Audi RS e-tron GT。美しさと性能を追求したEV時代のグランツーリスモ

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「e-tron」「e-tron Sportback」に続くEV第2弾として登場した「e-tron GT」は、その名のとおりEVのグランツーリスモ。その生産は、アウディのベーリンガーホフ工場においてカーボンニュートラルな方法で行われます。今回、モータージャーナリストの岡本幸一郎さんがステアリングを握るのは、そのトップグレードに君臨する「Audi RS e-tron GT」です。

2026年以降に発売する新型車は、すべてEVにすると発表したアウディ。2025年までにも30種類の電動化モデルを提供し、そのうちの20種類はEVにするという目標を掲げ、これまでも「e-tron」と名の付く電動車を送り出してきた。先発のSUVタイプのe-tronシリーズに続く、純粋なEVの第2弾となるe-tron GTはまったくの別物。アウディの理想を体現する最高峰のEVのグランツーリスモとして、フラッグシップスポーツの「R8」に代わりアウディの先進性やプレミアム性を訴求する使命を負っている。

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機能美を体現した美しいスタイリング

街を走ると、多くの人が目で追っているのがわかる。時代の最先端を行くテクノロジーとエモーショナルさを兼ね備えた容姿は極めて印象深く、見た者の感性に訴える力を秘めている。特徴的なシングルフレームグリルや、大きく張り出したブリスターフェンダーも目を引く。

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流麗さとダイナミックさを兼ね備えた、地を這うように低くワイドで伸びやかなシルエットは、徹底的なエアロダイナミクスの追求により生み出された、まさしく機能美を体現したもの。整流効果を高めるディンプルアンダーカバーや高速走行時にせり出す可変式リアスポイラーを備え、空気抵抗を示すCd値は0.24と低く抑えられている。

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LEDを駆使した先進的なライトもアウディならでは。対向車や先行車を検知して無数のLEDのオン/オフを個別に切り替えることで常時ハイビームでの走行を可能としたマトリクスLEDヘッドライトが、暗い道でも良好な視界を確保してくれる。美しいリアスタイリングをより際立たせる特徴的なLEDリアコンビライトや、アウディが先鞭をつけた視認性に優れる「流れるウインカー」もより先進性を印象づけている。

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車内は5人の乗車が可能な広さを確保している。アウディ特有のドライバー指向のダッシュボードは、広々としたインテリアデザインと組み合わされ、快適でスポーティなツーリングスポーツカーとしてのキャラクターを表現している。ドアミラーに映るリアフェンダーのふくらみも印象深い。

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マテリアルでもサスティナビリティを表現している。フロアカーペットとマットには布地等の端切れや使用済みの漁網などをリサイクルした素材を採用。本革を一切使用せず人工皮革とし、シートにペットボトルや布の端切れを再生したウールのような風合いのカスケードクロスという素材を組み合わせるなどした「レザーフリーパッケージ」のオプション設定もある。

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最大で3人も座れる後席は、フロア下に搭載するバッテリーパックの形状を工夫し、足元をくぼませてスペースを確保したり、後席に座る人の膝が当たらないように大柄フロントシートの背面をえぐるなど、居住性を高める配慮もなされている。大人4人でのロングドライブまで許してくれる余裕があるのだ。

注目すべき特徴的メカニズム

メカニズム的には先発のSUVタイプのe-tronよりも、本連載の初回で紹介したポルシェ・タイカンとの共通性が多く、同様の特徴がいくつかある。最大のポイントは、通常のEVの倍となる800Vというシステム電圧のテクノロジーだ。これにより充電時間を短縮できるほか、電流値を下げられるおかげで熱が発生しにくく、ワイヤーハーネスを細くして軽量化できるという利点もある。

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また車体右側面には普通充電口、左側には急速充電口が設けられる。急速充電はCHAdeMO方式に対応し、90kWの急速充電器ではわずか30分で走行距離250km分以上の充電が可能だという。充電プラン「e-tron charging service」を契約すれば、国内約6700基の急速充電器が使用可能で、全国103店舗(3月22日時点)のe-tronディーラーにも順次150kWの急速充電器が設置される予定だ。

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quattro(クワトロ)4輪駆動システムによる卓越した走りで名高いアウディらしく、前後に2基のモーターを配した電動4WDシステムを搭載するが、それだけではない。リアモーターには2速のトランスミッションを組み合わせている。これにより俊敏な発進加速と効率的な高速走行、高い最高速度のすべてを手に入れた。

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なお、モーターは誘導モーターではなく、高効率かつ軽量な同期モーターを採用。93.4kWhの容量を持つ駆動用バッテリーは、充電と走行の両面でその性能を最大限に引き出すべく、4つの冷却回路により綿密に温度管理されている。その結果WLTCモードの一充電走行距離は534kmに達する。

EVなればこそ実現できた走り

その走りは鮮烈極まりない。前後のモーターが生み出すリニアで力強い加速はなかなかインパクトがある。ローンチコントロール時は1速発進となり、さらに瞬発力が高まる。さすがは0-100km/h加速タイムが3.3秒というだけのことはある。走り方に呼応した合成スポーツサウンドも奏で、ドライバーの気分を高めてくれる。

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ハンドリングの仕上がりも素晴らしい。Audi RS e-tron GTにはエアサスが標準装備され、さらに4輪操舵と可変レシオステアリングを装着することもできるのだが、この組み合わせが絶品だ。大径タイヤがガッチリと路面を捉えるとともに、車体の大きさと重さを感じさせない極めてシャープな回頭性と正確で安定した操縦性を両立した、まさしく意のままの走りを実現している。これは電動パワートレインの巧みな配置による低い重心と理想的な前後重量配分も効いているに違いない。

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ブレーキは最大0.3Gまでの減速には通常のブレーキは使わず、前後のモーターを適宜制御して回生させることで、日常走行の減速時の大部分をカバーしている。また、ブレーキダストを9割も低減し、ブレーキの使用頻度が低いEVにありがちな錆を防ぐタングステンカーバイドコーティングブレーキが標準装備されている。

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将来的にEV専門のブランドになることを宣言しているアウディの新たなフラッグシップスポーツは、EVだからこそ、これほどまでにダイナミックでインテリジェントな走りを実現できることを証明した。と同時に、高い居住性も併せ持ち、デイリーユースから休日のロングクルーズまでこなす役者ぶり。グランツーリスモの新たな時代の幕開けを物語る1台である。

 

〈スペック表〉

全長×全幅×全高 4990mm×1965mm×1395mm
ホイールベース 2900mm
車両重量 2320kg
バッテリー容量 93.4kWh
最高出力 646ps(475kW)
最大トルク 830Nm
一充電走行距離 534km(WLTCモード)
駆動方式 4WD
最高速度 250km/h
0-100km/h加速 3.3秒
税込車両価格 1799万円

 

〈ギャラリー〉

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この記事の著者
岡本幸一郎
岡本 幸一郎

1968年富山県生まれ。父の仕事の関係で幼少期の70年代前半を過ごした横浜で早くもクルマに目覚める。学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作や自動車専門誌の編集に携わったのちフリーランスへ。これまで乗り継いだ愛車は25台。幼い二児の父。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。