EVロングドライブ7つの疑問を解消!1400km走行で実証してみた

ロングドライブメインビジュアル

電気自動車(EV)は充電や航続距離の問題から「ロングドライブに不向き」と考えられることが多いようです。しかし、EVの世界は日進月歩、充電スポットは増え、航続距離の長い車種もどんどん増えています。そこで最新車種に乗り、EV DAYS編集部が1400kmのロングドライブを敢行。その真偽を確かめてみました!

 

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日産「アリア」で東京〜紀伊半島周遊の旅をしてきました。

今回行なったのは【東京〜大阪〜和歌山〜三重〜東京】というルートを用いた2泊3日の旅。高速道路・山道あり、経路充電(急速充電)・目的地充電(宿泊地での普通充電)ありの盛りだくさんのコースです。

マップ

今回の主な走行ルート。東名高速で大阪まで一気に走り抜け、そこから紀伊半島を巡り、伊勢志摩を通って帰ってきました。

 

【注】今回のロングドライブに関して、走行距離・電費などの詳細情報は記事下にまとめてご紹介しています。ご覧になりたい方はコチラよりご確認ください。

 

実走行距離は1404km! 実際に走ってみるまでは「電欠大丈夫かな…」「充電待ちでイライラすることもあるのかな…」と、いろいろ心配していたのですが……。

結論から言ってしまうと、道中まったく心配することなく、快適なドライブ旅行を満喫できました!

ちなみにこれは、選んだ車種がバッテリー容量の大きい日産「アリア」だったこと、またEV愛好家である寄本好則さんに事前のアドバイスをいただいたことも大きな要因だったと思います。

 

アリアでロングドライブ

日産「アリア」。バッテリー容量66kWh、一充電走行距離が470km(WLTCモード)。国産車の中では比較的バッテリー容量が大きいこの車は、快適な旅を実現してくれました。

 

 

そこで、今回のドライブをもとにしながら、EV初心者が懸念するであろうことを「7つの疑問」として列挙。ロングドライブに必要なノウハウをご紹介していきます。

 

 

Q1.ロングドライブをするとき、必ず準備すべきものは?

A1.車載ケーブルと充電カードはマスト。できれば軍手も持参したい!

まずは事前準備の疑問から答えていきましょう。普段、自宅充電をしている方の場合、「ロングドライブには何か特別なものは必要なの?」と思うかもしれません。かく言うロングドライブ初心者のEV DAYS編集部もちょっと悩みました。

しかし、至ってシンプルで、必需品は「車載ケーブル」と「充電カード」だけです。

今回の旅では宿泊先がケーブル付きの普通充電器だったため、最終的には必要ありませんでしたが、宿泊地によってはコンセントだけの充電場所もあるため車載ケーブルは必須です。

ロングドライブ 必ず準備すべきものは?

 

また、自宅以外で充電をするわけですから充電カードも必要になります。充電カードがなくても充電は可能なのですが、ビジター扱いだと毎回手続きをしなくてはいけなかったり、割高だったりする場合もあるので、快適な旅を実現するためには持っていった方が無難でしょう。

充電カード

 

なお、プラスアルファの要素になりますが、持っていった方がいいアイテムとしては「軍手」が挙げられます。これは寄本さんにアドバイスいただいたのですが、実際に外充電を何度も行っているうちに実感しました。下の写真は高速道路で急速充電をしているシーンなのですが、何か気づきませんか?

ロングドライブ 準備すべきもの

 

そうです、道路に横たわる充電ケーブルが汚いのです……。今回のドライブ期間は快晴続きでしたが、それでもホコリや土が付いて手が汚れました。これが雨だったら…。充電器のほとんどは屋外に設置されているわけですから、快適にドライブをするためには、軍手もあった方がいいでしょう。

 

Q2.充電計画はどうやって立てればいい?

A2.充電アプリを活用して、事前に経路充電の目星をつけよう。優先すべきは「高出力の充電器」。

続いては「充電計画」についてです。電欠は心配ですし、電欠にならずとも目的地まで辿り着けるかヒヤヒヤする…ということも避けたいところ。そうすると、快適なドライブにはある程度の充電計画は立てた方がいいでしょう。

じつは心配性のEV DAYS編集部はかなり綿密に充電計画を事前に立てました。以下が実際の充電計画表です。

計画表

1日目の予定表。到着時間や充電時間などを詳細に書き出してみました。

具体的には、EVのバッテリー容量やSOC(State of charge:充電率)、目的地までの距離、次の充電場所までの距離をExcel上で計算しています。ザックリとした計画立案のステップは大きく3つです。

まずは、①充電する目安のバッテリー容量を設定(今回は、SOC30%を目安に設定)。その上で、②立ち寄りやすい場所にある「高出力の充電器がある充電スポット」をピックアップ(今回は「アリア」のため90kW器を優先的に選択)。さらに、③その前後にある充電スポットもメモしておきます。

充電スポットメモ

 

充電スポット自体は、充電スポットの検索サービスやスマホアプリですぐに確認できるので、簡単に探し出せます。

この計画立案の最大のポイントは、②高出力の充電器がある充電スポットをピックアップすることです。「急速充電は基本30分」なので、充電出力が大きい充電器で充電すれば、充電できる電力量も増えるからです。(「アリア」は130kWまでの急速充電出力に対応していますが、車種により対応出力は異なりますのでご注意ください。充電量と出力の関係については、以下の記事で詳しく解説しています)

 

 

この3ステップを踏めば、短い時間で多くの充電量を確保できる効率的な充電計画が立てられます。また、もしも目的の充電スポットが混雑していても、慌てることなく、次の場所へ移動することができるのです。

なお、今回は体験も兼ねてExcelで充電計画を立てましたが、同じようなことをやってくれるウェブサービスも登場しています。

 

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Q3.旅先の充電スポット探し、何を使う?

A3.リアルタイムで利用状況がわかる充電アプリや、EVの車載ナビが便利。充電スポット探しは苦労しない。

上述で充電計画の重要性を説きましたが、旅行は予定外の寄り道をするのも楽しみのひとつです。となれば、旅先での充電スポット探しは必須スキルとなります。

ただし、「ガソリンスタンドとは違って、充電スポットは見つかりにくいのでは?」と思う方も多いでしょう。確かに、幹線通り沿いで目立つガソリンスタンドと異なり、充電スポットの看板はやや発見しにくいのは否めません

しかし、充電スポットを探すためのスマホアプリは充実してきていますし、高機能化が進んでいます。たとえば、リアルタイムで利用状況を確認できるアプリも多いのです。

「e-Mobility Powerアプリ」の画面

e-Mobility Powerアプリ」の画面。充電スポットごとに充電出力やリアルタイムの利用状況がわかるほか、位置情報から近くの充電スポットも探してくれる。

 

また、さらに役立つのが、EV自体のナビゲーション機能です。日産「アリア」の場合には、カーナビがEV用にカスタマイズされていて、近くの充電スポットを探索できるほか、高速道路ではどのサービスエリアに充電スポットがあり、そこに到着する時点でどのくらいのバッテリー容量が残っているのかも示してくれます。

ナビゲーション機能

 

今回、充電計画は立てていたものの、このナビゲーション機能に気持ち的に非常に助けられました。航続可能距離と充電スポットをすぐに確認できるため、ヒヤヒヤすることがなかったからです。EVの世界の進化を感じますね。

 

 

Q4.宿泊先での充電で、気をつける点は?

A4.宿泊当日、普通充電器が埋まる可能性がないか、事前にチェックしよう。多台数の充電器があるホテルだと安心!

続いて、宿泊先での充電についてです。宿泊を伴うロングドライブでは、普通充電ができるホテルを優先して選びましょう。急速充電でまかなえないわけではないのですが、普通充電の方が充電コストは安いですし、SOCによっては宿泊している間にSOC100%にでき、翌日気持ちよく出発できるのが魅力です。(今回のドライブでも、2泊ともホテルで普通充電を行いました)

アプリ画面

2日目のホテルの朝、スマホアプリでSOC100%になっていることを確認。気持ちよく出発できました。

 

なお、急速充電でSOC100%まで充電することはあまり現実的ではないでしょう。また、どこかに立ち寄って充電する必要があるため、旅程にロスが出てしまうのもネックとなります。

ただし、今回の旅で悩ましかったのが、普通充電器のあるホテルがなかなか予約できなかった点です。地域によっては普通充電器の設置を条件にするとホテル数が限られてしまい、EV利用者が集中してしまうようなのです。

すると、ホテルは予約できても、普通充電器を使う車の台数が設置台数を超えてしまい、実際には使えないという事態が起こってしまいます。

今回宿泊したのは、大阪府と三重県だったのですが、大阪府では複数台の充電器を備えたホテルが少なく、電話で充電器が使えるかどうか確認作業を行ったため、ホテル予約までに割と時間を要してしまいました

充電中のアリア

 

一方で、三重県で宿泊したホテルはなんと普通充電器を24台も備えていて、充電器が埋まっているかどうかを心配することなく、予約することができました。

宿泊地の充電器

2日目の宿泊地「海の蝶」。駐車場には数多くの普通充電器が並んでいる。

 

初めてEVで旅行する場合には、ホテル探しは早めに行い、充電器の有無の確認も行いましょう。また、できれば多台数の普通充電器を備えているホテルにすると安心でしょう。

 

Q5.1400km走ったとき、充電料金はいくらかかる?

A5.今回のドライブでかかった充電料金は、5000〜6000円程度。ガソリン代と比較すると、約3分の1しかかからない!

EVのメリットとして、走行コストの安さが挙げられることが多いです。では、急速充電の多いロングドライブの場合、充電にいくらかかるのでしょうか?

充電コスト

 

場合や条件によって異なりますが、今回のドライブに関して言えば、5000〜6000円程度の充電料金となりました。充電内容の内訳は以下のとおりです。

充電記録

まとめると、急速充電を180分、普通充電を2回行い、合計約201.1kWhの充電量となりました。

今回利用した日産の充電カード「ZESP3」では、「プレミアム20」(目安走行距離1350km以内/月)プランの場合、月額料金は4950円(3年定期契約)で、その中に急速充電20回分(200分相当)および普通充電 無料が含まれています。なお、その枠を超える急速充電分は、プランにより異なり追加で275〜385円/10分がかかります1)

つまり、月額4950円のプランに加入していた場合、月額料金で収まりますし、月額分以上の利用だったとしても、4950〜6930円で急速充電をまかなえる(普通充電は無料)のです。

充電の様子(アリア)

 

ガソリン車の走行コストと比較すると、約3分の1の金額です(1400km走行、実燃費15km/L、170円/Lだった場合、ガソリン代は1万5866円)。2022年11月現在、ガソリンが高騰しているとはいえ、この走行コストの差はかなり大きいと言えるでしょう。

 

 

 

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Q6.ロングドライブするとき、エンジン車と比べて快適って本当?

A6.静音性は抜群。しかも、最新の運転支援機能は超快適!

ここまで充電に関する疑問に答えてきましたが、ロングドライブにおけるEVの優位性として挙げられるドライブの快適性についてお答えしましょう。

ロングドライブの大敵といえば、長時間走行による疲れでしょう。となれば、快適性は非常に大きなポイントになります。「エンジン車に比べて快適なのか?」という疑問に対して、1400kmを走破した実感値をお伝えすると、「非常に快適」だと感じました。

走行中の様子

 

EVにはエンジンがないため静音性が高く、アクセルを踏んだときの加速のスムーズさはハマる人も多いはずです。ロングドライブ向きといってもいいでしょう。

ただし、振動については車種による違いも関係するため、EVの方がよいという確定的な表現はできない、というのも正直なところです。しかし一方で、明確に疲れを少なくするのに貢献してくれたのが、いわゆる「先進運転支援システム(ADAS)」です。

日産「アリア」の場合、車速・車間制御機能(インテリジェント クルーズコントロール)や「プロパイロット 2.0」により、アクセルを踏まずに走行し、さらに高速道路では車線変更をともなう追い越しも支援してくれます。

アリアのハンドル右側のボタン

日産「アリア」では、ハンドル右側に付いているボタン1つで操作できます。

 

1日8時間以上のロングドライブの場合、この運転支援機能は想像以上に“効き”ました。踏み替えに伴う足の疲れはもちろん、注意力・判断力の低下も実感として少なかったです。

走行中の様子

この画像には写っていませんが、ハンドル操作をしていないだけでなく、アクセルも踏んでいません。本当に楽チンです!

 

厳密に言えば、このような運転支援機能はガソリン車でも備えているのですが、EVならほとんどの車種がオプションとして付けることが可能です。

EV DAYS編集部員の一人は、プライベートではガソリン車を所有しているのですが、「自分の車に戻れないくらい快適ですね…」と評していたほどでした。

 

Q7.もしも、電欠したらどうすればいい?

A7.万が一の場合、JAFなどに連絡すれば、最寄りの充電スポットまで運んでくれる。

ここまで読んでいただければ、気をつけていれば電欠になる危険はあまりないことがわかるかと思います。

一方で、今回利用した「アリア」はバッテリー容量が66kWh・航続距離が470km(WLTCモード)もあるために、極めて安心なドライブができたことは否めません。

アリア

 

たとえば、同じ日産でも軽EV「サクラ」はバッテリー容量が3分の1未満(20kWh)なので状況が変わります(そもそも、サクラはロングドライブを想定した車ではありませんが)。

 

 

日産サクラ

 

そのため、万が一の事態についても押さえておきましょう。電欠になった場合には、ガス欠と同じくJAF(一般社団法人 日本自動車連盟)などのロードサービスに連絡することをおすすめします。

JAFのウェブページ2)にも掲載されているとおり、すでにJAFのロードサービスではEVのトラブルにも対応できるようにしており、電欠の場合には最寄りの充電スポットまで搬送してもらえます

 

 

【結論】一定の注意ポイントは存在するが、「EV=ロングドライブに不向き」ではない!

ロングドライブ(アリア)

紀伊半島を巡る途中で、世界遺産「那智の滝」に立ち寄り。荘厳な様子を拝むことができました。

 

1400kmを走破して感じたのは、「快適な旅だった!」ということです。

急速充電を行う場合、30分程度は滞在しなければならないため、面倒くさいと感じるかと思ったのですが、長距離ドライブの場合には、むしろ30分間は短いくらいで、休憩ついでの充電を楽しむことができました

アプリで充電状況を確認

充電状況はスマホアプリで確認することができ、充電完了がすぐにわかります。

 

ただし、前述の宿泊先選びの注意点もそうですが、初めての方にとっては注意すべきポイントは存在します

たとえば、充電カードを持たないで出発したり、充電計画を全く立てていなかったりすると、苦労する部分はあるでしょう。また、急速充電においては、充電器の出力を考える必要があるため、前提知識は備えておく必要があります。

とはいえ、これらは“慣れ”が解消してくれると、今回の旅行で改めて感じました。慣れてしまえば、走行コストのメリットは大きいですし、運転支援機能を利用すれば疲れも少なくでき、「EV=ロングドライブに不向き」とは一概に言えないでしょう。

今回、EV DAYS編集部としても、初のロングドライブでしたが、発見の多い旅となりました。ぜひみなさんも一度試してみることをおすすめします!

【付録】東京〜紀伊半島一周2泊3日:走行距離&充電記録

最後に付録として、3日間の走行距離と充電記録をまとめました。ドライブ中、ほとんどの区間を「ECO」モードかつ回生ブレーキの効きが強い「e-Pedal Step」を選択していたこともあり、最終的に電費は7.0km/kWh。想像以上の数値を記録してくれました。

1日目の行程

2日目の行程

3日目の行程

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
EV DAYS編集部