66年式セドリックをEVに改造!過去の名作を現代的に楽しむ、陰山さんのモーターライフ

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「自分の好きな旧車がEVになったなら……」そんな夢を叶えてしまった人がいます。カルチャー誌やカーメディアで編集長を務めてきた陰山惣一さんは、1966年式の日産・セドリックを、EVプロショップ・OZモーターズに依頼し、EVに大胆改造! テクノロジーを駆使して現代化を果たした愛車のシートから見えた景色は、ユニークに一変したようです。

【Profile】陰山惣一さん(48歳)

 

家族構成 3人家族(夫婦・大学生の息子さん)
お住まい 神奈川県
住居環境 戸建住宅
車種 日産 セドリック(1966年式、バッテリー20kWh)
ダイハツ ミラココア
導入設備 充電コンセント

 

EV LIFE Check1:導入のきっかけ

仕事を機に、愛車のエンジンをモーターにスワップ

陰山と66年式セドリック

 

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ーー旧車のEV化とはスゴい試みですが、どんな経緯で行ったのですか?

ベースとなった1966年式のセドリックはピニンファリーナというイタリアの有名カロッツェリアがデザインを手掛けたもので、ずっと探していたんです。飲みながらオークションサイトを見ていたときに、うっかり買えちゃいまして(笑)。50万円でした。

購入から1年くらいですかね。自分の仕事で電気自動車(EV)の本を作ろうということになって、EVレースを取材していたんですよ。そこでOZモーターズさんがEVにコンバートした古いビートルを持ってきていたんです。

車体後方

「Zero Emission」のバックエンブレムに加え、OZモーターズやモーター車の雄・タミヤのステッカーも。

ーーOZモーターズは日本でほぼ唯一コンバートEVを手掛けるプロショップですよね。

セドリックもコンバージョン可能か聞いたところ「できる」と。じゃあ本も作るし、そのコンテンツとしてコンバートEVを1台作っちゃおうかなと思ったんです。タイアップ企画にしていただいたので自分でお金は出していないんですよ(笑)。

ーーそれまでは何を乗っていたんですか?

フォルクスワーゲンのポロとかフィアットのパンダのような可愛らしいヨーロッパ車や、エルカミーノといったアメ車も。どれもめちゃくちゃかっこいいけど、よく壊れたんですよね。こういった旧車は、内装はいいので、廃車にしたらもったいないですし。エンジンを換えるよりも、さらに長く乗るためにEV化を決意しました。

ーー海外ではコンバートEVの事例も増えていますよね。具体的にはどのような改造を施したのですか?

シンプルにいえば、エンジンをモーターに取り替えました。バッテリーは日産・リーフのリサイクルバッテリー(20kWh)で、その電気をモーターに供給しています。ただ、トランスミッションはそのままで、4速のマニュアル車です。

ボンネット内

ボンネットを開けると、モーターやコンバータ、インバータといったEVの駆動部が見える。エンジンよりも大分コンパクトに収まっている印象だ。

トランク

トランクには黒いボックスが。リーフのリサイクルバッテリーで、後部座席の下にももう1つ収納されているという。

 

 

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EV LIFE Check2:コンバートEVの楽しさ

家族からの評判も上々!愛車を長く乗り続けられる喜び

車に乗る陰山さん

ーーコンバートEVの醍醐味はどんなところにあるのでしょうか?

好きな形の車に乗り続けられることが、一番のメリットでしょうか。僕は1960年代の形が好きなのですが、EV化することで長く乗れますよね。壊れて乗れなくなることが多いので…。ただ、この車は100kmくらいしか走れないので、バッテリーの進化にあわせて積み替えようと考えています。

バッテリーメーター

運転席には後付けで取り付けられたバッテリー残量を示すメーターが付いている。

ーー100kmという航続距離だと、充電の頻度も多くなりそうですね。

そうですね、実用性という意味では…。一度、300kmくらいの距離を走ったのですが、朝7時に出て、着いたのが夜8時でした(苦笑)。7回くらい充電することになったので…。まだEV自体に慣れていなかったことも大きな原因でしたね。

ーー不便なこともあるのでは?

コンバートEVはあくまで私の“遊び”なんです。じつは我が家のメインの車は、妻のお気に入りのダイハツの軽自動車なので。ただ、子どもも大学生になっていますし、100kmを超えるドライブって、そんなにしないんですよ。近所をドライブする程度なら、充電残量を気にすることもない。車で東京から名古屋とか大阪とか、そうそう行かないですよね?

充電口

テールランプの間に、2つの充電口(左/急速充電、右/普通充電)が取り付けられている。元々給油口があった場所だという。

ーーコンバートEVならではのクセや特性はありますか?

走っている感覚は、モーターになってもあまり違和感はないですね。充電はチャデモに対応しているので一般的なEVと変わらないです。ただ、急速充電は使えるけど、あまり早くはないですね。それ以外にあまりクセはないです。むしろ、コンバート以前は壊れやすかったんですが、そういうことは一切なくなり、メンテナンスはほとんど不要になりました。

ーーご家族からの評判はいかがですか?

子どもが免許を取って、乗りたいと言ってくれていますよ。ただ彼はAT限定なので、マニュアル車のセドリックは乗りませんが。窓を開けると気持ちいい季節ですし、ガソリンの臭いがないから爽快ですよ。

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EV LIFE Check3:コンバート費用と維持コスト

改造費600万円!しかし税金も維持費も格段にコストダウン

陰山さん

ーー改造費用はどれくらいかかるのでしょうか?

だいたい600万円です。セドリックの場合はEV化で流用できる部品があったようですが、ワンオフ部品が増えるともう少し費用がかかるようです。でも北米や欧州だと1000万円くらいかかることが多いんですよ。富裕層向けに希少なクラシックカーをEVにコンバートして付加価値を付けて売っているようです。そもそも1台ごとのオーダーで、大分手間がかかるので高額になってしまうんです。というのも、古い車は内部パーツが腐食していたりするので、そこから直す必要があるんです。レストア(復元)に近い作業になるため、コストがかさむわけです。

運転席

ーーなるほど。EVの普及が進むと、部品コストは下がりそうですよね。

EVが盛り上がっている中国では、さまざまな部品が進化しています。そんな部品を組み合わせて将来は自動運転ができるようになれば面白いなと考えています。ステアリングとモーターが制御できれば、不可能ではありません。ただ法令もあるので、実用というよりやっぱり“遊び”ですよね。お金にある程度余裕がある車好きにとって、コンバートEVは面白い選択肢になるはずです。

ーーセカンドカーを楽しみたいというニーズが多そうですよね。維持費はどれくらいかかっていますか?

扱いとしてはEVなので、自動車税はもっとも安い区分に入ります。旧車は本来なら大分高めに設定されてしまうのですが、この車は年間で2万9500円です。それにメンテナンス費用はほぼかかりません。あとは充電費用ですが、1週間に2回満タンにすると月々2000円くらいですかね。

 

 

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EV LIFE Check4:今後の計画とアドバイス

コンバートEVの文化が普及すると、選択肢が増える

車と陰山さん

ーー先ほどのお話のほかに、今後のプランはありますか?

せっかくバッテリーを積んでいるのに、コンセントのような出力がないんです。もし、車から電源を取れたら、イベントなんかでホットプレートを使って何かを焼くことができたりして面白いですよね。でも、コンセントを付けるのは大変だと聞きました。電気で動いてるから簡単な改造かと思いきや、そんなことないんですね(笑)

ーー環境への意識は、変わりましたか?

もともと畑や自給自足の生活に興味があったんですが、より深まった気はします。そういった世界にEVが共存できたら、面白いですね。エヴァンゲリオンの映画の中でそんな描写が出てくるんです。屋根に太陽光パネルを載せた家が並んでいて、付近をEVにコンバートしたジムニーが走る……という。

車体前方

ーーEVにコンバートしてしまえば、長く乗れて環境負荷も少なくて済みますよね。

アメリカではゼネラル・モーターズが、自社の車をEVにコンバートできるプログラムの策定が進んでいるそうです。エンジンスワップ(エンジンの載せ替え)が盛んなお国柄ですから、ディーラーでコンバートできるようになるとか。たとえば、同じ車種でも「この時代のこのグレードが好き」という好みがあるじゃないですか。だから「好きな車に乗る」という選択肢を増やす意味でも、コンバートEVの文化が普及するといいですよね。

ーーなんだか夢のある話ですね。燃費などの単純な性能ばかりではない可能性がありそうです。

車好きの人に多いと思いますが、僕も最初は「EVってつまらないのでは?」と思っていました。でも、乗ってみると加速はいいし静かだし、ガソリンの臭いはないし。内燃機関ならではの“鼓動感”はないですけど、それはそれ、これはこれ、ですよね。まあ、ガソリン車もガソリン車で面白いんですけどね(笑)。ただ、この先EVが主流になっていきますし、選択肢としてはアリだと思いますよ。

機能性のみならず“趣味性”のポテンシャルも高い、EVの世界

車と陰山さん

最初からEVとして設計された新車と違い、コンバートEVに完璧な使い勝手を求めるのは現時点ではまだ難しいようです。しかし旧車文化に親しみ、古い車にも愛情を持って付き合ってきた陰山さんからしてみれば、そういった多少の不便さも魅力に映っているようです。

まだまだ新しいジャンルなだけに、機能性が注目されがちなEVですが、趣味性のポテンシャルの高さも垣間見えた印象です。EVの普及に足並みを揃えて、カスタム市場も盛り上がりを見せることでしょう。エンジン好きの方々も、EVの楽しさに着目してはいかがでしょうか。

 

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
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