レクサスはトヨタが世界に誇るプレミアムブランド。初めてとなるBEV専用モデルが、RZです。美しく洗練されたデザインは外装のみならず。車内空間はおろか、充電体験にも及びます。日本メーカーならではのきめ細かなこだわりは、ファミリーユースにも最適。モータージャーナリストのまるも亜希子さんがレポートします。
せっかくEVを愛車にするならば、ガソリン車では体験できないような、特別なカーライフを手に入れたい。そう考える人におすすめしたいのが、レクサス初のBEV専用モデルとして誕生した、クロスオーバーSUVのRZ(アールズィー)です。
2日間を共にして感じたのは、いまだかつてないほどファミリーにおすすめできるレクサスモデルでもある、ということ。その理由はどんなところにあるのか、ひとつずつご紹介していきましょう。
レクサスらしい外観でも、室内はアットホーム
RZのデザインは、まるでコンセプトカーがそのままステージ上から抜け出してきたのかと思うほど、挑戦に満ちていながら完成されたフォルム。思わず圧倒されます。
フロントマスクとボディを大胆かつシームレスにつなぐ新たなコンセプトの「スピンドルボディ」は、ガソリン車ならラジエーターのためにあったグリルをあえてボディ同色とすることで、EVならではのプレミアム感を表現。躍動感のあるサイドから、リアフェンダーの独創的な造形までの流れには目を見張るほど。左右をつなげる横一文字のリアコンビランプで締め括られる、ひとつのストーリーのようなデザインとなっています。
その一方で、RZのインテリアはとてもクリーンで開放的。これまでのレクサスモデルのように、上質感や丁寧な仕上げによるキチンとした雰囲気もありますが、それよりも心地よさがあり、ゆったりとくつろぎたくなる印象の空間です。これは、従来の内装デザインではインパネをメインに考えるのが一般的だったところ、RZではドアを主役にした新しい空間構築を目指したとのこと。華美な装飾や素材に頼らない、SDGsの時代に即したインテリアは、家族団らんにも違和感のない、どこかアットホームな空間だと感じます。
また、天井に採用された調光パノラマルーフは、スイッチひとつで調光(白濁)と透過(クリア)の状態を切り替えることができ、開放感がほしいときと、視線や日差しを遮りたいときのどちらも快適。99%以上のUVカットと65%程度の赤外線カット性能を持ち、シェードがなくても遮熱機能があるので、真夏の日差しが注ぐなかでも熱さを感じることはありませんでした。EVは床下にバッテリーを搭載するため天井が低くなりがちなのですが、シェードが不要なので頭上スペース的にも余裕があります。
コネクテッド機能で「ルーフを明るくして」などと話しかけるだけでも切り替え可能なので、とても便利に使えます。今回の試乗は真夏だったため使用しませんでしたが、RZは輻射熱ヒーターを含めた空調の協調制御による高効率な暖房システムを備えるのも特徴で、常に快適な室内空間が保たれるようになっています。
ナチュラルかつトキメク。走りの世界観
もちろんRZは、運転席に座ってもガソリン車とは次元の違う世界を感じさせてくれます。その理由をひもといていくと、浮かび上がるポイントは大きく2つ。まずひとつめは、トヨタがBEV専用に開発したプラットフォーム「e-TNGA」を採用し、さらに要所の補強やブレースの追加などに手をかけ、ボディ剛性を向上したこと。2850mmのホイールベース内の床下に、重量物であるリチウムイオン電池を敷き詰めることで、低重心と前後重量バランスの良さを実現しています。
バッテリー容量は71.4kWhで、航続距離は20インチタイヤ装着車で494km(WLTCモード)。電費は147Wh/kmとなっています。フロントとリアに搭載される2つのモーターは、フロントモーターが最高出力150kW(204PS)、最大トルク266Nm、リヤモーターは最高出力80kW(109PS)、最大トルク169Nmとなっており、軽量高剛性かつ理想的な重心と重量配分となるボディに、パワフルなモーターを搭載するという、スペシャリティカーの王道をEVで実現していることになります。
そして2つめのポイントは、電動化技術を突き詰めた新しい4WDシステム「DIRECT4(ダイレクト・フォー)」。これは前後の駆動力配分が100:0から0:100まで、速度や加速度、舵角などの情報から瞬時に可変することができるというもの。これを用いて表現したのは、人とクルマが一体となった、リニアで気持ちのいいドライビングフィールだといいます。モーター駆動だからといっていたずらに機敏さを演出することなく、でもエンジン時代のネガティブな要素はクリアになっている。まさに電動車でしかなし得ない自然な走りがRZの目指した走りです。
ダイヤル式のシフトセレクターを押して右に回し、「D」を選ぶところから気分が高まり、アクセルを軽く踏み込むと、2tオーバーの巨体にもかかわらず軽やかに動き出し、上質でなめらかな加速が続きます。路面にしっとりと接地している感覚があり、カーブでの吸い付くような身のこなしには「いいクルマに乗っている」という充足感が満ちてきます。
首都高のように速度が低く流れが詰まることが多いシーンでは、前後の揺れがおさまらず気になるところもありましたが、直線で追い越し加速をするようなシーンでのスッとするような反応は、クルマ全体がひとカタマリになってドライバーを包み込んでくれる、トキメクようなRZの世界観を堪能できました。
くつろげる後席と電気ならではの便利さ
ファミリーユースでは収納をはじめとした使い勝手も大切なポイントですが、RZには凝った収納はない代わりに、丁寧なしつらえが随所に感じられます。使うだけで所作まで優雅になりそうなトレイやドリンクホルダー、センターコンソールボックスなどが揃います。
後席のスペースも十分で、中央に座ってもフロアがフラットなのはうれしいところ。座面のクッションがたっぷりとしていることもあって、フロアから座面の高さは少し低めかなと感じましたが、横ギリギリまで背もたれが広がり、くつろいで座ることができました。
荷室は522Lと大容量。フロアは高めですが、奥行きが978mm、最大幅が1503mmと間口の広さも手伝って、大きな荷物が積みやすくなっています。後席は6:4分割で前に倒すことができ、フラットなスペースが拡大。
後席足元と荷室にはAC100V/1500Wまでのコンセントも備わっているので、さまざまな電化製品を使うことができます。外部給電アタッチメントを使えば、車外でも使用可能。クルマのバッテリーを家とつなぐことができるV2Hにも対応しています。
レクサス専用充電ステーションで特別な体験を
RZのリリースに合わせて、レクサスではBEVオーナー専用のサービス「LEXUS Electrified Program」を開始しました。これは専用急速充電ステーションの事前予約から充電状況の把握、支払などがシームレスに行えるだけでなく、充電の待ち時間を有意義に過ごしてもらうために、都心の商業施設と提携したさまざまな体験が用意されているものです。
第一弾としてオープンした東京ミッドタウン日比谷内の急速充電ステーションは、スマホのアプリから事前に予約が可能。ホテルのラウンジのような雰囲気の特別なエリアに充電スペースがあって誇らしい気持ちになりました。スマホの操作とコネクターの差し込みだけで充電がスタートし、その間はレクサスのブランド体験型施設「LEXUS MEETS…」の併設カフェでお茶を楽しんだり、提携店舗でシャンプー&ブローや首肩マッサージが優待価格で受けられたり。ワークスペースでの1名料金が1時間無料となるので、仕事の合間に充電する必要がある際にも効率よく過ごせるのがいいですね。
こうしたレクサスならではの体験・特典が受けられる充電施設は今後、どんどん拡充されていく予定です。たとえば日本各地の充電器付きの宿泊施設を起点とした、独自の旅行プログラム「LEXUS ELECTRIFIED JOURNEY」や、レクサスのBEV試乗体験を含んだ日本の魅力に心で触れる旅「TOUCH JAPAN JOURNEY by LEXUS」の優待。世界中の1000以上のホテルでさまざまな特典が受けられる「LEXUS LUXURY HOTEL COLLECTION」でも、新たなサービスが拡充されていくとのこと。
EVを手に入れることから始まる、これまでとは違う世界との出逢い。RZと一緒なら、喜びやワクワクが無限に広がっていくような気がします。
RZの充電システムは、普通充電と急速充電に対応。充電時間の目安は、AC200V/6kWの普通充電器で約12時間、50kW出力の急速充電器で80%まで約60分となっています。充電口は普通充電が右フロントフェンダー、急速充電が左フロントフェンダーにあります。
家族の時間を豊かに、そして次のステージへ誘うEV
大胆なエクステリアの先進性と、人がゆったりと過ごせる室内空間、自然かつEVらしいフィーリングで満足度の高い走りを持つRZは、それだけでなく人生まるごと、新たな世界へと誘ってくれる付加価値が充実しているところが魅力的。家族の時間と自分の時間をもっと豊かにしたいと考えているなら、ぜひ乗ってみてほしいEVです。
撮影:宮門秀行
〈スペック表〉
全長×全幅×全高 | 4805mm×1895mm×1635mm |
車両重量 | 2090~2100kg |
バッテリー総電力量 | 71.4kWh |
一充電走行距離 | 494〜534km(WLTCモード) |
電費 | 135~147Wh/km(WLTCモード) |
フロントモーター最高出力 | 150kW(204PS) |
フロントモーター最大トルク | 266Nm |
リヤモーター最高出力 | 80kW(109PS) |
リヤモーター最大トルク | 169Nm |
駆動方式 | 4WD |
税込車両価格 | 880万円 |
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この記事の監修者
まるも 亜希子
カーライフ・ジャーナリスト。映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツに参戦するほか、安全運転インストラクターなども務める。06年より日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。女性パワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト」代表として、経済産業省との共同プロジェクトや東京モーターショーでのシンポジウム開催経験もある。