EVの普及が進む欧州。フランス生まれのプジョー・e-2008は、コンパクトながら存在感のあるデザインが魅力です。さらに走りも抜かりなく、使い勝手もいいようです。等身大の目線に定評のあるモータージャーナリストのまるも亜希子さんが、その実力を紹介します。
世界的にみて、EVとPHVがどんどん増えているのが欧州です。税制優遇などの政策だけでなく、バラエティ豊かなたくさんのEVが販売されていることも、EVを選ぶ人が増えている理由のひとつといわれています。今回はそんな、欧州はフランス生まれの最新EV、プジョー・e-2008です。日本のEVとちがう個性はあるのでしょうか。使い勝手もしっかりレポートしたいと思います。
●Check1:エコノミカル
電力消費量を抑えられる「エコモード」を搭載
私たちの暮らしに、いちばん身近なエネルギーともいえる電気。それだけを使って走るEVは、運転の仕方や充電する場所・時間といった工夫次第で、賢く無駄なく使えるのが嬉しいポイントです。
e-2008は街中や高速道路に設置されている急速充電器と、自宅にも設置できる200Vの普通充電器で充電することができます。急速充電器の場合は、50分で約80%の充電が可能。普通充電(3kWタイプ)の場合は、約18時間で満充電、約3時間で50km走行分の充電が可能。また、普通充電(6kWタイプ)を利用すると、普通充電(3kWタイプ)の半分の時間で充電が可能です。
家庭で充電する場合の電気代は、1kWhあたり31円(全国家庭電気製品公正取引協議会の公表情報参照 ※)と考えると、500km走行するのに約2300円となります。ガソリン代と比べると、かなりランニングコストが抑えられるのではないでしょうか。さらに、e-2008にはドライブモードに「エコモード」があり、電力消費を抑えながら走ることができます。
※電力量料金のみの金額です。基本料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は加味していません。
●Check2:プライス
ガソリンモデルとの価格差は約130万円。しかし補助金が活用可能
e-2008には、ガソリンエンジンを搭載した2008も用意されています。価格は2008が303万5000円(税込)から、e-2008が433万2000円(税込)からと、129万7000円の差があるのでちょっと割高に感じてしまうかもしれませんね。
でも、EVはクリーンエネルギー車(CEV)として補助金が受けられます。交付条件を満たす必要はありますが、e-2008の場合、国(環境省)から約57万円、さらに東京都の場合は環境省補助併用時に60万円が交付されるなど、国や自治体の補助金を合わせると最大100万円以上になることもあります。さらに、購入時と1回目の車検時にかかる重量税が免除されるほか、購入翌年度の自動車税が75%減税となります。
また65歳以上であれば、対歩行者衝突被害軽減ブレーキ機能のついた車両が対象となる「サポカー補助金」で6万円が補助されますので、活用したいですね。
●Check3:ユーティリティ
コンパクトながら大きな荷室。ロングドライブが快適になる装備も
全長が4.305m、全幅が1.77m、全高が1.55mというコンパクトなボディサイズで、運転しやすいのはもちろん、クロスオーバーSUVとしては全高が低めに抑えられていることで、都市部の機械式立体駐車場が利用しやすいというメリットがあります。それでも、最低地上高は本格的なSUVにも負けない205mmが確保されていて、荒れた道や雪道なども頼もしく走ることができます。
最小回転半径が5.4mと、同サイズのSUVの中では少し大きめなので、小回り性能は今一歩のところもありますが、今回試乗した「GT」は18インチタイヤが装着されていて、高速道路でもガッシリと安定した走りを見せてくれました。全車速追従機能付きのクルーズコントロールなど、先進の運転支援システムも搭載されているので、ロングドライブが安心・快適なのも嬉しいところです。
荷室の容量も5人乗車時で434Lと、コンパクトSUVとしては大きめ。フロアボードの高さが2段階に変えられたり、アンダーボックスに普通充電用ケーブルが収納されていたりと、とても使いやすくなっています。後席を倒すと最大1467Lまで拡大するので、レジャーにも活躍するはずです。
●Check4:エモーショナル
滑らかな乗り心地に、美しく先進的なコクピット
プジョーはEVを、「ドライビングの新しい愉しさを追求しながら、未来の地球環境に対応する乗り物」というビジョンで開発しています。モーター駆動ならではの静かさ、快適さ、ドライビングプレジャー。e-2008を走らせると、思い通りに加速するだけでなく、いつもの道路が真新しいアスファルトに変わったかと感じるほど、なめらかな乗り心地に驚きます。
そして、文字が浮かび上がるように美しいグラフィックが楽しめる、「3D-iコクピット」というメーターがドライブに未来的なエッセンスをプラス。スマートフォンをつなぐと、いつもの音楽や地図アプリなどが車両のディスプレイで使えるようになります。インパネの収納ボックスのリッドが、スマートフォンスタンドとして使えるようになっているのも便利ですね。
●Check5:ハウスベネフィット
充電口は左後方。スマホアプリを活用すると充電が便利に
e-2008の充電口は、左リヤフェンダーに設置されており、急速充電用と普通充電用が並んでいます。これから自宅に充電器を設置する場合には、位置を考慮するといいですね。スマートフォンに「MYPEUGEOT」アプリをダウンロードしておけば、車両の状態や走行記録をスマホで確認したり、充電のリモート操作ができたりとさらにEVライフが快適になります。
災害時に自宅が停電した際などに、クルマのバッテリーに貯めた電気を家に給電し、電化製品を使えるようにする「V2H」には、残念ながら対応していません。また、車内にコンセント(AC100V・1500W)も装備されておりません。
ユニークで美しい存在感と、それに引けを取らない走りの良さが魅力
プジョーのエンブレムがライオンであることから、牙や縦爪がモチーフになった独特のデザインは、遠くからでも惹きつけられる存在感。そして乗ってみると、とにかくなめらかで気持ちのいい走りと、街中から高速道路までどこでも変わらぬ安心感。これらがすべてのコンパクトSUVの中でも、とても高いレベルだと感心させられました。
一充電あたりの航続可能距離は、日本ではJC08モードのみの発表で385kmですが、欧州で発表されている実際に近い換算値となるEPAモードでは約184マイル(約296km)。ちょっと遠くまで行きたい人にもトライしやすいEVと言えそうです。
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●家庭と暮らしのハマり度 総合評価
【過去の記事はこちら】
「連載:モータージャーナリスト・まるも亜希子の私と暮らしにハマるクルマ」
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
この記事の監修者
まるも 亜希子
カーライフ・ジャーナリスト。映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツに参戦するほか、安全運転インストラクターなども務める。06年より日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。女性パワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト」代表として、経済産業省との共同プロジェクトや東京モーターショーでのシンポジウム開催経験もある。