【2021年】電気自動車(EV)の普及率はどのくらい? 「日本で普及しない」は本当?

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最近は「ガソリン車の新車販売禁止へ」「100年に一度のエネルギー変革」などと言われ、日に日に電気自動車(EV)への関心が高まっています。しかし、まだまだ日本ではEVが広く普及していると感じにくい状況かもしれません。実際のところ、日本や世界各国ではどの程度、EVが普及しているのでしょうか? 自動車ジャーナリスト・桃田 健史さん監修のもと、日本と世界のEV事情をまとめました。

 

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【最新版】日本・世界のEV普及率をチェック

Ⅰ.日本のEV普及率

istock画像 車の渋滞

画像:iStock.com/kokoroyuki

まずは、最新の日本のEV普及率を見ていきましょう。

一般社団法人 日本自動車販売協会連合会が発表している「燃料別販売台数(乗用車)」1)を見ると、2020年(1〜12月)のEVの新車販売台数は約1万5000台となっています。乗用車全体の販売台数が約250万台なので、全体の約0.6%がEVです。

〈図〉2020年の燃料別新車販売台数(乗用車)の割合

 

  販売台数 割合
ガソリン車 138万762台 55.70%
HV 92万275台 37.13%
PHV 1万4741台 0.59%
EV 1万4604台 0.59%
ディーゼル車 14万7503台 5.95%
FCV 761台 0.03%
その他 186台 0.01%

※HV=ハイブリッド車、PHV=プラグイン・ハイブリッド車、FCV=燃料電池自動車のことを指します。

また、最新の2021年8月の新車販売台数に占めるEVの割合は約1.2%。2021年1~8月の期間を見ても、EVの割合は0.4~1.2%で推移していますから、新車(乗用車)100台のうちEVは1台程度となります。2021年現在の日本において「EVの普及はこれから…」という状況なのは事実のようです。

なお、プラグイン・ハイブリッド車(PHV・PHEV)についても最新のデータを見てみると、2021年8月の新車販売台数に占める割合は約0.8%。2021年1〜8月の期間を見ても0.7〜1.2%の間で推移しており、EVよりやや高い程度となっています。

 

Ⅱ.海外のEV普及率は?

次に、海外のEV普及率を見ていきましょう。

ⅰ.アメリカのEV普及率

istock画像 アメリカ街中

画像:iStock.com/peeterv

アメリカの2020年のEV普及率(新車の販売台数におけるEVの割合)は、約1.8%です2)。数値の上では、日本よりも普及していると言えますが、アメリカの場合は考慮すべき特徴的な点があります。それは、EVの新車販売のうち、およそ8割をテスラ社の車種が占めているということです。

〈表〉2020年アメリカの車種別EV販売台数

  メーカー 車種 販売台数
1位 テスラ モデル3 9万5135台
2位 テスラ モデルY 7万1344台
3位 シボレー ボルトEV 1万9664台
4位 テスラ モデルX 1万9652台
5位 テスラ モデルS 1万4430台
6位 日産 リーフ 8972台
7位 アウディ e-tron 7089台
8位 ポルシェ タイカン 3943台
9位 ヒュンダイ コナ・エレクトリック 2964台
10位 キア ニロEV 2807台

Automotive News/Experian partnership のデータをもとに海外メディア「ROAD SHOW BY CNET」が作成した記事から引用2)

EVの車種別販売台数ランキングを見ても、トップ5のうち、3位のシボレー「ボルトEV」以外の4車種はすべてテスラ。1位のテスラ「モデル3」が9万5000台以上であるのに対し、6位の日産「リーフ」は9000台に満たない数です。“テスラ一強”と言える状態であり、「モデル3」「モデルY」の販売台数の増減によって、アメリカのEV普及率は大きく変わるような状況になっています。

 

ⅱ.ヨーロッパのEV普及率

istock画像 ヨーロッパの道路

画像:iStock.com/petekarici

続いて、EV化に積極的なヨーロッパを見てみましょう。欧州自動車工業会(ACEA)の発表3)によると、2020年のEU+英国の新車登録におけるEVの割合は約5.6%。2019年が約1.9%だったため、急速に普及が進んでいることがわかります。

急伸した理由のひとつは、「CAFE(企業平均燃費)規制」が2020年1月1日から始まったことでしょう。CAFE規制とは、メーカーが販売する新車の平均CO2排出量を「走行距離1kmにつき95g以下にする」という規制です。

日本でもなじみのある燃費表記で考えると、およそ24.4km/Lの燃費のガソリン車並のCO2排出量を達成することが求められます。この数字は、ガソリン車だけを販売するメーカーでは達成が難しいものです。つまり、走行中のCO2排出がゼロであるEVを販売しなければ、およそ達成できない数字なのです。

ちなみに、EVの普及がもっとも進んだ国のひとつとしてノルウェーの名前がよく挙がります。実際に、2020年の新車販売台数におけるEVの占める割合は約54%4)に達しています。これは、ノルウェー政府が積極的なEVシフト政策を打ち出しているためですが、ノルウェーには自動車メーカーがないため、ガソリン車からEVへの移行がしやすい、人口が少なく国民の理解を得やすい、といった背景も理由にあると考えられます。

 

ⅲ)中国のEV普及率

istock画像 中国の道路

画像:iStock.com/Nikada

中国のEV事情も紹介しておきましょう。中国汽車工業協会によると2020年の自動車販売におけるEVの占める割合は約4.4%5)です。

「そこまで高い割合ではない」と思うかもしれませんが、中国ではPHVや燃料電池自動車(FCV)を含む電動化車両をNEV(New Energy Vehicle=新エネルギー車)と呼び、自動車メーカーに販売台数の一定割合をNEVにすることを義務付ける「NEV規制」を実施しています。中国は、自動車産業国としては後発であるため、EVを推進し、先進国と競争する力を得ようとしているのです。

このNEV規制における義務化割合目標は、2020年:10%、2021年:12%、2022年:14%、2023年16%……と、段階的に増やす方針となっています。しかし、実際の2020年のNEV割合は約5.4%でした。目標に対して、未達であるというのが現状です。

なお、このボーダーラインに満たなかった場合、メーカーは他メーカーから超過分のクレジットを購入しなければならない決まりとなっています。2020年は購入を余儀なくされたメーカーも少なくありません。

 

EVの普及に向けた日本・世界の取り組み

ここまで、日本と世界の“EVの現状”を見てきました。ここからは、その少し先“EVのこれから”を見ていきましょう。まずはEV普及の強力な推進力となる各国の政策や方針を説明します。

Ⅰ.日本の取り組み

国会議事堂

画像:iStock,com/Mari05

日本では「2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を実現する」という方針が定められています。ただし、ここで言う“電動車”には、HVやFCVも含まれています。すべての車をEVにする、というわけではありません。

この方針は、経済産業省が2020年12月に関係省庁との連携で策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(以下:グリーン成長戦略)6)によるもので、2021年6月に改訂版が発表されました。

この政策の中では、「2030年までに急速充電器を今の4倍となる3万基を設置すること」などのインフラ整備を始めとして、税制優遇や研究分野への支援、国際連携などに触れられており、より具体的な戦略が打ち出されています。

このグリーン成長戦略は、自動車分野に限ったものではなく、エネルギー関連産業や半導体・情報通信産業などにも及びます。成長が期待されており、さらに温室効果ガスの排出削減につながる14の重要な産業分野が特定されており、総合的に経済成長と環境適合を考えていこうという趣旨なのです。

また、日本では都道府県などの自治体ごとでも、EVの普及に向けた取り組みを多く行っています。たとえば、東京都では「ZEV普及プログラム」を掲げており、同じく2050年の脱炭素社会実現に向けて、車から排出されるCO2の実質ゼロを目指しています。具体的には、充電インフラへの支援や、EVへの補助金などを行い、EV普及を推進しています。

※ZEV=Zero Emission Vehicle(ゼロエミッションビークル)。走行時にCO2等の排出ガスを出さない、EVやPHV、FCVのこと。

 

Ⅱ.世界の取り組み

次に、世界の取り組みについて見ていきましょう。

ⅰ.アメリカの政策・方針

アメリカ国旗

画像:iStock.com/rarrarorro

アメリカでは、バイデン大統領が2021年8月5日に「2030年までにアメリカ国内で販売する新車の50%以上を電動化する7)という大統領令に署名し、政策が進められています。

これと同時に、ゼネラルモーターズ(GM)、フォードなどの自動車メーカー各社から、大統領令に沿って電動化の推進を加速させる旨の声明が発表され、本格的な電動化へと舵を切ることとなりました。なお、EVやPHV、FCVは電動化車両に含まれますが、ハイブリッド車(HV)は含まれないとされています。

 

ⅱ.ヨーロッパの政策・方針

istock画像 ヨーロッパ国旗

画像:iStock.com/legna69

ヨーロッパは、ヨーロッパ連合(EU)の執務機関であるヨーロッパ委員会(EC)により、「欧州グリーンディール」に関する法案が発表されました8)

この中で、自動車分野については非常に厳しい目標が設定されており、その目標値はCO2排出量を「2030年までに2021年比で55%削減」「2035年までに2021年比で100%削減」となっています。つまり、事実上、2035年にはHVも含めてすべてのガソリン車・ディーゼル車が禁止されるということです9)

 

ⅲ.中国の政策・方針

istock画像 中国国旗、建物

画像:iStock,com/tcly

中国は、前述のNEV政策を加速させていく方針です。具体的には、2035年までに「NEVの割合を50%以上」とした上で、そのうち「EVを95%以上にする」という目標10)を掲げています。また、NEV以外の残りの50%については、ガソリン車をすべてHVとするとしています。

 

ⅳ.その他の国の政策・方針

その他の国の目標や政策も見てみましょう。

イギリスでは、2020年11月に「グリーン産業革命」11)が発表されました。「2050年までに温暖化ガス排出ゼロ」を目標とするもので、ガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止が、それまでに打ち出していた「2035年」から「2030年」へと前倒しされました。

「ガソリン車・ディーゼル車禁止」12)をいち早く打ち出した国として、インドが挙げられます。インド政府は2017年時点で「2030年までに禁止=完全EV化」と表明していました。しかし、政策の実行が思うように進まず、この方針は撤回され、現在は州によって目標値が定められています。

 

【グラフで見る】日本・世界のEV普及率の変遷

世界初の量産EVが発売されたのは2009年。車種は、三菱自動車の「i-MiEV」でした。また日産「リーフ」の登場は2010年末です。じつは、EVが私たちの身近な存在になってから、まだ10年ほどしか経っていません。

では、この10年の間に世界のEVはどれくらい増えたのでしょうか? わかりやすいようにグラフにして見てみましょう。

〈図〉2010年〜2020年における世界全体のEV、PHV・PHEVの保有台数推移13

EVやPHV・PHEVの保有台数はここ10年で急激に増えていることは一目瞭然で、2020年には保有台数は1000万台を超えました。2018〜2020年の直近3年で約2倍に伸びており、今後さらなる増加が予想されます。 日本にいると、なかなか普及していないと思われがちですが、グラフで見てみると、急激に普及してきていることがわかります。

また、国別でEVやPHV・PHEVの新車登録台数の推移を見てみると以下のようになっています。

〈図〉2015年〜2020年における世界各国のEV、PHV・PHEVの新車登録台数とシェアの推移13)

多くの国が右肩上がりに数字を伸ばしている一方、日本、アメリカは2017年・2018年を頂点として登録台数が伸び悩んでいます。

じつは日本においては、人気車種である現行型の日産「リーフ」が2017年に発売されたことが大きく関係していると考えられます。これを踏まえると、車種の拡大が普及に影響することは大いに考えられるでしょう。

 

【将来予測】今後のEV普及率はどうなる? 現在の課題とは?

istock画像 走行中の車

画像:iStock.com/Jae Young Ju

Ⅰ.EV普及率の今後

昨今の世界中から発信される政策やニュースを見ると、世界は着々と「ガソリン車・ディーゼル車禁止」に向かって動いているように思えます。もちろん、低燃費・CO2削減のために車の電動化が進み、その中でもEVの普及率が高まっていくことは間違いないでしょう。

しかし、国や地域によってエネルギーインフラや社会情勢は大きく異なりますから、EVへの切替が問題ない地域もあれば、ガソリン車やディーゼル車の方が適している地域もあります。たとえば、インドでは電線を勝手に分岐して不正に電気を得る”盗電“が多いため、このままEVを普及させるには不安要素が大きい状態でしょう。

また、資源採取~製造~流通~使用過程~廃棄・リサイクルまでの、LCA(ライフサイクルアセスメント)も考える必要があります。そういった様々な視点から考えると、全世界の車がすべて早い時期にEVに置き換わることは考えにくいでしょう。要は「適材適所」であることが重要なのです。

Ⅱ.EV普及の課題とは?

日本ではEV普及の課題として、EVの性能にフォーカスが当てられることが多いですが、年々性能は向上しており、航続距離が300km以上ある車種も少なくありません。また、バッテリー容量の大きい車種も登場しており、普段使いで困ることはほぼないでしょう。

ただ、日本でEV普及がなかなか進まない理由のひとつとして、車種の選択肢が限られてしまうことは挙げられます。日本で、手の届きやすい価格のEVといえば、数車種に絞られてしまいます。さらに「小さい車がほしい」「7人乗りのミニバンがいい」などという要望がある人にとって、現在の日本市場にあるEVの選択肢は多くありません。

しかし、欧州を見ればわかるように、自動車メーカー各社はEV開発を推進しており、車種も急激に増えています。日本でも同じように車種の選択肢が増えれば、EVはもっと身近になり、普及率も自然と高まっていくでしょう。

 

 

EV普及には、社会全体の変化と理解が必要

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画像:iStock.com/kokouu

この記事を今、あなたが読んでいるのは、「もっとEVについて知りたい」「わからないことが多い」と思ったからでしょう。その思いは、多くの人にとっても同じです。EVは本格的に普及していくスタートラインに立った段階なのです。

EVは私たちユーザーにとっても、自動車メーカーにとっても、日本政府にとっても初めてのことだらけです。また、車の歴史を振り返ってみても、「環境のために車の構造を変化させなければいけない」という局面は初めてのことです。そのため、ユーザーの意識はもちろんのこと、様々な技術の進歩やインフラ整備、政策もまだまだ発展途上です。

また、単純に「ガソリン車からEVに、というような車の種類だけが変わればいい」というものではないことも、EVシフトの難しいところです。スマートフォンやインターネットなど、他の技術革新のように技術が生まれたから自然と普及するのではなく、EVは普及のために車自体はもちろん、それに付随するインフラなどについても技術を磨き、導入しやすい環境を整える必要があるのです。

日本政府が打ち出している戦略はありますが、社会全体がEVを受け入れられるように変化していくことが、EVの普及には不可欠です。最近では、カーシェアリングなどで身近にEVを利用する機会も増えています。様々な発展とともに、私たちも少しずつEVのある生活に慣れていけば、自ずとEVの普及率も高まっていくでしょう。

 

この記事の監修者
桃田 健史
桃田 健史

日本自動車ジャーナリスト協会会員。専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。ウェブ媒体、雑誌での執筆のほか、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組や海外モーターショーの解説も担当。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ』(ダイヤモンド社)、「IoTで激変するクルマの未来」(洋泉社)など。