バッテリー容量に合わせた「車選び・充電のコツ」ってあるの?

日産

【連載「メーカーさんに聞きました。」第1回】2022年に軽EVがリリースされ、電気自動車(EV)の選択肢はますます広がっています。しかし、依然としてEV初心者を悩ませるのは「バッテリー容量」の問題です。車種が多くなったが故に、「そもそも購入時、どのくらいのバッテリー容量を選ぶべき?」「バッテリー容量によって運用のコツは違う?」などの疑問も出てきます。そこで、EVの第一人者である日産自動車に取材を実施! 車選びの考え方や、バッテリー容量に応じた運用のコツを教えてもらいました。

今回教えていただいたのは、ご自身も「アリア」ユーザーだという倉田 航さん。まずはバッテリー容量を踏まえた車選びについて、質問をぶつけてみました。

 

【今回の取材でお話を聞いた方】

日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス 倉田 航さん


倉田 航さん(日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス)

2019年より国内マーケティング業務に従事。現在は2022年発売の「サクラ」のマーケティングなどを担当するほか、EVの普及のためのインフラ関連事業にも携わる。週末は「アリア」で出かけるのが趣味。

 

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バッテリー容量を基準とした「EVの選び方」ってあるの?

日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス 倉田 航さん

 

EV DAYS編集部「日産さんでは、サクラ(20kWh)、リーフ(40kWh、60kWh)、アリア(66kWh、91kWh)とバッテリー容量が異なる3車種をリリースしています。バッテリー容量は航続距離にも影響するので、ロングドライブするなら大容量、街乗りが多いから容量が小さくても…など、バッテリー容量に応じてEVは選んだ方がいいのでしょうか?」

倉田さん「そうですね……たしかにバッテリー容量は航続距離に影響するので、カーライフスタイルから考えることも悪くありません。ただ、実際にEVを購入しているお客さまの選び方を踏まえると、“車選びを始めるときに、バッテリー容量はそこまで考えなくていい”のではないかと思っています」

EV DAYS編集部「なるほど…でも、それはなぜでしょうか?」

倉田さん「それはEVでもガソリン車でも、車選びの条件は大きく変わらないからです。車が欲しいということは、車の用途、大きさ、乗車人数、所有上限台数などは決まっているはずですよね。

たとえば、家族全員で使うファミリーカーが欲しいのか、奥さんや子どもがセカンドカーとして使うコンパクトカーが望ましいのかである程度“車格”が決まるはずです。

日産の場合だと、メインカーとして利用するなら『アリア』か『リーフ』ですし、セカンドカーなら『サクラ』が適当ですね」

EV DAYS編集部「なるほど、でもバッテリー容量ももう少しちゃんと見なくてもいいのでしょうか?」

倉田さん「EVの構造からいっても、大体のケースでは、車格とバッテリー容量は比例します。だから、バッテリー容量を気にしてEV選びを考え始める必要はないと思っています。日常使いから遠出まであらゆるシーンを想定するようなSUVなどなら、バッテリー容量もそれなりにあります。逆に、近所使いを前提とした軽EVはバッテリー容量は小さめ。といっても、『サクラ』は満充電なら180kmの航続距離があるので、日常使いには十分なはずですよ。日常的に往復で100kmの距離を走る人はそういませんから」

EV DAYS編集部「バッテリー容量に振り回されない方がいいということですね」

倉田さん「もちろん、吟味していくなかで、自分のライフスタイルに合わせて『長距離ドライブが多いからアリアがいい』『リーフでも40kWhではなく60kWhモデル(e+)の方がいい』という絞り込み方もあると思いますが、最初はそこまで気にしなくてもいいと思いますよ」

 

サクラ、リーフ、アリアの使い方の違いは? どんな人におすすめ?

EV DAYS編集部「いま、3車種について話をしてもらったのですが、『サクラ』『リーフ』『アリア』は、実際のユーザーさんにそれぞれどのような使い方をされているのかを教えていただけますか? 参考にさせてください!」

倉田さん「それでは3車種の特徴とともにお伝えしていきますね」

日産 サクラ

 

倉田さん「まずは『サクラ』ですが、ご存知のとおり、2022年に発売された軽EVです。バッテリー容量は20kWh、航続距離は180kmということもあり、セカンドカーとして利用されるユーザーさんが多いですね。実際、日頃の買い物や子供の送り迎えなどに使われているケースが多いようです」

EV DAYS編集部「バッテリー容量が比較的少なく抑えられているので、価格もセカンドカーとして受け入れやすい、というのも納得です」

倉田さん「あとは若い人にもおすすめです。価格もそうですし、軽EVなので小回りが利いて乗りやすい。まずはEVならではの加速感を楽しんでもらいたいです」

▶︎日産「サクラ」の車種情報はコチラ

 

日産 リーフ

 

倉田さん「続いて『リーフ』ですが、多くのお客さんがメインカーとして利用しています。バッテリー容量は40kWhと60kWhの2種類で、航続距離は322kmと450km。たとえば東京と静岡間だと片道約150kmなので、充電なしでも往復できるイメージです」

EV DAYS編集部「航続距離が300km以上あると、大抵の遠出にも対応できますね。『サクラ』と比較すると心強さがあります」

倉田さん「じつは『サクラ』を発売したときに、たくさんのお客さまがご来店されましたが、販売店と航続距離や乗車人数などを相談した結果、『リーフ』の購入を決めた人も結構多くいましたね」

▶︎日産「リーフ」の車種情報はコチラ

 

日産 アリア

 

倉田さん「最後にSUVタイプの『アリア』です。バッテリー容量は66kWhのB6と、91kWhのB9 limited(予約受付終了)があります。航続距離はB6が470km、B9 limitedは640kmです。これだけの航続距離があれば、遠出するときに電欠を心配することなく走れます」

EV DAYS編集部「我々もロングドライブ企画で乗らせてもらったのですが、『アリア』は本当に安心感がありましたね。どんな方に多く選ばれているのでしょうか?」

倉田さん「上質な質感とか革新的な技術といった魅力に惹かれて選ぶ方も多いです。『アリア』は運転支援機能など、日産自動車がもつ技術をギュッと集約したモデルです。静粛性も高いので、ワンランク上の車を求めている人におすすめです」

▶︎日産「アリア」の車種情報はコチラ

 

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EVのバッテリー充電のコツ。容量によって違いはある?

EV DAYS編集部「つぎにバッテリー容量別の運用についてお話を聞かせてください。確かに、使い方に適したEV選びをすることで、電欠の不安は小さくなると思うのですが、実際に『サクラ』と『アリア』では充電時間などが大きく違います。上手に運用するための充電のコツなどはないでしょうか?」

日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス 倉田 航さん

 

倉田さん「バッテリー容量別というよりは、全般的な話になるのですが、EVの仕組みを知っておく、というのが効率的にEVを使うコツのひとつかもしれません」

EV DAYS編集部「それはどういうことでしょうか?」

倉田さん「実際のユーザーさんと接していると、EVへの理解の深さに差があり、理解が深い方ほど、上手に充電されているイメージがあります。

電欠を心配されるのは、主に遠出をする場合だと思うのですが、その場合、充電スポットでの急速充電がポイントになります。実は急速充電器もいろんな種類があり、自分の車がどのくらいの充電出力を受け入れられるか? という点の理解を深めると、より効率的に充電ができると思います」

EV DAYS編集部「確かに車の最大受入能力の把握は大切ですね」

倉田さん「『サクラ』と『アリア』を比較すると最大受入能力は大きく違います。『サクラ』はバッテリー容量が小さめなこともあり、最大受入能力は30kW、『アリア』は130kWです。たとえば、50kWの急速充電器の場合、『サクラ』だと必要十分以上ですが、『アリア』ではもう少し出力が大きい急速充電器の方が効率よく充電できます」

EV DAYS編集部急速充電器の探し方ひとつで、充電の効率も変わるということなんですね」

倉田さん「なので、自分のEVの航続距離と最大受入能力に適した急速充電器の設置場所を、事前に調べておくといいと思います。ちなみに、日産自動車のEVと『NissanConnect サービス』アプリを連携させておくと、道のアップダウンも計算に入れて、どのくらいで・どこで充電した方がいいかを教えてくれます。ルートの高低差や車速、外気温なども全部個別に設定できます。日産自動車のEVを運用するうえでは、アプリの活用は大事なポイントですね」

 

※NissanConnect サービス

日産自動車が提供するスマートフォン専用アプリ。車の基本操作をはじめ、目的地の設定およびカーナビへの転送、バッテリー残量などの車両の状態が確認できる

 

EV DAYS編集部「自宅での充電に関しては、何かコツはあるのでしょうか?」

倉田さん「そうですね…。もし、急なドライブの発生などが心配なら、家に駐車している間は充電しておくといいと思いますよ。充電100%にしておけば、『サクラ』でも航続距離が180kmあるわけです。ある程度の距離のあるドライブでも対応できます」

EV DAYS編集部「ちなみに、100%にし続けるとバッテリーの寿命が心配ですが、その辺は問題ないですか?」

倉田さん「よくスマートフォンだと、100%に充電するとバッテリーの劣化が進むといわれますが、日産自動車のバッテリーは耐久性も含めてテストしているので問題ありません。また、日産自動車では『リチウムイオンバッテリー容量保証』を設けています。走行距離16万kmまたは使用期間8年のどちらか早い方で、劣化によりある一定のバッテリーの容量が担保できていない場合には、交換などさせていただきます。ですので、充電しすぎでバッテリーが使えなくなるかもという心配はいただかなくても大丈夫です。

EVのメリットは、自宅で寝ている間に充電ができることです。CMでご紹介しているように『起きたら100%』が、EVの圧倒的価値だと思っています」

 

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まずは試乗! EVの乗り心地を体感してみよう

日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス 倉田 航さん

 

EV DAYS編集部「最後にEVを購入検討されている方にアドバイスをお願いします」

倉田さん「EVだからといって壁を感じるのではなく、まずは日産自動車の販売店に来店してほしいですね。10年以上前からEVを販売している日産だからこそ、販売員はEVの知識が豊富なので、適切なアドバイスを聞けると思います。試乗してモーター駆動100%の車を体験してもらえれば、走りやすさ、快適さ、そしてパワーを実感してもらえるはずです。

来店いただいた際には、『EVに初めて乗ろうと思うけど、どうしたらいいですか?』と聞いてくれたらサポートできます。そこから用途、大きさ、人数などを伝えていただくことがファーストステップです。とくに自分が乗るにあたって、航続距離が足りるのかを気にされている方は、普段の使い方を教えていただけるとアドバイスも的確にできるかと思います。あまりEVにハードルをもたずにお店に来てほしいですね

 

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この記事の著者
EV DAYS編集部
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