【特集①】EV市場は成長するか、後退するか?

サムネ

有識者にEV業界トレンドを問う「特集 2025年どうなるEV!?」。第1回目のテーマは「EV市場は成長するか、後退するか?」です。2025年はどのような展開を見せるのでしょうか? EVに詳しい識者10人にその見解を聞きました。

 

世界的にEV市場の成長はやや鈍化していると言われることがあります。では、2025年のEV市場は成長していくのか、それとも後退していくのか。モータージャーナリストやEV関係者、経済ジャーナリストなど、異なる立場の専門家にこの問いを投げかけてみました。

 

EV市場は「成長する」という回答

まず、EV市場は成長するという回答を見てみましょう(以下、回答者名の50音順)。

 

世界的に電動化推進の流れ。日本も補助金次第で成長は継続か

 

CO2削減に向けてこの先は確実に電動化を推進することになる。だが、電池の価格は高いし、政情不安によってEVシフトの流れは鈍化した。しばらくは燃費がよく、コスパも高いハイブリッドやPHEVが主役だろう。日本では軽自動車と軽商用バンまでEVが広がったし、我が国の道路事情に合った運転しやすい輸入車も増えてきている。2024年はアジア勢の健闘も目立った。補助金次第だが、2025年も日本では少しずつEV市場が成長していくと思われる。

回答者

片岡英明

片岡英明さん(モータージャーナリスト)

1954年、茨城県生まれ。自動車専門誌で編集に携わった後、独立してフリーのジャーナリストに。新車のほか、クラシックカーやEVなどの次世代の乗り物にも興味旺盛で、イベント参加することも多い。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

軽自動車・コンパクトカーが日本のEV市場を牽引

 

国や地域によって大きく変わってくると思います。日本についていえば、300万円以下の軽自動車やコンパクトカーからジワジワと販売台数を伸ばしていくと考えています。

回答者

国沢光宏

国沢光宏さん(モータージャーナリスト)

自動車ジャーナリスト。自動車評論家。現在多くの媒体で執筆活動をしているほか、ラジオ日本とFM群馬でラジオのパーソナリティも行い、車選びからドライビングテクニック、業界ニュースなど、広く深い知識をもつ。運営しているブログサイトでは、専門家も参考にしたくなる、新鮮で豊富な情報を発信している。

 

新型EVの登場に比例して成長。日本の「伸び代」は十分ある

 

2025年以降のEV市場は、新型EVの発売に合わせて着実に成長すると考えています。海外のEV普及状況をみても、日本市場にはすごく大きな「伸び代」がありますので、2025年単年でというよりも、トレンドとしては間違いなくEV市場は成長していくと期待しています。

回答者

幸加木英晃

幸加木英晃さん(e-Mobility Power 代表取締役社長)

EVの黎明期である2010年以前からさまざまなEV関連プロジェクトに参加。2024年6月から株式会社e-Mobility Powerの代表取締役社長に就任。

 

中国でもEV成長率は減速。世界のEV市場の伸びは控えめに

 

世界のEV市場は成長するものの、その伸びはわずかなものになりそうです。EVの最大市場である中国では、この1年でPHEVが大幅に伸びる一方、EVのシェアが急減速して伸び率が一桁台になっており、2025年もそのトレンドが続くと考えます。欧州においてはEVの販売シェアがわずかに減少、北米ではわずかに増加すると予想しますが全体への影響は軽微です。日本ではいくつかのEVニューモデルが市場投入され、わずかに成長するでしょう。

回答者

佐藤耕一

佐藤耕一さん(モータージャーナリスト)

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT業界に転じて自動車メーカー向けビジネス開発に従事。2017年ライターとして独立。自動車メディアとIT業界での経験を活かし、CASE領域・EV関連動向を中心に取材・動画制作・レポート/コンサル活動を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

 

日本では商用EVの普及が加速しEV市場を牽引

 

日本におけるEV市場は成長すると思います。特に商用車の近距離宅配でのEV需要が拡大するはずです。そもそもEVは近距離走行が得意であり、また、商用車を使用する企業には、環境対策のアクションが必要です。そうしたニーズに対して、ホンダが「N-VAN e:」を発売したように、供給側もゆっくりとではあるものの対応が進んでいます。トヨタ/ダイハツ/スズキの軽商用EVも、それほど遠くない未来に登場するはずです。そうなれば一気に軽商用のEV化が進みます。

回答者

鈴木ケンイチ

鈴木ケンイチさん(モータージャーナリスト)

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

 

軽自動車のEV化は加速。EVシェアは微増の予想

 

日本市場は2024年比で一定成長すると思う。理由としてはホンダの商用軽EV「N-VAN e:」をはじめとして、トヨタ・ダイハツ・スズキの商用軽EVの投入も見込まれているなど、日本国内の販売シェアの4割を占める軽自動車セグメントにEVが複数車種投入されるから。他方でその販売台数の伸び方は依然として緩やかに推移するのではないかとも推測。現状のBEVシェア率は約1.5%程度なので、2025年末に2%を超えるかどうかというようなイメージなのではないか。

回答者

高橋優

高橋優さん(EV専門ジャーナリスト)

1996年、埼玉県生まれ。2020年よりYouTubeチャンネル『EVネイティブ【日本一わかりやすい電気自動車チャンネル】』を運営。世界の最新EVニュースをわかりやすく解説している。新型EV情報はもちろん、充電インフラ、バッテリーの最新情報、国内外のEV事情など、深く、広く情報を網羅。同時にさまざまなEVの1000キロチャレンジ、極寒車中泊など、EVの運用を体を張ってテスト。ユーザー目線の情報も数多く発信している。

 

EV市場は成長拡大する。しかし国によって差は否めない

 

世界のEV市場は成長する。ただし、地域によって成長率は異なる。注目市場は米国で、トランプ新大統領がどんなEV政策を出すかだが、いずれにしてもEV市場は拡大を続けるだろう。最も成長が期待できるのは中国。ヨーロッパは伸び悩み。注目の日本だが、トヨタがいまだにEV化に後ろ向きなので、市場は逆に縮小する。全固体あるいは部分固体電池が今後のEVの動向を左右するが、気候変動に待ったはかけられず、EV市場の動向は世界の死活問題である。

回答者

舘内端

舘内端さん(日本EVクラブ代表)

東大宇宙航空研究所勤務後、レーシングカーの設計に携わりF1のチーフエンジニアを務めるとともに、技術と文化の両面からクルマを論じることができる自動車評論家として活躍。1994年に日本EVクラブを設立(2015年に一般社団法人化)し、EVをはじめとしたエコカーの普及を図っている。

 

新車種投入と経路充電インフラの普及で日本も成長路線へ

 

グローバルでは着実に成長すると考えています。日本国内では発売される(とくに国産メーカーの)新車種次第。いくつか期待できる新車種発売の予定があるので、2022年の軽EV発売からの時間経過でやや低調だったが、これからは成長に転じると期待しています。高速道路を中心とした経路充電インフラの進化が顕著で、社会の認識が大きく変わるタイミングが近付いていることを感じています。

回答者

寄本好則

寄本好則さん(EVsmartブログ編集長)

コンテンツ制作プロダクション三軒茶屋ファクトリー代表。一般社団法人日本EVクラブのメンバー。2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成。ウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開。電気自動車情報メディアや雑誌特集などに多く寄稿している。著書に『電気自動車で幸せになる』(Kindle)など。

 

EV市場は「後退する」「停滞する」という回答

対して、EV市場は「後退する」もしくは「停滞する」という回答を見てみましょう。

 

2大車市場は後退もしくは停滞。一方で伸び代はある

 

北米市場では後退するだろう。中国市場は横ばいか微増ではないか。その理由は、トランプ政権の誕生によりEVへの政府の補助金政策が打ち切られるから。中国では業界の淘汰が始まり、かつPHEVが伸びるから。長期的な視点では世界市場でEVはまだ伸びるが、これから数年は大きな伸びは期待できない。

回答者

井上久男

井上久男さん(経済ジャーナリスト)

1988年九州大卒業後、大手電機メーカーに入社。 1992年に朝日新聞社に移り、経済記者として主に自動車や電機を担当。2004年、朝日新聞を退社し、2005年、大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了。現在はフリーの経済ジャーナリストとして自動車産業を中心とした企業取材のほか、経済安全保障の取材に力を入れている。

 

2025年は「停滞期」。過熱感から正常化へ

 

成長か後退ではなく「停滞」だと思う。後退するわけではないけど、今までのような急激な成長でもない。長期的な見方としては成長を続けていくことを確信しているものの、2024年以前のここ数年間が、EV業界を取り巻く情勢の盛り上がり方が異常だと感じていた。その異常な成長度合いに比べれば2025年は後退しているように見えるかも知れないが、正しい成長度合いに戻るということだと思う。

回答者

楠一成

楠一成さん(KGモーターズ CEO)

元々、車のパーツなどのアフターマーケット用の企画・開発をする会社を経営。その後、YouTubeチャンネルを開設し、人気チャンネルへと成長させる。2021年から小型モビリティの開発を宣言し、現在ではさまざまな分野のスペシャリストを集めて、事業を拡大。2025年から小型モビリティロボット「mibot」を量産予定。

 

専門家の見解は「緩やかな成長」が主流

専門家の意見をまとめると、「2025年は世界的に緩やかな成長を続ける」という見方が主流となりました。成長要因として中国市場の成長や、日本市場における軽EVの普及、充電インフラ整備の進展などが挙げられます。

一方で、成長の鈍化を指摘する声も。アメリカの政権交代による政策変更や、ヨーロッパでの補助金縮小、中国でのPHEVの台頭などが、EV市場の成長に影響を与える可能性が懸念されています。 全体的に見れば、EV市場は長期的には成長を続けると予想されます。しかし、短期的な視点では、地域ごとの経済状況や政策、技術革新など、様々な要因が影響を与える可能性があり、今後の動向に注目する必要があるでしょう。

 

 

 

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この記事の著者
EV DAYS編集部
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