暮らしの安全を守るためにも、日頃から災害時の備えをしておくことは大切です。災害発生時は断水による飲料水や生活用水の不足が想定されるため、水を備蓄した上で、緊急時の水の確保方法を把握しておくことは特に重要です。しかし、「水はどのくらいあれば安心なの?」「ベストな備蓄方法は?」といった点が気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで、災害時のために準備しておきたい水の必要量や、正しい備蓄方法を解説します。併せて、水がなかった場合の確保方法も紹介しますので、万全な災害対策にお役立てください。
- 災害対策として用意すべき飲料水の量は、1人あたり9L!
- ウォータータンク、ペットボトル、ウォーターサーバー…水の備蓄方法は?
- 【コラム】近年の災害時における水の配給事情は?
- 備蓄水がない場合、災害時に水を確保する方法とは?
- 水の備蓄以外に災害対策として備えておくべきことは?
- 災害時のための水の備蓄方法を見直してみましょう
災害対策として用意すべき飲料水の量は、1人あたり9L!
最初に、災害時に備えるべき水の量はどれくらいなのか見ていきましょう。
一般的な目安として、災害対策に必要な水の量は1人あたり約9Lとされています。しかし、これは水分補給や調理に使う「飲料水」のみの場合です。
災害時は飲料水だけでなく、トイレ(使用可能な場合)や衛生対策などに使う「生活用水」も必要となるため、水を備蓄する際は9Lよりも多く用意しなければなりません。
そこで、飲料水と生活用水に分けて、具体的に必要な備蓄量をご紹介します。
1日に必要な飲料水は1人あたり3L!
飲料水は、1日につき1人あたり3L程度あると安心です。農林水産省の「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」でも、直接飲用する水は1人あたり1日1L必要で、調理などに使用する飲む以外の水も含めると、3Lほど用意することを推奨しています1)。
また、災害時用の水は、最低でも3日分の備蓄が望ましいとされています。1人1日3L×3日分で、1人あたり9Lの飲料水を用意しておくとよいでしょう。
生活用水はどのくらい準備するべき?
手洗いやトイレ(使用可能な場合)、食器類の洗浄などに使う生活用水は、1日につき1人あたり10~20L必要と言われています。これは最低限の生活水準を維持するために必要とされている水量です2)。
消防庁によると、大規模な災害発生時の生活用水の給水は災害発生から1週間~10日程度を目途に行われる目標のため、すぐに生活用水が得られるとは限りません。そのため、飲料水とは別に生活用水も準備する必要があります。
家族構成にもよりますが、最低でも3日分(1人あたり30~60L)の生活用水を用意しておきたいところです。
ペットがいる場合はどうする?
ペットを飼っている家庭は、人間用とは別にペット用の飲料水も準備しておきましょう。
また、物資の支援で必ずしもドッグフードやキャットフードなどの食料やペット用品の支給を受けられるとは限りません。そのため、必ず食料やトイレシーツ、砂なども多めにストックしておきましょう。
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ウォータータンク、ペットボトル、ウォーターサーバー…水の備蓄方法は?
続いて、気になる水の備蓄方法についてご紹介します。飲料水と生活用水で備蓄方法が異なるため、それぞれどのような方法があるのか見ていきましょう。
飲料水はローリングストック法による備蓄がおすすめ
まずは、水を備蓄するにあたって知っておきたい「ローリングストック法」のポイントを確認します。
「ローリングストック法」3)とは、災害時に備えて水や食料を多めに買い置きして、消費した量に応じて補充する、という備蓄方法です。水や食料を、日常的に消費しながら備蓄していくこととなります。
ローリングストック法のポイントは、古いものから消費することと、使った分は必ず補充することです。それによって一定の備蓄量を維持しつつ、水や食料の鮮度も保つことができます。
飲料水はこのローリングストック法で備蓄することを踏まえて、具体的な備蓄方法について、3つのパターン別に見ていきましょう。
飲料水の備蓄方法①防災用ウォータータンク
ポリタンクなどのハードタイプのウォータータンクは、大容量の水を備蓄できる点がメリットです。また、保管スペースに限りがある場合は、小さくコンパクトに収納できる袋状のソフトタイプも選ぶとよいでしょう。
デメリットとしては、ハードタイプはある程度の広さの保管場所が必要な点や、ものによっては運びにくい点が挙げられます。
上記のような特徴を踏まえると、ウォータータンクは保管スペースの広さや備蓄したい水の量に応じたサイズを選ぶことが大切です。また、キャスター付きの運びやすいものや、コック付きで必要な量だけ水を出せるものもおすすめです。
なお、ウォータータンクで水を備蓄する場合は、水だけでなくタンク自体の点検も行いましょう。長期的に保管しておくとタンクが劣化したり、ひび割れを起こしたりすることがあります。災害時に問題なく使えるよう定期的に点検し、必要に応じて交換しましょう。
飲料水の備蓄方法②ペットボトル
ペットボトルの飲料水は、小分けにして常温で長期間保存できて、賞味期限もわかりやすい点が魅力です。また、500mLや2Lなど1本あたりの容量が明確なため、備蓄量を把握しやすい点もメリットと言えるでしょう。フタを開けるだけで使用できるので、消費しやすい点も魅力です。
注意したいのは、一度開封したペットボトルの水は、早めに消費する必要があることです。また、衛生的な観点から、飲用する際はボトルに直接口をつけず、コップなどに注いで飲むよう心がけましょう。
持ち手やキャスターが付いたウォータータンクと比べると、緊急時の持ち運びやすさは劣るため、段ボールに取り付けられる持ち手なども用意しておくことをおすすめします。
飲料水の備蓄方法③ウォーターサーバー
災害対策の一環として、ウォーターサーバーを導入する方法もあります。
定期的に水が届くため自身で買い足す必要がなく、備蓄の管理が非常に楽になります。また、電気があれば冷水とお湯を出し分けることも可能です。災害時に備えつつ、日常生活でも便利に使うことができるでしょう。
その一方で、ほかの備蓄方法よりもランニングコストがかかりがちな点には注意しましょう。水代に加えて、サーバーレンタル代や配送料、電気代、メンテナンス料などがかかるため、サービスによっては割高に感じられるかもしれません。
また、ウォーターサーバーを設置する場所と、補充用ボトルの保管場所もそれぞれ必要です。
ここまで、飲料水の備蓄方法をご紹介しました。続いて、生活用水の備蓄方法を2つのパターンに分けて見ていきましょう。
生活用水の備蓄方法①お風呂の浴槽
お風呂の浴槽は、一般的な住宅なら最も多くの水を備蓄できるスペースです。毎日お風呂を沸かす前に前日貯めておいた水を捨てるといったことを習慣にすれば、常に150~200Lほどの生活用水を備蓄することができるでしょう。「毎日は難しい…」という方なら、台風や大地震後の余震に備えるためなど、ある程度予測可能な災害のときだけ貯めておくという選択肢もあります。なお、この水量は一般的な浴槽の7割程度に注いだときのものになります。
浴槽に水を貯めておく際の注意点は、必ずフタを閉めることです。フタを閉めていないと、地震が起きた際に中の水が溢れ出てしまうためです。地震の大きさにもよりますが、せっかく貯めておいた水が半分以上流れ出てしまう可能性もあります。
また、フタを閉めないと水面と空気の接触が増えて、水の腐敗の原因となるカビやホコリが侵入しやすくなります。なるべく清潔な状態の水を備蓄するためにも、必ずフタを閉めましょう。
生活用水の備蓄方法②エコキュート
自宅に空気の熱でお湯を沸かす高効率ヒートポンプ給湯機「エコキュート」を導入している場合は、タンクに貯まっているお湯や水を生活用水として使うこともできます。
主流タイプのエコキュートの場合、タンク内には370Lものお湯や水が常に貯められています。370Lと言えば、浴槽の約2杯分に匹敵します。
1日につき1人あたり10~20L必要だと前述しましたが、たとえば5人家族の場合、4〜8日間程度もつ計算になります。
これだけの生活用水を確保できるため、災害時の心強い備えとなるでしょう。お風呂に水を貯める場合と違って、いつ訪れるかわからない災害への備えとして、日頃から自然に水の備蓄ができて、手間がかからないのも魅力です。
なお、エコキュートはお湯を沸かすための電気が少ない高効率で省エネな機器です。また、太陽光発電と一緒に導入すると、災害対策になるだけでなく、経済合理性もよくなります。初期費用ゼロで導入できる方法もありますので、検討することをおすすめします。
エコキュートや太陽光発電の導入をカンタン手軽にする「エネカリ/エネカリプラス」
機器導入の初期費用を抑える方法のひとつとして知っておきたいのが、エコキュートや太陽光発電などの機器の導入費用がゼロ円(※)になる東京電力グループの「エネカリ/エネカリプラス」です。毎月、定額のサービス料を支払うだけで災害対策を実現できます。
暮らしのスタイルに合わせて必要な機器を選択した上で、定額サービスを利用できるほか、毎月の電気代もおトクな料金プランにすることができます。
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※「エネカリプラス」では別途足場代等の費用がかかる場合があります
参考資料
3)日本気象協会「ローリングストックについて」
【コラム】近年の災害時における水の配給事情は?
災害対策をしていると、実際に災害が発生した際、水の配給は本当に受けられるのか不安に思う方もいるのではないでしょうか。
ここでは、近年の災害時における水の配給事例や、スムーズに配給を受けるためのポイントを見ていきましょう。
熊本地震の水の配給事例
2016年4月14日と16日に最大震度7を観測した熊本地震。熊本を中心とした九州地方の被災地では、7県34市町村において最大44万5857戸が断水し、完全復旧までには1カ月以上かかりました4)。
こうした状況を受け、地震発生直後より日本水道協会が中心となって各地で応急給水が行われ、15日には対応が始まるスピード感でした5)。
しかし、20万人以上が避難生活を送る中、多くの避難所で水が不足。内閣府の報告書によると、避難所での滞在中に不足して困ったもののトップ2は「生活用水」(41.6%)と「飲料水」(39.0%)だったと言います6)。熊本県内では身体的な負担による震災関連死も複数発生し、中でも血流の悪化が原因となる「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)」は、睡眠不足や運動不足のほか、水分不足も関係していたと考えられています7)。
近隣の給水拠点を把握することも大切
災害時の水不足を回避するためにも、全国各地の水道局は、災害などによって断水した際に水を配給する給水拠点を設置しています。
たとえば東京都は、水道施設や公園の下に水を貯めておく「災害時給水ステーション」を各地に開設しています8)。断水時にポリタンクやペットボトルなどの容器を持参すると、水の配給を受けられる施設です。
災害時に水の配給をスムーズに受けるためにも、日頃から住まいや避難所から近い給水拠点を把握しておくことが重要です。
参考資料
4)厚生労働省「『平成28年(2016年)熊本地震水道施設被害等現地調査団報告書(アンケート調査結果追加版)』について」
5)公益社団法人日本水道協会「熊本地震における日本水道協会の対応について」
6)内閣府「平成28年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書」
7)日本循環器学会「『避難所における循環器疾患の予防』に関する学会声明」
8)東京都水道局「災害時に水を配る場所 ~災害時給水ステーション~」
備蓄水がない場合、災害時に水を確保する方法とは?
災害発生時に、必ずしも十分な量の備蓄水があるとは限りません。そこで、もし備蓄水がなかった場合に水を確保する方法をご紹介します。
原則として、生水を飲むのはNG!
まず注意したいのが、生水を飲むのは原則避けるということです。やむを得ず井戸水などを飲用するときは必ず十分に煮沸して、殺菌します9)。
また、衛生対策として、給水車から配給される汲み置きの水はできるだけ当日給水されたものを使用しましょう。
参考資料
9)厚生労働省「被災地での健康を守るために」
ペットボトルで濾過装置をつくる方法
災害時に水を確保するには、濾過装置を使う方法があります。濾過装置はペットボトルやガーゼなどの身近なもので作成できるため、ここではその作り方と使い方を見ていきましょう10)。
ただし、この濾過装置で確保できるのは飲料水ではないことに注意が必要です。生活用水の確保としてご利用ください。
〈表〉用意するもの
・空のペットボトル2本 ・砂 ・小石 ・活性炭 ・綿 ・ガーゼ ・輪ゴム |
1.ペットボトルを加工する
1本目のペットボトルの注ぎ口から10〜15cmくらいの部分をカッターなどで切り取ります(この部分は、濾過した水を受ける器になります)。
もう1本のペットボトルの底から2〜3cmくらいの部分をカッターで切り取ります。キャップを外して、ペットボトルの注ぎ口にガーゼを被せて輪ゴムで留めます。
2.ペットボトルに材料を詰める
ガーゼを被せたペットボトルの注ぎ口を下にして、綿→小石→綿→活性炭→綿→砂の順番で詰めていきます。それぞれの層に隙間ができないように、しっかりと詰めましょう。
3.水を濾過する
濾過したい水を、逆さにしたペットボトルに静かに流し入れます。濾過された水は、キャップの穴からゆっくりと落ちていきます。1回目は、元々小石などに付着している汚れが出る場合があります。2〜3回繰り返すと、より透明な水が出てきます。
緊急時、水の確保に役立つグッズ
近年は災害時の備えへの関心の高まりもあり、さまざまな災害対策グッズが登場しています。水の確保に役立つものもあるため、おすすめのグッズをご紹介しましょう。
・給水袋
水の配給時に持ち運びやすいソフトタイプの水の容器で、リュックタイプもあります。大きいポリタンクの持ち運びや保管が難しい場合に重宝します。
・ポリタンク型浄水器
賞味期限切れのペットボトル水や貯水槽の水などに使える、非常用浄水器です。原水が水道水なら飲料水として、それ以外なら生活用水として使用できるようになります。
水の備蓄以外に災害対策として備えておくべきことは?
災害時に備えるためには、水の備蓄以外にもさまざまな対策をしておく必要があります。ここでは最後に、備えておきたい災害対策をご紹介します。
【家族連携】避難場所や連絡方法の共通認識を持つ
災害が発生したとき、必ずしも家族が近くにいるとは限りません。また、電話回線の混雑などによって、なかなか安否確認ができない可能性もあります。そのため、非常時の連絡方法、避難場所のルートなどについて、事前に決めておくことが大切です11)。
【緊急用リュック】非常食や防寒シートなど一式を準備する
災害発生時に避難する際にすぐに持ち出せる、緊急用リュックも用意しておきましょう。リュックには、非常食をはじめとした避難所で必要なもの一式を入れます(非常食は3日〜1週間分の備蓄が望ましいとされています)11)。
水と同様に、非常食は定期的に賞味期限などをチェックして、必要に応じて消費したり入れ替えたりしましょう。また、緊急用リュックはすぐに持ち出せるように、玄関や寝室などに置きます。
【停電対策】充電グッズの準備、太陽光発電等の導入も検討
停電時の備えとして、スマートフォンのモバイルバッテリーや、懐中電灯やラジオなどに使える乾電池も備蓄しておきましょう。
また、電気自動車(EV)の大容量バッテリーを利用すれば、数日間の電気をまかなえます。そのため、EVを保有している家庭では、EVの大容量バッテリーから家庭に電気を供給するV2Hシステムの導入を検討するのもおすすめです。
近年はV2Hを介さずに電気を供給できるEVも登場しているため、乗り換えを検討している場合は、こうした自動車をチェックしてみるのもよいでしょう。停電対策については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
さらに、停電対策として太陽光発電や蓄電池などの設備を自宅に導入するのもひとつの方法です。蓄電池があれば、停電時に照明や家電、スマートフォンなどが使えるようになります。太陽光発電とセットなら、より継続的に電気を使用できるため、災害時の心強い備えとなるでしょう。
太陽光発電や蓄電池の導入を手軽にできる「エネカリ/エネカリプラス」
太陽光発電や蓄電池などの設備は大きな初期費用がかかることを懸念する方も少なくないでしょう。けれど、東京電力グループの「エネカリ/エネカリプラス」なら初期費用ゼロ円(※)で導入することが可能です。毎月、定額のサービス料を支払うだけで災害時にも安心です。
▼「エネカリ」「エネカリプラス」について詳しく知りたい方は、以下のサイトをご覧ください。
※「エネカリプラス」では別途足場代等の費用がかかる場合があります
災害時のための水の備蓄方法を見直してみましょう
災害時に水不足が続くと、脱水症状や感染症、さらには心筋梗塞やエコノミークラス症候群などの命にかかわる病気のリスクも大きくなってしまいます。
十分な水の備えがあるかどうかで、健康維持のために必要な水分を摂れるか、避難先で衛生的な生活を送れるかといったことが左右されるため、今一度水の備蓄量や備蓄方法を見直してみてはいかがでしょうか。