輝く陽射しと海風に包まれた沖縄を、最新の電気自動車(EV)で静かにゆったり走る──。いま沖縄では、EVレンタカーの選択肢が広がっています。EV専門のレンタカー会社も生まれ、大手レンタカー会社のEV実証実験なども。今回は、IONIQ 5を相棒にロードトリップへ。拠点は恩納村にあるBEB5沖縄瀬良垣(ベブ) by 星野リゾート。秋の柔らかな陽射しのもと、文化と自然をめぐる“大人の沖縄旅”をご紹介します。
EV旅のしおり
1日目:
・旅マエ/クーポンでオトクになる「Hyundai Mobility Passport」
・往路/EVレンタカーでのドライブは、島の風情をよりダイレクトに味わえる
・到着/BEB5沖縄瀬良垣で過ごす、ゆったりとした大人のリゾート時間
・体験/アウトドアの風情がそこかしこに。気分が高まるおもてなし
2日目:
・出発/航続距離が長いEVなら、沖縄なら無充電でも走破できるかもしれない
旅の日程:2025年9月(1泊2日)
往復走行距離:120km
旅の相棒:ヒョンデIONIQ 5
ヒョンデが新世代EV向けに開発した専用プラットフォーム「E-GMP」を初採用した一台。レトロフューチャーなデザインに加え、ゆとりあるホイールベースがもたらす広大な室内空間とフラットな床面が特徴。加速は力強く、回生ブレーキの調整によりワンペダル感覚での走行も可能だ。快適性と先進性を兼ね備え、旅をより上質なものにしてくれるEVである。
実はEVに限らず、沖縄はレンタカー天国だ。遊び心溢れる国内外のクルマが、レンタカーを表す“わナンバー”であったり、沖縄はそれすら使い切って“れナンバー”だったりもする。そんな沖縄だけに、EVレンタカーが多いのは何ら不思議なことではない。
旅マエ/クーポンでオトクになる「Hyundai Mobility Passport」
今回借り受けたのは、ヒョンデのIONIQ 5だ。ヒョンデは沖縄のレンタカー大手・OTSレンタカーとともに「Hyundai Mobility Passport」というキャンペーンを実施している。実はグローバルで行っていて、第一弾はハワイで実施されていた。
キャンペーンでは、レンタカーが最大15,000円割引になるクーポンが、もれなく手に入る。期間は2026年3月1日までだが、訪れたのは夏の香りが残る9月の沖縄。夏休みシーズンから少し外れると、那覇市内を中心とした道路の混雑も少し収まるだろうという目論見で、大人のロードトリップという趣向だ。
レンタカー/普通と変わらない、EVレンタカーを借りる流れ
かくして降り立った那覇空港は、折からの熱帯低気圧の影響で湿気が絡まるものの、雲の合間に太陽が顔を出し、ときおり強烈な陽射しが肌をちりちりと焼く。
到着ロビーにあるレンタカーカウンターで案内を受けたら、送迎のコミューターに乗り込み、空港近隣の店舗へ。予約の確認や補償プランの選択、実車の確認と、このあたりは一般的なレンタカーの手続きと何ら変わらない。
「Hyundai Mobility Passport」参加者は、識別のためにこのようなゴム製バングルを装着し、専用のカウンターで手続きを行う。
「沖縄ではクルマがないと遠出が難しいというのが大きな問題で、移動手段として選ばれる方がとくに多いのです。せっかくならと普段乗れないようなクルマも人気。EVは、この機会に試乗してみようという方が多い印象です」
こう教えてくれたのが、OTSレンタカーの大城伸二さんだ。EVレンタカーはなかなか好評で、とくにインバウンドのニーズも目立つのだという。
「韓国からのお客さまはとくに多いですね。多くが新車ですから、車体の美しさに驚かれます。また、返却時の給油が不要であることはEVならではの大きな利点といえるでしょう」
EVレンタカーは、EVのある日常をシミュレーションするにも打って付け
一充電走行距離が初期型でも600kmを超えるIONIQ 5は、充電を一度もすることなく返却にいたるケースも多いのだそう。その一方で、充電そのものに慣れていない利用客にとっては、戸惑う局面もあるとか。
「別の方が充電していて、タイミングが重なってしまうことがまれにあり、思いのほか時間がかかってしまったというケースもあるようです」
とはいえ、EVユーザーにとっては予期しうる“あるある”な事態ともいえる。レンタカーでのトライアルは、EVを持つ日常をあらかじめ体験できるメリットがありそうだ。
「現在、ヒョンデ製のみならずOTSレンタカーでは約70台のEVを保有しています。これだけあることで、当初は充電インフラの課題も出ましたが、ローテーションを組むことで運用側としても解決が図れています。島内の充電設備が増えれば、もっと需要が出てきそうですね」
OTSレンタカー
︎▶Webサイト
︎▶キャンペーンサイト(ヒョンデ)
グローバル戦略車。しかし日本仕様も気が利いているIONIQ 5
たしかな手応えは、ずらりと並ぶヒョンデ製のレンタカーを見ると納得感が湧く。あてがわれたのはアトラスホワイトのIONIQ 5だ。
フリップアップ式のドアハンドルの脇には、「Hyundai Mobility Passport」の印字が。とくに那覇市内で同じ仕様のヒョンデ車と何台かすれ違ったことから、キャンペーンは好評のようだ。
斬新なデザインに歩調を合わせるようなインテリアは、実は奇をてらったものではない。先進的ながらきれいにまとまったコンソールまわりのレイアウトは、ドライバーファースト。ドライブセレクターはウインカー下に付いていて、ステアリングから手を離さずに操作ができる。またシートの座り心地は上々で、細かく電動調整できる点は気が利いている。グローバルで売る車だけに、大柄な体格でもぴったりアジャストできそうだ。
走り始めて感心するのが、輸入車なのにウインカーが右側に付いていること。また、ウインカーに連動し、メーターの左右に死角の映像をリアルタイムで映し出してくれる。日本の市場を意識していて、気が利いた作り込みだ。
往路/EVレンタカーでのドライブは、島の風情をよりダイレクトに味わえる
初めて沖縄をドライブするなら、ひとつ頭に入れておきたいことがある。島内を南北に貫く、国道58号線の存在だ。南には那覇市があり、北にはやんばるの森がある。北に行けば行くほど、視界に飛び込む自然が増えてくるというわけだ。
県庁所在地らしい都市部の喧騒を背に、助手席側の車窓にはエメラルドグリーンの海が広がり始める。都市からリゾートへ、風景が一気に切り替わる瞬間は、まさに旅の幕開けといった風情を感じさせる。
IONIQ 5の静かなモーター音が、波のリズムや風のざわめきを鮮明に引き立てるようだ。信号待ちでふと窓を開ければ、潮の香りと南国の湿り気がふわりと入り込み、体全体で沖縄を感じられる。
恩納村(おんなそん)へ差しかかる頃、リゾートホテルが点在する海岸線に午後の陽射しが差し込み、車体のシルエットが長く路面に伸びていく。アクセルを軽く踏み込むと、EVらしいトルクフルな加速が、背中をグッと押しこんでくれる。走ること自体が贅沢な体験に変わっていくようだ。
到着/BEB5沖縄瀬良垣で過ごす、ゆったりとした大人のリゾート時間
やがて目の前に現れるのは「BEB5沖縄瀬良垣 by 星野リゾート」のサイン。
ホテルに入ると、まず感じるのは肩の力が抜けるような心地よさだ。「TAMARIBA(タマリバ)」と呼ばれるロビーエリア全体はパブリックスペースを兼ねており、宿泊者は滞在中、思い思いの時間を過ごすことができる。
シンプルで清潔感のある客室は、キッチンとドラム式洗濯乾燥機が付いている全室コンドミニアムタイプ。恩納村は沖縄本島のほぼ中間地点に位置しており、アクセスの拠点としては絶好の場所で、長期滞在にも向いている。窓辺からはリゾートらしい光が差し込み、ベッドに腰を下ろすと長距離ドライブの疲れが自然とほどけていく。
宿泊者用駐車場にはEV専用の充電スペースがあり、チェックインの前後に充電を済ませておけば翌日の出発は万全だ。OTSレンタカーでは、充電カードもレンタルできるオプションが設定されている(2,200円/120時間。e-MobilityPowerカードに対応する急速・普通充電)。旅とEVを無理なくつなぐ仕組みが整っているのは大きな安心感につながる。
体験/アウトドアの風情がそこかしこに。気分が高まるおもてなし
せっかくだから、少しアクティビティに興じてみよう。BEB5沖縄瀬良垣ではレンタサイクルが無料で利用できる。潮風を浴びながらペダルを漕ぐ時間は、旅のリズムを緩やかに変えてくれる。
駐車場の2階は屋外プールになっていて、22時まで無料で利用可能。南国の光と風をダイレクトに感じられる開放的な空間は、冬場は温水プールになるとか。
無料で利用できるバレルサウナも備わり、汗を流したあとに水風呂代わりに飛び込む瞬間は格別だ。
館内で人気のスイーツが「盛れる紅芋モンブラン」(1000円)だ。自分で紅芋のペーストを絞って仕上げる体験型デザートで、SNS映えするビジュアルが話題だとか。中身はさっぱりと塩気の効いたジェラート。
日も落ち始めた夕刻。少し早めの夕食は1階のカフェスペースで、「BEBピッツァセット(2800円)」を注文した。アツアツのピザと9種類ものアンティパストが付いたお得なセットだ。オススメは沖縄らしくゴーヤーサルシッチャ。さわやかにクラフトコーラ(700円)を添えて。
ちなみにこのカフェスペースは、なんと持ち込みも持ち出しも自由。夜になると灯されるかがり火を囲むように出店が増えるキッチンカーのメニューや、立ち寄った先で購入した気になるドリンクと組み合わせられるのは面白い。
出発/航続距離が長いEVなら、沖縄なら無充電でも走破できるかもしれない
翌朝はゆっくりチェックアウト。BEB5沖縄瀬良垣ではチェックアウト時刻を「11時くらい」と定めており、のんびりと朝を過ごすことができる。せっかくだから近隣をドライブで散策することにした。BEB5沖縄瀬良垣では、テイクアウト用のドリンク「ドライブバディー」(500円~)が人気だ。フレーバーは黒糖バナナスムージーとパイン&パッションフルーツティー。たっぷり入っているのは、途中でコンビニに立ち寄ることなく目的地にそのまま向かってもらうための心遣いなのだとか。
IONIQ 5の広々としたリアシートにセット。ゆったりと後部座席で楽しむのもいい。IONIQ 5は後席・前席ともに左右に移動がしやすいウォークスルー仕様。狭い都市部の駐車場でも、乗降がしやすい。
充電コネクタを外し、ボタンを押せば自動でフラップが閉じる。デジタルメーターに表示された充電ゲージは、当然のように100%を示す。前日は53kmの道のりを走って83%まで減っていた。仮に美ら海(ちゅらうみ)水族館やジャングリア沖縄のある本部(もとぶ)半島まで走ったとして、宿からは約40km。那覇から片道で充電の半分も使うことはないだろう。したがって旅程によっては、無充電で沖縄旅行を終えることもできるわけだ。走るためのコストが無料であるというのは、ガソリン車と比べるとEVの優位性が際立つ。
施設名 | BEB5沖縄瀬良垣 by 星野リゾート |
住所 | 沖縄県国頭郡恩納村瀬良垣1860-4 |
電話番号 | 050-3134-8098(星野リゾート予約センター) |
Webサイト | https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/beb5okinawaseragaki/ |
帰路/出会いと気付きに溢れた、オトクなEVレンタカーの旅
目的地は読谷村(よみたんそん)にある「やちむんの里」。宿から20kmほどのところにあり、出発して約30分で到着した。工房やアトリエが集まった集落で、沖縄の焼き物・やちむんを窯元から求めることができる。
陽光を生い茂る木々が受け止め、木漏れ日が心地いい。沖縄の集落らしい素朴な細道を、スルスルと静かに走らせる。窯元や売店はところどころに点在しており、歩くには少し骨が折れる。ちなみに、沖縄の古い集落には猫が多い。EVなら、ときおり姿を見せる彼らを不用意に威嚇することもないだろう。
ドライブしながらふと横目に、立派な登り窯が目に入った。
やちむんのルーツは、古く琉球王国が独自に交易を行っていた時代に遡る。諸説あるが薩摩を通して朝鮮半島から作陶が伝来し、独自の発展を遂げたとも聞く。そういえばIONIQ 5の祖国は韓国だ。異国の地で、それぞれのルーツが重なるようでなんだか面白い。さて、フライトまではまだたっぷり余裕があるが、そろそろ那覇方面に向かおうか。トランクスペースにはまだまだ余裕があるし、国際通りにクルマを駐め、牧志(まきし)公設市場まで足を延ばしてみるのもいい。
気の赴くままに、そしてところどころに思いがけない気付きが溢れた、大人のEVドライブ旅はもう少し続きそうだ。
施設名 | やちむんの里 |
住所 | 沖縄県中頭郡読谷村座喜味2653ー1 |
撮影:平安名 栄一
※本記事の内容は公開日時点での情報となります