
カウンタック、ディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールと続いてきた、ランボルギーニのフラッグシップが新しくなり、初めて電動化をはたしました。V12エンジンに計3つのモーターを組み合わせ、システム総合で1015CVものMAXパワーを引き出すとともに、外部からも充電できるようにした、新時代のスーパースポーツ4WDモデルです。その驚愕の走りをモータージャーナリストの岡本幸一郎さんがレポートします。
EV DAYSで取り上げるクルマは、外部から充電できることが条件だ。実用車はもちろん、ときにはその条件に合致する中で、尖ったクルマも取り上げて、読者のみなさまにこういうクルマにも電気の力が活かされていることを知ってもらえるといいなと考えている。今回はその中でも、現状これ以上はないであろう、究極的な高性能PHEVだ。

さすがにランボルギーニとなれば、一般の方々が乗ろうと思ってもなかなか乗れるものではないはずだ。だからこそ、こうして我々が取材した記事を読んで楽しんでいただけると幸いに思う。
電動化の波をいち早く捉えた、名門フラッグシップの驚異のパフォーマンス
2021年5月のインタビューで、アウトモビリ・ランボルギーニの社長兼CEOは、「電動化を急いではいない、また遅れているとも思っていない。Lamborghiniというアイデンティティを考えているので電動化についてはしっかりと準備したい」という旨を述べており、それがついに現実のものとなった。レヴエルトは6.5L V12にプラス計3基ものモーターを積んで出てきた。その後に発表された弟分のテメラリオも同様に4.0L V8ツインターボに3モーターを組み合わせている。

もはや、スーパースポーツといえども電動化なしには理解が得られない時代になり、ランボルギーニは早急にそれに応えたということだ。それで電動化により失ったものはあるかと問われたら何も思い当たらず、得たものは何か問われたらたくさんあったことを、あらかじめお伝えしておこう。

「レヴエルト」という名称は、ランボルギーニの伝統に則して、闘牛の名前に由来している。1880年8月1日にバルセロナで戦ったレヴエルトは、試合中に何度も柵を越えるほど大暴れしたという。また、レヴエルトとはスペイン語で「かき混ぜる」という意味で、ハイブリッドとなった新時代のスーパーカーに与えるネーミングとしてもふさわしいわけだ。

ランボルギーニではレヴエルトのことを、PHEVを超えて、ハイパフォーマンス・エレクトリファイド・ビークルを意味する「HPEV」と呼んでいる。エンジンが825CVで、フロント2基、リア1基のモーターは、最高出力がすべて110kWで、最大トルクはフロントが各350Nm、リアが150Nmと強力そのものだ。

システム総合の最高出力は1015CV、パワーウエイトレシオは実に1.75kg/CV、0-100km/h加速タイムは2.5秒、0-200km/h加速タイムは7秒以下、最高速度は350km/hオーバーに達するという。
フロントモーターは左右で駆動力を精密に制御することでトルクベクタリングとしても働くほか、ブレーキ回生も担う。リアモーターはスターターとジェネレーターも兼ねている。
電動の利点を至るところに取り入れ、穏やかさも兼ね備えた

独特の形をしたステアリングホイールの左側には「ANIMA」と呼ぶドライブモード、右側にはEVに関するモードが選択できるようになっていて、それぞれ掛け合わせることで計13通りの設定ができる。

ソリッドな形状のスタートボタンを押すとシステムが起動するが、EV走行の「チッタ」モードがデフォルトになっており、エンジンはかからない。そのまま目的地に向けて走り出し、どんなふうに走れるか、まずは試してみたところ、エンジンをまったくかけることなく、想像よりも走れた。

速さも十分なら、距離ももっと短いかと思っていたら、意外とねばったように思えた。120km/hまでモーターのみで走れるというだけあって、アクセルを踏み増してもしっかり加速できる。

センタートンネルに配されたバッテリー容量は3.8kWhというから、EV走行距離はそれほど長くはないが、これがあるとないとでは大違いだ。

レヴエルトのようなクルマなら、大きなマンションやビルの地下駐車場か、周辺にお屋敷が立ち並ぶ高級住宅街のガレージに収められているはずだが、そこから流れに乗って走れる場所+αまでエンジンをかけずに移動できるのは助かる。

EV走行は基本的にフロントモーターのみで行われ、リバース走行についてもリバースギアはなく電動となる。ただし、状況によってはリアモーターも加わり、EV状態で4WDとして走るときもある。
V12エンジンの咆哮が響けば、そこはもうランボルギーニの世界

チッタモードで走っていてバッテリーがなくなりそうになると、「V12エンジン始動間近」と表示され、ほどなくエンジンがかかると、それはもうランボルギーニの世界そのもの。いかにも獰猛そうなお家芸の爆音は、むしろ歴代ランボルギーニのフラッグシップの中でも際立つもので、電気で静かに走っていたときとのギャップがあまりに大きい。

エンジン暖機中は、レブリミットの表示が7000rpmから10秒おきぐらいに、エンジンの温まりぐあいによって段階的に9500rpmまで上がっていく。最高回転数が9520rpmというのも相当なものだ。

「リチャージ」モードを選ぶとエンジンをかけてバッテリー充電を重視するようになる。「ストラーダ」×「ハイブリッド」モードにするのが、もっとも効率よく走れるそうだ。「スポーツ」にすると吹け上がりが変わる。「コルサ」は支援デバイスがすべてOFFになるので、公道で使わないほうがいい。

公道での試乗なので、本来の実力の一部しか発揮させることはできなかったが、とてつもないパフォーマンスを持っていることはヒシヒシと伝わってきた。
衆目を集めるスーパースポーツ。一方で使い勝手も十分考えられた、新時代の一台

撮影場所まで向かう間には、どれだけ目で追われたことか。本当に周囲からの視線が熱かった。こんなクルマが走っていたら、見たくなるのも無理はない。スピード感満点のシルエットはもちろん、Y字型のライトシグネーチャーを駆使してよりインパクトを与える意匠とされた前後のデザインも目を引く。

エンジンについても、これまで他メーカーも含めカバーを透明にするなど見せるための工夫をしていたが、レヴエルトではついにヘッド部分がむき出しになった。

その後方にはモーターを積むため高い位置にレイアウトされたエキゾーストの大きな六角形の排気口が横に並ぶ。

走りながらけっこうな勢いで充電できるので、あまり使うことはないかもしれないが、外部から充電する際の充電口は、フロントフードの下にこのような形で配置されている。

ドライブしてもうひとつ印象的だったのが、とても乗りやすいことだ。クルマ全体の精度感が極めて高くて、ステアリングを切ったときにも、まったく遅れがなくスムーズに回頭する。そこには、後輪操舵とフロントモーターによるベクタリングが大いに効いているに違いない。そこにも電気の力が活かされている。

また、歴代モデルと違ってシザースドア側にサイドシルが取り付けられたおかげで、乗り降りしやすくなっている。そうした細かいところを進化させているのもさすがである。

初の電動ファイティングブルは、電気の力を得たからこそ実現できた新時代の走りを味わわせてくれた。そして、レヴエルトのようなクルマを手に入れるのは簡単なことではないが、この世に存在してくれるだけで嬉しいものだとあらためて思った。
撮影:茂呂 幸正
〈スペック〉
ランボルギーニ レヴエルト
| 全長×全幅×全高 | 4947mm×2033mm×1160mm |
| ホイールベース | 2779mm |
| 車両重量 | 1772kg(乾燥) |
| エンジン種類 | 自然吸気6498.5cm3 V型12気筒DOHC |
| エンジン最高出力 | 825CV(607kW)/9250rpm |
| エンジン最大トルク | 725Nm/6750rpm |
| トランスミッション | 8速DCT |
| ジェネレーター | リアP2-P3電気モーター 110kW/10000rpm |
| 電気モーター | フロントeアクスル 220kW/3500rpm |
| システム最高出力 | 1015CV |
| バッテリー種類 | 高出力リチウムイオンバッテリー |
| バッテリー容量 | 3.8kWh |
| 一充電EV走行距離 | 約10km |
| 0-100km/h加速 | 2.5秒 |
| 最高速度 | 350km/h |
| 駆動方式 | 4WD |
| サスペンション | 前後ダブルウィッシュボーン式 |
| タイヤサイズ | 前265/30ZR21 後355/25ZR22(オプション) |
| 税込車両価格 | 約6600万円 |
〈ギャラリー〉

























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