RANGE ROVER PHEV 伝統と洗練の究極級ラグジュアリーSUV

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ラグジュアリーSUVの元祖ともいうべき存在が、第5世代に進化しました。伝統を受け継ぎつつも、比類のない洗練性と最高峰の走破能力を兼ね備えたことを標榜しています。そんな最新のRANGE ROVERには、歴代で初めて直6ガソリンのPHEVがラインナップされました。その唯一無二の世界観を、モータージャーナリストの岡本幸一郎さんがレポートします。

2024年についに初の完全EVの投入を予定しているRANGE ROVERだが、それに先駆けて登場したPHEVは、3リッター直6ガソリンエンジンと105kWの電動モーターを組み合わせ、モーターのみでのEV航続距離は最大103km(実航続距離は最大88km)を誇る。しかも今回の撮影車両は、ハイパフォーマンスモデルやビスポークオーダーを専門に手掛ける「SVO(=スペシャル・ビークル・オペレーションズ)」部門が開発した、ラグジュアリーとパーソナライゼーションを極めたモデル「SV」だ。

 

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洗練を極めた元祖ラグジュアリーSUVに、待望のPHEVがラインナップ

まだSUVのカテゴリーには武骨なオフローダーしかほぼ存在しなかった中に、RANGE ROVERは颯爽と現れた。1970年のことだ。その優れた走破性や工芸品のような仕立てのよさで、「砂漠のロールスロイス」と称されるようになったのをご存じの方も多いことだろう。

SUV PHEV

 

20世紀の終わり頃にSUVブームが到来し、それまでSUVを手がけたことのなかったブランドが続々と名乗りを上げた中でも、RANGE ROVERはラグジュアリーSUVの元祖らしい威厳や風格を保ち、特別な存在でありつづけてきた。そして第5世代のRANGE ROVERが発表されたときから存在が明かされていて、気になっていた人も大勢いるであろうPHEVが、ようやく日本に上陸した。

横顔

 

PHEVの話に移る前に、まずは最新のRANGE ROVERがどれほど魅力的なのかをよく見てほしい。これまでにも増してラグジュアリーになったのは写真からも明らか。しかもシンプルを極めたことに驚かされる。まるでひとつの塊から削り出したようなスッキリとしたフォルムも効いて、CD値(空気抵抗係数)はSUVとしては驚異の0.30を実現したというから、さらに驚く。

RANGE ROVERには、ルーフ、ウエスト、シルの3つの特徴的なラインをはじめ、ショートオーバーハング、クラムシェルボンネット、格式高いフロントエンド、直立したフロントガラス、スプリットテールゲート、ボートテールのようにテーパーしたリアなど、世代を超えて受け継がれてきたDNAがあり、最新版にもそれらの要素が随所にちりばめられているのも見てのとおりだ。

後ろ

 

その上で、最新技術を駆使して、このように凹凸や装飾を極限まで排したサーフェイスや緻密なライン、調和の取れたプロポーションを実現した。点灯するまで存在に気づかないようなテールランプも特徴だ。シンプルを極めることで、これほどまでに優雅な雰囲気を表現できているところがすごい。

他の高価格帯のSUVたちは軒並み見た目のインパクトを競いあっているかのような中で、RANGE ROVERはむしろ方向性としては反対のことをやっているにもかかわらず、目にした人の心を動かす力ではむしろ上回っているように思える。

 

贅を極めたインテリアには、サステナブルな選択肢も与えられる

「サンクチュアリ(聖域)のような空間」と表現している広々とした空間とともに、インテリアはクオリティ感にあふれ、そこに最先端テクノロジーがふんだんに投入されている。ハプティック(触覚)フィードバック機能付きの13.1インチのフローティング式フルHDタッチスクリーンを装備した最新のインフォテインメントシステム「Pivi Pro」は、2024年モデルでは従来はセンターコンソールに配置されていたスイッチ類が統合されている。

運転席

 

ナノイーXを搭載し、PM2.5フィルターを備えた「空気清浄システムプロ」という機能も、よりクリーンで快適な室内空間を提供してくれる。後席には2つのHDタッチスクリーンとリアシートタッチスクリーンコントローラーからなるリアエンターテインメントシステムが装備される。

運転席

 

素材は従来どおりの上質なレザーに加えて、ウルトラファブリックやウール混紡テキスタイルなど、サステナブルなプレミアムテキスタイルといった選択肢がいくつもあるほか、幅広く用意されたオーダーメードもある。

車体

 

新たに導入された、「SVO(=スペシャル・ビークル・オペレーションズ)」の技術者が開発設計し、ラグジュアリーとパーソナライゼーションを極めた「SV」では、ツートンカラーのシートやセラミック素材を初めて採用するなどした「SV」専用のデザインディテールやオプションが用意されている。

後部座席

 

ボディタイプは、スタンダードホイールベース(SWB)とロングホイールベース(LWB)の2種類あり、シートレイアウトは4人乗り、5人乗り、歴代初となる3列7人乗りから選択可能となったのも特徴だ(ガソリンモデルのみ選択可能)。また、標準装備される電動ディプロイアブルサイドステップのおかげで乗り降りもスムーズにこなせる。

 

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PHEVながら、実質88kmまでの電動走行が可能。さらに急速充電も

そんな5代目RANGE ROVERにラインナップされたPHEVは、3.0L直列6気筒INGENIUMガソリンエンジンに、105kWの電動モーターを組み合わせ、モーターのみでのEV航続距離は最大103km(実航続距離は最大88km)を実現している。

充電口

 

充電口を開けて驚いたのは、急速充電もできることだ。最大7kWの普通充電に加えて、PHEVとしては珍しくチャデモによる急速充電にも対応している。これは2024年に投入予定であることがすでに明らかにされている完全EV版をふまえてのものだ。

充電口

 

リッドの内側の充電口にも珍しくしっかり密閉するフタが付いているのは、渡河の際にこの深さまで水につかっても大丈夫なようにするため。同様にエンジンルームを見ても吸気系統の取り回しを工夫していることがわかる。こういうことをやっているPHEVなど、世界でもRANGE ROVERぐらいのものだろう。

操作パネル

 

ドライブモードには「EV」と「HYBRID」と「SAVE」があり、SAVEモードでは、最大80%まで任意に設定した充電量まで充電される。EV状態で走ると、静かなのはもちろんとして、エンジンがかかっても、まだEV状態がつづいているかと思うぐらい、静かでなめらかで振動もない。より静粛性を高めるために搭載された第3世代となる新しいアクティブノイズキャンセレーションも効いて、耳をすますと遠くでエンジンが動いているような印象だ。

 

力強くも、穏やかで静粛性の高い走り

パワートレーンの高いスペックのとおり、ドライブするとかなり力強い。やはりラグジュアリーカーたるもの、まずは性能がラグジュアリーであるべきという期待にもしっかりと応えている。しかもあくまでさりげなく、性能の高さを特段に強調しているわけでもないのに、乗るとつぶさにそれを感じるというニュアンスだ。

車体前方

 

PHEVゆえ走り出しをモーターが担っていて、良好なレスポンスはもちろん、アクセルを踏んだ量よりもわずかに強めに押し出してくれて、踏み増すと強大なターボパワーを備えたエンジンに受け継がれる。その一連のさじ加減が絶妙で、瞬発力と電動感と加速力のすべてをまんべんなく味わうことができる。ときおり聞こえる直6エンジンの上品なサウンドも奥ゆかしい。

車体後方

 

なお、今回ドライブしたのは、510ps仕様の2023年モデル「P510e」で、それでも十分すぎるほどだったところ、2024年モデルのPHEVでは実に40psも最高出力が増して、「P550e」となったこともお伝えしておこう。

走行中の様子

 

車検証によると、車両重量は2970kgで、前軸重が1460kg、後軸重が1510kgとリア寄りの配分となっている。いまどきのSUVの多くが運動性能も高いことをアピールするようになった中で、RANGE ROVERはけっしてそうせず、あえて重さ感を打ち消すようなこともしていない。

ただし、あくまで穏やかなまま、意のままに動いてくれる。ゆえに大柄ながら扱いやすく、無駄な挙動も生じにくい。21世紀に入ってからの、世代が新しめのRANGE ROVERは、そのあたりの作り込みが絶妙だと感じていたが、5代目となる新型もよりそれに磨きがかかっている。

後部座席

 

乗り心地も期待どおりすばらしい。前席はもちろん、エグゼクティブシートの与えられた後席はもっとよかった。しなやかな中にも微妙にしまった感じがあって、足まわりがよく動きながらも動きすぎず、キャビンは衝撃が伝わることもなくフラットに保たれる。22インチのやや扁平タイヤを履いてすらこんな感じだったことを思うと、20インチぐらいならもっといわゆる路面をなめるかのような感じになると思う。

 

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至福のひとときを味わわせてくれる、究極レベルのラグジュアリーSUV

視覚的にも贅をつくした空間が構築されているのはもちろん、マッサージやインフォテインメントなどの機能も充実していて、とくにエグゼクティブシートに座った人には、現時点で自動車として考え得る最上級のアメニティが提供される。PHEVなら、その静寂性もより際立っているのはいうまでもない。

トランク

 

ラゲージやシートのアレンジもほぼなんでも電動でできて、リアシートのセンターのアームレストのドリンクホルダー部分までもが電動でせり出すのには驚いた。その下方にはAC110V 180Wの電源コンセントが設けられている。

コンセント

 

また、今回の「SV」ですら見てのとおりのところ、さらに膨大な種類のカラーやテーマ、専用オプションなど、7つのステップを経て唯一無二のパーソナライゼーションを実現する「SV BESPOKEサービス」が新たに導入されたこともお伝えしておこう。

岡本さん

 

まさしく「究極レベルのラグジュアリーSUV」ぶりと至福のひとときを味わわせてくれた、最新のRANGE ROVER PHEVであった。

 

〈クレジット〉
撮影:茂呂幸正

 

〈スペック表〉
RANGE ROVER SV P510e(SWB=スタンダードホイールベース、2023MY)

全長×全幅×全高 5060mm×2005mm×1870mm
ホイールベース 2995mm
最低地上高 209mm
最大渡河水深 900mm
車両重量

2980kg[5人乗り/リアエグゼクティブシート/パノラミックルーフ装着車]

ラゲージルーム容量 818~1841リットル
エンジン 2993cc 直列6気筒DOHCガソリンターボ
エンジン最高出力 400ps(294kW)/5500-6500rpm
エンジン最大トルク 550Nm/2000-5000rpm
電気モーター最高出力 105kW/2950rpm
電気モーター最大トルク 275Nm/1000-2900rpm
システム最高出力 510ps(375kW)
システム最大トルク 700Nm
バッテリー総電力量(実効容量) 38.2kWh(31.8kWh)
EV走行換算距離(等価EVレンジ) 103km(WLTCモード)
トランスミッション 8速AT
駆動方式 4WD
最小回転半径 5.3m
タイヤサイズ 285/45R22
税込車両価格 2807万円 ※2024年モデル「P550e」の価格

 

〈ギャラリー〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事の著者
岡本幸一郎
岡本 幸一郎

1968年富山県生まれ。父の仕事の関係で幼少期の70年代前半を過ごした横浜で早くもクルマに目覚める。学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作や自動車専門誌の編集に携わったのちフリーランスへ。これまで乗り継いだ愛車は25台。幼い二児の父。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。