【連載「メーカーさんに聞きました。」第2回】“電気自動車(EV)とエンジン車のいいとこどり”ともいわれるプラグインハイブリッド車(PHEV)。その使い方はEVとどのように違うのでしょうか? 車を動かすには給油か充電が必要ですが、どちらをどんなタイミングで行えばいいのでしょう? そこで、2021年・2022年度の2年連続でPHEV国内販売台数NO.1を誇る三菱自動車工業に取材を実施! PHEVを上手に乗りこなすコツを教えてもらいました。
今回取材に伺ったのは、三菱自動車工業の村田裕希さんと谷地田郁雄さん。EVやエンジン車にはないPHEVならではの魅力と運用の秘訣を語っていただきました。
【今回の取材でお話を聞いた方】
村田 裕希さん
三菱自動車工業株式会社。国内営業本部 国内商品戦略部 車種マーケティング第一グループ 担当マネージャー。車種はアウトランダーを担当。2017年の先代アウトランダーよりPHEVに携わる。
谷地田 郁雄さん
三菱自動車工業株式会社。国内営業本部 国内商品戦略部 車種マーケティング第一グループ 主任。販売現場での業務を経て、2023年2月よりエクリプス クロスを担当。
PHEVを“燃費・電費”効率よく運転するコツは?
EV DAYS編集部「エンジンとモーターの両方を搭載したPHEVではエンジン走行とEV走行が可能です。どのように使い分けると燃費や電費の効率がよくなるのでしょうか?」
村田さん「大前提として、近距離はEV走行、長距離はエンジン走行のほうが効率的です。具体的には、ストップ&ゴーを繰り返す街中での運転ではEV走行がいいです。これはエンジンの特性上、発進と停止を繰り返すと効率が悪く、ガソリン消費が大きくなってしまうためです。一方で、高速道路を使ったロングドライブになると、エンジン走行を優先させた方が燃費効率はよくなります」
EV DAYS編集部「速いスピードで長距離を走る場合には、エンジン走行のほうが効率がよい、ということですね」
村田さん「はい。三菱のPHEVの場合、高速道路を一定速度以上で走ると、車が自動で判断して、エンジンがメインで動力となり、モーターがサポートする走行方法に切り替わります」
EV DAYS編集部「なるほど。EV走行とエンジン走行を手動で切り替えることは可能なのでしょうか?」
村田さん「EV走行を優先する『EVモード』を選択することはできます。ただし、基本的には車が速度や加速などを察知して、自動的に最適なモードに切り替えをしてくれます。
三菱の場合、『NORMALモード』『EVプライオリティモード』『バッテリーチャージモード』『バッテリーセーブモード』という4種類のEVモードに切り替えることができます」
EV DAYS編集部「EV走行優先とエンジン走行優先の2択というわけではないのですね。それぞれどう使い分ければいいのでしょう?」
村田さん「基本的には『NORMALモード』が標準的なモードと考えてもらえればと思うのですが、このモードではモーターとエンジンを効率よく使えるように、車が最適な走行方法を自動で選んでくれます」
EV DAYS編集部「いわゆるおまかせモード、という認識ですね」
村田さん「はい。あとの3つのモードは主にバッテリー残量をマネジメントするために使うのですが、『EVプライオリティモード』は、その字のごとくEV走行を優先させるモードです。基本的にはエンジンを使わないので、早朝や深夜など、静かに発進や走行をしたいときにも便利です。
一方で、ガソリンを使ってエンジンで発電し、バッテリーに電気を貯めることができるのが、『バッテリーチャージモード』と『バッテリーセーブモード』です。バッテリー残量を上げたいときに『バッテリーチャージモード』を選ぶと、エンジン発電でバッテリーを満充電近くまで充電することができます。現在の残量を維持したいときは『バッテリーセーブモード』です。減った分だけエンジン発電で充電を行います。
これらのモードは、キャンプで調理器具などの電気製品を使用したい場合や、行き先でEV走行をしたい場合など、到着地でやりたいことができるように、バッテリー残量をマネジメントすることを目的としています」
EV DAYS編集部「ちなみに、エンジンによる発電でバッテリーを充電する場合、どのくらいの時間でどれくらいの容量を充電できるものなのでしょうか?」
村田さん「『バッテリーチャージモード』は、走行中・停車中のどちらでも使用できるのですが、停まっている状態でエアコンなどをかけず、エンジン発電で充電する場合、95分で8割くらいまでバッテリーを充電することができます」
【あわせて読みたい記事】
▶「PHEV(プラグインハイブリッド車)」とは? メリット・デメリットから人気車種までを解説
充電と給油、どんなタイミングで行うと効率がいい?
EV DAYS編集部「最近のPHEVはEV走行の航続距離もそれなりに長いため、近距離走行が主体ならEV走行だけで事足りる方も多いでしょう。中にはEV走行のみで長期間ガソリンを使わずにいて、ガソリンを劣化させてしまう方もいるのではないかと思います。どんなタイミングで給油や充電を行うのがPHEVにとって最適ですか?」
谷地田さん「ロングドライブと近距離の街中走行、どちらを主体にした使い方をするかによってガソリンの消費量は異なります。後者である場合、EV走行がメインになってなかなかガソリンを使わない場合も少なくないと思いますが、最低限の給油タイミングは3カ月に1度以上と考えていただきたいです」
村田さん「アウトランダーPHEVは、3カ月間に20L以上を給油していないと、エンジンや燃料系部品のメンテナンスのため、警告が出て強制的にエンジンを始動してガソリンを循環させる『エンジンメンテナンスモード』が搭載されています。20L以上を給油すれば、警告は消え、エンジンの強制使用も停止します」
EV DAYS編集部「より経済的にPHEVを運用しようと考える場合、どのように走行し、充電するのがベストでしょう?」
谷地田さん「現状ではエンジン走行よりEV走行を主体にするほうが基本的に効率はいいでしょう。そのため、基本的には自宅でこまめに充電を行い、少なくとも3カ月に1回は給油するようにすると、お財布に最もやさしい運用になると思います」
PHEVに向いているのは、どんな使い方をする人?
EV DAYS編集部「お話を伺って、近距離ならEV走行でコストを抑えられ、長距離移動でも充電の心配が必要ないのがPHEVの魅力と改めて感じました。あえてEVではなく、PHEVに向いているのはどんな方でしょう?」
村田さん「エンジン車からEVに乗り換えて、いきなり充電のみになるのが怖い、という方も少なくありません。PHEVの場合、完全に充電頼みになるわけではなく、ガソリンも使うので、そういう方でも安心できるでしょう」
EV DAYS編集部「特にロングドライブを頻繁に楽しむ方には、ガソリンも使えたほうが安心かもしれませんね」
村田さん「住まい周辺での近距離走行だけではなく、長距離の移動も多く、充電に煩わされずに運転したい方にはやはりPHEVのほうが便利でしょう。EVも航続距離は伸びていますが、慣れていないうちは充電を面倒に感じる点はまだ変わっていません。EVほどきちんとした充電計画を立てずに、長距離ドライブを楽しめるのもPHEVを選ぶ利点といえます」
EV DAYS編集部「最後に、PHEVを購入検討されている方に向けてひと言お願いします」
村田さん「アウトランダーPHEVもエクリプス クロスPHEVも生活の足として優秀で、乗り心地もいいと自負しています。三菱自動車のPHEVは、『EVの静かな乗り心地』『SUVの使い勝手の良さ』『ツインモーター4WDの滑らかで力強い走り』という3つのコンセプトに基づいてつくられています。
最新モデルのアウトランダーPHEVは新世代のPHEVシステムを搭載しており、エクリプス クロスPHEVに比べるとボディサイズが一回り大きく、お客さまの声に答えて7人乗りも用意しています。ボディサイズからすると、エクリプス クロスPHEVはご夫婦、アウトランダーPHEVはさらにお子さんがいるご家庭にちょうどいいサイズだと思います」
谷地田さん「エクリプス クロスPHEVはより“走りの魅力”にこだわった車で、アクティブに活動範囲を広げたい方におすすめです。特に加速感が強く、シャープなハンドリングで車が思うままに動いてくれて、軽快な走りを楽しむことができます」
村田さん「PHEVには蓄電池として活用できる側面もあります。車内に設置されたAC100Vコンセントの最大出力は1500Wもあるため、電子レンジやホットプレート、炊飯器など、消費電力が大きい電気製品を利用することもできます。また、V2Hを使えば、PHEVのバッテリーに蓄えられた電気を自宅に戻して使用することも可能です。たとえばアウトランダーPHEVの場合、満充電の状態でエンジンでの発電も組み合わせれば、ガソリン満タンで最大約12日分※の電気を自宅に供給できます。不安な災害時に電気を使える安心感は結構大きいと思います」
谷地田さん「PHEVは充電の心配なく遠出することができますし、車に蓄えた電気を取り出せばアウトドアでの遊び方も広がり、暮らしの豊かさを増やしてくれる車だと考えています。ぜひPHEVを使って幸せな時間を過ごしていただきたいですね」
※一般家庭での一日当たりの使用電力量を約10kWh / 日として算出、V2H機器等の変換効率は含みません