電気自動車(EV)の中でも女性ユーザーに圧倒的な人気を誇る「軽EV」ですが、どういったところがよいのでしょうか? 実際に軽EVを所有する女性オーナーに感想を伺い、女性目線での軽EVのいいところを教えてもらいました。
女性ジャーナリストが「軽EVのいいところ」を評価
軽EVといえば、日産・サクラと三菱・eKクロス EVです。両車はともに日産と三菱の合弁会社NMKVの企画・開発マネジメントのもと、三菱の水島製作所で生産されています。日産によると、2車種の生産累計台数は発売1年で5万台に達したといいます1)。
では、どんな理由で軽EVは女性に好まれているのでしょう。まずは、女性ならではの視点で話題の車をレポートする自動車ジャーナリストの矢田部明子さんに軽EVの評価を聞きました。
矢田部さん「日産・サクラは三菱・eKクロス EVのOEM(相手先ブランド製造)にあたります。性能も価格帯もほぼ変わりません。両車種とも国の補助金に加え、地方自治体の補助金も利用可能な上、税制面での優遇もあるので、非常にお財布にやさしい車と言えます。
ただし、運転支援機能の標準装備など、細かいところが異なります。たとえば、サクラの上級グレードである『G』には先進運転支援システム『プロパイロット』が標準装備されていますが、eKクロスEVの上級グレード『P』には、同じ性能の『マイパイロット』がパッケージオプション扱いになっています。デザインに加え、『どの機能が欲しいのか』を考えた上で選ぶことをおすすめします」
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️日産・サクラ「軽自動車にとって苦手な道も安心して走れる」
ボディサイズ2) | 全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mm |
駆動方式 | FWD |
乗車定員 | 4名 |
バッテリー容量 | 20kWh |
航続距離(WLTCモード) | 180km |
価格(税込) | 254万8700円~ |
Q.サクラを運転した感想を教えてください。
矢田部さん「最高出力は軽自動車並ですが、最大トルクはデイズ・ターボ仕様のほぼ倍というだけあって、軽自動車にとって苦手な道がサクラには見当たりません。坂道での運転や高速道路の合流で、大人3人を乗せていてもモタつくことはなく、スムーズに加速してくれます。また、バッテリーを床部分に積んでいるため、重心が下がり、ハンドリングが良いので、高速道路でカーブを曲がる際にもまったく怖くないのも高評価です」
Q.女性におすすめな点を教えてください。
矢田部さん「サクラをイメージしたピンクをはじめ、15色がラインアップされています。選べる色が多いのは女性にとってうれしい点ですね」
Q.購入する場合の注意点を教えてください。
矢田部さん「バッテリー容量が20kWhと小さいので、家庭で充電できる環境を整えることをおすすめします。また、ディスプレイに表示される航続距離をあてにしすぎるとよくないなと感じました。実際に、1kmくらいの坂道を上り終えると、航続距離が13km短くなるということがあったからです」
〈5段階で評価〉
見た目 | 乗り心地 | 機能 | バッテリー | コスト |
4 | 4 | 4 | 2 | 3 |
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2)日産「SAKURA」
三菱・eKクロス EV「寒い地域に住む人にうれしい機能が標準装備」
ボディサイズ3) | 全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mm |
駆動方式 | FWD |
乗車定員 | 4名 |
バッテリー容量 | 20kWh |
航続距離(WLTCモード) | 180km |
価格(税込) | 254万6500円~ |
Q. eKクロス EVを運転した感想を教えてください。
矢田部さん「走り心地の良さはサクラと変わりません。ただし、ekクロス EVの上級グレードには寒冷地仕様の『電動格納式ヒーテッドドアミラー』や『助手席シートヒーター』が標準装備されています。寒い地域に住んでいたり、ウインタースポーツによく出かけたりする人にとってはekクロスの方が欲しい機能が付いていると言えます」
Q.女性におすすめな点を教えてください。
矢田部さん「三菱ならではのダイナミックシールドが目立つグリルが取り入れられていて、EVといわれるまでわからないデザインです。EVに乗りたいけど、見慣れた車のデザインがいいという人におすすめです」
〈5段階で評価〉
見た目 | 乗り心地 | 機能 | バッテリー | コスト |
4 | 4 | 4 | 2 | 3 |
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3)三菱「eKクロスEV 」
女性オーナー3名が実感する「軽EVのいいところ」
実際に軽EVを所有し、普段使いしている女性3名にも所有するEVを5段階で評価し(最高点は5)、使用感を語ってもらいました。ぜひ購入前の参考にしてみてください。
カーシクルDIYガレージ まゆさん
車種名 | 日産・サクラ X |
購入時期 | 2023年8月 |
まゆさんは車関連の情報を発信するYouTuber・カーシクル DIYガレージさんの奥さま。車に興味のなかったまゆさんですが、車に触れていくうちに段々と興味が湧いてきたそうです。日産・サクラは普段使い用として旦那さんからサプライズでプレゼントされたそう。そんなまゆさんに半年ほど実際に軽EVを使用した感想を伺いました。
Q 特に気に入っている点を教えてください。
まゆさん「エンジン音がしないため、夜でも外出しやすいのはEVならではですね。また、アクセルを踏むとすぐに加速するので、普通の道路はもちろん、高速道路でも快適に運転ができます。また、後部座席が前後にスライドできるので、荷室と足元空間の広さの調整も可能です。さらに後部座席を倒すと、荷物をたくさん乗せることができるのも便利なところです。一度、主人が乗用車のタイヤを12本乗せて運んでいたのにはびっくりしました」
Q 不満がある点を教えてください。
まゆさん「もし遠出をするとしたら何回も充電しなければならない点です。ディーゼル車のSUVもあるので遠出にはそちらを使用し、サクラは主に近所の買い物をメインとした日常使いで利用しています。 サイズもコンパクトなので、用途を絞った使い方であれば、こんなに便利で快適なクルマはなかなか無いと思います」
〈所有するEVを5段階で評価〉
見た目 | 乗り心地 | 機能 | バッテリー | コスト |
5 | 5 | 5 | 5 | 3 |
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加藤恭子さん(仮名)
車種名 | 日産・サクラ G |
購入時期 | 2022年9月 |
動物好きのYouTuberとしても活動する加藤恭子さん(仮名)は、以前もEV DAYSに登場していただきました。ガソリン車の軽自動車から軽EVに買い替えた理由も伺いました。
Q. その車種を選んだ理由を教えてください。
加藤さん「以前からEVに興味があったものの、普段、狭い道を走ることが多いので車格の大きさから敬遠していました。けれど、軽規格でEVが出ると聞いて試乗し、その乗り心地とスムーズな加速に一目惚れしてその場で契約してしまいました」
Q 特に気に入っている点を教えてください。
加藤さん「サクラのスムーズかつパワフルな加速を経験して初めて、今まで軽自動車の加速に物足りなさを感じていたことを実感しました。加速だけではなく、空調に関しても、ガソリン車で『遅い』、ガソリン車で『遅い』と感じていたことが少なくなり、運転時のストレスが減りました。坂を登る際に轟音が全くしない点も気に入っています。スーッと坂道を登っていく感覚はとても快適です」
Q 不満がある点を教えてください。
加藤さん「バッテリー容量はもっと大きい方がいいですね。これまでは夫が充電管理をして、常に充電80%程度に保っていてくれました。それが最近、私自身が通勤にサクラを使うようになったため、自分で充電管理をするようになりました。ただし、電気代節約のため、近所の無料充電器を利用していることから、充電頻度に不満を感じているのであって、自宅充電メインに切り替えれば煩わしさは減るのかな、とも思っています」
〈所有するEVを5段階で評価〉
見た目 | 乗り心地 | 機能 | バッテリー | コスト |
4 | 5 | 3 | 1 | 3 |
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▶妻は一目惚れ、夫も大満足。軽EVが選ばれる理由
中村さつきさん
車種名 | 日産・サクラ X |
購入時期 | 2023年5月 |
自称リーフ活動家として活躍する中村さつきさんは、これまで3台のリーフを乗り継いできました。しかし、サイズダウンを思い付き、2023年に日産・サクラに乗り換えたそうです。近所での買い物などによく利用していると話します。乗り心地やコストには満足している一方、リーフと比較すると、充電性能には若干の物足りなさを感じているようです。
Q リーフと比べてサクラが良い点を教えてください。
中村さん「小回りが利き、コストパフォーマンスが良いのがサクラの特徴です。リーフと乗り比べて、評価は自分の好みや使用目的にもよると実感しました」
Q 不満がある点を教えてください。
中村さん「サクラは急速充電する際の最大受入能力が30kWに制限されています。急速充電器の高性能化が進んでいるのに、充電スピードなどの恩恵を受けられません。充電サービスの料金体系は、充電量ではなくて充電時間(分)単位であることがほとんどなので、少々損をしているようにも感じてしまいます」
〈所有するEVを5段階で評価〉
見た目 | 乗り心地 | 機能 | バッテリー | コスト |
4 | 5 | 4 | 3 | 5 |
そもそも女性ユーザーが軽自動車を好む理由は?
そもそも女性ユーザーが軽自動車を好むといいますが、実際のところはどうでしょう。日本自動車工業会の調査4)によると、軽自動車の中心ユーザーは女性(63%)で、確かに男性より女性が多いようです。
女性ユーザーに着目すると、全体の69%が「ほとんど毎日使う」と回答しています。そもそも軽自動車ユーザー全体での月間走行距離は「200km未満」が45%で最も多い状況ですが、女性の場合の使用用途は「日常の買い物をする」(90%)が最も多く、「泊まりがけの旅行をする」(16%)や「あらたまった外出をする」(4%)人は少ないようです。とはいえ、働いている女性は「職場や学校へ行く」(80%)、中学生以下の子どもがいる女性は「家族の送り迎えをする」(78%)など、近距離であればさまざまな用途に軽自動車を利用していることがわかります。
また、同調査では、女性ユーザーの88%が「軽自動車から普通自動車に乗り換えると不都合がある」と回答していました。その理由は「生活費が圧迫される」(53%)が最も多く、「狭い道があるなど道路条件の関係で、行けない場所が出てくる」(40%)、「大きい車は運転ができない(大きな車は運転しにくい、運転が怖い)」(35%)などが続きます。やはり多くの女性ユーザーは経済的におトクで日常に使い勝手のよい車として、普通自動車よりも軽自動車を好んでいるようです。
参考資料
4)日本自動車工業会「軽自動車の使用実態調査報告書」
充電環境を整えて、軽EVを便利に使おう
女性オーナーの実感としてもジャーナリストの評価としても、乗り心地や使い勝手の良さは高評価ながら、バッテリー容量には不満が残るという結果でした。とはいえ、自宅で充電することが可能であれば、日常の足として便利に使えるようです。EVに興味がある女性はまず一度、試乗してみてはいかがでしょうか。
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