車協会連合会2)によると、これらを含む軽EVは2022年内に2万7645台を売り上げており、普通乗用車のEVに迫るほどの台数となっています。
普通乗用車と軽自動車を合計した2022年のEV新車販売台数は5万9237台で、前年比の約2.7倍。新車販売の割合は約1.72%を占めており、右肩上がりで上昇しています(ちなみに、PHEVは3万7772台で約1.10%を占めます)。
Ⅱ.日本のEV普及率(2023年上半期)
では、2023年の動向はどうでしょうか。2023年の普通乗用車のEV普及率は、上半期(1〜6月)では2022年からさらに増えています。前述の同様のデータによれば、2023年上半期月のEV(普通乗用車)の販売台数は2万2857台となっており、販売台数に対して約1.67%を占めているのです。
さらに、軽EVの売れ行きも前年に引き続き多くなっており、上半期で2万5807台に上っています。そのため、軽EVを含めると、EVの売れ行きは昨年以上の伸びとなり合計販売台数が4万8664台、全販売台数(普通乗用車・軽自動車)に対するEVの割合は2.38%を占めています(ちなみに、PHEVは2万5163台で1.23%を占めます)。
残り6カ月でどれだけ売れ行きが伸びるか注目です。
〈図〉EV・PHEV月別販売台数・販売シェア(乗用車)の推移
【最新版】海外のEV普及はさらに進行中
次に、海外のEV(BEV)普及率を見ていきましょう。
Ⅰ.アメリカのEV普及率
アメリカの2022年(1〜12月)のEV(BEV)販売台数は81万466台に上り、普及率(新車の販売台数におけるEVの割合)は約5.8%となっています3、4)。2021年は約3.2%(約49万台)でしたから、かなりの伸び率だと言えるでしょう。
中でもテスラの販売台数の伸びは大きく、前年比48.2%増の52万2444台で、いまだに全BEVの6割以上を占めています。また、フォードやGM、ヒョンデなども本格的にBEVを投入したことで、消費者の選択肢が広がり、BEVの普及を後押ししたと言えます。
〈図〉アメリカにおけるEV(BEV・PHEV)・FCVのシェア
また、2023年のアメリカにおけるEVの普及率はさらに増える可能性があります。モーターインテリジェンスのデータによると、2023年1~6月(上半期)のEV(BEV)の新車販売台数に対する割合は約7.2%に上り、上半期だけで55万7000台以上の販売台数に至っているのです5)6)。
参考資料
3)日本貿易振興機構「2012年以来最低水準の新車販売 2022年米新車市場と2023 年見通し(前編)」
4)日本貿易振興機構「EVは前年から大幅に増加 2022年米新車市場と2023年見通し(後編)」
5)日本貿易振興機構「第1四半期の米自動車販売、供給回復で前年同期比7.8%増」
6)日本貿易振興機構「第2四半期の米新車販売、需給ともに好調で前年同期比2桁増、クリーンビークルは1.5倍」
Ⅱ.ヨーロッパのEV普及率
続いて、EV化に積極的と言われるヨーロッパを見てみましょう。
欧州自動車工業会(ACEA)の発表によると、2022年(1〜12月)におけるEU全体の新車販売におけるEV(BEV)のシェアは12.1%(約112万4000台)に上り、初めて100万台を超えました7)。2021年は9.1%だったことを踏まえると、さらに大きく躍進したといえるでしょう。
日本貿易振興機構によれば、躍進のきっかけとなったのは、欧州でのEV販売増加を牽引してきたドイツや北欧諸国などで、徐々にPHEVへの購入補助金制度が縮小され、PHEVより購入助成が大きいBEVが選択される傾向にあるためとされています。
なお、ヨーロッパの中でも国によってEVのシェアは大きく異なります。スウェーデンが30%、オランダやデンマークが20%を超える一方、スペインやイタリアは3%台に止まっています8)。
ちなみにEVの普及がもっとも進んでいる国としてノルウェーの名前がよく挙がりますが、ノルウェーでは2022年の新車販売台数におけるEVの占める割合は約79.3%に達しています8)。ノルウェーは国策としてEV普及を強く後押ししているほか、自動車メーカーがないため、ガソリン車からEVへの移行がしやすい、人口が少なく国民の理解を得やすい、といった背景もあるようです。
なお、ACEAによると、2023年1~6月(上半期)におけるヨーロッパ(EU・EFTA・英国)の新車販売におけるEVのシェアは約14.2%に上ります9)。PHEVの市場シェアも約7.3%となっており、依然としてEV化の波は続くと考えられます。
参考資料
7)日本貿易振興機構「EUの2022年の新車登録台数、BEVが初めて100万台超え(EU)」
8)ACEA「Fuel types of new cars: battery electric 12.1%, hybrid 22.6% and petrol 36.4% market share full-year 2022」
9)ACEA「New car registrations: +17.8% in June, battery electric 15.1% market share」
Ⅲ.中国のEV普及率
次に中国のEV事情も紹介しましょう。中国自動車工業協会(CAAM)によると2022年(1〜12月)のEV(BEV)の販売台数は約536.5万台で、前年の約291万台を大きく上回っており、これは販売割合の約20.0%に上ります10)。
また、2023年1〜6月(上半期)も約271.9万台を売り上げ、販売割合の約20.5%を占め、依然として高い水準を保っています11)。
中国ではPHEVやFCVを含む電動車両をNEV(New Energy Vehicle=新エネルギー車)と呼び、自動車メーカーに販売台数の一定割合をNEVにすることを義務付ける「NEV規制」を2019年から実施しています。中国は、自動車産業国としては後発であるため、EVを推進し、先進国と競争する力を得ようとしているのです。
このNEV規制における義務化割合目標は、2025年20%、2030年40%と、段階的に増やす方針を取っています12)。このボーダーラインに満たなかったメーカーは、他メーカーから超過分のクレジットを購入しなければならない決まりとなっています。実際クレジット購入を余儀なくされたメーカーも少なくありません。
参考資料
10)自動車産業ポータルMARK LINES「自動車販売台数速報 中国 2022年」
11)自動車産業ポータルMARK LINES「自動車販売台数速報 中国 2023年」
12)自動車産業ポータルMARK LINES「中国省エネルギー車・NEV技術ロードマップ2.0:グリーン社会に向けて炭素排出量を抑制へ」
EVの普及に向けた日本・世界の取り組み
ここまで、日本と世界の“EVの現状”を見てきました。ここからは、その少し先にある“EVのこれから”を見ていきましょう。
EV普及には、国の政策や方針が強力な推進力となるのは言うまでもありません。各国は下記のような車の電動化目標を立てて、取り組みを行っています。
〈表〉各国の電動化目標について
それでは、各国の政策や方針をそれぞれ確認してみましょう。
Ⅰ.日本の取り組み
日本では「2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を実現する」という方針が定められています。ただし、ここで言う“電動車”には、EVやPHEVだけでなく、HEVやFCVも含まれています。すべての車をEVにする、というわけではありません。
この方針は、経済産業省が2020年12月に関係省庁との連携で策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(以下:グリーン成長戦略)14)によるもので、2021年6月に改訂版が発表されました。
グリーン成長戦略の中では、「2030年までに急速充電器を今の4倍となる3万基を設置すること」などのインフラ整備を始めとして、税制優遇や研究分野への支援、国際連携などに触れられており、より具体的な戦略が打ち出されています。
このグリーン成長戦略は、自動車分野に限ったものではなく、エネルギー関連産業や半導体・情報通信産業などにも及びます。成長が期待されており、さらに温室効果ガスの排出削減につながる14の重要な産業分野が特定されており、総合的に経済成長と環境適合を考えていこうという趣旨なのです。
なお、グリーン成長戦略の改訂版発表から1年後にあたる2022年6月には「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」15)で、グリーントランスフォーメーション(GX)は「重点投資分野」のひとつに位置付けられ、2023年6月には脱炭素社会を実現する政策支援の裏付けとなるGX推進法が国会で成立16)。今後10年間で150兆円規模の投資を目指しており、再生可能エネルギーやEVの普及が後押しされる見込みです。
また、日本では都道府県などの自治体ごとでも、EVの普及に向けた取り組みを多く行っています。たとえば、東京都では「ZEV※普及プログラム」を掲げており、同じく2050年の脱炭素社会実現に向けて、車から排出されるCO2の実質ゼロを目指しています。具体的には、充電インフラへの支援や、EVへの補助金などを行い、EV普及を推進しています。
※ZEV=Zero Emission Vehicle(ゼロエミッション・ビークル)。走行時にCO2等の排出ガスを出さない、EVやPHEV、FCVのこと。
参考資料
14)経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴う グリーン成長戦略 5(2)⑤自動車・蓄電池産業」
15)内閣官房「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」
16)経済産業省「「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律の施行期日を定める政令」及び「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」を閣議決定しました」
Ⅱ.世界の取り組み
次に、世界の取り組みについて見ていきましょう。
ⅰ.アメリカの政策・方針
アメリカでは、バイデン大統領が2021年8月5日に「2030年までにアメリカ国内で販売する新車の50%以上を電動化する」17)という大統領令に署名し、政策が進められています。
これと同時に、ゼネラルモーターズ(GM)、フォードなどの自動車メーカー各社から、大統領令に沿って電動化の推進を加速させる旨の声明が発表され、本格的な電動化へと舵を切ることとなりました。なお、EVやPHEV、FCVは電動化車両に含まれますが、ハイブリッド車(HEV)は含まれないとされています。
また、2022年8月に成立した「インフレ抑制法(IRA)」に盛り込まれている、最大7500ドルにおよぶEV・PHEVの税額控除優遇策の厳しい要件が、大きな混乱を呼んでいます18)。
2023年3月末にアメリカの財務省と内国歳入庁が発表したところによると、税額控除の対象になるためには、車両の最終組み立てを北米で行うことを大前提に、バッテリーの材料・部品の調達先・製造を北米ならびにアメリカと自由貿易協定(FTA)を結んでいる国にすることなどが条件となりました19)。IRAが発表された当時よりは条件が緩和されましたが、依然として今後の動向が注目されます。
参考資料
17)日本貿易振興機構「バイデン米政権、2030年までに新車の半数以上をEV、FCVとする大統領令」
18)日本貿易振興機構「米インフレ削減法、EV税額控除の要件に各方面から見直し求める声」
19)日本貿易振興機構「米財務省と内国歳入庁、インフレ削減法のEV税額控除の規則案発表」
ⅱ.ヨーロッパの政策・方針
ヨーロッパは、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)により、「欧州グリーンディール」に関する法案が発表されました20)。
この中で、自動車分野については非常に厳しい目標が設定されており、その目標値はCO2排出量を「2030年までに2021年比で55%削減」「2035年までに2021年比で100%削減」となっています。つまり、事実上、2035年にはPHEV・HEVも含めてすべてのガソリン車・ディーゼル車が禁止されるということです。この新たなCO2排出基準については、ドイツから2035年以降も合成燃料(e-fuel)を使う内燃機関の利用を例外的に求めるよう提案が出され、EU理事会の支持を得て確定されました21)、22)。
参考資料
20)日本貿易振興機構「欧州委、温室効果ガス55%削減目標達成のための政策パッケージを発表」
21)日本貿易振興機構「EU、2035年の全新車のゼロエミッション化決定、合成燃料に関する提案が焦点に」
22)日本貿易振興機構「EU、乗用車・バンのCO2排出基準の新規則施行へ、電動化方針に変わりなし」
ⅲ.中国の政策・方針
中国は、前述のNEV政策を加速させていく方針です。具体的には、2035年までに「NEVの割合を50%以上」とした上で、そのうち「EVを95%以上にする」という目標23)を掲げています。また、NEV以外の残りの50%については、ガソリン車をすべてHEVとするとしています。
また、2023年末で終了としていたNEVの取得税減免政策を、2027年末まで延長することになりました24)。今後も、購入時の優遇策を通じて、普及を図っていくものと思われます。
参考資料
23)自動車産業ポータルMARK LINES「中国省エネルギー車・NEV技術ロードマップ2.0:グリーン社会に向けて炭素排出量を抑制へ」
24)ロイター「中国、新エネ車の取得税減免策を27年末まで延長 自動車株が上昇」
ⅳ.その他の国の政策・方針
その他の国の目標や政策も見てみましょう。
イギリスでは、2020年11月に「グリーン産業革命」25)が発表されました。「2050年までに温暖化ガス排出ゼロ」を目標とするもので、純ガソリン車・純ディーゼル車の新車販売禁止が、それまでに打ち出していた「2035年」から「2030年」へと前倒しされました。
「ガソリン車・ディーゼル車禁止」をいち早く打ち出した国として、インドが挙げられます。インド政府は2017年時点で「2030年までに禁止=完全EV化」と表明していました。しかし、政策の実行が思うように進まず、この方針は撤回され、現在は2030年までに乗用車新車販売の3割をEVとする目標を掲げています26)。
【グラフで見る】日本・世界のEV普及率の変遷
世界初の量産EVが発売されたのは2009年。車種は、三菱自動車の「i-MiEV」でした。また日産「リーフ」の登場は2010年末です。じつは、EVが私たちの身近な存在になってから、まだ10年ほどしか経っていません。
では、この10年の間に世界のEVはどれくらい増えたのでしょうか? わかりやすいようにグラフにして見てみましょう。
〈図〉2010年〜2022年における世界全体のEV・PHEV(乗用車)の保有台数推移27)
EVやPHEVの保有台数はここ10年で急激に増えていることは一目瞭然で、2020年には保有台数は1000万台を超えました。2021年は1500万台を、さらに2022年には2500万台を超えており、今後さらなる増加が予想されます。
とくに伸びが大きいのは中国とヨーロッパ諸国で、中国に至ってはEVだけですでに1000万台を超えています。日本にいると、なかなか普及していないと思われがちですが、グラフで見てみると、世界では急激に普及してきていることがわかります。
〈図〉2016〜2022年における世界各国のEV・PHEVの新車登録台数とシェアの推移27)
日本の充電インフラの普及状況
ここまでEVの普及状況について解説してきましたが、EV普及のためには充電インフラの普及も必要不可欠な要素です。充電インフラの状況についても確認してみましょう。
ゼンリンによれば、公共用充電設備はこれまでに全国で約3万基が設置されており、2023年3月時点で急速充電器が約9000基、普通充電器が約2万1000基の内訳となっています28)。
〈図〉日本における充電器設置基数の推移
日本では、前述の「グリーン成長戦略」のもと、「2030年までに公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置(遅くとも2030年までにガソリン車並みの利便性を実現)」を掲げて、充電インフラの普及促進や規制緩和を進めています28)。
2017年以降の設置基数は停滞傾向にありますが、EV普及と両輪で進む必要があるため、今後の普及をより一層推し進めていくことになりそうです。
【将来予測】今後のEV普及率はどうなる? 現在の課題とは?
Ⅰ.EV普及率の今後
昨今の世界中から発信される政策やニュースを見ると、世界は着々と「ガソリン車・ディーゼル車禁止」に向かって動いているように思えます。もちろん、低燃費・CO2削減のために車の電動化が進み、その中でもEVの普及率が高まっていくことは間違いないでしょう。
しかし、国や地域によってエネルギーインフラや社会情勢は大きく異なりますから、EVへのシフトが問題ない地域もあれば、ガソリン車やディーゼル車の方が適している地域もあります。たとえば、インドでは電線を勝手に分岐して不正に電気を得る”盗電“が多いため、このままEVを普及させるには不安要素が大きい状態でしょう。
また、資源採取~製造~流通~使用過程~廃棄・リサイクルまでの、LCA(ライフサイクルアセスメント)も考える必要があります。そういった様々な視点から考えると、全世界の車がすべて早い時期にEVに置き換わることは考えにくいでしょう。要は「適材適所」であることが重要なのです。
Ⅱ.EV普及の課題とは?
日本ではEV普及の課題として、EVの性能にフォーカスが当てられることが多いですが、年々性能は向上しており、実航続距離が300km以上ある車種も少なくありません。また、バッテリー容量の大きい車種も登場しており、普段使いで困ることはほぼないでしょう。
さらにバッテリーに関してはトヨタや日産が2020年後半に、従来より電池のエネルギー密度が高い全固体電池の量産を始めることを明らかにしています。バッテリーの性能が上がれば、航続距離が伸びるほか、急速充電への対応力が向上することでEVのデメリットと考えられている点を補うことができるようになるのです。
また、これまで日本でEV普及がなかなか進まない理由のひとつとして、車種の選択肢が限られてしまうことが挙げられていました。日本で手の届きやすい価格のEVといえば数車種に絞られてしまう、という状況だったわけです。しかし、前述通り、軽EVが登場したことで選択肢が広がりつつあります。
自動車メーカー各社はEV開発を推進しており、車種も急激に増えています。日本でも車種の選択肢がより増えていけば、EVはもっと身近になり、普及率も自然と高まっていくことでしょう。
EV普及には、社会全体の変化と理解が必要
この記事を今、あなたが読んでいるのは、「もっとEVについて知りたい」「わからないことが多い」と思ったからでしょう。その思いは、多くの人にとっても同じです。日本ではEVは本格的に普及していくスタートラインに立った段階なのです。
EVは私たちユーザーにとっても、自動車メーカーにとっても、日本政府にとっても初めてのことだらけです。また、車の歴史を振り返ってみても、「環境のために車の構造を変化させなければいけない」という局面は初めてのことです。そのため、ユーザーの意識はもちろんのこと、様々な技術の進歩やインフラ整備、政策もまだまだ発展途上です。
また、単純に「ガソリン車からEVに、というような車の種類だけが変わればいい」というものではないことも、EVシフトの難しいところです。スマートフォンやインターネットなど、他の技術革新のように技術が生まれたから自然と普及するのではなく、EVは普及のために車自体はもちろん、それに付随するインフラなどについても技術を磨き、導入しやすい環境を整える必要があるのです。
日本政府が打ち出している戦略はありますが、社会全体がEVを受け入れられるように変化していくことが、EVの普及には不可欠です。最近では、カーシェアリングなどで身近にEVを利用する機会も増えています。様々な発展とともに、私たちも少しずつEVのある生活に慣れていけば、自ずとEVの普及率も高まっていくでしょう。