故障、修理…トラブル対策はどうしてる?【ベテランEVオーナー座談会:前編】

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電気自動車(EV)の初心者ユーザーやEV購入を検討しているガソリン車ユーザーには、「バッテリーって劣化しないの?」「故障したらどこで修理すればいいの?」など、EVに不安を感じている人もいるはず。そこでEV初心者の不安や悩みを解消するべく、EV歴の長いベテランオーナー3人に座談会形式で話を聞きました。

 

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EV歴10年以上を誇るオーナーたちの車遍歴

座談会参加者の集合写真

右から司会進行役をつとめていただいた寄本好則さん(日本EVクラブメンバー。ヒョンデ「KONA」オーナー)。高木治行さん(日産「リーフ」オーナー)。杉本容一さん(ヒョンデ「IONIQ 5」オーナー)。山本百合子さん(日産「アリア」オーナー)。

 

寄本さん(司会進行)「今回集まっていただいたのは『リーフオーナーの会』のみなさんです。名称でわかるように、もともと日産『リーフ』オーナーのコミュニティなのですが、現在は別の車種に乗り換えた人も多くなっていますので、まずみなさんのEV歴から教えてもらいましょう」

杉本さん(ヒョンデ「IONIQ 5」オーナー)「私が初めて所有したEVは、2011年末にディーラーで試乗して気に入り、2012年初めに納車されたZE0型と呼ばれる初代『リーフ』でした。この車には約6年間乗り続け、次にZE1型と呼ばれる2代目『リーフ』のバッテリー容量40kWhのモデルを購入しました。

そして、約2年前に乗り換えたのが現在のヒョンデ『IONIQ 5』です。EVに乗るようなってから13年目になりますね」

 

杉本容一さん画像

杉本容一さん

 

高木さん(日産「リーフ」オーナー)「私も最初のEVは2012年秋に納車されたZE0型『リーフ』でした。ただ、私の場合、前期型、中期型、後期型と3タイプあるZE0型『リーフ』を過去にすべて所有し、現在乗っているのもZE1型『リーフ』です。

最初はZE1型も40kWhモデルの1台だけだったのですが、その後に60kWhモデルの『リーフ e+』も購入し、現在は2台のZE1型『リーフ』を所有しています。だから、これまでに販売されてきた『リーフ』のすべてのモデルに乗ってきたということになりますね」

 

高木治行さん画像

高木治行さん

 

山本さん(日産「アリア」オーナー)「私は杉本さんや高木さんに比べるとEV歴が浅く、自分自身の運転では3年ほど前にZE1型『リーフ』に乗ったのが初めてでした。それまではペーパードライバーで、パートナーがハンドルを握るZE0型『リーフ』の助手席でEV を体験していました。

『リーフ』はすごく気に入っていましたが、私は東京と富士山地域を頻繁に往復する二拠点生活をしていて、100km以上の長距離を走ることが多いんですね。そこで約2年前にプロパイロット 2.0を搭載する日産『アリア』に買い替えました。山道を走行するので4WDモデルです」

 

山本百合子さん画像

山本百合子さん

 

寄本さん「ちなみに、私は2018年に中古で購入したZE0型『リーフ』に5年ほど乗り、現在は2024年1月に納車されたヒョンデ『KONA』に乗っています。では、本題に入りましょう」

 

 

「EVは故障しやすい」というのは本当なのか

座談会の様子

 

寄本さん「EV初心者のなかには、『EVは壊れやすいんじゃないか』『故障したらどこで修理すればいいのかわからない』と不安に思う人がいます。しかし、私自身の経験でいうと、じつはEVが故障した経験ってないんですよね。みなさんはどうですか?」

山本さん「私も故障したことはないです。『アリア』に買い替えたときに走行距離約10万kmのZE1型『リーフ』を下取りに出したんですが、何も不具合がなく、ほとんど新車と変わらない状態と言われたので驚きました。駆動用バッテリーが多少劣化しているかも…って思っていたんですが、それもまったくなくて」

 

座談会の様子

 

高木さん「ZE1型の場合、バッテリー容量が減少するということはほとんどないようです。もちろん、たとえば20〜30万km走ればそれ相応にSOH(バッテリーの健全度)は低下すると思いますが、普通に使っている分にはそこまで容量は低下しません。

ただし、初代のZE0型はバッテリーが劣化しやすかった印象があります。実際に私が最初に乗ったZE0型は急速充電を多用していたこともあって、SOHが低下してしまい、メーターパネルのバッテリー容量計が8セグメントまで“セグ欠け”しました(※1)

杉本さん「私が最初に乗ったZE0型も同じです。現在と違い、当時は国の補助金を利用して購入したEVは6年間保有することが義務付けられていました。6年も乗っていると駆動用バッテリーの劣化がかなり進み、やはり8セグまで低下しましたね。

バッテリー容量が24kWh、カタログ値(JC08モード)で200kmの航続距離があったモデルなのですが、経年劣化などでSOHが低下した結果、冬に暖房を使用すると100km程度しか走らなくなりました」

 

トークをする杉本さん

 

高木さん「もっとも、これはあくまでも初代『リーフ』の話です。いまやEVのバッテリーはどんどん進化しています。最近では『リーフ』のバッテリー容量がセグ欠けしたとか、10セグや9セグまで低下したなどという話はほとんど聞かなくなりました」

杉本さん「そもそも、現在はガソリン車もそんなに故障しませんよね。みなさんは自分が乗っているガソリン車を修理するためにどれくらいディーラーや整備工場に行きますか? 定期点検などを除外すれば、おそらく年に1回も行かないと思います。

部品点数を見ても、ガソリン車が約3万点なのに対し、EVは約2万点と少ない1)。EVというのは想像よりはるかに壊れにくい車ですから、そんなに故障を心配する必要はないと思います」

 

※1:日産「リーフ」「サクラ」「アリア」は運転席前のメーターパネルにバッテリー容量計が表示され、容量が低下すると12のセグメントに分かれている容量計が右側から順に減少していきます(ZE0型「リーフ」の場合は上から下へ減少)。これがいわゆる“セグ欠け”です。

 

 

 

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EVの修理やトラブルにはディーラーを活用する

座談会の様子

 

寄本さん「ただ、いざというときのために故障やトラブルを相談できるところがあったほうがいいでしょう。EVに乗り始めたばかりで、不安を感じている人ならなおさらです。そういう場合、みなさんはメーカーの正規ディーラーに相談するんですか?」

高木さん「ディーラーにお願いしていますね」

山本さん「私もディーラーです。『アリア』が納車されてから間もないころ、ボディサイドのドアを擦ってしまったことがあったんですが、そのときもディーラーで修理してもらいました」

 

トークをする山本さん

 

杉本さん「私はZE1型『リーフ』に乗っていたとき、たまに日産のディーラーの急速充電器を使用し、充電中は建物でコーヒーを飲んで時間をつぶしていたんですね。そうすると、自然に営業マンと仲良くなり、何か車に心配なことがあったら気軽に相談できるようになります。このように、EV初心者は充電時間を利用して営業マンとの関係を深めるのもひとつの方法でしょう」

寄本さん「なるほど。EVの車種選びに迷っている人やEVに不安を感じている人などは、ディーラーに急速充電器が設置されている自動車メーカーの車種を選ぶといいかもしれません。

そもそも、私が乗っているヒョンデ『KONA』の場合、新車購入から3年間は点検や車検、外装部品の修理を無償でしてもらえるサポートサービスがあります2)。そういう点を考えると、正規のサービスセンター以外にお願いする選択肢は考えづらいのも事実です」

 

トークをする寄本さん

 

杉本さん「私の『IONIQ 5』で修理が必要な不具合が発生したとき、ヒョンデのロードサイドアシスタンスに連絡したら積載車がきてくれたことがありました。

車を引き取るために都内から新横浜の整備拠点まで行ったのですが、その移動費用もすべて新車保証の範囲内でした。EVに何かトラブルがあったらメーカー直営の整備拠点に相談するのは定石だと思いますね」

 

 

 

一番頼りになるのはEVオーナー同士の情報交換

座談会の様子

 

寄本さん「あともうひとつ。EVに乗るならSNSのオーナーグループなどに参加し、同じ車種に乗るユーザー同士で情報交換できるチャンネルをつくっておくのも非常に大切でしょう」

杉本さん「私はいつも助けられています。2012年にZE0型『リーフ』に乗り始めた当時、まだEVの情報が少なく、ディーラーの営業マンに聞いても何もわからないような状況でした。そのとき一番頼りになったのが、同じEVに乗るSNS上の仲間です」

 

トークをする杉本さん

 

山本さん「車両の取扱説明書を見てもよくわからないケースがけっこうあるんですよね。たとえば、『アリア』に搭載されている先進運転支援システムの『プロパイロット 2.0』は人間工学的に非常によくできていて便利な機能なんですが、詳しい使い方やコツなどの情報がネット上にも見当たらない。

しかも、私が『アリア』に乗り始めた当初はSNSにオーナーグループもなかったんです。発売されたばかりの新型EVを購入すると、こういう不便な思いをするケースもあります」

 

座談会の様子

 

高木さん「SNSのオーナーグループも多種多様です。私たちの『リーフオーナーの会』の場合、『リーフ』オーナーでなくても誰でも気軽に参加することが可能ですが、その一方、オーナーじゃなければ参加できないグループもあります」

寄本さん「オーナーグループではユーザー同士の非常に活発で濃い情報交換が行われています。この先、もっとEVの普及が進み、さまざまな車種が増えていくに従い、こうした情報交換がユーザーの利便性向上に大きな役割をはたすようになっていくのではないでしょうか」

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります。

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
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